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南充浩 オフィシャルブログ

スタートトゥデイの「中期経営計画」と「新ゾゾスーツ」に対する疑問

2018年5月1日 企業研究 0

4月28日からゴールデンウィークの連休が始まった。
連休に入る直前の27日夕方、株式市場が終わった直後くらいに、スタートトゥデイから「ゾゾスーツの失敗と新ゾゾスーツ」「中期経営計画」の2つが発表されたが、個人的にはどちらも疑問しか感じない内容だった。
まず、ゾゾスーツの失敗と新ゾゾスーツだが、生産に至ることができずに新方式でのゾゾスーツを発表した。
スタートトゥデイ、“ZOZOSUIT”生産失敗で約40億円の損失を計上
https://www.wwdjapan.com/607378
体型を採寸できるスーツとして注目を浴びたゾゾスーツだったが結局は量産化できずに終わった。
旧ゾゾスーツは、着用してスマホと連動させることで一瞬で体型が採寸できるという触れ込みで、ここに未来性を感じた人が多く、その人々から高く評価された。
昨年10月末に発表されたものの、年が明けてもほんの一部の人間にしか配布されておらず、いわば掛け声だけの「幻」の状態が4月まで続いていた。
どうなっているのかという声も多数上がっていたが、2月にはスタートトゥデイは別のアイデアを3億円で買ったという報道があった。
「ゾゾスーツ」超えるアイデア 3億円で買い取り
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26992020W8A210C1000000/
この時点で複数の業界人からは「これは先に発表されて動きがないゾゾスーツを諦めて、こちらに乗り換えるつもりだろう」という指摘が出ていたが、まさしくその通りの展開になった。
旧ゾゾスーツを申し込んだ人はもれなく、新ゾゾスーツに替えて送付されるとのことだが、この対応は個人的には疑問だ。
まず、旧ゾゾスーツの量産失敗、もしくは量産断念を先にアナウンスすべきではないのか。
それを4月末まで隠しておいて、いきなり「新ゾゾスーツに替えて送付します」というのはちょっといただけない。
今回は、販促戦略もあって無料送付だったから、各人に金銭的被害は発生していないが、通常買い物をした場合なら、その商品がなければ先にそれを説明する。そのうえで、代替品を用意すると説明する。
いきなり、代替品のアナウンスと同時に量産断念をアナウンスするのはどうかと思う。

生産コストは1着1000円で、費用は広告宣伝費に計上するという。発表会ではデモンストレーションを実施したが、音声にしたがって全身の撮影をするため、旧型に比べると計測にかなりの時間がかかるようだ。

着ただけで採寸できるのではなく、着てそれを音声に従ってカメラで撮影して採寸するという新ゾゾスーツがすごく性能が良いという擁護記事がさっそく書かれているようだが、フェイスブックの書き込みでは「使いにくい」「採寸が正しいのかどうかわからない」という書き込みもあり、一概に擁護派のいうようなメリットばかりではないと考えられる。
また、中期経営計画だが、ちょっと実現は困難なのではないかと思う。
株価対策のために盛ったのだろうか。
ゾゾ初の中期計画、2年後に商品取扱高5000億円突破、PBは3年で2000億円へ
https://www.wwdjapan.com/605521

19年3月期決算では商品取扱高が前期比33.1%増の3600億円、売上高が同49.3%増の1470億円、営業利益が同22.4%増の400億円、純利益が同38.9%増の280億円を見込む。PB事業の売り上げ目標は200億円。2年後の20年3月期には商品取扱高5080億円、21年3月期には7150億円、営業利益900億円を目指す。
今期のPB売上高は135億〜225億円を見込む。6月にはカジュアルシャツやデニムなど3型を追加する予定で、今後フルオーダーのビジネススーツ、ドレスシャツ、ワンピースを計画する。7月以降は世界72カ国でも販売を開始し、2年目にはグローバルで売上高800億円、3年目には2000億円を目指す。

とあり、取扱高5000億円の目標はともかくとして、自社企画ブランド「ゾゾ」の初年度売上高200億円、3年目2000億円という数字と、新ゾゾスーツの今期は600万〜1000万個の発送予定はちょっと盛りすぎた数字で実現性に乏しいと感じる。
これを端的に深地雅也さんがまとめている。
https://note.mu/fukaji/n/n9ff1ca89028d

 
 

