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南充浩 オフィシャルブログ

舵取りが難しいと感じるシルバー向け衣料品

2018年9月14日 考察 0

9月14日もブログは回復しなかったので、NOTEに書き込んだ。それをこちらに移す。
先日、シルバーミセス向けブランドの展示会にお邪魔した。10年近く前から展示会を拝見しているが、この層はメーカーも小売店(主に個店ブティック)は厳しいなあと感じられる。
10年前の顧客層は60代だったが、今はそのまま持ちあがって70代になっている。

通常、高齢者は若年層に比べて富裕だといわれるが、こと服に関してはあまり消費は活発ではない。とくに個店ブティックでの消費は伸びない。70代になると、「後何年生きられるかわからないから、そんなにたくさん買ってももったいない」「高い服を買ってももったいない」という心理になるようだ。これは当方も少しわかる気がして、現在48歳だが、48歳も50歳も同じようなものだと感じる。見知らぬ人に「50代ですか?」と尋ねられても、まあ、そんなもんだよなあとしか思わない。別にショックも受けない。初老のジジイであることは否定しようもないし、見た目も相応に老けている。40歳のころは、まだ若い気でいた部分もあるが、50歳になると「残りの人生の方が少ないなあ」と思う。
 
当方の父親は、たしか来年75歳になるはずだが(74歳も75歳も似たようなものだからはっきりと覚えていないwww)、めっきりヨボヨボしてきたと感じる。正直なところ90歳までは生きないだろうと見ている。となると、長くてあと10年くらい。50歳のオッサンになって思うことは10年なんてあっという間に過ぎるということである。40歳から48歳になるまではあっという間だった。このまま、あっという間に60歳になり、あっという間に70歳になるのだろうと思う。まあ、まだ25年くらいは服を着るので、興味の赴くままに買うだろうと思うが、すごく高額な物はもったいないなあと感じる。このまま、自分が70歳になったときを想像すると、あと5年か10年くらいしか生きないから、服を買うのは控えようと考えるだろうと思う。とくに高額な物は控えるだろう。
 
それでも靴下とか肌着とかタオルとか寝間着とかそういう消耗必需品は買い続けるが、嗜好品を買うことは恐らく控えめになるだろうし、今の70代、80代がそう考えているだろうことは想像に難くない。
 
「富裕なシルバー層を狙え」みたいな戦略が提案されることがあるが、こと洋服に関しては難しいのではないかと思う。過剰な高級物は不要だし、たくさんの数量も不要だ。しいて挙げれば「高機能性」が注目されるくらいだろうか。
 
嗜好的にも現在の70代と60代は断絶しているように感じる。60代は今の40代の延長線上みたいな服装をしているが、70代は我々が幼い頃に見ていた「おじいさん、おばあさん」らしい服装の人が多い。ちなみに当方の父親は40代のころは実に「オッサンらしい」服装をしていた。今の40代とはまったく違う。こうなると、高齢化によって人口は多いものの、70代以上向けの洋服と60代以下向けの洋服ではまったく異なるということになる。
 
あと10年すると、今の60代が70代になるから、そのときは「シルバー向け服」のテイストも大きく変わることになるだろう。逆に、現在70代以上をターゲットにしているシルバー向け服を扱うメーカーや個店ブティックはますます苦境に立たされるのではないかと思う。とくに個店ブティックは顧客と同年配のオーナーや店長が運営している場合が多く、70代までは稼働できていても、80歳になると一部の人を除いては体力的に稼働できなくなるから、廃業を余儀なくされるだろう。
 
戻ると、先の70代以上向けシルバーミセスブランドは、今のままでは10年後にビジネスとして立ち行かなくなるだろう。10年経つと今の70代は80代になり、ますます「服の消費意欲」は下がる。恐らく激減するだろう。廃業したくなければ、早急に新しいターゲットに向けた商品を開発せねばならないが、資金的にも人材的にもその余裕がない。あと10年か15年で廃業するという手段はあるが、もし、後継者にバトンタッチしたいのなら、今から新商材の開発を行う必要がある。無策のままで10年後にバトンタッチされたところで後継者には打つ手なしであり、迷惑でしかない。
 
逆にユニクロやらワークマンやらが、低価格高機能な老人向け服を開発するという選択肢はないのだろうか。それこそ「若年層よりも富裕」な高齢者需要を根こそぎ奪えるように思えるのだが。ちなみに平日にユニクロに行くと、推定60代以上の老人客が多いことに驚く。若年層も老人層も同じ店舗で買い物をするブランドなんてユニクロくらいではないだろうか。「ちょい悪オヤジの」なんてブランドは、勘違いジジイは買い物をしているが、若年層は買い物をしない。入店すらしない。逆に若者に人気のブランドでオッサンやジジイは買い物をしない。
 
そういう意味では若者から年寄りまで買い物をするユニクロは稀有な存在だといえる。
 
それにしても、残り人生の方が短くなると、「死ぬときは痛いのかな、苦しいのかな」という意味では死に対する恐怖は少しあるが、終わりが見え始めた安堵感もある。長生きしたいと願うほどにこの世は楽しいとも思わないし、やりたいことがあるわけでもない。むしろ、めんどくさいこと、嫌なことの方が多いから、長生きせずに適当な年齢でコロリと逝くのが幸せだと思っている。「めっちゃ長生きしたい」と言っている人にときどきお会いするが、どれほどリア充なのだろうと訝しく思う。バツイチでカネのない非リア充な初老のジジイたる自分は、できれば75歳くらいでこの世とおさらばできれば理想的ではないかと思っている。
 
 

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