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南充浩 オフィシャルブログ

定価で買うお客がさらに減るのではないか?

2012年6月15日 未分類 0

 ユニクロがモバイル会員を開始した。
携帯で登録すると、指定された日時だけに使える割引クーポンが不定期に届くというものである。
オンラインショップでは使えず実店舗のみだ。

だから店頭を覗くとときどき「今の時間、モバイル会員様は500円オフになります」というような看板が出されていることがある。
いわば「タイムセール」である。
クロスカンパニーやワールドのブランドのようにショッピングモール内のテナントで、販売員が「タイムセールスですよー!!」と声を張り上げるのか、携帯電話にクーポンが届くのかの違いだけである。

プラスの効果としては、これを機会に店頭に足を運んでくれるお客が増えることが期待できる。
しかし、マイナスの効果もあるのではないだろうか。

それは「定価で買ってくれるお客がさらに減る」ということである。
これまでからもユニクロのお客の大部分は、土日祝日に行われる「週末値引き」時に購入していたと考えられる。
あとは、店頭入荷から一定期間が経過して「値下がり」した商品の購入比率が高いだろう。

定価で買うお客も当然存在する。

出張が長引いたため、急きょ、着替えの下着や靴下が必要となった人。
明日、何か作業をしなくてはならなくなったので、その作業着用に買う人。
今着用している服がアクシデントのため破れたので、買い変える必要がある人。

などというお客が主体だと推測する。

もちろん過去には例外はあった。
ヒートテックブームの頃は、ヒートテックがほとんど値引きされたことがなかったので、定価で買う人が続出した。
+Jのスタート時は定価で買うお客が多かった。ただし次シーズンからの定価購入客は減り、週末値下げもしくは恒常的値下げになってから動いたのが実情である。

平日のモバイルクーポンを導入したことで、さらに定価で買うお客は減少すると考えられる。

傍から見ていて、この動きは2000年前後のマクドナルドを思い出す。
58円バーガーや80円バーガーを販売しており、低価格志向を極度に強めていたころである。

その後、創業以来の赤字に陥り、価格を吊り上げる戦略へと転換する。
しかし、高価格戦略にも今年は限界が見えたようで、270円・280円牛丼に対抗するメニューを考案せざるを得なくなっている。

価格の問題というのは非常に難しい。

高価格化は必要だがいつまでも伸び続けるはずもなく、270円・280円牛丼に対抗する施策の発表に迫られる。
かと言って270円・280円牛丼が好調かというとそうでもなく、定期的に250円や240円に値引きしているが、20~30円程度の値引きでは客数が増えなくなっている。

冷静に考えてみて、380円の牛丼が280円になるとお得感が湧くが、280円の牛丼が250円に下がったからといって、同じようなお得感が湧くだろうか?
そりゃ多少のお得感はあるだろうが、「劇的に下がった」とは感じられないはずだ。
30円下がったからと言って、大喜びする消費者はほとんどいないだろう。

タイムセールや週末値引きを頻繁にしつつ、定価で買わせるためには1品番あたりの生産枚数を減らして、売り切り御免の形を取らないと無理である。
「今、買わないともう入荷しませんよ」というスタイルでないと、だれもわざわざ定価では買わない。
店頭に山積みになっているなら、値引きされるまでじっくり待っていれば良い。どうせ売り切れることはないのだから。

となると、たっぷりと商品を山積みにして「欠品させません」というユニクロのスタイルは、「セールを頻繁に行うが、定価でもそれなりの人数に買ってもらう」という販売スタイルにもっとも適していないということになる。

今後、それなりの対応策で切り抜けるとは思うが、もしかするとユニクロというブランドが飽和点に達したことが顕在化したのかもしれない。

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