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南充浩 オフィシャルブログ

スーツは労働ユニフォームだ

2011年8月8日 未分類 0

 ファッション業界では「機能性を謳うのは実用衣料」という考え方がある。
軽いストレッチ機能くらいなら「ファッション」の範疇内だが、吸水速乾や防臭、抗菌、保温あたりになると、
「実用衣料」と区分される。

そのためファッション業界の人々の理想形は、「機能は装備しているがそれはおまけで、あくまでも『ファッション』として認知されて購入してもらう」こととなっている。この意識は、当然のことながら、百貨店や高額セレクトショップのスタッフに色濃く受け継がれている。
反対に、量販店や定価各専門店では「機能性」を打ち出して販売を行う。

しかし、今後、あえて「機能性」を切り口とするのも一つの方策ではないかとも思う。
一番、機能性を採り入れる必要があるのが、メンズのビジネススタイルだろう。
スーパークールビズは来年以降も電力供給が回復しないため、継続される。また、今冬はそれまで掛け声倒れだった「ウォームビズ」も本格的に需要が伸びると予測される。

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(ザ・スーツカンパニーの今夏店頭)

これまで、オフィスの冷暖房の温度設定がおかしかったのは、メンズのスーツスタイルが元凶だった。

スーパークールビズにおいては、今後は吸水速乾だけではなく、ウオッシャブル、接触冷感や防シワとか防アセ染み加工などの機能が求められるだろう。余談だが、着用していると皮膚の表面温度を1度下げてくれるという衣服が開発されれば飛ぶように売れるだろう。
また「ウォームビズ」では発熱保温とか静電気防止、軽量化などの機能がこれまで以上に求められる。

ちなみに先日、ワールドカップ優勝を成し遂げた女子サッカー日本代表チームのスーツはワールドの「アンタイトル」だが、そこにはウオッシャブル機能が付いているという。

ウォッシャブルがクール なでしこスーツの「機能性」
http://otona.yomiuri.co.jp/pleasure/fashion/110726.htm

その文中にこんな一節がある。

節電による冷房の自粛によって、消費者自身が服の「機能性」に敏感に反応しています。なでしこジャパンの高機能スーツによって、さらにその市場が広がるものと考えられます。

今後のビジネススタイルではレディースだけではなく、メンズも機能性が多いに重要視されるという予想である。

これまでのメンズスーツは、高級な物になればなるほど、手入れが難しかった。
以前にも書いたことがあるが、雨に濡れると乾いた後も変色したままになるイタリア製素材や、2日続けて着用すると袖口が擦り切れるという超デリケートなイタリア製素材などが「高級の証」としてもてはやされてきた。
しかも価格は安くて7~8万円、10万円を越えるものも珍しくない。

平均的なサラリーマンがこんなに手入れが面倒で、こんなに高い商品を欲しいと思うだろうか?貧乏な自分は絶対に思わない。
スーツを労働ユニフォームとして見なしている日本のサラリーマンにはどう考えても不向きな素材である。

一方、機能性スーツはといえば、吸水速乾やウオッシャブルなどの機能が付いていて、2万9000~49000円程度である。量販店の平場なら1万円や7000円で販売されているかもしれない。
この程度の価格なら普通のサラリーマンでも「一度試してやろう」と思える。
また労働ユニフォームの価格は安ければ安いほどありがたい。

百貨店関係者や古き良き時代を知っているファッション関係者は「嘆かわしい」と感じるかもしれないが、そんなものは一顧だにする必要もない。

節電によるスーパークールビズ、ウォームビズによって、今後は機能性衣料がさらに需要を拡大すると予測される。

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