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南充浩 オフィシャルブログ

楽天の中国撤退理由の解説がステレオタイプ過ぎないか?

2012年4月27日 未分類 0

 先日、某雑誌の取材で福井県の方を尋ねた。
業界の方でも何でもなく、単なるアメカジ・ワークブランド好きの方である。
その方の手持ちの洋服を見せてもらってそれを写真撮影しつつ、コメントをいただくという作業だった。

その方は年間に数枚しか買わないそうだが、一枚あたりの価格が高い。

GAPの最終値下げで990円に値下がりしたTシャツを2枚と、1900円に値下がりしたニットカーディガンをさらにレジにて2割引きで買う筆者とはだいぶ異なる。

お手持ちの中に、「フィルソン」のウールワークベストがあった。
ネットで調べると販売価格1万8000円である。

この方の手持ちの他の洋服は「エヴィス」「シュガーケーン」などで、だいたい単価2万~5万円くらいなのだが、すべてネット通販で買うという。

福井県でもかなり田舎に住まわれていて、中心街へ行くのも大阪や京都に行くのも時間がかかるのでネット通販という選択は当然だと思う。
それでもそんな高額な物をネットで買うことに驚くとともに、そこまで定着していることが分かった。

筆者はネット通販をあまり利用したことが無い。
何度かはある。買った物といえば、ユニクロで週末限定価格で値下がりした商品とか、リーバイスのオンラインファミリーセールで3150円に値下がりした廃番ジーンズなどだ。

でも送料500円を支払うのが嫌なので家族分をまとめて買う。
ユニクロなら5000円以上買うと、リーバイスのオンラインファミリーセールは1万円以上で送料無料である。
送料無料になるようになるべく「キッカリ」の金額にする。
ユニクロなら5000円ジャスト、リーバイスなら1万円ジャスト。それ以上無駄な物は買わない。

なぜネット通販を利用しないかというと

1、愛用している低価格ブランド群の中にはネットよりも店頭の最終値引きの方が安い物がある。
2、試着できない

この2点が主な理由である。
ブランドごとに採寸が異なることも多い上に、同一ブランドの中でも商品によって寸法が異なることもある。

そんなネット通販音痴の筆者なので、
今月に発表された楽天の中国市場撤退、今年初旬に発表されたYahoo!Japanの中国市場撤退の理由があまり良く分からない。売れなかったことだけははっきりと分かるが。
正確に言うと、各紙で報道された理由があまりピンとこないのである。

そんな中、東洋経済で掲載された記事が一番しっくりときた。

楽天・ヤフーはなぜ敗れた? 激変する中国オンラインショッピング市場
http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/a1c1206894f023d4460cd8098545061a/

ヤフーは2010年6月、楽天は10年10月に中国版のモールを立ち上げた。
それからわずか2年弱での両社の撤退である。
正確にはヤフーが2年弱、楽天は1年半である。
以下に撤退の理由の解説を引用抜粋する。

どうして、そろいもそろってダメだったのだろうか。
 
 「母国で成功した日本的デザインにこだわりすぎた」「母国で成功したフットワークの重い日本式決定構造」といった、中国での日本企業の敗因としてのステレオタイプな解説は各所でなされている。

そういった経営体制側の要因はもちろんあるだろう。ただ、中国のネットユーザーの立場から見てみれば、「販売店とのチャットによるコミュニケーションは必須なのに備えていないこと」「他の輸入代理店に比べ値段が高すぎたこと」「取扱商品数が十分でなかったこと」といった、非常に基本的な部分での不備が、敗因として挙げられる。

とのことである。

筆者がしっくりこないと言ったのは、上で記されているステレオタイプの解説である。
その程度のことならわざわざ記事を読まずとも、ある程度知識を持ちあわせている人なら、容易に想像できる。

少し横道にそれるが、フランスのカルフール、イギリスのテスコという大手流通が相次いで日本市場から撤退した。米国のウォルマートも長い間苦戦を続けている。
彼らが上手くいかない理由も「母国での成功スタイルにこだわりすぎた」「現地化できなかった」ことが挙げられる。

疑問を感じるのは、マスコミや評論家の論調である。
日本企業が海外市場から撤退するときには「母国(日本)でのスタイルにこだわった」ことを非難するが、海外企業が日本市場から撤退するときには、その企業を非難するのではなく、「海外企業が通用しない日本市場の風習」を非難する向きが多い。
これはダブルスタンダードも良いところである。
日本企業には「現地に合わせろ」と言い、海外企業には「日本人が海外企業に合わせろ」と言う。
どこまで舶来コンプレックスに囚われているのかと呆れ果てるばかりである。
なぜ海外企業にも「現地(日本市場)に合わせろ」と言わないのか。

さて、そんなこんなで今回の東洋経済の記事は非常に分かりやすかった。
続編にも期待したい。

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