かつてアパレルやファッションショップは、勘と度胸とどんぶり勘定(KDD)で経営されていた。
バブルが崩壊し、洋服が売れにくくなったころから数値管理が本格化した。
これまでみたいな野放し状態では売上高はもちろんのこと、利益が確保できなくなったからだ。

これはアパレルだけに限らず、例えば出版社なんかもそうだ。

領収書による経費管理もずさんで、申請すればするだけ接待費がもらえたなんて話もバブル期は珍しくなかった。
97年に山一証券や北海道拓殖銀行など大手金融機関が倒産し、にわかに不況感が強まってから、アパレルも出版社も経費の締め付けと数値管理が如実になった。

その結果、さまざまな指標が作られるようになったが、今では逆にその指標にこだわるがために意味不明な分析がなされている。

その一つに「プロパー消化率」というものがある。
今でも専門学校生向けの計数管理の教科書にも掲載されている。

プロパー消化率というのは、平たくいうと値引き販売せずにどれだけの商品が消化できたかという指標である。
これが高ければ高いほど利益が増えるというわけだ。

そしてどうしても売れきれない商品だけをセールで捌く。

これが計数管理の教科書に載っている図式だ。

しかし、それができたのはせいぜい2000年前ごろまでだろう。
このころまでは不況だとは言いながら、夏と冬の年二回のバーゲンセールしかなかった。
店やブランドの「創業〇周年記念セール」とか「上場記念セール」とかそういうイレギュラーは別として。

測定もしやすい。夏と冬のバーゲン時期以外は、店頭で売れた物はみな定価販売されているからだ。
夏と冬のバーゲン時期にはバーゲン品と少しだけの定価品が混在するが、定価品をセール品と間違えてカウントしたところで誤差の範囲内だ。
1月と7月、それも下旬の1週間~2週間だけがバーゲンで、あとの10か月はプロパー販売なのだから、カウントも管理も楽で数値も算出しやすい。

しかし、今はどうだろうか。
夏と冬のバーゲンのほか、12月にはプレセールがあるし、某ストライプインターナショナルのように毎日何度もタイムセールを繰り返す売り方も横行している。
正規のバーゲンとは関係なく、毎月のように値下げ販売をしているブランドも珍しくないし、GAPやユニクロのように常に店内に「セール品コーナー」があるブランドも多い。

これでどうやって「プロパー消化率」を測定しているのだろうか。

おまけにネット通販だと割引や値下げはさらに乱発されている。
アダストリアホールディングスのドットエスティでは、しょっちゅうタイムセールが行われる。
実店舗ではタイムセールを行わないアダストリアだが、自社直営ECサイトではしょっちゅうタイムセールが開催される。
定価で買う奴はアホじゃないかと思う。

業界の期待が過剰じゃないかと思うZOZOTOWNだって値引きクーポンの乱発で、買い上げ客単価は20%くらい下がっていると出店者は嘆いている。

ジーユーではオンライン限定割引が存在し、店頭では値下がりしていなくてもネット通販では期間限定で値下がりする商品がある。

これでどうやって「プロパー消化率」を測定しているのだろうか?
そういう指標を出す必要があるのだろうか?

ネット通販というのは、はっきりというと値下げした者勝ちで、商品を簡単に手元の端末で比較できるため、実店舗よりも値下げしないと集客できにくくなる。
「店員さんや店長さんの接客のファンで」なんていう人が実店舗にはいるが、ネット通販にはいない。
書いてある文言や写真が何であれ、商品が同じなら誰だって安い方で買う。

当方がガンプラ(ガンダムのプラモデル)を買う場合は、Amazonと価格コムで値段を比べてから一番安いところで買う。
Amazonが安い場合もあればヨドバシカメラの方が安い場合もある。
ガンプラに関していえば、Amazonよりも安いことが多いのが駿河屋である。
だから年に何度か駿河屋のネット通販で買っている。

Amazonはプライム会員ではないので2000円以下は送料が必要になるが、駿河屋は1300円以上で送料無料になる。
1250円のガンプラを買う場合は50~100円の商品を探し出して抱き合わせにして送料無料にしている。

これがネットでの商品の買い方だ。服だって同じだろう。

本日の繊研新聞でこんなコラムが紹介されている。
結論はあまり正しいとは思わないが導入部分が参考になる。

https://senken.co.jp/posts/mete-0510

「無印良品」「ユニクロ」が堅調だ。主力商品を「買いやすい」価格に抑え、客数が増えている。注目すべきは正価販売を重視し、値引きを抑えている点。かといって正価で押し通し、売れ残りを増やすのではない。動きが悪ければ値下げして売り切る。その素早い判断の積み重ねが利益を産む。

謎の「プロパー消化率」を過剰に信仰している人はよく考える必要があるのではないか。

最近のユニクロは値引きが減っている印象がある。しかし、見切った商品は恐ろしい価格で投げ売っている。
例えば、当方が興味もないのに投げ売り度合いに惹かれて買ったのが昨秋のJWアンダーソンコラボ商品だ。
キルティングコート1枚、セーター4枚、シャツ2枚、Tシャツ3枚を買った。
デザインもまずまず気に入っていたこともあるが、何よりも値段が格安でバッタ屋並みの価格だったからだ。

オバハンの横顔がプリントされた半袖Tシャツなんて500円に値下げされていたし、派手なレゲエカラーみたいなボーダー柄のファインメリノセーターは990円に値下げされていた。
魚柄のラムウールセーターを当方は1990円と1290円に値下げされて買ってしまったが、最終的に500円にまで値下げされている。

この見切りは凄まじい。
これだけ値引きしていてもユニクロは直近の第二四半期決算で過去最高収益をあげている。

となると、「プロパー消化率」とやらにこだわる必要性はほとんどないのではないかと思う。

最近、老眼に突入したローガン・佐藤正臣氏もブログでこう書いている。

http://blog.apparel-web.com/theme/consultant/author/fashion-soroban/911c3b7e-647c-4e8f-a656-2e7aeb2b920a

プロパーの日本語訳は、普遍的な・元来の等の意味があります。
にも関わらず、ディベロッパー側の10%オフ(ルミネ10%的なもの)で売れているものは、プロパーでカウントする。タイムセールは商品の売変自体はしていないのでプロパーに含める?OFF率10%以内はプロパー売りとする??等。定義自体がしづらく、その定義そのものをコロコロと変えられるものです。

プロパーがもつ本来の言葉の意味で考えれば、売価変更していなくても「ポイントが多くつく」「カード割引」で商品を買える。と顧客が考えた自体で、(顧客の側から見れば)プロパーという言葉の本来持つ意味からかけ離れているのであり、プロパー消化とは言えません。この業界でいうプロパー消化率は、はっきり言ってしまえば「売価変更前消化率」であることが殆どです。

もちろん、値引きせずに売れる工夫は利益確保のためには必要だが、過剰にそれにこだわり不良在庫を抱えすぎて、期末にバッタ屋に二束三文で投げ売るよりも、ユニクロのように早めに見切って投げ売ってしまう方がはるかに利益率も高いし、損失も少なくて済む。

バーゲンセールとタイムセール、割引きクーポン、ポイント5倍デイが乱発されるご時世でプロパー消化率なんて過去の指標にこだわる意味はほとんどない。

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心斎橋筋商店街がドラッグストア街に変貌した理由とこれまでの変遷の推移
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n2eb0ac5ccb54

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