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南充浩 オフィシャルブログ

マスに売りたいなら「玄人向け」商品にこだわるべきではない

2018年6月27日 考察 0

何のジャンルでも上級愛好者やマニアの提言は、ファンの裾野を広げることにはあまり役に立たない。
ヒノヤの人気チノパン ジッパーフライに改良し売れる
https://senken.co.jp/posts/hinoya-burgus-plus-180627

オリジナルブランド「バーガスプラス」で09年から販売する「401」。顧客や販売員の声を元に、股間部分をボタンフライからジッパーフライにした。4月末に販売を始め、「前年同期に販売した旧型の販売本数を上回っている」という。
リピーターの多い商品だが、玄人好みのボタンフライから、万人受けするジッパーフライに変更したことで「客の裾野が広がった」と見る。

とある。
当方はボタンフライのズボンは絶対に買わない。
なぜならめんどくさいからだ。
15年くらい前に「たまには定価で買ってみようか」と思って、リーバイスの502を買った。
大雑把に言って、502は501のジッパーフライ版だ。
とくに15年前はそういう位置づけだった。
ちなみにこのジーンズはまだ所有している。
ストレッチが入っていないのでめったに穿かないが。
実は501を買おうかともその時思ったのだが、ボタンフライなので買うのをやめて502に決めたという経緯がある。
しかし、ジーンズファン、上級愛好者には501支持者が多くいる。
その中のコアなメンバーに言わせると、ジッパーフライよりもボタンフライの方が良いのだという。
当方は何が良いのかさっぱりわからない。
今回のヒノヤの記事でもわかるようにファンを増やしたいなら、より簡単な商品を作って裾野を広げることがもっとも効率的である。
ところが、ジーンズ然り着物然り、そういう入門編の商品を作ることを拒否する傾向が強い。
だからいくら声高に叫ぼうとファンは一向に増えないのである。
パソコンでもデジタルカメラでもそうだが、初心者にいきなり上級者向けの超高級機体を買わせるだろうか?
当方が初心者なら絶対に買わない。
「最初から本物に触れるべきだ」という意見もあり、それはそれで理解できなくはないが、多くの初心者は最初から高額な「本物」を買うことに躊躇する。
当然だ。買ったところで使いこなせるかどうかわからない。
そんなあやふやな物に大金を支払いたい人なんてほとんどいない。
ジーンズや着物も同じだ。
新規ファンを獲得して、使用人口を増やしたいのなら、不便なボタンフライより便利なジッパーフライを店頭投入した方がはるかに理にかなっている。
ブタンフライを発売したければマニア向け商品として発売すれば良いだけのことだ。
ところが、コアなジーンズマニアはその「マニア向け」商品を「本物」だとして、初心者やライトユーザーにも押し付ける傾向が強い。
マニアの気持ちはわからなくもないが、それではかえってジーンズが敬遠されるだけのことになる。
着物も同様だ。
昨日、上下セパレートの着物「レ・モン」のことをこのブログで紹介した。
値段も比較的安く(安物のスーツ程度)、着るのも簡単だから初心者向けとしては良いのではないかと思ったからだ。
しかし、着物上級者からは批判的な意見もあった。
うーん。レ・モンが想定しているターゲットは上級者じゃないのにな。(多分)
そういう上級者の意見がさらに着物離れを助長しているのではないかと思う。
上級者が「あんなものは着ない」と思うのは当然だが、それをわざわざ言う必要はあるのかと思う。
何の分野においても上級者やマニアは自分たちの愛好する「本物」を広めたいと考えているが、それは土台が無理な話である。
裾野を広げてマス化させたいなら、初心者が手に取りやすいように、簡単な廉価版を開発するべきである。
ヒノヤのチノパンが好調なことがそれを証明している。
いくら本物の風合いとか言ったって、一日に何度もトイレに行くたびに不便感を味わうボタンフライよりも手軽なジッパーフライの方が万人受けすることは誰が考えてもわかる。
マニアがいくら「ボタンフライも慣れたら楽だよ」と言ったって、その慣れるまでの時間を我慢することを想像すると、初心者は萎えてしまう。
着物も同じで、上級者が「慣れたら着付けも楽」と言ったところで、そこに至るまでどれほどの時間が必要になるのかと想像すると、当方のような着物を着ない層からすると億劫になってしまって、棺桶に入るまで着物を着ないという考えになってしまう。
現実的なことでいえば、着物を着ないことでの不利益が何一つない。だったらそんなめんどくさい服は着る必要がないということになる。
伝統工芸品も同じではないかと思う。
いくら「本物」か知らないが、そんな超高額品をライトユーザーが容易く買うはずがない。
それよりも買いやすい価格帯の商品を開発した方がユーザーは増えやすい。
マス化させたいと願うなら、どのジャンルもライトユーザーが手を出しやすい商品を作るべきで、「本物」はコアなファンに向けて作れば良いだけのことだ。
それこそ「本物」はハイエンドモデルと位置付けて初心者が憧れるような見せ方をすれば、初心者もいずれは上級者になって「本物」を購入することになる。
本来、ハイエンドモデルと位置付けられる「本物」をマス化させようとするから広まらないのである。
着物もジーンズも伝統工芸品も。
その部分を間違えている分野がマスに支持されることは永遠にあり得ない。

NOTEの有料記事を更新~♪
ジーンズの洗い加工はレーザー光線で行う時代
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/na09a16d24294
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リーバイス502

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