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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店が夏のバーゲンを2回に分けても売れ行きが伸びなかったのは当然

2018年9月4日 企業研究 0

世の中には、関係者や業界人からすると「これだけ変えたのは画期的だ」と思っていても、一般消費者から見れば「何が変わったのかさっぱりわからない」という事例がたくさんある。
そういう場合、えてして、関係者や業界人の期待はあっさりと裏切られてしまう。
今夏、百貨店が実施したバーゲンセールを2回にわけるというのも、一般消費者から見ると、何が変わったのかさっぱりわからない事例といえる。
「衝撃」とか「画期的」とか言ってるのは関係者か業界人くらいだろう。
楽屋ウケしかしない下手なネタみたいに見える。
そういう点では、ダイヤモンドオンラインに掲載されたこの記事が一般消費者の目線にある程度合致しているといえる。
百貨店、今夏は6月・7月の2回セール開催も不発の裏事情
https://diamond.jp/articles/-/178878

「1回目のセールは豪雨、2回目は台風で効果が吹き飛んでしまった」──。ある百貨店業界関係者はこう振り返る。今夏はアパレル業界からの要請で、百貨店のクリアランスセールはスタート時期を6月と7月の各下旬に分散し、2回に分けて開催された。2回目の期間は、第4金曜日の「プレミアムフライデー」にかこつけたものだ。
 だが、日本百貨店協会が8月21日に発表した7月の全国百貨店売上高は、前年同月比6.1%のマイナス。冒頭の発言のように、2回の開催時期とも悪天候が直撃、さらに異例の猛暑もあって来店客が減った。加えて、例年は7月1日であるセールの開始日を6月末としたことで、セールの売り上げの一部が6月に算入されたことも影響したとしている。内訳を見ると、化粧品は好調だったが、主力の衣料品が1割強減少した。

とのことで、各百貨店の発表を見ても、すごく悪かったわけではないが、特筆するほど好調だったというわけでもない。
近年、夏のバーゲンセールはあまり盛り上がらない。
バブル期のDCブームのころは高校生・大学生の夏休みシーズンと重なったことで大いに盛り上がった記憶がある(当方もその頃、高校生から大学生だった)が、バブル崩壊以降、とくに2000年以降はそれほど盛り上がっていない。
正月と重なる冬のバーゲンはなんやかんやと言われつつもそれなりに盛り上がる。
その冬のバーゲンと比べれば夏のバーゲンは盛り上がらない要素が満載である。
1、夏服は定価自体が安いから、それほどバーゲンが待ち遠しくない
2、7月には正月のような大型連休がないから、人出は散発的になる
3、夏のボーナスは冬のボーナスに比べて少額
大きくはこの三つではないかと思う。
夏服は軽衣料がほとんどで、高いブランドでも定価は安めである。
Tシャツ、ポロシャツ、半袖シャツ、ノースリーブ、タンクトップ、半袖またはノースリーブワンピース、ショートパンツなどが主要商材で、これらの価格は秋冬物に比べると安い。
少量を買いたい人にとってはわざわざバーゲン開始まで待たなくても良い。
もちろん当方はその夏服だって値下げされてから買うのだが。(笑)
次に日程だが、6月末の金曜日とか7月頭の金曜日開始が多いが、正月に比べると、単なる平日にすぎず、多くの人出は期待できない。
土曜日開催にしても数ある土曜日の一つに過ぎず、正月の賑わいには遠く及ばない。
おまけにその時期はボーナスが支給されていない会社の方が多いので、そこまで消費意欲もない。
支給されていたとしても夏のボーナスは冬のボーナスよりも少額な会社が多いから、やっぱり正月ほどの大盤振る舞いはできない。
セールを2回に分けようが、あまり消費意欲は変わらない。
当方がサラリーマンだったとしても変わらないだろう。
「画期的」とか「大変革」なんて感じているのは関係者と業界人だけである。
そして何より、この2回セールがちっとも響かないのは2回にわける必要がまるでないからだ。
例年の百貨店のバーゲンの風景を見てみようか。
6月末か7月頭にバーゲンが始まる。
2週間くらいはそれが続くが、売れ残った商品はその後もさらに値下げされて売り続けられる。
だいたい秋物が本格的に立ち上がる8月21日(アパレルの風習はなぜか21日立ち上がりが多い。秋物は8月21日、防寒アウターは10月21日、春物は2月21日立ち上がりがほとんど)まで、さらに値下げされてダラダラと売り続けられる。
別にセールを2回に分ける必要性は消費者視点ではまるでない。
いつもなら7月頭から8月20日まで1か月半に渡ってバーゲンセールが続く。
これは冬のバーゲンも同じだ。
1月の成人の日以降もダラダラと2月20日までバーゲンセールが続く。
百貨店というかアパレルはまたぞろ冬の2回セールを目論んでいるとダイヤモンドの記事には書かれているが、別に2回に分けずとも例年通りなら2月下旬までセール品が残っているから、なんの意味もない。業界の自己満足に過ぎない。
アパレル業界人も百貨店業界人もいまだにバブル期の幻覚から覚めないようだが、バブル期ならバーゲン開始から10日ほどで目ぼしい商品はほぼ売り切れた。
50%オフ、70%オフ、70%オフでさらにレジにて30%オフなんてやる必要もなく、最初の2割引きか3割引きでほぼ、人気商品は完売したのである。売れ残るのはわずかな人気品。
その不人気品は正月の福袋か何かに詰めて叩き売れば在庫処理はほぼ完了。
これがバブル期の売れ方だが、この売れ方でなければ、セールを2回に分ける意味は消費者にとってはゼロに等しい。
まったくの業界の都合でしかない。

また例年、値下げした夏物はセール期間終了後も値下げしたままで売られ続けており、いわばセール期間の後も“セール”は続いている状態だった。従って「今年はセールを2回開催したというより、プレミアムフライデーの時期に再度セールをPRしただけ」(別の百貨店業界関係者)との見方もある。

この一文が近年の消費者動向と売り場の動向を物語っている。
この理屈がわからないアパレル関係者が多すぎる。

にもかかわらず、「夏は不発だったセール2回開催を、冬にも実施するとのうわさがすでに飛び交っている」(前出の関係者)。セール依存体質が抜けないアパレルと、定価販売を目指しながらも結局は従来型のアパレルの提案に追従した百貨店の姿勢が、あらためて浮き彫りになった夏だった。

と締めくくられており、冬のバーゲンも上述の通り、2回に分ける意味はまったくないから、やったところでこけるだけである。
ダイヤモンドは百貨店がアパレルに追随したことを呆れているようだが、それは無理からぬことで、百貨店は小売業でありメーカーよりも強い立場にあるとはいえ、自主企画商品がほとんどない。
そのため、メーカーから商品の供給がなくなれば究極的には困る立場にある。
だからメーカーの要望を飲まざるを得ないということになる。なにせ、最悪の場合、売る物がなくなる可能性がある。
しかもこれまで商品供給はメーカーに委託販売の負担を強いてきたわけだから、百貨店が一方的に自社の要望を押し付けるわけにはいかない。
結局、百貨店は委託販売も改革しなかったし、自社企画商品開発も完遂できなかった。
そのツケでアパレルメーカーの要望に従わざるを得ないのである。
それは百貨店の自業自得としか言いようがない。

有料NOTE記事を更新しました~♪
ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n0200a63add2e

今、読むと物悲しさしかない本をどうぞ

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