ユーザーを増やしたい、マスに売りたいと考えるなら、

1、価格の安さ
2、扱いの楽さ

が重要になる。

価格の安さは言わずもがなだが、扱いの楽さとは、操作の楽さやメンテナンスの楽さと考えている。

扱いにくくて高額な物はマスには売りづらい。
これは何の商品でも同じだろう。

日本はiPhoneユーザーが異様に多い国として知られているが、iPhoneだって単なるブランドステイタスだけで多くのユーザーを作ったのではなかろう。
当方も6年前からiPhoneを使い始めたが、その理由は「安かったから」である。

auショップに行って、他のスマホとiPhoneを比べると当時の料金体系ではiPhoneの方が月額1000円くらい安かった。
当方は別に贔屓にしているスマホメーカーがあるわけではないから、安くて性能が良ければそれでいい。
1000円安くて性能が良かったからiPhoneにしただけのことである。

先日、こんな記事が掲載された。

やってみたら、案外いけた…「着物生活」貫く男性に学ぶ“ささいな勇気”「3回会えば『そういうもの』に」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180504-00000002-withnews-soci

和服で勤務する外資系IT企業の男性技術者の話である。
この記事の核となる部分は

田中さんが主に着用するのは木綿素材の着物です。かつての庶民の日常着。自宅で洗濯できます。

予算は1着あたり「仕立て代込みで3万円台」。半襟には、手芸店で気に入った数百円の布を使うこともあります。最近では、1万円台で購入した木綿の反物を妻が仕立てることも多いそうです。

だと思っている。

1着3万円くらいという安さで、洗濯可能な木綿素材という点である。
安くて扱いが楽だからこの人は毎日着物を着て過ごせる。
これが高くて、扱いにくい着物なら毎日着ては過ごせない。

和装業界の年間市場規模は3000億円内外を行ったり来たりしており、和装業界からは「売上高回復のためにはデイリーユーザーを増やそう」という声が聞こえてくる。

たしかにデイリーユーザーを増やせば、和装全体の売上高も増える可能性が高い。
買い替え需要だって増えるだろう。

しかし、現在の和装業界がスタンダードとしているような着物では到底デイリーユーザーを増やすことはできないと当方はその声を冷ややかに眺めている。

理由は、1・価格が高い 2・扱いが難しい である。

某若手経営者の会で出席者が言ったように「10万円くらいの着物は安物」というのが「価格が高い」ことを何よりも物語っている。
10万円の服なんて一般人からすると結構な高額品である。

デサントの水沢ダウンと同等クラスの価格帯で、衣服としては高い。
和装業界の人は、「生産背景や生産数量が異なるから高いのは当然」という説明をするが、それはそうだが、買う方からするとそれはそれ、これはこれでしかない。

今まで洋服を着ていた人が和服を買うのだから、洋服の価格感に引っ張られるのは極めて当然である。
洋服を着ていた人に和服を買わせたいのなら、そういう比較をされる。これは避けようがない。

この田中さんだって3万円くらいの着物だから毎日着ようという気になるのであって、和装業界がスタンダードとするような何十万円の着物なんてもったいなくて特別な日以外は着ようとは思わないだろう。

また、和装業界がスタンダードとする「正絹」という素材の扱いづらさもユーザーを増やすことの障害になっているといえる。

毎日着用するなら洗濯が必須となる。
綿素材で洗濯できるから毎日着用できる。

今なら合繊素材の着物もある。

洗濯しづらく保管しづらい「正絹」という素材にこだわるからユーザーを拡大できない。
そんなめんどくさい素材の服を毎日着ようとする人なんてほとんどいない。

価格の安さと扱いの楽さがない服を、「伝統」だとか「文化」だとか「ファッション性」だとかのキーワードだけで普及させることなんて不可能である。

そしてこれは洋服も同じだといえる。

洋服業界の人たちは低価格品の出現を嘆いているが、低価格品だと試してみやすいからマスに広がる。
ユニクロが国内売上高8000億円を突破したことがそれを証明している。
安ければなんでも良いというわけではないが、安さがなければマスには広がりにくい。

決して安くはないオンワード樫山の「組曲」「23区」あたりのブランドの売上高は大きいと言っても200億円台しかない。
単一ブランドで売上高1000億円を越えるのは絶対無理だろう。

高い服があっても何も悪いことではないが、高い服はマスには売りづらいということを認識して、ニッチ&マニア層を狙うことに専念すべきだと思う。
その心構えがなく、いまだに80年代のDCブランドブームのころを懐かしんでいるから、洋服業界はいつまで経っても浮上できないでいる。

高いブランドの服が定価や30%オフ程度で飛ぶように売れたDCブランドブームなんて、日本が今後どれほど好景気になったとしても二度と起きない。

和装業界もデイリーユーザーを増やしたければ、高くて扱いづらい着物を入門者に売ろうとすることをやめればいい。
入門者を増やしたいなら入門者にふさわしい商品を増やすことを考えてみてはどうか。

入門者に高額で扱いづらい商品を提案するから売れないし、入門者は増えないのである。

今回の記事の肝は、田中さんの姿勢云々ではなく、低価格で扱いやすい商品さえあれば、デイリーユーザーは作れるということを示している部分だと思うのだが。

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原料と直結した数少ないアパレル製品の一つがジーンズ ~エドウインはどうなる?~
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知られていないだけで、和装にもけっこう機能性商品があるね。こんなのをもっと大々的に打ち出せばいいのに。