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南充浩 オフィシャルブログ

川添隆さんの『「実店舗+EC」戦略、成功の法則」を読んだ感想

2018年7月20日 ネット通販 0

世の中、インターネット通販流行りで、洋服もインターネット通販への注目が高まっている。
とはいえ、消費者としたら便利であれば、どこで買っても良いのであって、インターネットだろうが実店舗だろうが、カタログ通販だろうが、自分にとって利便性が高いところで買うだけのことである。
注目しているのは販売不振に苦しむ衣料品業界側である。
メディアも判断基準が画一的でアホだから、EC化比率が高ければ高いほど将来が有望であるという意味不明の記事掲載が多い。
アパレルの経営者もインターネットはからっきしみたいな人が多いから、インターネット通販さえすれば飛ぶように売れるようになると勘違いしている輩が多い。
インターネットがこれだけ普及しているから、インターネットなしでのブランド運営や販売は難しい。
インターネットは不可欠だが、EC化比率が高ければ高いほど良いとか、インターネット通販をすれば飛ぶように売れるようになるとか、そういったことは迷信でしかない。
インターネット通販をマクロに語る人はいる。コンサルタントやIT企業の関係者なんかがそうだ。
しかし、マクロ論はあまりにも綺麗に過ぎており、システムを構築すれば自動的に物事は進んでいくというような印象を受ける。
ちょうど、マクロな人たちが洋服や生地の製造や加工が、あたかも全自動でできてしまうというようなイメージを振りまいているのと似たようなものである。
言ってしまえば、自分がかかわっている業界以外は、誰しもが知識がないから、そういう「綺麗な世界」を思い描いているが、どんな分野だってチマチマとした作業があって成立している。
先日、メガネスーパーのEC担当として名を馳せる川添隆さんから自身の初めての著書である『「実店舗+EC」戦略、成功の法則』(翔泳社)の献本をいただいた。

 
タイトルからすると、そういうマクロな視点からの「綺麗なEC論」なのかと思ったが、全然違った。
実に泥くさい、手動と地味な作業の積み重ねが書かれてある。
一つ難を言えば、ECやインターネットの実務に携わっていない人が読むと、内容が現場的で具体的過ぎるから、理解ができないのではないかと思う。
ケチをつけているわけではなく、ターゲットを絞り込んでいるからそれ以外の人が読むと理解しがたいというのは、立派な戦略であり、客を選んでいるともいえる。
当方もインターネット通販業務は担当したことがないが、例えば、このブログをリファインしてくれた美肌プリンス率いるスタイルピックスの作業を横で見ていると、インターネット通販の運営とかウェブページの構築というのは果てしなく地味な作業だということがわかる。
ひたすらにデザインしてコーディングして、大量に撮影した画像の中から数点を選んで、キャプションや文章を考える。
完成したらパソコンやタブレット、スマホから見え方をチェックしてまた微修正する。それの繰り返しである。
だから、各ブランドのEC担当の作業がどれほど地味なものかは想像くらいはできる。
個人的に良かったと思う部分をいくつかランダムに抜き出して紹介したい。
まず、「社内交渉・深掘り・社内外のパートナーづくり」という点だ。
そこそこの規模のある企業に勤めたことのある人なら誰しも経験があるが、社内交渉や社内の根回しは重要である。
ベンチャーの3人くらいの会社ならそんなものは要らないが、10人以上の会社なら絶対に必要になる。
当方も昔、広報という部門にいたことがあるが、営業や企画、経営者との社内交渉と根回しの連続である。
短気な当方には到底向いていなかったが、ECとて同じだ。
EC、インターネット通販はとくにそうだが、営業も企画も経営者もまるで理解していないから、通常の部署よりも社内交渉が捗らない。
これをどのように捗らせるかがEC担当者の腕ということになる。
綺麗なページがデザインできるとか、SNSにフォロワーが大量にいるとか、そんなことがEC担当者の価値ではない。
社内交渉と根回しこそがEC担当者の最大の腕だといえる。
また、こんな箇所もある。

新規ECユーザーは実店舗から連れてくる

実店舗顧客はそのブランドや企業のファンなのだからECに誘致しやすい。
まったく知らない人をECに連れてくるよりもずっと手っ取り早い。
そして、狡いコンサルタントと、アホな経営者がよく言うことにもダメ出しをしていて痛快である。

一方で、ECがうまくいっていない企業ほど、集客の話をするとWEB広告やSNSが真っ先に出てきますが、前述のとおり、短期的にEC売上アップを狙うなら、優先度は低めになります。

とのことだ。
狡いコンサルタントはWEB広告とSNSを喧伝することで自分の飯のタネを確保しようとしているし、アホな経営者はそれを頭から信じてドブにカネを捨てているのである。
SNSの拡散はもちろん有効な手段だが、かといって必ず成功するわけではない。
ツイッターには今では企業やブランドのアカウントがあるが、常に注目されて拡散されているアカウントはほんの一握りである。
衣料品や繊維業界でいえば、まったく顧みられていないアカウントが山ほどある。
そのどれもが「〇〇の新作投入は9月1日から」とか「〇〇の展示会を8月20日開催」とかそんなことばかり書いている。
そもそも「〇〇」ブランド自体の知名度がないのだから、新作投入とか展示会開催とか書いたところでだれも注目しない。
それが何なのかすらわかっていない人がほとんどなのである。
だから即効性はない。
これら以外にもまだまだ具体的かつ現場的な事例が豊富にまとめられている。
EC担当者やECのリアルを理解したい経営者は一読すべき内容といえる。

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トウキョウベースの香港店は活況なのか?売上高から入店客数を類推してみたhttps://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n78d0021044a2
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