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南充浩 オフィシャルブログ

正統性がないリクルートスーツ

2011年12月6日 未分類 0

 もともとリクルートスーツには違和感を持っていた。
20年近く前に就職活動をしていたとき、薄いモスグリーンのスーツを着ていた。
当時の男子学生も紺が主流だったが、思い返してみるとチャコールグレーやミドルグレーなどの着用者もチラホラ見かけたように思う。
また無地だけでなく、極細のストライプや織り柄のシャドーストライプ着用者もいたと思う。

まるで人民服のように紺色のスーツと白いワイシャツに規定されたのは、いつ頃からなのだろうか?

さて、そんな奇妙極まりないシューカツルックなのだが、
先日、マイナビの広告があまりにも気持ち悪いことが話題となった。

こんな日本に誰がした? シューカツ生は「クローン人間」か
http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20111201/JCast_114905.html?_p=1

駅に貼られたあるポスターの写真がネット上に投稿され、そこに並んだ就活生の画一的な姿に酷評が集まっている。このポスターは、日本最大級の就活情報サイト「マイナビ2013」のもの。新聞広告のほか、渋谷、恵比寿、青山一丁目、目白、高田馬場など都内の地下鉄の駅などに貼られている。

黒っぽいスーツに白いワイシャツやブラウスを着て、髪をきれいに整えた無表情の男女が、右手であごをつかんだポーズを取っている。添えられているのは「考えるすべての就活生に。」というコピーだ。

「そんな人生がお望みですか?」の呼びかけも
例年より2か月遅れで「解禁」される就活サイトをPRするポスターのようだ。被写体の若者たちは、いちおう「考える就活生」のポーズを取らされているのだが、あまりに同じような姿なので、逆に何も考えずに従っているだけのようにも見える。

この記事にはおおむね賛成である。
なぜなら、現在の紺色スーツに白いワイシャツという制服のようなリクルートルックには、なんら正統性がないからである。

まず、スーツ着用者の大好きなフレーズ「欧米では」という視点から考えてみる。
「欧米では」スタンダードなスーツの色は無地グレーである。
とくにチャコールグレー無地が万能で、冠婚葬祭にも使用可能だ。
グレーの色合いが薄くなるごとにカジュアルになり、ライトグレーはかなりカジュアルな印象となる。

ネイビーは銀行のマネージャークラスが少し緊張する会議やミーティングで着用すると言われている。

こう考えると、リクルートスーツは紺よりもチャコールグレーからミドルグレーの無地が最適であろう。
日本人の肌色と合わせると、ネイビーが映えるからという意見があるが、筆者はその意見は後付けではないかと疑っている。

紺色のリクルートスーツは、略礼服と同じくらい欧米標準ではない。いわば日本独特の奇妙奇天烈なスタイルである。

またシャツにしても、なぜ「白無地」で統一なのだろうか?
それこそ「欧米では」ビジネスマンは、薄いブルーシャツを着用している場合が多い。
総柄シャツに抵抗があるなら、襟とカフスだけが白いクレリックシャツを着用するのもビジネスマンらしくて良い。

少し脇道にそれるが、日本でカラーシャツが市民権を得たのは90年代後半である。
それまでは白無地が主流だった。
筆者も繊維ニュースに入社した当時、執拗に白無地シャツを着ろと言われたことがあるが、最後まで実行しなかった。

97年当時、企業のお偉いさんが「白無地シャツ」にこだわっていた理由の一つに、
「急なお通夜や葬儀が飛び込んできても大丈夫なように」というものがあった。
これを聞いたときには、笑いをこらえるのに大変だった。
「いつ亡くなるかもわからない誰かのために、毎日を白シャツで過ごせ」というのは、あまりにもナンセンスではないか。

次に、人事担当者が「同じような学生ばかり集まる」という嘆きが的外れである。
同じような学生ばかりが貴社に入社するのは、貴社が同じような学生ばかり採用しているからにほかならない。
紺のリクルートスーツに白いシャツ、くすんだボルドー系のネクタイの学生を良しとしているからだろう。
「違ったタイプの学生」を採用したければ、耳にピアスとまでは言わないが、リクルートスーツを着ていない学生を積極的に採用すれば、集まる人材はかなり多彩になるのではないだろうか。

企業は、ライトグレーやベージュのスーツに薄いブルーシャツやクレリックシャツを着用した学生を積極的に採用してみたらどうか?

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