南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2017年03月

イベントに参加し続けるほうが難しい

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 メディア的には「イベント初参加」というのはニュースバリューがある。
とくにそこそこに知名度の高いブランドや企業がイベントに初参加することはメディアとしては「報道する意味がある」と考える。

逆にイベント自体にも参加者にも知名度がなくてもメディアはそれを報道する価値があると考える場合が多い。

ニュースの価値の一つに「常とは異なる状態にあることを伝える」というものがあり、それに照らし合わせると「初参加」「初開催」「初出店」というのは「常」とは異なるから報道する価値がある。
一方、2回目・3回目になると、よほどの知名度がないとメディアは報道する価値を見出さない。

これがメディアの考える現実である。

逆に運営側・出展側からすると「続けられている」ということの方が、「初」よりも重要だと考えることが多い。
なぜなら、初参加・初開催というのは、勢いとタイミングでやってしまえる要素が多いが、数回以上続けようと思うとそれこそ資金繰りやら人員の確保やらが必要となるため、より緻密な組み立てが求められる。

「初」よりも長く続けることの方が難易度が高い部分が多い。

さて、先日で東京コレクションが終了した。
ファッション感度の鈍い筆者にとってはまったくの興味の対象外イベントである。

そんな中、アダストリアの「HARE(ハレ)」がコレクションに初参加したらしい。
そこそこ知名度が高い大手企業ブランドの「初」参加というのはメディア的には報道価値があるから、それなりによく報道された。

しかし、個人的には「初参加したよ」という以外にはほとんど知るべき要素はないと考えている。
断っておくが別にアダストリアが嫌いなわけでもHAREが嫌いなわけでもない。
これがアダストリアでなくハニーズでもライトオンでもユニクロでも無印良品でも同じように考える。
「初参加したよ」ということ以外に知るべき要素はほとんどない。

なぜなら、東京コレクションで大手企業ブランドがショーを開催するのは珍しいことではないからだ。

あまり昔のことをほじくり返しても意味がないから、近年のことを振り返ってみよう。

ワールドのタケオキクチは何度も東京コレクションに参加している。
また、2013年春夏コレクションにはウィゴーのwcが初参加している。

その他、センソユニコ(現、松尾インターナショナル)のブランドが参加したこともあるし、探せばまだまだ出てくるだろう。

大手アパレル企業ブランド、大手SPA企業ブランドの東京コレクション参加は決して珍しいことではない。

メディアではない外野のオッサンからすると、「初参加」よりも今後定期的に参加を続ける方がハードルは高いと思う。

コレクションショーに限らず、合同展示会でもなんでも初参加でそれなりの成果をあげることはかなり難しい。
ここでいう「成果」とはビジネスの拡大、売上高の拡大である。

大手総合展示会の社員を3年間経験したこともあるが、初出展でいきなり予想を越える受注額を獲得できた企業やブランドというのは数えるほどしかない。
統計を取ったことはないが、体感的にはそれは1割くらいだろうか。
残り9割はよくて費用対効果トントン、出展費用の方が高くついたということも珍しくない。

逆に何度か出展をし続けて成果が出てきたという企業やブランドは多い。

海外の素材展示会でも同じで、昨今は助成金やら補助金で3年間だけフランスやイタリアや中国に出展する産地企業が多い。
そういう産地企業の多くは助成金の終了とともに海外出展も終了する。
効果はあんまりなかったと話す産地企業は多い。

一方、国内2位のデニム生地メーカー、クロキは欧州の高級ブランドのほとんどと取り引きがあるが、海外展示会に出展し続けている。正確には10年近くは続けて出展している。
取り引きが成功した理由はさまざまあるだろうが、継続し続けるところが多くの産地企業とは一線を画している。

初参加、初開催だけでやめてしまったほとんどの場合は、それ以降何の効果もない。
1000万円の費用をかけて海外で特大花火的イベントを仕掛けた団体もあったが、現在ではすっかりその事例は忘れ去られている。
もっといえば、300万円のイベントを3年続ける方が効果的だっただろう。

初参加だけで終わるなら、それは単なる「思い出作り」に過ぎない。
wcの東京コレクションなんかはその「思い出作り」の好例といえる。

そういう意味から考えると、せっかくなのでHAREには今後も出展を続けてもらいたい。

ただし、10年以上も出展を続けて「成果」が伴わないなら、それはそれで問題だといえる。
東京コレクション参加ブランドの中には10年以上続けているのにほとんど「成果」のないブランドもある。

