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南充浩 オフィシャルブログ

ネット通販はアパレル再生の切り札ではない

2017年12月21日 ネット通販 0

アパレル業界の多くの人は自分の頭で物を考えようとしない。
メディアの記者も似たようなところがある。
アパレル業界の人は自分たちが考えることが苦手だということを自覚している場合が多いが、メディアの記者は自分たちは考えていると思い込んでいるから、アパレル業界人よりメディアの記者の方が性質が悪い。
両者とも極めて雰囲気に流されやすいから、何かヒット商品があるとそちらに右向け右となってしまう。
今ならさしずめ「ネット通販」「EC化」である。
アパレル各社の決算報告書には判で押したように「EC強化に取り組む」「EC化比率を伸ばす」と書かれてあり、まさしく「アホの一つ覚え」としか言いようがない。
それを的確に捉え警鐘を鳴らす良記事があった。
ネット通販はアパレル再生の処方箋ではない
ファッションアプリCEOが指摘する“総EC化時代”のワナ
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/092900168/121400005/?P=1

ECでは消費財とか定番ものしか売れません。ECもリアル店舗も分け隔てなく考えるのがあるべき姿ですが、今のアパレル企業は「ECやっていると言わなきゃいけない」という雰囲気すらある。結局は設計の話ですね。EC化が進んでいるから先進国というワケではないんですよ。例えば香港のEC化率は1~2%しかありません。売り場と住む場所が近いので、ECを使うまでもなく済んでしまうんです。

とのことで、まさしくその通りだ。
キャッシュレス化論争とも似ており、キャッシュレスであればあるほど先進国というわけのわからない見方がある。
しかし、アメリカも中国も偽札が出回りやすいことと治安が悪くて取られる心配があったことから、極力カネを持ち歩かない文化になっただけのことで、先進性があるからではない。
日本は逆に偽札は出回りにくく、カネを持ち歩いていても取られることがほとんどないから現金を重視しているというだけのことだ。
先進国でも不要ならECを使わないし、発展途上国でも利便性があると感じられたらECを使う。
それだけのことだ。
先日、ユニクロの今秋冬商戦が好調だが死角もあるという記事が東洋経済オンラインに掲載された。
どんな死角があるのかな?と期待して読み進むと思わず「アホか」とつぶやいてしまった。
その記事がいう死角とは、「EC化比率が10%未満であることと、EC売上高が15%増と低い伸び率に終わったこと」だという。
まったくアホの寝言である。
EC化比率が10%未満だとなぜダメなのか?
それをロジカルに説明している記事は見たことがない。
ユニクロのEC売上高は460億円弱で、単独衣料品ブランドとしては断トツの売上高を誇る。
EC化比率がどれほど高くて、何とかの一つ覚えのメディアに「優秀だ」と持て囃されようと、ユニクロの売上高を越えるブランドは国内には存在していないのである。
TOKYOBASEのEC化比率は30%で、どれほどメディアに「優秀だ」と持ち上げられようとも、EC売上高は30億円程度しかなく、ユニクロの足元にも及んでいないのである。
この論法で行くなら、売上高が極限まで低くても、ネット売上比率が高ければ高いほど優秀なブランドということになる。
そんなアホな。
そんなアホな言説に踊らされているからアパレル業界は低迷しているのである

― 各アパレル企業の中期経営計画を見ると、判で押したように「ECの拡充・強化」が入っています。その割に、本当の意味で対応できている企業は少ないように感じます。
小関:店もECも、結局は顧客との接点でしかないんです。それが分かっている企業はうまくビジネスができているが、ECを赤字で続けているところもあります。いまのままECをやるなら、低価格衣料にまでタッチしないと厳しいでしょう。もしくは限定にしてECでしか買えないとか。(中略)
デジタル化は別にEC化ではありません。機械ができることを機械にやらせ、販売員の仕事がだんだん知識労働になっていくとか、これもデジタル化ですよね。現場の販売員がお客さんを持っているんですね。「誰から買うか」みたいなニーズを重視する世界になっていくんじゃないでしょうか。

とのことで、これが冷静なデジタル化の捉え方であろう。
結局、今のアパレル業界のEC崇拝は、実店舗で苦戦しているからそれに代わる売り場への期待値に過ぎず、「隣の芝生は青い」状態でしかない。
単にネット通販をやったってやり方がまずければ全く売れない。
実店舗と同じでネット通販だってボウズの日がある。
先日、知り合いが手掛けているブランドのネット売上高の報告を受けて愕然とした。
先月の売上高はゼロだったのである。
これは実店舗よりもひどいのではないか。
ネット通販を楽園みたいに思っている情弱なアパレル経営者や中間管理職は数多くお目にかかるが、こういう厳しい現実をご存知ないのではないかと思う。
1か月間売上高ゼロというのはなまじの実店舗よりも厳しい。
やり方が悪ければそうなる。これがネット通販の現実である。
ネット通販というのは目的ではなく、売上高を増やす手段にすぎず、売上高が増えるならネットだろうが実店舗であろうがなんだってかまない。そこに立脚して考えないと、食い詰めたネット通販コンサルの養分にされるだけである。

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