経済紙・一般紙においてはユニクロと同じくらい、しまむらに関する記事は奇妙なものが多い。
例えばこれだ。

しまむらが仰天戦略転換、都心出店でユニクロとガチンコ勝負
http://diamond.jp/articles/-/163124

この論調はピンと来ない。
要するに伸び悩んでいるしまむらが都心一等地に出店するだろうという記事だ。

確かにしまむらの新規出店先は最早都心にしか残されていない。
しまむらはアベイルなどの全業態を合わせて国内2000店舗以上ある。
しかし、そのほとんどは地方・郊外のロードサイドに出店されており、都心店は数えるほどしかない。
東京都心でいえばお台場、高田馬場、三軒茶屋しかなく、その3つともが都心一等地とは言い難い場所である。

地方郊外に2000店舗もあれば新規出店先を求めるとするなら、もう東京都心一等地や横浜、名古屋、大阪、札幌、福岡などの大都市都心しか残されていない。

だから、今後、都心出店はありえるだろうが、この記事の論調は正直まったく賛同できない。

しまむらが都心に出店できなかった理由は過去にほかの記事でいくつも述べられているのに、それをまるで参考にしておらず、記者の思い込みを書き連ねているとしか思えない。

都心でユニクロとガチンコ、いかにもマスコミが好きそうな書き口ではないか。(笑)
笑わせてくれる。

はっきり言って、ガチンコしても都心では勝負にならないだろう。

1店舗あたりの売上高がユニクロとしまむらでは全く違う。
経済紙の人たちはなぜ、1店舗あたりの平均売上高を比べることをしないのか疑問で仕方がない。

ユニクロから見ると、8000億円で800店舗だから、1店舗当たりの平均売上高は10億円ということになる。
しまむらは全体で2000店舗で5650億円の売上高だから1店舗あたりの平均売上高は2・5億円ほどということになる。

そもそも、しまむらの方がユニクロよりも店舗数が2倍以上多いのに、売上高はユニクロよりも2500億円も少ないのである。
それは取りも直さず、しまむらの1店舗あたりの売上高がユニクロよりも大幅に少ないということを表している。

そのしまむらがいきなり都心に出てきたからと言って、売上高が何倍にも増えるだろうか。
ちょっと考えられない。

ユニクロは地方店でもかなり売上高が高い。聞いている話だと、大阪南部のイオン内(要するに郊外)にテナント出店している店舗でさえ、毎日500万円くらいの売上高がある。チラシを撒いた日には800万円にまで増えるという。
1日500万円で計算しても1か月で1億5000万円となり、年間だと18億円となる。しまむらの郊外店の売上高とは大違いだ。

しかも、しまむらはあのチープ感満載の店作りである。

郊外ロードサイドの路面店だからあれでもそれなりに見ることができるが、整備された店作りの店舗がひしめき合う都心一等地で、あの店作りをされれば大幅に見劣りする。
現に三軒茶屋の店だって周辺の他社店舗に比べれば格段に見劣りする。

それでは売れるものも売れない。
「物が良ければ売れる」とか「知名度の高さだけで売れる」と考えるのはお馬鹿さんしかいない。
そんなもんだけで売れるならエドウインのジーンズはもっと売れてるだろうし、リーバイスのジーンズももっと売れている。

商品の良さや知名度と同等に店作りも必要なのである。

しまむらは売上高の低さをカバーするために、家賃・土地代が安い地方のロードサイドへ出店を続けてきた。
またローコストオペレーションを徹底し、正社員ではなくパート・アルバイト主体の従業員配置としている。(人件費の削減のため)
家賃・土地代の高い都心に出店するためには売上高を劇的に増やすほかない。
しかしあのチープな店作りとこれまでのローコストオペレーションではそれは不可能だろう。

仮にユニクロ並みに集客できたとすれば、それを捌くにはユニクロ都心店並みの人員が必要であり、人件費の増大は避けられない。

また都心だと最低賃金も田舎よりは高いからその部分でも人件費は増える。

さらに、最近は自社企画商品も増えたとはいえ、仕入れ品が今でも相当な割合で残っている。
しまむらの仕入れ原価率はそれほど低くないから、今の薄利体質のままでは、家賃や人件費が高い都心店を維持するのは難しいといえる。

しまむらの現在の収益構造と社内体制では都心一等地に大量出店するということはかなり難しいと考えられる。

そして、しまむらのネット通販についても勝手な想像のもとに書いている。

しまむらがネット通販の開始を発表したがそのときは、個別の自宅に配送するのではなく、しまむらの店に運びこみ、注文者に店まで取りに来てもらうという仕組みである。
これはネット通販というよりは、ネットを使ったお取り寄せサービスといえる。

逆にいうと、なぜ、この段階に及んでもしまむらは従来型のネット通販に参入しないのか?という疑問が湧く。

以前にここで紹介したようにネット通販が盛んな米国に出店したイギリスの低価格ブランド、プライマークが苦戦をしているという報道がある。
理由はネット通販に対応していないことが挙げられている。

しかし、プライマーク側としては「薄利低価格商品をなので、宅配まで手掛けると利益が削られて立ち行かない」と主張していたが、しまむらが宅配ネット通販に参入しない理由は、これと同じなのではないかと見ている。

となると、この記事のように手放しで「ネット通販に参入する」なんてことはちょっと想像できない。

たしかに、地方・郊外を埋め尽くしたしまむらの残された新規市場は都心一等地とネット通販しかない。
だからといって既存のしまむらのビジネスモデルではどちらも対応しにくい。対応できるならもうとっくにやっているのではないか。
ネット通販はここ10年くらいのトレンドだから置いておくとしても、都心一等地への大量出店なんていうのは、ユニクロの例を引くまでもなく、何十年前から存在する拡大の手法である。

それがありながら2018年の今まで手付かずだったということは、しまむらにはそれができない理由があると考えるのが適切だろう。

当方はその理由の一つとして、しまむらの薄利多売のビジネスモデルでは、都心一等地でのコストをペイできないからだと見ている。
もちろん、ほかの理由もあるだろう。

もし、都心一等地への大量出店と宅配ネット通販に参入するなら、新たなビジネスモデルの構築が不可欠になる。
口で言うのは簡単だが、既存の体制を捨てて新たなビジネスモデルを構築するなんて博打みたいなものだから、失敗する可能性もかなり高い。そのリスクをわざわざ冒すことをするだろうか。常人なら決断しにくい。
当方がしまむらの経営者なら間違いなく躊躇する。

メディアが軽々にいうような「しまむらの都心一等地大量出店、宅配ネット通販参入」というのは、現段階では騎乗位 机上の空論、ファンタジーに過ぎないといえるだろう。

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「知名度主義」の人材起用がアパレル業界を低迷させている
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n50ca3a6bf56c

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