昨年あたりから中国の縫製工場の人件費高騰と円安によって「国内で製造するのとコストが変わらない」という状況になってきた。

現在、多くの国内縫製工場や加工場は活況を呈している。
縫製工場や加工場の数は倒産・廃業のため以前より減っている。
工場が減ったところへ受注が増えているのだから、活況になるのもある意味で当然である。

個別の問題は置いておいて、概論だけでいうと、国内工場はコスト面では中国とのハンデがほぼなくなったといえる。

藤本隆宏さんの「現場主義の競争戦略」を読んだ。
この中では、現在の国内製造業の状況を指して「夜明け前」と表現されている。

現在残っている製造業はハンデが最大だった過去20年間に比べれば、今後は国際競争に生き残れる可能性がより高くなる。

とある。
この本は「製造業」すべてを指しているが、これは繊維製造業にも当てはまる部分が多いのではないかと感じている。

ただし、生き残れるのは今後も能力構築と生産性向上を続ける意思と能力を持つ「良い現場」に限られる

ともある。

そして続けて、

マスコミや言論界が根拠の怪しい製造業悲観論を煽ることも必要以上の工場閉鎖を助長します。
(中略)
「夜明け前」の闇の中では、それを「永久に続く闇」と見誤る人が出てきやすい。「本社よ覚醒せよ」と言いたいのはまさに今なのです。


と続く。

使い古された表現だが「夜明け前の闇がもっとも暗い」に通じる言い回しである。

より詳しく知りたい方はこちらもお読みになると良いだろう。

日本の現場に「失われた20年」はない
http://toyokeizai.net/articles/-/27666



一方、最近はむやみやたらと「日本製なら何でも優れている」論も巻き起こりつつあるように感じる。
衣料品・繊維製品・雑貨類でも同じような風潮がある。
本書の中でもこの風潮に対して懸念が示されている。

機械製品や化学製品と異なり、衣料品や繊維製品は日本製とアジア製の違いはあまり明確に分からない。
性能や機能で目に見えた差はない。
せいぜい生地の風合いが何となく良いとか、縫製の始末が丁寧とかそういうくらいである。
その辺りは本当は重要なファクターなのだが、一般消費者には実感しづらい。
ただ、繊維製品の場合、アジア製でも丁寧な縫製の物もあるし、風合いの良い生地を使っている場合もある。

となると付加価値をどこに求めるのかということになり、これがわからないから筆者も含めて業界全体が悩んでいるといえる。

一つには色柄・デザインという部分でのアピールがあるだろう。
別に和柄にこだわる必要はない。もし和柄が好きだから和柄をアピールしたいというなら賛成だが、日本=和柄というのはちょっと安直にすぎるし、和柄をある程度アレンジしないと洋服や洋装向けのテキスタイルにはならない。

純然たる和柄のプリントや刺しゅうを施したTシャツやジーンズが、微妙にダサく見えることがそれを証明しているように思う。

ひどく漠然としていて申し訳ないが、「日本の生地の色使いとか柄合わせは毎シーズン良いセンスだよね」という境地を目指さなくてはならないのではないか。

もしくは他国に追随を許さない高機能製品である。
吸水速乾、保温発熱蓄熱、超軽量、防水、撥水、防臭消臭、難燃、などである。

筆者の乏しい知識ではこの辺りの提示が限界である。

過度な製造業悲観論にも、過剰な国産崇拝にも陥ることなく、国内の繊維製造業が着実なイノベーションを遂げてくれることを願うほかない。