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南充浩 オフィシャルブログ

今改めてカイハラを見直したい

2011年9月2日 未分類 0

 先日、2回目の和歌山県高野口産地のヒアリングが終わった。今回は4軒回った。
残りはあと4軒である。

さて、その中の雑談で「今年もまた勉強会を開かないといけない。講師は誰が良いだろう」という話題となった。
高野口産地の各企業が聴講する勉強会には、毎回、同じ生地メーカーや染色工場などの製造業で成功しつつある方々をお招きしている。

その講師選定の条件に耳を澄ましていると「もっと高額高付加価値の素材開発を得意とする生地メーカーが良いのではないか。今後さらに高付加価値素材を開発せねばならない」との声。

これには率直に疑問を感じた。
ここで言う「高付加価値素材」というものはどういう定義だろうか。
おそらく、「ものすごく変わった織り組織または編み組織を持った、表面変化に富んだ素材」なのではないかと思う。もしくは「ものすごく機能性に優れた生地、超強力吸水速乾とか発熱生地とか、冷却生地など」ではないかと思う。

国内の生地メーカーの言う「高付加価値素材」とはこの2つに尽きる場合が多い。

しかし、ものすごく変わった組織の生地を毎シーズン開発するのは並大抵のことでは無理である。かなりの高頻度で生み出しても3シーズンに一回とか、3年に一回とかの割合になる。

また超強力な機能性を持った素材を「高付加価値」とは言わない。それは「高機能性素材」である。

そうした会話を耳にしながら、ふと、デニム生地の最大手メーカー、カイハラを思い出した。
広島県福山市に本社を構え、広島県内に自社工場を抱えている。
現在はデニムブームが終わって工場稼働率が落ちているとはいえ、いまだに年間売上高は100億円を越える。
海外生産ゼロの完全国内生産でありながら、欧米ブランドにもデニム生地を輸出している。

さらに言えば、デニムという生地はこだわりや蘊蓄の宝庫ではあるものの、まったく目新しい織り組織を持った生地などは存在しない。見た目にはあまり変わり映えのしない定番素材である。
その何の変哲もない定番素材を人件費の高い国内工場だけで生産しながら、欧米ブランドとも広く取り引きを行っている。

国内生産のみでこれほど大規模な売り上げを維持し、海外にも輸出できている産地企業は類を見ない。

変にこねくり回した織り組織・編み組織のファイバーアートみたいなヘンテコリンな生地を開発する企業よりも、デニムという定番素材を国内で製造しながら、海外でも高い知名度を得ているカイハラこそ講師にふさわしいのではないかと思う。

すでに10年ほど前に、カイハラは経済紙や経済番組でも採り上げられており、今となっては目新しさはない。しかし国内生地メーカーにとっては、まだまだ学ぶべき点が多いのではないだろうか。
高い人件費の日本工場で製造するカイハラデニムが、安い人件費の中国デニム生地メーカー黒牡丹や、パキスタン、トルコのデニム生地メーカーといかに戦い、ある程度の勝利を収めたのかは、今改めて参考になる事例ではないだろうか。

というわけで、講師にはカイハラの貝原良治会長を推薦しておいた。
何分、発言に影響力がない筆者なので採用されるかどうかはわからないが。

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