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南充浩 オフィシャルブログ

しまむらの成長が今後しばらくは停滞しそうな理由

2018年4月3日 企業研究 0

しまむらが2018年2月期連結を発表した。
売上高5651億200万円(前期比0・1%減)、営業利益428億9600万円(同12・1%減)、経常利益439億2000万円(同12・3%減)、当期利益297億1700万円(同9・6%減)と微減収大幅減益に終わった。
大幅減収といっても、ゴミ屑みたいな業績の企業が多いアパレル業界にあってはかなり優良だし、黒字はびくともしていない。
ただ、従来の「しまむらファン」みたいな人らからすると結果が不満だということになる。
多くの記事で指摘され、しまむら自身も認めているように、テレビCMは失敗だった。
効果がない割に、宣伝広告費が10億円ほど増えて利益を圧迫したのはこのテレビCMが大きな原因だろう。
元来、アパレルやアパレルブランドのテレビCMというのは難しい。
ユニクロの場合は、そのシーズンに積んで売るアイテムがいくつか決まっているから、それを流せば良いのでテレビCMは割合に簡単である。
例えば、古くは「フリース」。
淡々とこれだけを流せば事足りる。
エアリズム、ヒートテック、ウルトラライトダウン、すべて同じだ。
ユニクロは、そのシーズンに強力にプッシュしたいアイテムが1つ必ずある。
それをテレビCMで流せば良いから、非常にテレビCMとは親和性の高いブランドといえる。
テレビCMはウェブの記事やウェブサイトのように、文字で読んだり、自分で興味のある部分をクリックして読むなんてことはできない。
映像が30秒から1分間流れるだけで、その間にどれだけ視聴者にわかりやすく、伝えたいことを伝えるかが勝負になる。
ただし、映像は流れ去るものだから、録画でない限り、ウェブのように「ちょっと待って今の聞き取れなかったからもう一度リピートする」なんてことはできない。
だから、ユニクロの売り方はテレビCMに適している。
フリース、エアリズム、ヒートテック、ウルトラライトダウン、暖パン、などなど1アイテムにフォーカスして製作することができるからだ。
一方、しまむらもそうだが通常のアパレルはテレビCMとの親和性は低く、テレビCMは作りにくい。
なぜなら、多品種小ロットな上に、来月も同じ商品を売っているとは限らないからだ。むしろ売っていないことの方が多い。
そうなると、1アイテムにフォーカスしたテレビCMを製作することは難しく、畢竟、ブランドや企業のイメージCMみたいなものにしかならない。
だからアパレルのテレビCMは以前はほとんどなく、企業イメージCMが時折流れるくらいだった。
アパレルがテレビCMに積極的になったのは2009年ごろからで、クロスカンパニー(当時社名)のアースミュージック&エコロジーのテレビCMが大ヒットしたからである。
今までのイメージCMと何ら変わりはなかったが、違っていたのは消費者の環境である。そう、インターネットが完全に普及した。
宮崎あおいさんが、「ヒマラヤほどの~♪」と歌って、最後にブランド名を言うだけのテレビCMで、これだけを見ればなんのこっちゃ意味わからんという話だが、インターネットで検索することでこれがブランド名だということがわかり、大ヒットした。
アパレル業界は常に成功者の後追い体質だからクロスカンパニーがヒットすれば、我も我もとテレビCMを流すようになった。
その後、クロスカンパニーも同じ作りのCMを何度か流しているが、そちらはそこまでヒットしなかった。
同じものを何度も見せられても飽きるだけだから当然の結果といえる。
元来、多品種小ロットで売り切り御免型のしまむらは、1アイテムにフォーカスしたテレビCMを作りにくい事業構造だといえるし、今更、テレビCMを流し始めるという究極の後追いが成功するはずもなかった。
テレビCMの失敗は必然だったといえる。
ところで、金融系の人たちはなぜ、しまむらがさらに成長できると思っているのだろうか?不思議でならない。
しまむらのこれまでのビジネスモデルではこの辺りが成長の限界点だと思えるのだが。
以前にも書いたが店舗数を大幅に増やすには、最早、大都市都心しか立地が残されていない。ここに出店するには高い土地代・家賃が必要となりローコストオペレーションのしまむらでは厳しい上に、店作り・ディスプレイが今のチープ感漂うままでは、競合他社ブランドには勝てない。
また、ビジネスモデルの転換がそうそう上手く行くとも思えない。
2016年秋から発売した「裏地あったかパンツ」は100万本を販売したというが、それはしまむらお得意の「メーカーからの仕入れ」ではなく、自社企画商品だった。
自社企画商品を100万本も作るということは、ユニクロの大量生産・大量販売型のビジネスモデルだといえる。
しまむらはこれまで、不良在庫品などを安く仕入れて、それを販売することで「多品種小ロット売り切れ御免」のビジネスモデルを確立してきた。そしてそれが、面白いとして支持を集めてきた。
この路線を変更するということになる。
さらに、しまむらは自社企画ブランド「CLOSSHI(クロッシー)」を開始しており、近いうちに、商品構成比を40%にまで引き上げることを発表している。
これは取りも直さず、ユニクロ型ビジネスモデルの大幅導入ということになる。
しまむらに限らず、どんな企業やブランドでもビジネスモデルを大幅に転換する際には混乱・低迷・停滞は避けられない。
上手く行けば再上昇するが、上手く行かない場合は逆に凋落してしまう。
どうなるかは経営陣次第・運次第でしかない。上手く行かない可能性もある。
そんなわけで、しまむらは現在、難しい立場に立たされているといえ、再成長軌道に乗るには今後5年間くらいは必要になると見ている。

NOTEの有料記事を更新~♪
5年後ダメになっているアパレルを3つ挙げてみたよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nebd50266b6df
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