原価率明示ブランドが大流行だが、果たして業界人以外にそれに興味を持つ人がどれだけいるのかと疑問を感じる。
また、この分野での先行ブランド「エバーレーン」と後続ブランドにおいては大きな差があり、後続ブランドの透明性は到底エバーレーンには遠く及んでいない。後続ブランド各社の原価率明示は、今のところ、単なる販促手段に過ぎない。

もっとも、原価率明示ブランドが登場した背景は理解できる。
高級ブランドというのは、買い慣れていない庶民からするとその価格設定が不明瞭に感じられる。
宝石や貴金属だとほぼ不変的な価値があるので、何十万円とか何百万円という価格になることに対して庶民でも理解できる。
腕時計も似たような部分がある。

しかし、衣料品にはそういう不変の価値はないし、生地は時間がたてばたつほど確実に劣化する。
だから当方も含めた庶民からすると、「なぜあんなに高いのか?」ということが理解しづらい商品だといえる。

国内では衣料品不況によって、元来は「確かな品質」と信じられていた百貨店向けブランドだが、製造原価率を大きく落とししていた。
使用素材のクオリティを引き下げ、製造工賃も叩く、その割に製造枚数は少ない。
こんな状況が普通になっており、ある百貨店向けブランドではすでに原価率は20%未満となっているといわれている。

それへのアンチテーゼとして「原価率明示ブランド」が登場したのは、当然といえば当然だろう。

製造原価以外の配送料などまで事細かに明示しているエバーレーンの登場が、原価率明示ブランドビジネスに拍車をかけたといえる。

だが、冷静に考える必要があるのは、後続ブランド各社はエバーレーンほど事細かにコストを明示しているわけではない。

例えば

ファッションEC大手のマガシークがPB開始
https://www.wwdjapan.com/521679

ファッションEC大手のマガシークは15日から、プライベートブランド「ネセサリーアンドサフィシェント(NECESSARY AND SUFFICIENT)」の販売を開始した。繊維商社のモリリンと提携し12アイテムからスタート。吸水速乾性やイージーケアなどの機能性とともに、サイトでは簡単な原価も明示し、透明性も打ち出す。

とあるが、「簡単な原価を明示」するだけでは到底透明性なんて打ち出すことはできない。

また、

原価や工場を公開、”10年着続けられる服”を作る日本発アパレル「10YC」デビュー
https://www.fashionsnap.com/news/2017-12-11/10yc-debut/

“10年着続けられる服”をキーワードに、持続可能性・透明性・ストーリー性をコンセプトに掲げる新アパレルブランド「テンワイシー(10YC)」がデビューした。

とあるが、これはかなり「鵺的」なブランドだと感じる。
透明性以外に、「10年着続けられる服」「持続可能性(サスティナビリティ)」という2つの流行りのキーワードを埋め込んでいる。

個人的にはユニクロと無印良品の良いところをパクッてミックスした中国ブランド「メイソウ」を彷彿とさせる。
ベトナムにはこの「メイソウ」のパクりの「ムムソウ」というブランドがあるらしく、パクリが拡散・変化していく様が面白い。
もっともユニクロも初期には、ジョルダーノやGAPをパクっていたし、ユニーククロージングという店名自体もパクっていたからお互い様といえばお互い様だろう。

ここにTOKYOBASEやらファクトリエやらを加えた原価率明示の各ブランドの目的は良いとして、製造原価率の高低は生産数量にも大きく左右されることを認識しておく必要がある。

基本的にミニマムロットに達しない場合、生地代も縫製工賃も染色工賃もアップチャージされる。
逆にミニマムロットを越えれば越えるほどすべては安くなる。

だから、某東京コレクション出品デザイナーのように1型サイズ込みで20枚程度しか製造できない場合、生地代・染色工賃・縫製工賃は割高になる。
だから利益を確保しようとすると店頭販売価格が12万円とかになってしまう。

同じ価格帯のグローバルラグジュアリーブランドと比べると生産数量が格段に少ないので、それらよりも製品のクオリティはずっと低くなる。

一方、ユニクロは平均原価率が40%前後だといわれている。
もっともアイテムごとに原価率が異なるので、原価率の高いアイテムもあれば低いアイテムもある。
値引きを見ていれば、だいたいどのアイテムの原価が高くてどのアイテムの原価が安いのかは薄っすらとはわかる。
二束三文で投げ売りされているアイテムはよほど売れ行きが悪いのか、原価が極端に低いかだと考えられる。
500円とか390円で投げ売られるTシャツ類なんかは原価率は低いのだろうと考えられるし、あんまり売れていないにもかかわらずあまり大幅に値引きされないアイテムは原価が高いのだと考えられる。

それらの平均で40%だということは、アイテムによっては40%超のものもあるということだ。

しかも各アイテムの生産数量は最低でも10万枚を越える。

となると、その生産数量で平均原価率40%というのはすさまじいクオリティだということになり、たかだか1000枚程度しか作れないブランドの原価率50%とは比べ物にならないということになる。

原価率明示ビジネスというのは論理の塊なので、論理的に突き詰めるとこのようになりがちなので、格段に透明性が高く先行しているエバーレーン以外の「なんちゃって透明性」ブランドは苦戦を強いられることになるのではないかと思う。

しかし、洋服やブランドの価値というのは、原価率やら品質の高さだけではない。
それ以外の部分の評価も重要だから、それをいかに高めて訴求するかというのがブランド活動ということになる。

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