それは、作っている物、営業活動のやり方、販促広報活動のやり方のどれか、もしくはそのすべてが間違っているからだといえる。
そういう場合は軌道修正が必要になる。
いわゆる、Plan(計画)→ Do(実行) → Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルが必要だということである。

それができなければ、市場から退場を迫られるのは、デザイナーズブランドだろうが大企業ブランドだろうが関係ない。

東京コレクション
東京事変
EMI Records Japan
2012-02-15






おとぎ話的な欧州工場礼賛では日本の製造加工場は生き残れない

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 衣料品、服飾雑貨品などを便宜的に今回は「ファッション用品」とまとめさせていただく。

「ファッション用品」の国産品をめぐる議論はそれなりに目に付くようになってきたが、多くの場合は微妙なものに終始している。
議論の方向性はいくつかに集約できるが、

1、国産品を手掛ける企業のポジショントーク
2、極度のセンチメンタリズムから来る盲目的国産品擁護
3、グローバル的見地からの国際分業論
4、数少ない自立化成功者からの体験談

ざっとこんな感じの分け方ができるのではないかと思う。
個人的にもっとも価値が高いのが4だが、個々の成功事例は特殊要素を多く含み過ぎていて、広く取り入れられるものではない。
その中のエッセンスを如何に的確にとらえて、自社・自ブランドに適合できるようにアレンジメントするかがカギになるが、その作業を上手くできる人、企業、ブランドは数少ない。

2と3はカードの裏表で聞くべき部分もあるが、全面的に採択はできない。
個人的な意見でいうと2を採用することはかなり危険だと感じる。

1についてだが、これは3分の1から半分くらいは聞くべき提言がある。
問題は、個々の企業やブランドによるポジショントークなので妄信するのは危険だという点である。

日本に「超一流アパレルブランド」がない理由
コスト削減の果てに「日本製の服」は僅か3%
http://toyokeizai.net/articles/-/164345

この記事には聞くべき提言も多いが、ポジショントークの代表ともいえる。

是々非々で内容を見てみよう。

まず、個人的に「是」とする部分を抜粋する。

〇コスト削減が図られる中、メイド・イン・ジャパンを支えてきたのは外国人研修生です。衣服・繊維製品の製造に従事する研修生は1万2000人(公益財団法人国際研修協力機構「外国人研修・技能実習事業実施状況報告 2010 年」)。この背景には、賃金の低い縫製業は国内で人材が集まりにくく、 リソースを研修生に頼らざるをえないという事情があります。

しかも、せっかく技術を覚えてもらっても研修生は3年程度で本国に帰ってしまうため、その度に新しい研修生を招いて育成を行うというループに陥っているのが現状。「技術を後世に継承する」という理想とは乖離しています。

〇では、メイド・イン・ジャパンが復活するためには何が必要でしょうか。私は、以下の3要素が重要だと考えています。

・マーケットを意識する:
日本製の商品は、クオリティへの定評はあるものの、デザインに改良の余地があります。技術は保持していますが、 消費者のニーズに合致した商品をブランドとして提供するという意識はまだ根付いていません。イタリアやフランスの工場は、流行やマーケットを念頭に置いてものづくりを行っています。その意識が日本の工場にも根付けば、技術をより効果的にアウトプットできるでしょう。

・主体性を持つ:
長らく下請けとして機能してきたため、メーカーから提示される工賃や仕様書、生地などに従うという受け身の姿勢がしみ付いています。ブランドとして自立するためには、この体質からの脱却が不可欠。培ってきた縫製やパターンの技術を生かして「こんな商品はどうですか?」といった能動的な提案を行っていくことが大切です。

この部分であり、3要素の3つ目は是認できない。

では「非」とする部分を抜粋してみる。

その1

 「本物のブランドはものづくりからしか生まれない。エルメスも、ルイ・ヴィトンも、グッチも工房から生まれた。君が今挙げたブランドは、日本製なのか?」

その2

 ・非効率なものづくりへの投資:
中国やベトナム、ミャンマーでは、大きな資本を持つ企業が最先端のミシンを導入し、大量の洋服が効率的に生産されています。人件費の高い日本が差別化を図るために必要なのは、旧式力織機や時間のかかる染め技術などを使って、あえて非効率な路線を突き進むこと。たとえば、岡山の旧式力織機で作られるデニム生地がシャネルやルイ・ヴィトンなどの商品にも使われているように、他の工場も非効率なものづくりに投資して独自の付加価値を高めていくべきです。

