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南充浩 オフィシャルブログ

日本経済の伸びしろは軽工業品にあり?

2011年9月12日 未分類 0

 数学や物理学のように一つの公式で事象を解き明かすことができないのが社会学、心理学、経済学であろう。
社会学者、心理学者、経済学者の学説はそれぞれ異なり、どれもが一部分は正解であるが全体的な説明には足りない。とくに未来を予測することに関しては、大半の学者が外してばかりである。

先日、藻谷浩介さん著の「デフレの正体」を読んだ。
これも新書サイズの経済学の本である。

昨今の日本の不況について、「生産性をさらに向上させろ」とか「輸出をもっと拡大すれば良い」などの処方箋が示されることがある。また「さらに最新機能の付いた工業製品を開発するべき」「自動車の競争力をもっと磨くべき」などの意見を多く聞く。

さて、繊維・ファッション業界を振り返ってみれば「日本の繊維・ファッションビジネスは衰退産業」「繊維は労働集約型なのでアジア諸国の工場に勝てない」という意見が主流を占めている。
半ば自分自身もそう思っている。

しかし、経済学は画一的な理論がない学問であるから、ひどく乱暴に言えば「ある程度自分に都合のよい学説を信じれば良い」という側面もある。
こと「繊維・ファッション業界、軽産業」に限れば、藻谷さんの提唱する学説はいささか明るい見通しを与えてくれる。
以下にかいつまんでご紹介したい。

今は懐かしい洞爺湖サミットにあつまった拡大G8諸国中、同年に日本に対して貿易黒字を挙げた国は、カナダ、イタリア、フランスの3カ国だった。それ以外の5カ国(中国、ロシア、アメリカ、イギリス、ドイツ)は対日貿易は赤字である。藻谷さんはあとここに、対日貿易黒字国としてスイスを付けくわえて、フランス、イタリア、スイスと日本を比べておられる。

フランス、イタリア、スイスが日本から貿易黒字を稼いでいる分野はハイテク産業や重工業製品ではない。ファッション、繊維、皮革製品、宝飾アクセサリーなどの軽工業製品である。
ハイテク産業品や重工業製品はある程度の期間が過ぎれば、価格競争に陥り、人件費の安い工場と設備が整っている国が有利になる。
しかし、ファッションを始めとする軽工業品は、価格競争に陥るブランドもあるが、欧米のラグジュアリーブランドのように超高額で販売することが可能である。

それ故に藻谷さんは「日本が経済発展するためには、今後、軽工業のブランド化を進めるべきだ」と説かれている。ハイテク産業や重工業品はこれまで十分に貿易黒字を稼いできており、さらなる伸びしろは少ない。反対にこれまであまり輸出されていなかった服飾品を始めとする軽工業品は、まだまだ伸びしろがある。

日本の繊維・ファッション業界の方々には明るい指針の一つだと思う。

今後折に触れ、いくつかに分けて藻谷さんの御説を紹介していきたい。

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