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南充浩 オフィシャルブログ

フルオーダーとイージーオーダーとパターンオーダーの違いを改めてまとめてみた

2018年7月24日 ネット通販 1

もう様々な方が書いておられるので、繰り返しとなるが、パターンオーダーとイージーオーダーとフルオーダーはまったく別物である。
ちょっとググれば山ほどその違いについて述べておられるブログがあるが、それでもこのブログしか読んでいないという珍しい人も何人かはおられるだろうから、くどいとは思うが改めてまとめてみる。

1、パターンオーダー

あらかじめ決められたパターンをサイズに合わせて微修正するやり方。
各部を採寸後、「ゲージ服」と呼ばれる基準服を着てその差異を修正する。
スーツだと、このパターンオーダーの場合は、ゲージ服をどういう形にするのかが、けっこう大きなウェイトを占めているのではないかと思う。なぜなら、そのゲージ服のパターンを修正するわけだから、それがどういうシルエットなのか、どういうパターン(型紙)なのかで仕上がりの形が変わる。
比較的低価格でできる。平均価格は2万~4万円。

2、イージーオーダー

これはパターンオーダーよりも高額になるが、フルオーダーよりは安い。
各部を採寸後、自分と似た体型の人のパターンを修正するというもの。
基準が決められているイージーオーダーよりも自分の体型に合いやすい。

3、フルオーダー

これは各部を採寸後、その数値を基に、一から型紙を作るというオーダー。
すごく高額になって最低でも20万~30万円はする。
パターンを一から起こすのがどれほどの技術が要るのかは、洋服業界の人でもあまり理解していないが、かなり高等な技術を要する。
通りいっぺんの型紙なら少し勉強すれば引けるらしいが、シルエットの美しさと動きやすさを兼ね備えたパターンを引くには相当の知識と技能が必要となる。
また何をどう重視するのかでパターンは変わってくる(らしい)。
動きやすさを重視するのかシルエットの美しさを重視するのか、シワがよりにくいのを重視するのかでそれぞれパターンが異なる。
まあ、門外漢が知っているのはこの辺りまでである。
だから、パターンオーダーとイージーオーダーとフルオーダーは厳密に使い分けられるべきなのだが、業界の人もこの違いを知らない人が結構いるし、最近注目が高いファッションテック系の人間はほとんど理解していない。
その代表例がZOZOだろう。
販促のテクニックとしては、「盛る」ということがある。
ソフトバンクなんかもよく「盛って」いた。
しかし、個人的には、パターンオーダーをフルオーダーと「盛る」ことは詐欺に近いと思っている。
例えば、ZOZOがPBとして発売したTシャツとジーンズだが、発表当初は「フルオーダー」と発言していたが、今、ウェブサイトに行くと「パターンオーダーです」と書かれてある。
そもそもTシャツとジーンズにフルオーダーなんて必要ないと思っていたが、案の定「盛って」いたのである。ジーンズはそもそも製造関係者によると初回800SKUを製造したそうなので、既製品かパターンオーダー以外は考えられないというのが事実である。
業界外の人から見たら「どっちでもええやん」ということになるだろうが、こういう間違いがさらに消費者を混乱させる。
続いて発売されたオックスフォードシャツもしっかりと「パターンオーダー」と書かれてある。
当たり前だ。フルオーダーのシャツが3,900円程度で発売できるはずがない。
そして、ZOZOのオーダースーツも価格的に見てパターンオーダーだと思う。
まあ、それは置いておいて、オーダースーツと同時に発売されたドレスシャツは「カスタムオーダー」だと書いてある。
カスタムオーダーとはなんぞや?
カスタムオーダーでググってみると明確な定義はない。
しかし、カスタムオーダーとはけっこう幅広く使える言葉で、ワイシャツの襟の形やカフスの形を変えるのもカスタムオーダーだし、ユニクロが個別注文でTシャツやポロシャツにワッペンを縫い付けたり、刺繍を入れたりするのもカスタムオーダーである。
ジーンズの裾を自分の脚の長さに合わせて短く裾上げするのもカスタムオーダーといえる。
通常の既製スーツのズボンは裾上げをするのがほとんどだが、これだってカスタムオーダーといえる。
まあ、要するに既製品でもなんでも、自分流に手直しすることだと思っていて間違いないのではないかと思う。
ところがZOZOのサイトにはこう書いてある。

【カスタムオーダーとは】
お客様の体型に合わせ1点1点ゼロから作り上げる完全オーダーメイド製品です。

ゼロから作り上げるのはフルオーダーで、カスタムオーダーではない。
じゃあこのワイシャツはパターンから作っているのだろうか?たかが2900円の商品なのに。
この言い回しはまた「盛り」気味だし、消費者を混乱させるだけではないかと思う。
消火器を売りつける業者が「消防署の方から来ました」と言うのに似ている。
決して「消防署から来ました」とは言っていないのである。
多少の「盛り」は販促のテクニックとしてはありだが、あまりにも「盛りすぎる」のは詐欺ではないかと思う。
そして「盛りすぎ」が横行した結果引き起こされるのは、間違った知識が世間に広まってしまうことである。
よく、生地関係で話題になるのが、
デニムとダンガリーとシャンブレーの違いである。
デニムとダンガリーは経糸と緯糸が入れ替わっているだけだから見た目には区別ができにくい。
一方、ダンガリーとシャンブレーは綾織りと平織りの違いはあるが、どちらもブルーのシャツ生地用途が多いのでごっちゃに使っている業界人も多い。
業界人がごっちゃにするくらいだから、消費者もごっちゃにする。
そうなると今度は製造側は困惑する。
「あのダンガリーでシャツを作りたい」なんて言われたとき、その「ダンガリー」はダンガリーを指しておらずにシャンブレーを指していることは珍しくない。
このままでは、ファッションはいっそう混沌としてむずかしくなる
https://t.co/hlXgymQ62k
このブログはまさにそれを憂いている。

都合の悪いことに、テック側がリリースしたものは拡散されやすく、どちらでもよくないことが間違った方で広まってしまう風潮です。(ZOZO PBの謳ったフルオーダーがパターンオーダーだった件は記憶に新しいですね。大手通販サイトには、アイテム名称の誤認表記が溢れています)
このままでは、ファッションに関する情報が正誤入り乱れてカオスと化し、いざファッションを知りたい、関わりたいを興味を持ちかけた人が、この混沌ぶりに入口で頓挫してしまうのではないかと気がかりです。アイテム名から間違っていたら、検索すらかけられません。
私は、これ以上ファッションを複雑にしたくありません。

フルオーダーとパターンオーダーを意図的に混同することは、衣料品をさらに混乱させ、複雑化させているだけといえる。
ZOZOはもう少し控えめに盛ってみてはどうか。今の「盛り方」はあまりにも見苦しい。
 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2019/11/15(金) 2:46 PM

    ※カスタムオーダー商品は2019年10月31日をもって販売を終了しております

    ってZOZOのサイトの返品の説明のところに出てました。完全にオーダー止めちゃったんすね。いくら損したんでしょう?w

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