産地の生地メーカー、染色加工場、一部産元などを集めての生地即売会「テキスタイル・マルシェ」というイベントの運営に携わらせていただいている。工場の方々がそのまま売り場に立って接客販売してもらう。
購入される方は企業にお勤めの方もおられるし、個人でブランド活動や作家活動をされている方もおられるし、まったくの主婦で手芸や裁縫が趣味という方もおられる。

2年半も続けてくると、接客の良し悪しが販売の好不調をある程度の割合で左右することがわかってきた。
「2年半続けないとわからんのか?」という突っ込みはなしで。(* ̄∇ ̄*)エヘヘ


まず、無口なのは圧倒的に不利である。
無口よりはわけがわからないことを連発していても口数の多い方が有利だ。


ところが口数が多い割に売り上げにつながらない方もいらっしゃる。


口上をよく聞いてみると
「これは○番手の糸を使って密度を低く織り上げた生地です」
とか
「経糸に綿、緯糸に麻を使って高密度に織りました」
という説明のみで終わっていることが多い。

ちなみに経糸は「たていと」と読み、緯糸は「よこいと」と読む。
織物の場合は縦糸・横糸ではなく、経糸・緯糸と書くのが正しい。

閑話休題

しかし、よく考えてもらいたいが、上のような口上でお客が生地を買うだろうか?
これでは単なる生地のスペック説明である。
生地のプロならそれでも買うかもしれないが、手芸好きの主婦が「綿麻交織の高密度織物が欲しかったのよ~」と思うことはほとんどないだろう。

まして、アパレルの企画担当者の物作りの知識レベルも大幅に落ちており、手芸好きの主婦と同等かそれ以下という場合も珍しくなくなっている。

スペック説明だけではアマチュアどころか「プロ(自称)」でさえ理解できないケースが多い。

売り上げの良い人の口上を聞いているとそこにプラスアルファがある。

「縮まないから家庭洗濯できますよ」
「ポリエステル縮緬だから洗濯しても色落ちしませんよ」
「麻主体の生地なのでシワが入りやすいですが、それは気にしないでラフに着こなしてください」

などである。

スペックも重要だが、そこにプラスアルファで効能や使い方、メリット・デメリットを付け加えているわけである。
「家庭洗濯できますよ」の一言で「じゃあ、クリーニング代は節約できるからお得ね」と購入につながることも多い。

さて、これは何も産地企業の接客に限ったことではないのではないか。

大手SPAブランドやセレクトショップの店頭接客や設置されているPOPでも同じだと感じる。

販促コンサルタントの藤村正宏さんのブログで売れるPOPの書き方がまとめられているのでご紹介したい。

売れるPOPの作り方、書き方
http://ameblo.jp/ex-ma11091520sukotto/entry-11457151329.html

効果のあるPOPの書き方は、その商品を買うとこんな「体験」がありますよ。
という視点で書くということです。

「こんな問題を解決します」
「こんなうれしいことがあります」
「こんな意味があります」
などなどです。

決して商品のスペック(性能や材質などのこと)を書いてはいけません。
これだと従来の視点です。
スペックというのは、例えば「シルク100%ブラウス」とか「2500ccエンジン搭載」とかいうことです。


とある。

だから「Tシャツ1900円」とか「ワンピース5900円」とかのみのPOPはほとんど効果がない。

店頭の接客でも同じで、
以前、筆者がベーシックなポロシャツを見ていたら「それ、鹿の子編みです」と声をかけてきた大手ブランドの店員がいた。
声をかけてくれたのはありがたいが、「鹿の子編みです」とのみ言われたところで、それで購買意欲をそそられるわけでもないし、それくらいの生地の名称はド素人の筆者にもわかる。

別のケースでは某セレクトショップでジーンズを見ていたら「それ、デニム生地なんです」とのみ声をかけてくれた店員もいた。デニム生地くらいは見ればわかる。
「クールマックス混で涼しいですよ」とか「特殊な織り方のデニムなのでソフトですよ」とかの説明がなければ、何の意味もない。

産地企業が販売で苦戦するのと、アパレルブランドの店頭売上高が伸びない原因は実は同根なのではないかという気がしてきた。