の2点である。

その1についてだが、イタリアブランドも生産問題に揺れている。「イタリアブランドはすべてイタリアで作られている」なんていう牧歌的な状況ではない。
世界に詳しいこの記事の筆者ならご存知だと思うのだが。

今のイタリアブランドは、中国製・東欧製・アフリカ製などがある。
インド製やトルコ製もある。またイタリアの工場は低賃金の外国人労働者で成り立っている。
少し前の記事だがこういう報道がある。

【グッチ】Made in Italy、崩壊 イタリアブランドの実態
http://buono-italia.com/madeinitaly/

イタリアの代表的ブランドGucciが、外国人労働者を酷使して収益をあげている、ということが、2014年2月の告発によって判明しました。


FURLA|フルラの生産国について|Made in Italy ??
http://pineboy.com/column-13-jun-2016-furla

人気・売上ともに絶好調なブランドの「フルラ」ですが、商品の生産国はイタリア製の他に中国やルーマニア、チュニジアなどがあります。


また、イタリアでは産地そのものが中国人に乗っ取られているという報道も相次いでいる。
代表的なところを紹介すると、少し前の記事だが、

欧州に「丸ごと中国」工場 資本も、従業員も、原料も
http://www.asahi.com/business/intro/TKY201203040488.html

プラートにある中国人経営の衣服工場は約3千。人口19万人のうち中国人は不法移民を含め4万人以上とされ、人口比では欧州最大のチャイナタウンだ。


とある。実質的にプラートのマジョリティは不法移民を含む中国人だということになり、イタリア工場とはいえ、メイドバイチャイニーズが実態であり、我が国の外国人実習生によるメイドバイ外国人という状況と何も変わらない。

この手の各種報道をまとめているのがこのまとめニュースである。

GUCCI, PRADA(笑) イタリア製のブランド品を作っているのは、イタリアに不法滞在の 中国人
https://matome.naver.jp/odai/2146253926029760101


また、これ以外にフランスブランドでも似たようなことがある。
中国工場に出張した際に、「maid in france」と刻印されたパーツが山のように積まれているのを見たことがあるという人も多い。

イタリア製もフランス製も組み立てを中国や外国で行い、最後の加工だけをイタリア、フランスで行えば認可されるというシステムになっている。
このため、中国をはじめとする外国で組み立てが行われているブランドも数多くあるのは業界では公然の秘密となっている。まさか、世界に詳しいあの記事の筆者が知らないとは思えない。

・コストの安い海外生産
・外国人労働者(実習生)に支えられた国内生産

この2点については、日本も欧州もそう大差がないということである。

それを打破するための処方箋として記事では、非効率な物作りへの投資を挙げているが、すでに日本の工場の機械設備は中国をはじめとするアジア諸国に比べて旧式化しており、わざわざ今から投資する必要もなく非効率である。逆に製造加工場の多くは将来不安から設備投資できる状況になく、旧式機械をそのまま使い続けている。

そういう意味ではすでに非効率な物作りは投資するまでもなく、多くで実施されているといえる。

日本の製造加工場の中にはたっぷりと資産を持っているところもあり、そういうところはあくせくと働く必要もない。いろいろなしがらみや制約があるから事業を続けているだけで何かきっかけがあれば廃業したいと考えている。すべての製造加工場が貧困なわけではない。

もちろん資金繰りに窮している製造加工場もある。
この部分での格差が大きいため製造加工場間での足並みもそろいにくい。

日本製を残したい、製造加工場として存続したい、と強く願う工場や業者は存在する。
そういう工場や業者は真の意味で自立化する必要がある。

自立化というと、自社オリジナル製品を開発することだと考える人が多いが、自ら製造加工の仕事を取りに行くということがはじめの一歩である。
過去の製造加工場は、待っていてもブランドから仕事が舞い込んだ。中にはガッチリと特定のブランドの生産ラインに組み込まれることもあった。

