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南充浩 オフィシャルブログ

クイックレスポンスへののめり込みとPOSデータの妄信がブランド間の同質化を生んだ

2018年3月23日 企業研究 0

最近は新しい商業施設の内見会にはあまり行かない。
一つは、内見会で見てもその施設が流行るかどうかはわからないからで、それなら、オープン後何か月か経過してから行った方が、流行っているかどうかがわかる。
もう一つの理由は、どの商業施設も同質化していてほとんど同じに見えるからだ。
洋服でいえば入店テナントはほとんど同じだし、各テナントとも店作りが類似していて同質化している。
また、最近では洋服不振だから、どの施設も一様に食品・飲食を強化していて、これもアホの一つ覚えでしかない。
アパレルは猫も杓子もEC・ネット通販、商業施設は猫も杓子も飲食・食品強化。
本当にメーカーも流通もアホじゃないかと思う。
たしかに食品は衣料品に比べて単価も安いし、消えモノだから売れる頻度が高い。
だからといって、一日に10食食べる人はいない。
どういう意味かお分かりだろうか。いくら調子が良くてもそこに集中すれば過剰供給になって値崩れしたり飽きられたりするということで、飲食・食品もそうなりつつあると個人的には見ている。
だからほとんど興味がわかないし、記事に書きたいともあまり思わない。
それはさておき、洋服ブランドの同質化が起きた最大の原因は、クイックレスポンス(QR)対応とPOSデータへの妄信である。
これは以前にも書いた。
今回はそのリライトみたいな感じで、再度まとめる。
しかし、同じことを書いていても仕方がないので、また違う文面にする。
このところ、なぜか親交が深まった河合拓さんのブログから引用する。
https://ameblo.jp/takukawai/entry-12360938651.html

業界がQR一色に染まりました。この理論は、極めて明快、かつシンプルで非の打ち所がなかったために悲劇が生まれたのです。それは、日本固有のビジネスシステムと関係があるのですが、簡単に言えば「業界全体が同じ事をした」のです。特に日本は生産は大手商社が行っており、日本にある数万のアパレルが一斉に両手しかない大手商社にQRを依頼したのです。

とのことで、97年に業界紙記者になったときにはすでに業界はワールドが主導するQRが注目の的だった。
業界紙記者もアホの一つ覚えだから、記者会見に出たら必ず「御社のQR対応は?」とどのアパレルにも質問していた。
最近だと「御社のECは?」が定番の質問だろうか。(笑)
河合さんの指摘しているのは、多くのブランドが10社程度の大手商社にQR対応を依頼したため、どのブランドも出来上がってくる商品がほぼ同じになったということである。
なぜなら、作っているところが同じだから、各ブランドの商品は当然似てくる。
おまけにOEM/ODMの蔓延によって、商品デザインまでもを丸投げにしているのだからデザインすらも似てくる。
最近では中小零細のOEM/ODM企業もあるが、その企業とて最低でも10社・10ブランド程度の商品企画を請け負っている。
必然的にこの10ブランドのデザインは似通ってしまう。
そういうことだ。
河合さんは指摘しておられないが、90年代半ばに導入されたPOSレジがその同質化をさらに加速させた。
どの商品がどれだけ売れたかを記録してくれるPOSレジは非常に重宝で、そのデータをきちんと分析すれば、かなり有益である。
しかし、残念なことに多くのアパレル従業員(経営者も含めて)は分析が極めて下手だから、POSデータをそのまま考察せずに発注に結びつけてしまう。
通常、洋服の売れ筋というのはベーシックが上位を占める。
黒の無地のセーターだとか白いカットソーだとか黒いジャケットとかそれが上位を独占する。
当たり前の話で奇抜な色型・デザインの洋服を買う人はそんなにいない。
だから、そのデータを考察せずにそのまま企画に反映するとどうなるか。
黒の無地セーターとか白いカットソーとか黒いジャケットばかり出来上がることになる。
データ上はこれが正しいんだから仕方がない。(丹波哲郎かよ)
かくしてどのブランドも同質化してしまうことになるし、自ブランド内でも秋冬商品と春夏商品がほとんど変わらないということにもなる。
POSデータは正しいがそこをどう考察できるかが重要で、ベーシックアイテムが上位を占めるなら、本来ならそのベーシックアイテムを映えさせるためにどんなアクセントとなる色柄・デザインの商品が必要なのかを考えなくてはならない。
黒ジャケットと白カットソーを映えさせる色柄はなんだろう?デザインは何だろう?
それを考えて投入しないと単なる無印良品の類似店舗になってしまう。
そして、河合さんもご指摘のように、QRにのめり込み、POSを妄信した大手アパレルはワールドを筆頭にもれなく経営危機に陥っている。
これ以上わかりやすい結果があるだろうか。
ワールド、イトキン、ファイブフォックス、TSI(旧サンエーインターと東京スタイル)、三陽商会、フランドルがその結果を反映している。
以前にこれを違う文面で書いた際、ワールドの従業員から怒りの声が出たと、当時の労働組合執行委員から聞いた。
知らんがな。(笑)
経営陣が怒るなら理解するがなぜ従業員が怒るのかまったく理解できない。そんなすばらしいシステムならワールドの経営は今も隆々としていたのではないのか。
そんな考えの人間が集まっていたから経営が傾いたのではないのか。
かつての大手アパレル出身のコンサルタントは多々いるが、その当時のやり方をいまだに彼らから導入しようとしているアパレルやブランドが多数あることに驚いてしまう。
これほど結果がはっきりしているのにどうして今更それを求めるのか理解不能だ。
そういう業界だから凋落が止まらないのではないか。

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「知名度主義」の人材起用がアパレル業界を低迷させている
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n50ca3a6bf56c
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ネット嫌いの会社がなぜかAmazonに出品している(笑)

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