ファッションショーイベントというのはまことに難しい。
一般消費者向けと業界向けでは、原則として手法や出展する商品内容を変える必要がある。

国内のファッションショーイベントを大雑把に分けると

消費者向けとしては神戸コレクション、東京ガールズコレクションなどがある。
業界向けとしては東京コレクションがある。

消費者向けイベントの特徴は、一般消費者が興味を示すようなタレントをステージに上げて、現在の店頭に並んでいるまたは直近で店頭投入される商品を着せて歩かせることである。
タレントへの多額のギャラが発生することもあって入場料制になっており、どれだけ多くの消費者を入場させるかがキモとなる。

業界向けではタレントのステージ投入は必要ないし、通常は半年先、ギリギリに引きつけたとしても3カ月先の商品を着せる。こちらはブランド側からの招待制なので、入場料は必要ない。観客は多いに越したことはないが、一般消費者向けイベントのように1万人を越える入場者数は不要である。

さて、そんな中、8日・9日と大阪スタイリングエキスポなるファッションショーイベントが開催された。
会場はグランフロント大阪の北館1階である。
小なりといえどもファッションショーイベントを開催する労力は大変なものであるから、運営に携わった方々にはまず敬意を表したい。

今回もこのファッションショーイベントは消費者向けと業界向けがごっちゃになったところがまず何よりも残念である。
ただ、この悪癖は今回始まったことではなく、毎年のことなのでこれは完治不可能なのだろうと生温かく見守るほかないようだ。

全体として22のブランドがステージに登場したが、出展されている商品は「来春夏商品」であるとのこと。
オープニングでそのように挨拶コメントがあった。

写真2








グランフロント大阪北館1階の広場は、吹き抜けであり、ショーの観覧も無料だ。
有料にするなら、通行人の視線を遮るための広場に大きな衝立を作らねばない。これでは何のためのグランフロント大阪の広場開催なのかわからなくなるので、これはこれで正解だろう。

となると、観客は業界関係者ではなく圧倒的に一般消費者が多くなる。

一般消費者に向けて、半年先の商品を見せてどのような効果があるのだろうか。
筆者にはその効果はあまり想定できない。

半年先の商品を見せるなら東京コレクション的な業界向けにすべきだろうし、グランフロントの吹き抜け広場で開催するなら完全に消費者向けとして現時点での商品を見せるべきだろう。

次に観客ターゲットがはっきりしていないことも残念である。

配布されたフライヤーのデザインを見てもらえばわかるように、これは完全に20代女性向けだろう。
神戸コレクションや東京ガールズコレクションに近いテイストでデザインされているように見える。

写真


(今回のフライヤー。虫眼鏡もグラフィックのデザイン。実物ではない)

一方、出展ブランドは在阪ブランドと新進デザイナーズブランドである。
在阪ブランドのラインナップは、「オッジクラブ」「ピコーネ」「エイコ・コンドウ」「キャサリン・ロス」などいずれもミセスブランドばかりだ。そのミセスの年代も50代以上ではないか。
その中にデザイナーブランド「アグリ・サギモリ」がラインナップされているのも面妖だ。

他方は独立系の小規模デザイナーブランドである。
その多くはアバンギャルドな作風でコアなファンは獲得しているものの、広く一般消費者に向けた商品ではない。
また彼らも大衆に向けて生産できるような自社体制は構築していない。

フライヤーのデザインテイストと出展しているブランドがあまりにもミスマッチである。
フライヤーはギャル向け、出展ブランドは50代ミセス向けと、コアなファッションを好む層であるから、どこに向けたイベントなのか読みとることは難しい。


例えば、筆者が運営者ならフライヤーをもっとミセス向けデザインにして、出展商品を今秋冬物に限定しただろう。その方がずっとわかりやすいからだ。デザイナーブランドはそのまま継続するにしてもだ。


一般消費者向けを狙うなら、好き嫌いは別にして神戸コレクションや東京ガールズコレクションンに限りなく近づけないとだめだろうし、業界向けなら東京コレクションに限りなく近づけないと意味がない。
両者の折衷が一番の愚策である。ただ、大阪では2011年から関西コレクションなる大規模消費者向けショーイベントが開催されている。このため、さらに後発で消費者向けショーイベントを大型化することはかなり難しいだろう。関西圏は神戸コレクションと関西コレクションで飽和状態にある。


もし、今回のラインナップとフライヤーで運営せねばならぬとすると、筆者なら、ショーを秋冬物にまとめた上で、グランフロント内で出展ブランドの在庫大安売りセールを開催する。
どうせ、各ミセスブランドには在庫が唸っているのである。また大阪のオバちゃんは安売りが大好きだ。
販売する商品も豊富なうえに、安売り大好きなオバちゃんが多数存在しているのだから、大盛況になることは間違いないのではないか。

どれくらい安売りが好きかというと、去る10月10日に「あべのハルカス」の専門店街ウイング館上層階がオープンした。筆者は取材で午前9時から館内にいたのだが、午前10時に開場となってもあまり人が押し寄せる雰囲気はなかった。オープンしたのは4階から上で、3・5階と3階では「売りつくし大セール」を開催していた。午前10時の開場で一番賑わったのはオープンした上層階ではなく、「売りつくし大セール」の会場だったのだ。

それほどに大阪のオバちゃんは安売りが大好きである。

まあ、そんなわけで、私見をつらつらと並べてみたのだが、来年以降も実行されることはないだろう。
それができるならとっくの昔にこのイベントはもっと異なった形態になっていただろうから。