USJを再生した森岡毅氏のダイヤモンドオンラインの連載が最終回を迎えた。

USJ再生の森岡毅が語る「マーケティングの知識、経験、予算がない企業がすべきこと」
http://diamond.jp/articles/-/158739

今回は具体的な施策ではなく、原則論を述べておられるが、原則論の方がどんな分野に対しても応用が効く。
中華には兵法書があまたあったが、最高の評価は孫子である。
「孫呉の兵法」と孫子と並んで評される呉子は現代ではそれほど評価されていない。
なぜなら、当時の具体的な施策についての言及が多く、現代には応用できないからだという研究者の意見を読んだことがある。
一方、原則論が多い孫子は現代にも応用できるという評価を受けている。

それでは見てみたい。

本質的にはもっと大事なことがあります。そのポイントをここでお伝えするのですが、大前提として、高いギャラを払ってマーケターを雇ったり、マーケティング部を作ったりすることができないなら、社長自身がマーケターになるしかありません。
 といって、高度なマーケティング技術や知識が必要なのではなく、まずは次の3つについて考えてみてください。

(1)貴社は自分が戦っている市場を理解していますか?
(2)貴社の消費者を理解していますか?
(3)貴社の強みを理解していますか?

まず、ここだが、どうだろうか。
このブログを読んでくださっているのは繊維・衣料品業界の人が多いと思うが、苦戦している企業やブランドはこれができているだろうか?

例えば、(1)については理解を間違えていることがよくあるのではないかと思う。
繊維・衣料品の市場については、よくあるのはこのどちらかではないか。

1、とにかく低価格商品が強い
2、二極化で高い物か安い物しか売れない

1の場合は、価格競争に自ら追随して疲弊する企業やブランドが多いし、2の場合は、価格競争を避ける目的からむやみな高価格化を図る。

当方が見てきた繊維・衣料品業界の企業・ブランドにはこの2つのケースが多かった。

多くの経営者は「今、売れるものは何か」を必死に考え、商品を考えることで頭をいっぱいにしてなんとか経営を成り立たせていますが、もっと大事なのは自社の商品を考える前提となる「市場の構造はどうなっているか?」あるいは「消費者は本質的に何を買っているのか?」を掴むことです。

とのことだが、「今、売れるものは何か」しか考えていない企業・ブランドは繊維・衣料品業界には本当に多い。
ユニクロ商品への追随しか考えていない大手総合スーパーの商品施策はこれしかない。
1900円のフリースが売れれば1900円のフリースを、ヒートテックが売れればホットナンチャラという名前の保温下着を、ウルトラライトダウンが売れれば軽量ダウンを、ジーユーが990円ジーンズを発表すれば980円ジーンズを、という具合に常に半年から1年遅れで追随してきた。
しかし、見た目と価格をまねることに精いっぱいで、肝心の商品クオリティはユニクロよりも低い場合が多く、いくら価格が同じでも「粗悪品」は売れないので、ことごとく失敗に終わっている。

そうはいっても、低価格というのは大きな武器だからそれは活用すべきだが、ユニクロと同じような見た目の商品を発売しても意味がなく、それとは異なる機能、デザイン、品質の商品を発売するべきである。
しかし、衣料品業界は長らく「トレンド」を体現することが「売れること」だったから、それと同じ感覚で「ユニクロ商品」に追随してきたのではないかと思う。

スキニージーンズがトレンドだから細身のジーンズを発売するということと、ユニクロのフリースが売れているからそれを真似ることは、似ているようで大きく違う。
お分かりだろうか?

ドリルを作ったり売ったりする前に、消費者が本当に欲しいのはドリルではなく「穴」であることを明確に理解しておかなくてはならない。howを考える前に、whoやwhatを突き詰めて考えて明確にするということ。

繊維・衣料品業界は「ドリル」に目を奪われてしまう企業やブランドがあまりにも多い。
穴を開けることが必要なら、ドリルでなくても千枚通しでもピンバイスでも構わない。だから千枚通しを発売しても構わないのに、みんなで一斉に「ドリル」を発売する。手段のためのドリルがいつの間にか目的に代わり、ドリルのデザインやら機能性を極限まで追求し、そして売れずに在庫の山を築く。これがここ20年間の繊維・衣料品業界の姿といえる。

その上で

戦略とは「選ぶこと」です。つまり、「何をやって、何をやらないのか」を決めるのです。

「変えてはいけないもの」「変えてもいいもの」の見極め方

マーケティングにおいて大事なのは「本当に消費者が買っているものは何か?」を突き詰めることです。私は「what」と表現をしますが、消費者が買っている本質的な「what」を考えることが重要なのです。

 もともとUSJは「映画のテーマパーク」という面にこだわって運営してきました。それがUSJであり、それを変えてはいけないと、誰もが思い込んでいたのです。
 しかし、お客様がテーマパークに求めている、本質的なwhatとは何か。そんな問いに真正面から向き合ったとき、違った景色が見えてきます。
 人がテーマパークに求めているのは、忙しく、ストレスフルな日常から離れ、エキサイティングな体験をすることです。つまり、ドキドキ、ワクワクを求めてやって来るのです。それは昔も今も変わりませんし、「変えてはいけない部分」です。
 しかし一方で、ドキドキ感やワクワク感を満たす方法論は必ずしも“映画”でなくても、アニメでも、ゲームでもいいわけです。そこに行き着いたとき、USJにとって「変えてはいけないもの」と「変えてもいいもの」が見えてきました。

とのことで、USJが本来はユニバーサルスタジオと何の関係もない少年ジャンプの漫画「ワンピース」とのコラボをした理由もここにあったと推察される。

とはいうものの、「変えるものと変えないものの見極め」というのは本当に難しく、一歩間違えると大失敗を招く可能性がある。
このフレーズを聞いたときに、真っ先に思い出されるのが、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋・前社長である。

2016年に断続的にインタビュー取材する機会に恵まれたが、その際に盛んに登場したのがこのフレーズだった。
凋落する百貨店を再生するために変えるものと変えないものの見極めが重要だということで、大西・前社長は「ファッションの伊勢丹」が変えないものの1つだという認識だったが、それは果たして正しかったのかという疑問は今でも個人的には感じている。
新宿本店はその通りだと思うが、他の地方店はどうだろうか。
地方はそういう「最先端ファッション」「高級ファッション」を強く求めているだろうか?

当方がファッションに疎く、高級ファッションなんて買えない貧民だから余計にそう思うのかもしれないが、そういうものを求める層は本当に少ないのではないかと思う。

低価格な粗悪品は論外として、そこそこの値段でそこそこに見えるファッションという需要がマス層の需要ではないかと思う。
じゃあ、「最先端ファッションの伊勢丹」というイメージの固定化は三越や他の地方店にとってはそれほど必要ではないのではないか。
逆にそのイメージが強くあったから、ブランドラインナップがショボかったJR大阪三越伊勢丹は失敗してしまったと個人的には見ている。

今回の森岡毅氏のマーケティング原則論は、他の繊維・衣料品企業も大いに参考になるのではないか。
「目的」ではなく「手段」にばかりこだわり、手段を目的化してしまっている企業やブランドがあまりにも多すぎる。それが繊維業界の苦戦の一因といえる。

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大手広告代理店を使って残念な結果を甘受する残念な国内アパレル 企業
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n9a5a776d532a

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