売り上げ規模はまだまだ小さいけれど3年くらい前から「リー」の子供服が好調な伸びを見せている。
好調の要因は複数あるが、その中の一つとして「商品の追加補充がスムーズ」ということが挙げられている。

「リー」を展開するリー・ジャパンはエドウインの子会社である。
エドウインは東北地方に自家縫製工場を抱えているし、中国製品もあるが、大手ジーンズメーカーならではの量産体制がある。

昨今のメーカーは、在庫が残ることを極端に嫌うため、「売り切れ御免」の生産スタイルが増えてきた。
そうすると、店頭で売り切れても追加補充ができず、新型に切り替わることになる。

たとえば、品番3102が店頭で売り切れたので、補充発注する。
しかしメーカー側も初回出荷のみで追加生産しておらず、似たような商品だが素材やディテールや付属が異なる品番3103の生産に切り替わっている。
かくして店頭は3102品番を補充することができなかった。

こういう状況が増えてきた。

ジーンズメーカーの大量生産システムは「現在の店頭のスピード感に合っていない」と評されることが増えたが、逆に評価される側面もあるということになる。

ただ、売り上げ規模が拡大すると今度は在庫過剰に悩まされることになるので、そのあたりはバランスを見ながら修正することになっていくだろう。


ところで、最近すっかり忘れ去っていたが、各ジーンズナショナルブランドにも以前は子供服があった。

ボブソン、ビッグジョン、リーバイスには子供ブランドがあった。

ボブソンはそのままの名前で、ビッグジョンは男児が「Uボート」、女児が「ブラッパーズ」だった。
この2社は自社企画で生産販売を行っていたが、今はもうない。

「リーバイス」の子供服「リーバイス・キッズ」はフーセンウサギの子会社ファティエがライセンスで企画生産販売を行っていたが、ファティエが親会社のフーセンウサギに吸収されてからはフーセンウサギが展開していたが、フーセンウサギも倒産してしまった。


ジーンズナショナルブランドでは「リー」の子供服だけが残ったことになる。


こうなると残存者利益がある。


今になると信じられないことだが、ほんの12,13年前までは子供服でジーンズはタブーだった。
専門店向けブランドはそうでもなかったが、とくに百貨店向けブランドでは導入に及び腰だった。
理由は「色落ちするから」「洗濯したときにほかの洗濯物に移染するから」「(作業着出身である)デニム生地は百貨店の上品な顧客に受け入れられない(と思う)から」などなどである。


ミキハウスがデニムを取り入れたブランド「ミキハウス ダブルB」を開始するのも一大決心だったし、ファミリアはデニムの導入には及び腰だった。ベベの専門店向けブランドはノリノリで企画していた。
これが2000年ごろの子供服大手メーカーの姿勢だった。


話が横道に逸れつつあるが、そのまま逸れてしまう。


物事にはセオリー(定説)がある。
一つの業種や業態を長く営んでいるとそこにおけるセオリーは自然と身に付く。
しかし、このセオリーが身に付くことが一概に良いことばかりとは言えないと最近思い始めている。

というのは、先ほど挙げたように百貨店の子供服売り場や百貨店向けの子供服ブランドがデニム生地の導入をためらったような事例があるからだ。


「百貨店の顧客はデニムなんて買わない」「移染したらクレームが来る」

これが2000年ごろまでの子供服業界、百貨店業界のセオリーである。
しかし、それが正しかったかどうか。今では百貨店の子供服売り場にもデニム製品は多数ある。
もちろん、そういう志向の顧客も一定数は存在しただろう。

けれどもそうではなかった顧客も一定数いたし、その次の世代はそうではなかった。
だから今の百貨店向け子供服ブランドはデニムを販売している。

こういう事例はほかのジャンルではもっとある。
メンズ服にもレディース服にもスポーツウェアにも生地メーカーにも流通業にもジーンズメーカーにも。


各業界の定説は疑ってかかる必要がある。
それを疑って打破するには相当の軋轢が生じるがそれを踏み越えた先にしかイノベーションはないのではないか。

ひどく精神論に偏った言い回しなのであまり好きではないけれど、筆者の拙い筆力ではこの程度の表現が限界である。