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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロもGAPもアバクロもファストファッションではない

2012年4月3日 未分類 0

 今月、アメリカンイーグルが原宿にオープンする。
それを見越して昨日のこのような記事が掲載された。

最後の大型ブランドが上陸 ファストファッション戦争再燃か
http://diamond.jp/articles/-/16873

まあ、いつ鎮火していたのかわからないのだが、

日本にファストファッションブームが巻き起こったのは2008年のこと。安くて多店舗展開するファストファッションといえば日本ではユニクロが有名だが、世界にはより巨大なファストファッションが存在する。その1つであるH&M(Hennes&Mauritz)が08年に東京・銀座に初出店し、09年には「1万円あればキュートな服からバッグ、靴までトータルコーディネートできる」を合言葉にしたフォーエバー21(FOREVER21)が原宿に進出。「黒船襲来」と称され、両店とも連日入店待ちの行列ができるほどの盛況となった。

とあり、このあとGAP、オールドネイビー、ZARA、アバクロと例が挙がってゆく。

しかし、ユニクロ、GAP、アバクロをファストファッションにまとめているところが、すでに間違っている。
おそらく記者は、これまで隆盛を極めてきたワールド、オンワード、ファイブフォックスなどの従来型日本ブランドではなく、ユニクロという新しいSPAブランド(企業自体は古くからあるが)や、GAPやH&M、フォーエバー21、ZARA、アバクロなど海外SPAブランドが進出めざましいことを伝えたいのだと推測する。

IMG_0052

しかし、これらを指して全部まとめて「ファストファッション」と言い切るのはあまりにも乱暴な定義である。
業界の先輩である剱英雄さんの言葉を借りるなら

ファストファッションとは「トレンドデザインに特化し、品質と開発期間を圧縮して、低価格と鮮度を実現したもの」である。

ということになる。
この定義に則ると、品質が悪くなく開発時間に時間がかかるユニクロはファストファッションではない。
またユニクロには劣るもののH&Mやフォーエバー21よりも品質が高く開発時間がかかるGAPもファストファッションではない。
さらに、過度なトレンドを追求せずに価格も高いアバクロもファストファッションではない。

ファストファッションの定義に則っているブランドは記事中ではH&Mとフォーエバー21くらいである。

今度上陸するアメリカンイーグルは低価格になるそうだが、トレンド追求型ではなくアメリカンカジュアル路線になるので、これも低価格SPAとは言えても「ファストファッション」とは言えないだろう。

経済誌、一般紙ともにこの手の間違いを良く犯して十把一絡げに「ファストファッションが隆盛を極める」と報道するのだが、正しくは「新興の国内低価格SPAブランドと、海外SPAブランドが隆盛を極めており、その海外SPAブランドの一角にファストファッションブランドがある」という位置づけになる。

さて、何故かダイヤモンドが期待するアメリカンイーグルだが、
展開前の予想としては、手放しでは楽観できないのではないかと個人的には考えている。
価格は記事の通りだと競争力はあるが、問題は国内店舗網を運営するのが紳士服大手チェーンの青山商事であるところである。

外部から人材を招き入れて今回は対応するのかもしれないが、過去に青山商事がカジュアル店舗で成功した試しがない。キャラジャは店舗数が激減しており、カジュアル業界では存在感は薄い。
自前のカジュアルブランドに懲りたのか、昨今ではリーバイスストアのフランチャイズ経営に乗り出し、今回はアメリカンイーグルを獲得したが、会社の根幹の風土というのはそう簡単に変わるものではない。
筆者はそこに危惧を感じている。

ただ、スーツ着用人口も減少しているし、スーパークールビズやウォームビズの奨励によって、さらにスーツは需要が減少している。
青山商事としては、カジュアル部門に活路を見出すしかないと思うので、その動きは理解できるが、果たしてスーツチェーン店にカジュアルショップのオペレーションが根付くのかどうか。
「ブランド力・ブランド知名度」だけではそう簡単ではあるまい。
それならとっくの昔にリーバイスストアは成功しているはずである。

アメリカンイーグルの動向はしばらく注視が必要だと考えている。

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