そのため、製造加工場にはいまだに待ちの姿勢のところも少なくない。

これを能動的に受注を獲得しに動くということが自立化だと考える。

ファクトリエでもなんでもそうだが、特定の企業やブランドが作ったシステムに乗っかることだけを考えているのでは、過去の受動的なアパレルブランドとの取り組みと何ら変わらない。
それはまた新しい先の下請けに甘んじるということである。

フランスやイタリアは自国で生産しており、日本の業者はさらに非効率的なモノづくりに特化すべき、というようなおとぎ話的な立ち位置で議論をしても国内の製造加工場は復活も存続もできないだろう。

現実を踏まえてその上でどう対処するか、それでも製造加工場を続けたいのか、その意思が求められる。最早、すべての製造加工場が救われることは不可能なので、意思のある工場だけがどのようにして生き残るかを考えるべきだろう。




リストラ時には、優秀な人から辞める・優良なブランドから売れる

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 瀧定大阪がスタニングルアーをジャパンイマジネーションに売却した。
瀧定大阪は赤字続きのブランド事業の縮小を発表したが、その中にあって、スタニングルアーは優良なブランドだった。売却額は公表されていない。

おそらくスタニングルアーなら欲しいという企業はほかにもあったのではないかと思う。
企業でリストラが行われると優秀な人から先に辞めていくが、それと同じで優良なブランドほど早く引き取り手が見つかるものである。

ジャパンイマジネ、スタニングルアー譲り受け
https://senken.co.jp/posts/STUNNING-LURE-Japan%20imagination

セシルマクビーなどを展開するジャパンイマジネーションならスタニングルアーとのシナジー効果はあると考えられるから、スタニングルアーにとっては瀧定大阪傘下でいるよりも良かったのではないかと思う。

ここ数年瀧定大阪は経営の多角化を目指して、ブランド事業を積極的に買収したが赤字が続いていた。

瀧定大阪がブランド事業を大幅縮小、17年1月期に特損300億円を計上
https://www.wwdjapan.com/338457

オリーブ・デ・オリーブを中心にした消費ブランド事業の2017年1月期の事業見通しは、売上高が前期比15.1%減の87億円、営業損失が22億円(前期は18億円の赤字)、経常損失が22億円(前期は20億円の赤字)、税引前純損失が51億2500万円(前期は21億3500万円の赤字)と、赤字が拡大する見通し。

220億円のデリバティブ取引の大型損失と構造改革費用100億円の計上に伴い、瀧定大阪(単体)の純資産は521億円から221億円に減少、自己資本比率は74.4%から50.6%になる見通し。

という状況にあり、ブランド事業そのものは減収赤字が続いており、その額は増える一方だった。

瀧定大阪はスタニングルアー以外に、オリーブ・デ・オリーブ、ミリオンカラッツ、シアタープロダクツ、ライオンハートなどのブランドがあるが、

この数年積極的にM&Aを進めてきたブランド事業は大幅に縮小。売上高の9割を占め、子会社のスタイレムが展開するテキスタイルとOEM事業に経営資源を集中する。

とのことなので、各ブランドは売却先を見つけるか、独立するか、しなければ縮小や廃止になることは間違いない。現在の規模のままで活動が継続できる可能性は極めて低い。個人的にはその可能性はゼロだと見ている。

だが、関係者の多くはブランドの売却先を探すことはかなり難しいという意見を述べる。
なぜなら、先ほどの記事にもあるように事業自体が赤字だったからである。
赤字だということは経営状態が悪いということになり、現在の厳しい衣料品業界において、わざわざ不振ブランドを引き取ろうという会社は極めて少ない。

「売るんじゃなくて、逆にカネを付けるくらいでないと難しいのではないか」とまで言い切る業界人もいるほどだ。

個人的にはこれらのブランド群は、顧客ターゲット層も商品価格帯も商品テイストもすべて異なっており、シナジー効果を発揮するのが難しい組み合わせだと感じていた。
相互補完にも相互競合にもなりえないので、単に存在するだけということになってしまいがちになる。

