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南充浩 オフィシャルブログ

「仕様」や「使用素材」だけでは洋服は差別化できなくなった

2018年1月23日 お買い得品 0

今日はちょっと軽めに。
1月の半ばを過ぎると、バーゲン品の売れ残りがさらに値下げされる。
投げ売り価格になる商品も多いが、バーゲンでも売れ残っている商品だからなかなか売れ辛い。
いくら安くても要らない物は要らないのである。
とはいえ、根っからの貧乏人である当方としては、そういう投げ売り品の中から「使えそうな物」を発掘するのが趣味であり、だいたい夏冬のこの時期に破格値の商品を購入する。
バーゲンの売れ残りは鮮度が落ちているから、買うべきではない。
着る期間が短いから買うべきではない。
新商品はそれだけ鮮度があっておしゃれに見えやすいから定価でも買うべき。
だいたい、衣料品好きとかファッション好きからはこういう指南があるが、実は当方はそれは半分くらいは本当だけど、半分くらいは嘘だと思っている。嘘は言い過ぎなので、聞く必要がないと思っている。
今の時期なら、春先にも使えそうな生地の薄さの商品も投げ売りされている(多分、秋物)し、新商品だからといって必ずしも似合う色柄・デザインでもない。
極端な話、「黒無地でベーシックな形(丸首かVネックでビッグシルエットでも異様なタイトシルエットでもない)の綿セーター」が投げ売られていたとしたら、これは別に来年も再来年も着られる。
投げ売り価格で買えば良いのである。と当方は思う。
まあ、そんなわけでいろいろと物色しているが、今年1月の店頭でいうなら、ユニクロが圧倒的だと思う。
あとはアダストリアのネット通販か。ここはタイムセールだとか期間限定でのさらに値引きだとかそういうことをネットで良くやっている。こまめにチェックすれば格安品が手に入る。
買うつもりがなかったのに買ってしまったものとしては、ユニクロUの2017秋冬物のウールブレンドチェスターコートが挙げられる。
定価12990円が7000円引きの5990円に値下がりしていたので思わず買ってしまった。
7990円くらいの値下がりだったら絶対に買ってなかった。
表地の素材組成はウール55%・ポリエステル45%で、裏地組成は胴がポリエステル65%・綿35%で袖はポリエステル100%である。ただし総裏ではない。
以前にも書いたように、このコートはウール混とはいえ、よくあるウールコートのように「ホワっ」とした暖かさはない。
むしろ学生服や公共交通機関の制服っぽいツルっとした肌触りで、強度はあるのだろうが、真冬には寒い。
またこれは完全なる推測でしかないが、このウールは強撚糸使いなのではないかとも思う。だからこそ余計にツルっとしているのではないか。
こういう商品なのでよほど安くない限りは買わないつもりだった。
真冬に着用は難しいので、着るとするなら春先と晩秋くらいだろうか。
インナーにダウンを着こめば真冬に着用できるだろうか。総裏ではないし。
そういう具合である。
売れ残っていたアーモンド色みたいな茶色を買って着用してみると、書いてある通りに今のトレンドのビッグシルエットである。
50歳手前のオッサンが着ると、25年前のコートを引っ張りだしてきたと思われないだろうかとヒヤヒヤした。

筆者着用
10年くらい前に2900円くらいに値下がりしたGAPのスタンドカラー厚手カーディガンと、3年前に1990円に値下がりしたユニクロのニットジョガーパンツ、3990円に値下がりしたリーボックフューリーライト


 
 
背中には切れ込みがない。ノーベントである。
センターベントやサイドベンツに比べてフォーマル感があるというノーベントだが、着用してみると、着心地はいまいちである。
ビッグシルエットなので、窮屈感は全くないが、前ボタンを留めると、ロング丈なので裾が足に絡みつく。
まるで静電気でスカートが足にまとわりついているみたいでなんだか気色悪い。
これはセンターベントにして生地が動くようにすべきだったのではないかと思う。
必然的に前を開けたままで着るが、前を開けたままだと風が強い日などは寒い。やっぱり真冬には適さない。
で、買ってみて気が付いたのだが、袖が変わっている。
袖の前は普通の袖(セットインスリーブ)だが、袖の後ろはラグランスリーブになっている。

セットインスリーブになった袖の前部分


 

ラグランスリーブになった袖の後ろ部分


吊るした感じ


 
下げ札にも「ハーフラグラン」と書かれているが、下げ札に書かれていることは気が付かなかった。
下げ札にはハーフラグランと書かれているが、スプリットラグランとも呼ぶらしい。
古くはアクアスキュータムのトレンチコートなんかには使われていたとネットでは表示されている。
当方が好むような低価格ブランドではあまり使われていない。
縫製やパターンについて詳しくない当方が素直に考えても通常のセットインスリーブやラグランスリーブよりは縫製がめんどくさいだろうなと思う。だから低価格ブランドではあまり使われないのではないか。
前と後ろで形が違うから縫うのはめんどくさいだろうなと素人的には感じる。
こちらに詳しい。
https://note.mu/hagy_e/n/ncd1317aa4ff0
プロのパタンナーからしてけっこうめんどくさいらしい。
効能としては、いろいろな方からツイッターでご教授いただいたのだが、「腕が動かしやすい」とか「脇下にマチがあるので運動量をカバーできる」とか、そういうことがあるらしい。
しかし、このブログで書かれているように、オーバーサイズのコートにそういう工夫が必要だろうかと疑問を感じる。
もっとタイトなシルエットならそういう工夫は必要だったかもしれないが、ゆとりのあるオーバーサイズならスプリットラグランなんてめんどくさい仕様にする必要はなかったのではないかと思う。
マチなんて取らなくても十分楽に動けるのだから。
それはさておき。
ユニクロが13000円のコートでこういう「凝った」ディテールを使用するなら、最早、縫製仕様やディテールでの差別化は不可能になっているということだ。
「チェーンステッチだから云々」とか「〇〇仕立ての縫製仕様だから云々」というのがこれまで長く、衣料品の差別化の理由になってきた。
けれど、ユニクロが13000円のコートでこれほど「凝った」仕様をするなら、「仕様」だけを理由に差別化・高価格化することは事実上不可能だということである。
単に「仕様だけ」を主張するなら、「ユニクロは13000円で発売している」と反論(この反論がすべて正しくはないが)されてしまうからだ。
仕様や素材、スペックだけではない「価値の創出」がアパレルブランドには求められているということになる。
それができないアパレルブランドは消え去ることになる。
オンライン上では完売で、一部店舗に残っているくらいだが、もし見つけたなら5990円に値下がりしたこのコートは絶対に買いである。
春先、おそらく4月上旬くらいまで着られるはずで、また今年の晩秋から初冬にも着られるだろう。

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値段を3割下げてもシップスは復活しない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n529899609bdc
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https://www.instagram.com/minamimitsuhiro
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