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南充浩 オフィシャルブログ

ジャパンジーンズに過度の「神格化」「高級化」は不要

2011年11月18日 未分類 0

 生地・製品・加工ともに衣料品の中で比較的国産比率が高いのがジーンズだろうと思う。
そのため、日本製をアピールした「ジャパンデニム」「メイドインジャパンジーンズ」という打ち出しが業界全体として盛んだ。
そして、日本人の性として「ジャパンデニム」のイメージを「匠」の世界へ高めようとする取り組みを多く見かける。

厳密にいえば、国産品と言っても中国人研修生を多く受け入れている工場もある。もちろんそうでない工場もある。
しかし、個人的にはジャパンデニムという打ち出しは大枠は賛成である。

だが一方で、「匠」の世界に結びつける姿勢には疑問を感じる。
縫製にしろ、洗い加工にしろ、織布にしろ、「流石は」と唸らされるような職人技にお目にかかることはある。それでもそれらを「匠」として扱うことにはいささかためらいがある。
おそらくこれは、個人的な語感の問題だろう。
「匠」=高額な伝統工芸品と感じてしまう。
これはあくまでも個人的な感覚なので必ずしも正しいとは言えないのかもしれない。

一口に日本製ジーンズと言ってもさまざまなブランドからさまざまな価格帯で発売されている。

フックが展開する「倉敷ジーンズ」は4900円から、
ユニクロの「メイドインジャパンジーンズ」はワンウォッシュが5990円、
ライトオンのPB「バックナンバー」のジャパンジーンズは7900円、
エドウィンの日本製ジーンズはだいたい9800円~15000円くらい、
エヴィスジーンズだと19000円~29000円くらいだろう、
京都デニムだと25000円~30000円台半ばくらい、
プラダのジャパンジーンズは10万円、

という具合である。
これはいずれも生地製造・縫製・洗い加工のすべてが日本の工場で行われている商品である。

「匠」と言った場合はどこに焦点を合わせるのだろうか。
まさかプラダの10万円のジーンズではあるまい。
これだとまさに限られた人々だけが楽しむ伝統工芸品の世界である。
世界ブランドのプラダだから、各国での売上本数はそれほど多くなくても、全世界での販売枚数を合わせるとそこそこのロットになる。これが、単一国での販売枚数で考えるとそれほど大きなロットにならない。

じゃあ、エヴィスジーンズくらいを目標にすべきだろうか。
それもなにか違うような気がする。

広く消費者に利用してもらうためには、7900~15000円くらいの間の価格帯が適正ではないのかと思う。
別にエドウィンやバックナンバーの肩を持ちたいわけではない。
4900円でも5990円でも構わないと思う。
一般大衆は4900~15000円の間でないと、なかなか手を出せない。

そうすると、この価格帯で製造するためには、いわゆる工業製品的な取り組みが必要になる。
やはりある程度の製造枚数がないと1枚当たりの製造コストが抑えられない。機械化できる部分は機械化しなくてはならない。
個人的に抱く「匠」というイメージからはどんどん離れることになる。

筆者は何より「3万円以上するのがジャパンジーンズだ」というイメージが消費者に定着することを恐れる。
1900円くらいでジャパンジーンズが製造できるとは思ってもらいたくないが、かといって「超高額品で、趣味の人が手に入れる物」というイメージも持ってもらいたくないのである。そういうイメージが固定化することは逆にジャパンジーンズにとって危機的だと感じる。

ジャパンジーンズが今後も息長く、消費者に利用してもらうためには、「ちょっとだけ奮発すれば誰でも買える商品」という立ち位置が必要なのではないかと思う。

今回は価格面での話に終始するが、
ジャパンジーンズを過度に「高級化」「神格化」することは返って、ジャパンジーンズの市場寿命を縮めるものだと思う。

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