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南充浩 オフィシャルブログ

無名ブランドは価格設定をもっと考えるべき ~高い無名ブランドより安い著名ブランドの方が売れる~

2018年8月29日 企業研究 0

商品の値段を決めるということは販売において極めて重要であることは周知のとおりだ。
それにもかかわらず、衣料品業界では製造原価の積み上げ方式で単純に販売価格を決めるブランドが多い。
いわゆる衣料品ブランドもそうだが、製造加工業が自社オリジナルブランドを立ち上げた場合、その考え方が顕著になる。
だから、なんかモサっとしたデザインなのに、産地ブランドや製造加工業のオリジナルブランドはむやみに高くなる。
どこぞの嘘っぱちなキャッチコピーみたいな「原価率50%」というわけではなく、本当に原価が高いのだから仕方がなく、製造業側から見ると極めて当然だともいえる。
その一方で、「そのモサっとしたデザインで、しかも無名ブランドの商品にその値段を貴方なら出しますか?」という疑問が常につきまとう。販売面から見ると極めて売りにくい価格設定だといえる。
これは本当に衣料品業界のあちこちで見かける。
例えば、ジーンズメイトである。
ジーンズメイトは昨年秋冬から新自社ブランド「メイト」を立ち上げた。
大々的に報道されたものの店頭で見ている限りは、それほどの数量は初めから入荷していないし、店頭での売れ行きもそれほど大したことがないように見える。
そもそも店頭では極めて「メイト」の展開されている場所が見えにくい。先行自社ブランド「ブルースタンダード」の方がずっとわかりやすく「島」として陳列されている。
店頭での存在感は見ている限りにおいて極めて薄い。
で、この「メイト」の売りはなんと言ってもジーンズなのだが、売れ行きが不調だったのか、今年の夏から大幅に値下げされた。
新価格(ユニクロかよ)で3800円である。
店頭入荷時の価格は5800円だった。売り場のPOPにもそう書いてある。

新価格3800円


2000円値下げされたというわけだ。
昨年秋冬のジーンズの定価は5990~6990円だった。
大々的に報道され、そのあと売り場にも見に行ったが、率直な感想は「高いな」だった。
ユニクロのジーンズの定価は3990円である。
ユニクロよりも2000~3000円高くて売れるのかなあと疑問だったが、それ以上にジーンズメイトは自店内に強力なライバルジーンズがある。それはリーバイスやエドウインの型落ち商品が40~50%オフで常時売られているからである。
ずっと売れ残っているだけといえなくもないが、それでもときどきラインナップが変わっているから、完全に滞留し続けているわけでもないだろう。
とくに1万円未満(6500~9000円)のリーバイス、エドウインの型落ち割引商品だと、だいたい4000~4500円くらいになる。
で、それより高い無名の「メイト」なんてブランドをわざわざ選ぶ人が一体どれほど存在するのか?
当方なら間違いなく、「メイト」のジーンズを買うくらいならリーバイスかエドウインの型落ち商品を4000円くらいで買う。
生地だとか縫製仕様だとかそういうクオリティがどうのこうのではない。
得体のしれない新ブランドより、それなりに評価されている有名ブランドの方が安ければ、多くの人はそちらを買う。
「メイト」のジーンズが売れにくく、値下げを余儀なくされた理由は、ユニクロとの競合というよりも、自店内にあるリーバイスやエドウインの型落ち値下げ商品との競争に敗れたからではないかと思う。
新価格ならメイトの方が何百円か安いから、そちらを買う人だってもう少し増えるだろう。
これと同じ誤りを多くのブランドは製造加工業のオリジナルブランドも含めておかしている。
お気づきだろうか?
有名ブランドと同等ならまだしも、有名ブランドより高い価格設定にした場合、よほどの説得力が必要になる。
何でわざわざ無名の高いブランドを買う必要があるのかということを説得しなければ絶対に売れない。
もちろん、今の有名ブランドだって、初めは無名ブランドだったわけだが、何年~何十年やっている間に「ブランド」だと認知されたわけである。ということは、無名ブランドは先にそういう「認知させる取り組み」を行わなくてはならない。
ときどき、といっても、向こうがお忙しいので、セメントプロデュースデザインの金谷勉社長と雑談をする。
そのときにいつも感心するのが、「ギリギリの販売価格を決める」ところである。
地場産業の商品開発なんかを手掛けるから、通常だと、繊維の製造加工業者のように「オッサンが手作業でナンタラしたから5万円」みたいなバカ高い価格設定をしたがる。
そういえば、某新興ブランドが5万円のパジャマとか15万円のバスローブを発表してて「絶対買わねえ」と思ったことを思い出した。
売り文句が「世界のラグジュアリーブランドと同じ生地、同じ製法で作って、値段はその何分の1」というものだったが、同じ生地・同じ製法でも「ブランドステイタス」がまるで違う。一体この人たちは何を言ってるのだろうと不思議でならない。しかも多くの人がもっともカネをかけない寝間着である。よほどの特別な仕掛けがない限りはまるっきり売れないだろう。
で、例えば、セメントプロデュースが手掛けたニットの透かし彫りの陶器の茶碗だが、税込み2160円である。

高いといえば高い。300円くらいで陶器のコップなんか売られている。
しかし、高すぎることはない。普通に働いていたら、半年に1回くらいは買える値段である。
ニット模様の柄を彫り込む手間だとか「匠の技ww」だとかそういうことをいえば、通常ならもっと高い価格を設定したくなる。
ところが金谷社長はそうしない。
「大量生産品ほど安くはできないが、そんな馬鹿高い値段を付けて無名ブランドの茶碗を買いますか?」
というスタンスで高すぎないが安すぎることもないギリギリの値段をいつも設定する。
衣料品ブランドの価格設定もそういう考え方が必要なのではないだろうか。

有料NOTE記事を更新しました~♪
ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n0200a63add2e

そんな金谷社長の書いた本をどうぞ~

あとニット模様の湯飲みもどうぞ~

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