9月18日、知人に誘われて大阪のファッションイベント「大阪スタイリングエキスポ」に行った。

知らない方のために、少し解説すると、
大阪を拠点とするデザイナーズブランドを発信する「大阪コレクション」が2004年に終了し、
2006年から消費者参加型を志向したイベント「大阪ライフスタイルコレクション」が始まった。
しかし、これが一回で休止となり、2007年からは同じタイトルで専門学校対抗のファッションコンクールとなった。

はっきり言うとこの専門学校対抗のファッションコンクールは緊急避難的措置として、お茶を濁した内容だったにも関わらず、2009年まで無為無策のまま3年間も続いた。
2010年から再びリニューアルし、「大阪スタイリングエキスポ」と名前を変えた。
今回はその2年目である。


昨年とほぼ同じ内容であったため、特別な感想はない。
「ふーん」と言ってしまえば終わる。

さて、このイベント中に使われた言葉に「大阪らしいファッションの発信」とある。大阪スタイリングエキスポに関わらず過去のイベントすべてで使われていた共通の言葉である。
しかし、「大阪らしいファッション」って何だ?
これがきっちりと定義できていないと、今後もこのファッションイベントは迷走を続けることになる。
主催者側はそんなことは気にしていないと思うが。

大阪のファッションイベントはすべからく「大阪らしいファッション」というキーワードをブチ上げたがる。
しかし、「大阪らしいファッション」とは何か?明確な答えを出せたイベントは不幸にしていまだに拝見していない。


今日は「大阪らしいファッション」について考えてみたい。
「大阪らしいファッション」と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、
大阪のおばちゃん愛用のアニマル柄のトップスであろう。
単なる豹柄や虎柄ではなく、豹や虎のリアルな顔がデカデカとプリントされたものである。
そこに黒いスパッツを穿き、ヘンテコリンなパーマヘアに紫色のメッシュで着色する。


だいだいこんな感じだろうか。
ならば、この大阪のおばちゃんルックを発信すべきか?
だが、そこには何となくためらいがある。ちっともカッコヨクない。

そこで、大阪が拠点となって、全国に発信できたファッションを思い返してみる。ここには過去の事例も含みたい。

個人的にはジーンズカジュアルを挙げたい。
良く知られているエヴィスは大阪で創業され、今でも市内に多数の店舗を構えている。
登記上の本社は奈良県だが、大阪と見なしてもあまり差支えないだろう。
また、ステュディオ・ダ・ルチザンは正真正銘大阪拠点である。
フルカウント、ウェアハウス、RNAも大阪を拠点としている。
ややマニアックだが、サムライジーンズも大阪が拠点である。

近年、低価格カジュアルSPAとして進捗著しいウィゴーも大阪が創業の地であり、東京に移転したが、つい先日まで本社がアメリカ村にあった。
パルグループの「チャオパニック」も一端に加えても良いかもしれない。

ジーンズカジュアル分野においては、大阪は現在もある程度の発信力を持っている。
70年代・80年代は今よりももっと絶大な発信力があったというし、90年代でも今以上のトレンド発信があった。


他のジャンルではどうだろうか?
思いつくのはメンズスーツアパレルである。
大阪には谷町筋という南北に走る大通りがある。
その谷町4丁目付近に、以前は大手のメンズスーツアパレル各社が本社を構えていた。
トレンザ、メルボ紳士服、ジョイックスコーポレーション、大賀、ロンナーなどなど。
以前は、大阪で「谷町筋」と言えば「メンズスーツの街」というイメージがあった。

今は各社が本社を移転してしまい、ジョイックスコーポレーションとロンナーが登記上の本社を残すのみとなっている。

「谷町筋復興キャンペーン」みたいなことも打ち出せないではないと思うが、ちょっと実状にはそぐわなくなりすぎたのかもしれない。


もうひとつ。以前に神戸ファッションマートのスタッフの方からこんなことを聞いた。
「神戸でデザイナーブランドを集めようとした場合、意外に服を扱っているブランドが少ない。バッグ、靴、アクセサリーが多い。その点、大阪は、まだ服を扱っているデザイナーが多い」という。

もちろん、東京には遠く及ばないが、大阪はいまだに個人デザイナーによるデザイナーブランドがある程度集積している。繊維産業華やかなりし頃の余韻だろうか。

かつての大阪の利点は、繊維の製造場所が近いということにあった。
合繊メーカーと紡績の本社が大阪市内にある。
また、京都、和歌山、滋賀、泉南、西脇、福井、奈良などの各繊維産地が大阪を中心にほぼ同心円状に等距離で存在している。
ウールの尾州やデニムの岡山・福山も新幹線で1時間圏内である。
タオルの今治が遠いが、それでも東京に比べると近い。

浜松と桐生、足利、新潟あたりが遠く離れているだけである。

大阪という土地はかつては衣料の製造に非常に適した土地だった。
これだけ寂れてしまったにも関わらず、いまだにデザイナーズブランドが一定数量以上存在するのは、この影響があるのかもしれない。


とすると、「大阪らしいファッション」というお題でファッションイベントを考えたときに、
デザイナーズブランドとジーンズカジュアル、この2本立てで行くのがもっとも大阪の伝統に沿ったものではないかと思う。

無理やりに「スタイリスト」にスポットを当ててみたり、お茶を濁す形で「学生コンテスト」を開催するよりもよほど実状に適っているのではないだろうか。