(ゾゾの)昨年度のアクティブ会員が5,112,861人。ゲスト会員が2,110,366人。トータルで年間購入者数が7,223,227人。アクティブ会員の定義は年間1回以上購入なので僕はアクティブ会員に属していますから、少なくとも既に主要な会員500万人にリーチしている情報で100万件の発注数。SUIT発表のタイミングで新規登録した人もいるかとは思っていましたが、昨年度からトータルで17450人しか購入者数が増えていませんし、むしろゲスト購入者数は減少しています。ZOZOSUIT購入者はカウントしていないのかもしれませんが特に記載はありません。

とのことで、ゾゾスーツ購入者はカウントしていないのかもしれないが、アクティブ会員とゲスト購入者を合わせたトータル利用者数は1年間で1万7450人しか増えていない。
個人的な考えでいえば、ゾゾの会員数はほぼ極大値に近づいていると思う。ファッションやファッションテックに興味のある人はとっくに会員になるかゲスト購入者になっているだろう。当方のようにゾゾが嫌いな人はいくらもてはやされてもこれからも利用しないだろう。
ましてやファッションやファッションテックに興味のある人はマスの中では少数派である。逆に興味のないマス層が今後、服しか売っていないゾゾで積極的に買い物をするとは考えられない。
服に興味のないマス層は、服以外の商材が豊富なAmazonやYahoo!ショッピング、楽天あたりで買い物をする。
みんながみんな服に興味があると思ったら大間違いだ。当方だってこの仕事をしていなかったら服なんか買わずにもっとガンプラを買っている。
だからゾゾの会員数とゲスト購入者はここから大きくは伸びにくいと考えられる。
そんな状況で新ゾゾスーツ600万枚配布はちょっと難しいといわねばならない。

仮に今の発注数である100万件が6月中に届いたとして、残りの500万件はどのタイミングでお届けするのでしょうか。

という疑問がすべてを物語っている。
また自社企画ブランド「ゾゾ」の売上高も同様にかなり難しい数字を出していると見ている。

ユニクロのTシャツ・ジーンズ売上の何%売れば、どのくらいの売上になるかの指標が書かれています。ユニクロのヒートテックですら初年度150万枚。1枚1200円のZOZOのTシャツが仮に150万枚売れても18億円です。ユニクロのジーンズは毎年1000万枚以上販売しているようですが、仮にその10%販売出来ても100万枚×3800円なので38億円です。


とある。ゾゾはこれからジーンズとTシャツ以外にも商品の種類を増やすと発表しているが、それを入れても初年度200億円というのは難しい。5月1日現在、まだ売り物は1200円のTシャツと3800円のジーンズしかない。ゾゾがいうようにフルオーダーのスーツ、ドレスシャツ、ワンピースなどの新商品を投入したって、あと10か月でどれほどの売上高が見込めるのだろうか。
そしてあと10か月となった5月1日現在もまだ新商品の具体的な発表はなされていないし、もちろん投入もされていない。
一般的に考えて、1200円のTシャツが150万枚も売れることはないし、3800円のジーンズが100万本売れることはない。
また、この自社企画ブランドが3年後2000億円というのも眉唾物だ。個人的には「言うだけはタダ」ではないかと見ている。
年間売上高2000億円というと現在のジーユーと同等ということになる。
またアダストリアホールディングス全体の売上高と同等ということになる。
マス層にそこまで知られていないゾゾタウン、さらに自社企画ブランド「ゾゾ」がマス層にも知られているジーユー、アダストリアに匹敵する売上高をたった3年で作るのは至難の業である。
ファーストリテイリングという強力な後ろ盾があったジーユーだって方向転換してから年商2000億円に達するまで7年間もかかっている。
「ゾゾは世界に向けて売るから達成できる」という人もいるだろうが、世界こそそんなに簡単ではないのではないか。
中国にはすでにアリババやタオバオなどの巨大ECがあるし、高級ゾーンでは欧米のネッタポルテがある。
ここにウィゴーやらジーンズメイトやらタカキューなんかの低価格ブランドが増加したゾゾが新規参入してそこまで世界から支持を受けるとは当方は到底考えられない。
一気に生産枚数や配送数を増やしたり、一気に流入者を増やしたりできるような「魔法」はこの世には存在しない。
そしてゾゾはそんな「魔法」を持ち合わせてはいないと当方は見ている。
「魔法」に期待している人はさぞかし天真爛漫・純粋無垢なのだろうと思う。

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心斎橋筋商店街がドラッグストア街に変貌した理由とこれまでの変遷の推移
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n2eb0ac5ccb54
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