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南充浩 オフィシャルブログ

バブル期が再現される葬儀会場

2012年5月14日 未分類 0

 私事で恐縮だが、土曜日の早朝母親が亡くなり、土曜日に通夜、日曜日に葬儀というあわただしい日程だった。

その感慨などを書いたところで読んでいる人は面白くもなんともないだろうから、喪服についての感想でも書いてみたい。
女性は着物を着ている人がチラホラとおられた。
しかし、真っ黒の着物、真っ黒の帯どめ、真っ黒の草履など、あれだけ黒い製品をそろえることは着物を日常着として着用していたころの日本では不可能だったのではないかと思えてならない。
今の喪服の形態になったのは、富国強兵と西洋化した明治期以降ではないだろうか。
そもそも中華の儒教文化では葬礼の色は白だった。ちなみに婚礼は紅。

男性はおもにスーツが多い。
とくに日本の場合は「略礼服」と呼ばれる商品を着用した人が多い。
略礼服という言葉は日常語で、そもそも礼服を簡略化したという意味の語である。

日本でいう「略礼服」とは紳士服メーカーがプロモーションした一商品を指すニュアンスが強いのではないか。
黒いスーツなのだが、何故だかダブルブレストが主体である。
普段は「ダブル?ダセー。あんなもんバブルの頃の遺物だぜ」とのたまっている人でもダブルの「略礼服」を着用しておられる。これはなかなかに不思議な光景である。

しかも何故だか知らないが、日本の「略礼服」なる商品のシルエットは一様に緩い。
バブルの頃のソフトスーツのあれである。
ダブルブレストで緩いシルエットのスーツなのだから、会場はバブルの頃と見まがうばかりである。

西洋で言うところの略礼服とは通常のダークスーツを指すようで、
グレー、黒、濃紺などの通常のスーツに黒いネクタイ、もしくは黒い腕章をすれば十分である。
同じ紺でも明るい紺なら夜のパーティー用の色なので注意が必要だ。

さて、以前も書いたのだが、日本独自の「略礼服」なる商品は海外では通用しない。
にも関わらず、年配層の間では「『略礼服』を持っていない?普通の黒いスーツだと?けしからん」という風潮がある。
そんなことを言われてもアホらしく感じるだけなのだが、ここまで浸透させた紳士服メーカーのプロモーションには目を瞠るばかりだ。

現在ではそのプロモーションは終了しているし、若い層にはそれほど浸透していない。
しかし、「略礼服」は日本ではもっとも成功したプロモーションの一つではないだろうか。

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