15年くらい前、インディーズデザイナーブームという小さなムーブメントがあった。
結局、大した花も咲かせずに終わってしまったのだが、そのころデビューした何人かのデザイナーさんとの付き合いがまだある。

デビュー当時、国内産地の生地メーカーに「生地を売ってください」と交渉しに行くと、「10反以下では売れない」「5反以下では売れない」と断られたそうだ。97年とか98年とかの頃である。
だいたい1反=50メートルの長さなので、10反というと500メートルである。
生地メーカーによっても違うのだが、「10反以下とか5反以下では売りたくない」と答える生地メーカーは多かった。

これは無理もないことで、かつて「ガチャマン(ガッチャマンではない)」と呼ばれた黄金時代、生地なんていうものは何万メートルでも売れた。その記憶があるため、「そんな500メートルとか、250メートル販売みたいチンケな商売はやってられない」というのが90年代後半の生地メーカーの偽らざる本音だろう。


その後、バブルもはじけたし、衣料品販売は不振だし、安価な海外生地が流入するし、で国内産地の生地販売量はみるみる縮小していった。
こうなると、国内産地の生地メーカーも小規模販売せざるを得ない。

昨今の各若手デザイナーがやたらと国内生地を使用できるようになったのもその恩恵だろうか。


しかし、国内でもいまだに「5反以下では販売できない」とのたまう産地企業もある。


小ロット販売を嫌う理由は、整経と呼ばれる作業に時間がかかるためだ。
早くても丸一日くらいはかかるし、長ければ数日かかる。

整経とはなんぞやというと、

整経は、必要な本数の経糸を、長さを揃えてビームに巻き付ける工程です。

ストライプ柄やチェック柄など、経糸に色の違う複数の糸を使う場合は、デザインどおりに経糸を配列する(「柄組み」をする)必要があります。


とある。
http://www.norikaiya.net/koutei-2-2-warping.html


これは自動化できない作業で、すべて手動で行われる。そのため時間がかかるというわけである。

だから5メートルだけ織ってくれなどといわれると「勘弁してくださいよ」ということになる。

しかし、在庫で積んでいる生地ならば5反だろうが3反だろうが販売すれば良いのである。1反での販売だって構わない。「何を寝ぼけたことをおっしゃっているんですか」と思う。


「シャネル」や「ルイ・ヴィトン」「プラダ」「グッチ」など数多くの欧米ラグジュアリ―ブランドへデニム生地を販売する岡山県井原市の世界的デニム生地メーカー、クロキは「在庫生地なら1反からでも販売する」という。生地料金が高くなっても構わないなら「1反以下でも販売する」という。


現在、自社売上高の半分が欧米向け輸出となっているクロキがこの小ロット対応である。


「商況が厳しい」「生地が売れない」という国内産地企業が多数ある。
そういうところに限って「うちは5反以下は売らない」などとおっしゃる比率が高い印象がある。

だからこそ御社の商況は厳しいのではないですかね?

後、何十年待ち続けても国内にかつての大量生産時代は戻って来ない。それだけは確実に言える。