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南充浩 オフィシャルブログ

物作り企業の独りよがり

2012年1月24日 未分類 0

 生地産地の仕事に携わっている。
自然と、物作りをする側の視点から見てしまうことが多い。

正月明けから一つのブログに注目している。

「ニットキッチン」元社長の奮闘記
起業から成功、そして倒産・・・。華やかなファッションビジネスの裏側、そこで経験した事や感じた事をお伝えしていきます。
http://ameblo.jp/knitkitchen/

更新は遅いが、とにかく内容が面白い。
アパレル業界のことを分かりやすく面白おかしく書かれておられる。
文章は筆者よりも御上手だ。
ニットキッチンというアパレルを経営しておられた方のブログで、起業から成功、倒産した経緯が書かれてあり、最近では再起してからの活動についても書かれてある。

さて、この方は単なるアパレルの経営者ではなく、坂本ニットというニット工場がご実家である。
いわば、生地産地のご出身でもある。
当然、産地の体質については、筆者以上に良くご存知である。

物作りをする産地企業はともすると「独りよがり」になる。
そのことについて書かれてある回をご紹介したい。
長文なので一部を引用させていただく。

http://ameblo.jp/knitkitchen/day-20110204.html

創業当初から、
「産地発信」「工場発信」的な動きをしてきており
ある程度の「結果」も出してきた (・・かのように外からは見える(^_^;))

(中略)

「地場産業を盛り上げたい!」「地域を活性化したい!」「自社をアピールしたい!」って気持ちは皆同じなので

よ~く分かるのですが、全てにおいて「独りよがり」と言うか「自己満足」としか

残念ですが、私には感じられないことが多いです。。(´д`lll)

例えば・・・

「この地域の(あるいは自社の)製品は、こんなにスゴい技術を持ってるんですよ!

素晴らしいでしょう!

コレを全国にアピールしようと、ビジネスにしようと考えてるんですよ( ̄▽+ ̄*)!」

「へ~スゴイんですね・・・(^-^)」

・・・以上。

言いたいことは分かるんですけど、

確かにスゴい技術だとも思うんですけど

でも、それって具体的にどの「マーケット」の「誰」に「ニーズ」があるんでしょう?

どんなに「素晴らしい商品」でも

どんなに「素晴らしい技術」でも

「需要」がなければただのゴミです(*^-^)b  ・・・(-“-;Aイイスギ

例えば・・・

ニット業界でもその昔「ホールガーメント」という画期的な製造方法(編み機)が開発され話題になった時期がありました。

簡単に言ってしまうと「縫い目がない(*^-^)b」

服がほぼ「完成形」の状態で編み機からニョロ~って出てきます。

(※ご興味のある方のみ「ホールガーメント」でググってみてくださいw)

当時は「スゴイでしょう!スゴイでしょう!:*:・( ̄∀ ̄)・:*:」って

鼻息もフンフン荒かったのですが、確かに縫い目がないので

着心地も多少は良いだろうし今までの手法では出来なかったデザインも

可能にはなるとは思うのですが、「ん・・??まてよ?( ̄_ ̄ i)」

お客様にとっては縫い目があろうが無かろうが

商品が可愛ければ → 買う

商品が可愛くなければ →買わない

もっと言っってしまえば「好きなブランドだから買う(^-^)/」

ぶっちゃけ

製造方法なんてどーだって良いわけですよ(*^-^)b

ホールガーメントだから → 買う

従来の製造法方だから → 買わない

なーんてマニアックなお客様はほとんどいません(*^-^)b

つまり、「小売(マーケット)」という土俵に上がった以上

「何が」お客様の「フック」になるのか

「どこに」お客様の「ニーズ」があるのか

そんなことを毎日毎日とことん研究しまくり

なんだったら

「ニーズ」を作っちゃえ!と

自らさまざまな「仕掛け」をしているその道のプロたちと

対等に渡り合わなくてはなりません。(*^-^)b

彼らはハンパじゃないですよ(*^-^)b

「我々は地方だからそこまで出来ない」

「モノが素晴らしいからお客に分かってもらえるはず」

そんな言い訳

全く通用しません。

なぜなら同じ土俵に上がった以上は

そんな言い訳お客様には全く関係ないからですね(*^-^)b

「欲しい!」と思えば買う。ただそれだけです。(^-^)

どんな素晴らしい商品でも「欲しい!」と思わせることが出来なければ負けです(*^-^)b

そこまでの覚悟があるのか問うと

ほとんどの場合「いや~そこまではちょっと・・・予算的に・・人員も・・f^_^;」

みたいな・・・

「浅いっ!(`Δ´)」

てか甘すぎです。 (私みたいな若輩者に言われたくないと思いますけど(^_^;))

素晴らしい技術なら

素晴らしい商品なら

何を「フック」にどうやって「ニーズ」に結びつけるのか?

自分たちだけでは無理なら

時には「メディア」の力や広告代理店の力を借りれば良い事だし、予算や人員がなくたって

やり方はいくらでもあります。

本気で覚悟があるならですけど(*^-^)b

狙いたいと考えているマーケットをただ外野から眺めているだけで

その中に入り込もうともしない人間にそのマーケットのことが本当に理解できるとは私には到底思えません。

(中略)

上から的な物言いがあったかもしれませんので先にお詫びしておきます(笑) m(_ _ )mゴメンナサイ

私も頑張りまっす!!!\(*`∧´)/

とのことである。
筆者自身もよく忘れがちになるのだが、この「独りよがり」が物作り企業には必ず多かれ少なかれある。
そして「いや~そこまでは予算的にも人員も」と言い訳する企業が数多くある。
中には「そんな活動せずに、じわじわと業界に知られるようになりたい」と、のたまう企業もある。
きっと50年かかっても無理だと思う。それまでにその企業が無くなっている確率の方が高い。

たまたま「ホールガーメント」のニットが例に挙げられたが、何でも同じである。
「スラブ糸を力織機で織り上げたデニムです」と言ったところで、「それがナニか?」となる。
それだから値段がこんなに高いです。という説明をしたところで、消費者は「じゃあ普通の織機を使って良いから3000円安くしてよ」ということになる。
物はジーンズだろうが、ドレスシャツだろうが、スーツだろうが、みな同じことである。

「今のアパレルは物作りがわかっとらん」と憤る製造業者は多い。
これは生地製造業だけではなく、縫製にも洗い加工にも整理加工にも共通している。
だから「自社で製品orブランドを作ったるで!!!!」と息巻く業者も中にはおられる。
しかし、成功するためには上で述べられていることも頭の片隅に置いておく必要がある。
常にマーケットばかりを意識していても「単なる売れ筋コピー」みたいな商品しかできない。かと言って物作りに没頭しすぎても「独りよがりな工芸品」が出来上がるだけである。

製造業者の立ち上げたオリジナルブランドがぜひ成功してほしいと願うからこそ、あえて、ニットキッチンさんの意見をご紹介した次第だ。

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