製造先を探しているブランドからの依頼を受けて、工場との仲介を果たすことがある。
それぞれの条件が食い違って成約に至らない場合も多いが、まれに成約に至ることもある。
その場合はもちろん有料とさせてもらっている。こちらもボランティア活動ばかりはできない。

成約に至らない一番の要因は工賃である。
ブランド側が思い描く製造工賃は驚くほど安いことが多い。
例えば、店頭販売価格が15000円くらいのカジュアルパンツだったとして、製造工賃(副資材代も含めて)が5000円になると、まず「高い」「高すぎる」という反応になる。
この商品だと3000円台で落ち着くことがほとんどである。
しかも生産数量は100枚くらいしかない。

100枚くらいだから多くの場合、国内生産ということになるが、こんな具合では国内縫製工場に就職したがる日本人はますます減るしかない。

もちろん、ブランド側やショップ側もビジネスだから利益を取る必要はあるが、だったら製造工場はどこで利益を確保すれば良いのかということになる。

また、多くの場合、たった100枚とはいえ、定価で売り切ることができずに期末に値引きされることになる。
半額で完売したなら御の字、70%オフとか3000円均一なんていうのも珍しくない。

そうすると次回の発注ではセールでの値引き分も見込んで「もう少し工賃を下げてくれ」ということになる。

反対に、この商品が爆発的に売れたとしよう。
追加による追加が入って、トータル販売数量が何千枚かになった。

そうすると次回は、あらかじめ多めに発注することになる。
前回が初回100枚だったのが、初回500枚とか1000枚ということになる。

この場合も初回工賃がそのままスライド適用されることは少ない。
多くの場合は必ず「数量が増えたのだから工賃を100円でも下げてくれ」ということになる。


商品が売れても売れなくても製造工賃は結局は叩かれるのである。


そしてそれがアパレル、ファッション業界で起きている日常茶飯事であり、ブランドやショップ側には「いかに製造工賃を安く叩けるかが優秀さの証だ」と勘違いしている担当者も少なくない。


メイドインジャパン(多くの場合はメイドバイ中国人・メイドバイベトナム人だが)も結構。
クールなジャパンも結構。
ジャパンなクオリティのタグも結構。


素晴らしいスローガン・お題目は結構だが、実情はこんなものである。


20年後、一体どれだけの国内縫製工場が残っているだろう。
アジアからの研修生を使わなければ今でも国内縫製工場の数は「確実に半減する」と断言するコンサルタントもいる。
10年後、20年後ともなれば外国人研修生を使っていてもどれだけの縫製工場がなくなるのだろうか。
そんな先まで外国人研修生制度が残っているかどうかも怪しいが。


これが国内縫製業の現状である。