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南充浩 オフィシャルブログ

庶民向け商品での「本物追求」が販売不振を招く

2017年12月13日 産地 0

冷たい雨が降ったりやんだりしていた金曜日。
いつものスニーカーのSTEPを覗いた。
スポーツブランドのスニーカー類はここが現在は業界最安値ではないかと思う。
ABCマートは一昨年くらいから露骨に値上げしており、いまだにABCマートが売れている理由がわからない。
同じ品物ならスニーカーのSTEPの方が断然に安い。
もしくはYahoo!ショッピングで探すか。
そこにはベージュのリーボックのクラッシックタイプのスニーカーが3990円に値下げされて並べられていた。
これはなかなかいいな、と思って見ていたら、販売員が声をかけてきた。
「これ本革なんですよ。ほかにも黒とか紺もあるんですがそちらは合皮なんです。お買い得ですよ」。
たしかにお買い得である。
本革でしかもデザインも悪くない。3990円なら破格値だ。
一口にベージュといってもいろんな色がある。
例えていうなら、エンダースキーマみたいな感じだ。

エンダースキーマのスニーカー
http://www.arknets.co.jp/category/ABC_1041/A3_MIP_06.html


値段と材質を聞いて俄然、購買意欲が頭をもたげてきた。
当方の購買意欲は値段で大きく左右される。
どんなに「良い物」でも1万円を越えるものには購買意欲はわかない。
5000円以下に値下げされると購買意欲がわく。
だから6万円もするエンダースキーマはどんなに力説されようともちっとも買おうとは思わない。
どうしよう、買おうと思えば買えるが・・・・。
しばらく逡巡していたが、ふと「本革」という部分に引っかった。
ちょうど雨がシトシトと降っていた。
黒とか濃い茶なら水に濡れても乾かしてクリームを塗れば大丈夫だが、ベージュだと乾かしても染みが残る。
そういうときは全体を水に漬けてから乾かせばある程度解消されるのだが、黒とか濃い茶の本革に比べてメンテナンスがめんどくさい。
おまけに汚れも見えやすい。
白とかベージュなどの淡色は汚れと水の染みに弱い。
灰色の空から落ちてくる雨を見ながらそんなことを考えていた。
よし、心残りではあるが、めんどくさがりの当方としては買わないでおこう。
そう結論付けてスニーカーのSTEPを後にした。
販売員さんごめんなさい。
で、歩きながら内心で疑問が次々にわいてきた。
なぜ、リーボックはベージュだけ本革にしたのだろう?
黒や紺と同じように合皮にすべきだったのではないか?
ベージュだけ本革で作ったから売れ残ってSTEPでたたき売られているのではないか?
だとしたらリーボックの商品計画は失敗ではないか?

などなど。
繊維・アパレル・ファッション業界にはいまだに「本物信仰」が根強く残っている。
「本物は良い」「本物は評価してもらえる」「本物は売れる」と。
だが果たしてそれは本当だろうか?
現に「本物の革」のベージュのリーボックは売れ残って3990円でたたき売られているではないか。
もちろん、本物を評価する客層は存在する。
それは富裕層に限られているといえる。
富裕層向けの商品なら、ある程度「本物」を追求してもそれなりの値段で売れるだろう。
しかし、リーボックのスニーカーのような、低価格品ではないが大衆向け商品で「本物」にこだわることは却って営業不振の原因にもなりかねないのではないか。
大衆向けにはイージーケア性・イージーメンテナンス性が大前提として求められるのではないか。
同じベージュのスニーカーでも合皮なら間違いなく買っていた。
もしかしたら合皮なら値下げされずとも売れていたかもしれない。
話は少し逸れるが、11月29日から12月4日まで阪急百貨店うめだ本店10階で恒例の生地販売会「テキスタイル・マルシェ」を開催した。
さまざまな種類の生地があるので、当然、通常の洗濯には適さない生地もある。
しかし、「洗濯機でザブザブ洗えないと嫌」と言って、購入しないお客は予想以上に多かった。
百貨店とはいえ、大阪の百貨店は阪急に限らず天神橋筋商店街で値切ってるような富裕層でない客も多く来るから、いわゆる庶民がほとんどで、この庶民はイージーケア性や洗濯性をことのほか重視する。
いくら風合いが良かろうと手間暇かけて製造加工しようと、そんなところに価値は見出さない。
まず第1はイージーケア性で、風合いの良さやモノづくりへのこだわりはその次の価値である。
そういえば、先日、こんなお客もいた。
「最近、ウールのセーターの暖かさを再認識した。でも最近はあまりウールのセーターが売られていなくなった。どうしてですか?」と尋ねたお客がいた。
マジレスすると、
1、ウールの値段が高くなって低価格ブランドではコストが合わなくなった
2、ウールは洗濯や保管の手間がめんどくさくて避けられるようになった

理由はこの二つである。
もちろん、それを説明したところ納得してお買い上げいただいた。
「本物」のウールよりもお手軽なアクリルセーターの方が庶民には好まれやすい。
アクリルセーターは洗濯も保管も楽ちんで、虫に食われて穴が開くこともない。
こうして見ると、大衆向けの低価格~中価格帯を企画製造販売している企業が「本物の良さ」なんてことを追求するのは営業方針としておかしいということになる。
もちろん「本物」を知ることは大事だし、それは否定しない。
しかし、それは富裕層向け商品で追求すれば良いのであって、庶民向けの商品でそれを追求することは、単に販売不振を招くだけで何の利益もない。
国内の繊維・アパレル・小売り企業が低迷する理由はさまざまあるが、この「本物信仰」が自社の客層と適合していないというのも一つの理由ではないか。本物を追求したければ富裕層向けの商品を開発してはどうか。
庶民は過剰な本物なんて求めておらず、それよりもイージーケア性・機能性を求めている。
そんな客層に本物を売るのは至難の業だし、売れたところで無用なクレームを引き起こすだけではないか。
本物が売りたければ富裕層向けの商品を開発すべきで、庶民向け商品で「本物」を追求する必要はまるでない。

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