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南充浩 オフィシャルブログ

産地企業は減るべくして減っているともいえる

2018年9月13日 ファッションテック 0

ブログはまだ復旧できなくて、iPhoneからも見れなくなっているので、今日もこちらでアップする。
これだけインターネットが普及し、インターネット通販が注目されると、これまで情報発信や直販に及び腰だった製造加工業者も俄然、興味を示し始める。いわゆる産地企業である。そしてその産地のオッサン・オバハンも大概はiPhoneかアンドロイドスマホを所有している。「ワシ、Eメールできませんねん」という推定70代のじいちゃんはなぜか、スマホを持っている。そのスマホは何に使っているのだろうか?
 
いうまでもなく、これまでメディア任せだった情報発信がインターネットを使えば自社で可能になる。そしてSNSの普及がそれをさらに後押ししており、上手くやれば、無名のブランドで一気に知名度を拡大することができる。その一方で、ネット上での知名度が高いからと言って必ず売上高が大きいとは限らない。あるブランドは、創業者の知名度の高さにもかかわらず、年商規模が1億円に満たない。ある意味で、東京コレクション出展ブランドが知名度が高い割に、売上高が極端に低いことに似ている。逆説的にいえば、あのネット上の知名度の高さで年商が1億円未満なら、ネットの知名度が低いブランドの年商はどれほど低いのかということにもなる。
 
 
実店舗と同じく、ネットでも「ブランド始めました」とか「単に並べました」だけでは売れない時代になっているといえる。その昔、携帯通販で一躍知名度を高めた夢展望は先行者利益を獲得できたからだろう。
 
とりあえず、インターネットは活用しなくてはならないと思い始めた産地企業だが、その多くは実際に乗り出すことには及び腰である。インターネットを使った情報発信も通販も、これだけ多数の先行者があると、即効性はない。有名ブランドならまだしも、産地企業がオリジナル開発した無名ブランドなんてネット上での効果は遅効性しかない。地道に積み重ねて徐々に浮上するほか手はない。

 
 
先日、ある産地企業からネットを使いたいと相談があった。すでに何年も前に紙芝居みたいなホームページだけは作ってあるが、そこからの更新はない。しかし、近年、卸先のアパレルや個店が苦戦しているために、売上高が低下している。OEM生産も相手先が弱っていて、減少している。売上高を少しでも回復させるためにはインターネットを使った直販をするしかないということだった。
 
しかし、2005年当時なら無料ビルダーで組んだホームページだってそれなりに効力を発揮できたが、2018年現在ではそんなホームページなんて何の役にも立たない。ネット通販するにしても顧客がゼロなわけだから、ブログも含めたSNSで拡散しながら消費者を自社サイトに呼び込まねばならない。
 
これがユニクロとかコム・デ・ギャルソンとかそんな有名ブランドならまだしも無名の産地企業だから、SNSを熱心に今からやり始めたとしても、効果が出るまでには1年や2年は最低でもかかる。サイトだって最高級である必要はないが、それなりに見映えのするもの、利便性の高いものを構築する必要がある。となると、タダでは無理だ。
 
ウェブ業者の見積もりなんてピンからキリまであるが、それでも最低でも10万円や20万円はかかる。某アパレルメーカーに広告代理店と組んでウェブ製作を提案してきた会社の出し値は1600万円だったがこれは明らかにボッタくり価格である。まあ、こういうボッタくり業者も中にはいるから気を付けた方がいい。
 
で、具体的な料金の話になると「既存ビジネスの衰退で、10万円単位のカネがない」と言い始めた。その苦境は察するが、例えば20万~30万円程度のカネもないというのはどうだろうか。何年か前に一応の自社ブランドは作っており、それなりの取引先もあるが、そのブランドも卸先が弱っているため、失速している。しかし、毎シーズン展示会を行っているから、展示会用サンプル製作費や会場の借り賃、旅費などを合わせると、1年間で数百万円は使っているだろうと推測される。
 
20万~30万円の費用がないというのはどうだろか。
 
これまで、ある程度の産地企業と付き合ってきたが、産地企業経営者は「投資」というと、物を作るか、機械設備になら、割合に気前よく支払う。「カネないんですよ」というオッサンが何百万円の機械を「思ったより安かったから」という理由でポンポン購入することは珍しくない。しかし、情報発信だとかウェブ構築だとかになると月々に数万円のカネさえケチる。これが若い人なら、衝撃を受ければ考え方が変わる可能性があるが、40代、50代、60代になっていれば、その考え方は固定化されており、今更変えることは不可能である。
 
体感的には、産地企業の8割~9割がこれである。だから産地企業はいつまで経っても浮上できない。他方、年商規模は別として小規模ながらウェブを上手く活用して知名度を高める物作りブランドもある。そしてその差は広がるばかりだ。
もちろん、インターネットへの投資が必ずしも正解ではない。逆に実店舗を作るというのも一つの手段としてはありだ。逆張りで雑誌広告に力を入れるというのも一つの手段だ。
しかし、「商品作り」と「機械設備」以外の投資に目を向けないことにはますます苦境に陥るだけである。とはいえ、今更、年配経営者の価値観は変えられないから、そういう産地企業はますます淘汰される。
製造加工業を助けようとか、日本の国内生産比率ガーとか言うのは自由だが、製造加工業自身の認識が変わらないことにはどうしようもない。こちらはボランティアで参加するわけにはいかないし、ウェブ業者にボランティア参加を要請するわけにはいかない。国内の製造加工業者は減るべくして減っているというのが実情ではないのか。
 
 
 

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