本来は本業である生地販売との連動が目的ではなかったかと思うのだが、業界で尋ねまわると、それが積極的に行われた形跡もほとんどない。

そうなると何のための多ブランド買収だったのかと外野のオッサンからすると首を傾げたくなる。

本業との連動も、ブランド間の連動もないとなると、ブランド事業そのものを瀧定大阪がやる意味すらないといえる。

おまけにブランド事業全体で赤字拡大しているということは、商品政策か販売政策、広報販促政策のどれか、もしくはそのすべてが間違っていたということになる。

200億円以上にも上る巨額デリバティブ損失が今回のブランド事業縮小の引き金になったとはいえ、仮にデリバティブ損失がなかったとしても減収赤字続きの実績を見ると、早晩、縮小という結末が待っていたことは変わりなかっただろう。今回の巨額デリバティブ損失によって縮小開始時期が少し早まっただけだろう。

瀧定大阪が抱える残りのブランドはどのような結末を迎えるのだろうか。















三越伊勢丹、自壊の予兆

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 三越伊勢丹HDの大西洋社長の電撃解任の背景の全容が各社の報道によってほぼ明らかになってきた。

その中でも日経ビジネス3月20日号の巻頭6ページ特集「三越伊勢丹、自壊の予兆」は経緯があますところなくまとめられており、自分の個人的見解とも重なる部分が多く、秀逸といえる。
ぜひ、ご一読をお薦めする。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/031300536/?ST=pc

各社の報道で改めて浮き彫りにされているのが、大西洋社長は現場の若手社員からはそれなりの信望を得ていたが、中間管理職や経営陣からの信望は得ていなかったということである。

大西社長はマスコミに積極的に顔を出し、マスコミでの発表を行うことで、社内を動かそうと考えていた。
実際に在職中にこれほど頻繁にテレビ、新聞、雑誌などのメディアに登場した百貨店社長はいないだろう。
これを「出たがり」「スタンドプレー」と評する人もいるが、実際に数度に渡ってインタビューしてみると「三越伊勢丹という社名の知名度をもっと高めるために、あえて積極的に出るようにしている」という答えが本人から返ってきたことがある。

それはおそらくその通りなのだろうと感じた。

一連の大西社長の独断専行は、「百貨店が今のままでは存続できない」という強い危機感からだった。
外部から来た人がその組織に対して強い危機感を抱くことは百貨店に限らず珍しいことではないが、生え抜き社長がここまでの強い危機感を持つというのは本当に珍しい。

逆に何がそこまで生え抜き社長の危機感を強めたのか不思議でならない。
ストレートにそれを質問したことがあるが、こちらの尋ね方が悪かったのか、納得のできる返事はなかった。

今回の日経ビジネスの特集でも書かれているように、大西社長の一連の行動は「百貨店事業を守るため」だったことは間違いない。
その真意が経営陣や管理職には伝わらなかったということで、伝え方が不味すぎたという部分は大西社長が反省すべき点である。
伝わらないということは、思ってもいないのも同然だからだ。

よく引き合いに出されるJフロントリテイリングと高島屋という競合他社は、百貨店事業から不動産事業や商業施設事業へと大きく舵を切っている。

強い者が生き残るのではなく、変化に対応できた者が生き残るとよく進化論が引き合いに出されるのだが、百貨店事業から他事業へと舵を切って生き残ることは正解の一つだといえる。
企業は「存続できてナンボ」みたいな部分があり、いくら理想をぶち上げても倒産してしまえばお終いだからだ。

三越との統合で生じた余剰人員を削らず、さらに百貨店事業をある程度守ろうとするなら、大西社長の取った多角化事業(個々の事業内容の正誤は別として)しか方法はなかった。

今回の一連の騒動で、週刊誌からも取材を受けたが、その中で週刊誌記者が「OBや現職に聞きまわったのですが『大西社長は優しいところがあるからリストラは避けたかったんじゃないか』という意見もありました」と話していて、それは事実なのだろうと感じる。

大西社長の一連の改革は未完のまま終わることになるが、どのような完成形を描いていたのかというは一度尋ねてみたい気もする。
日経ビジネス誌の中には、カルチュアコンビニエンスクラブとの提携が、実は「枚方Tサイト」の手法を地方店に導入する目的があったと書かれているが、これはその通りで昨年のインタビューの中でも直接聞くことができた。

解任騒動の決め手となった地方店の業態変更の具体案は「Tサイト」型店への移行をにらんでいたのではないかと推測している。

それにしても、大西社長を解任した結果、登場した新社長が「新規事業よりも構造改革を優先する」と明言したことは、中間管理職や経営陣にとっては、どう映ったのだろう。
否応なく、リストラが先行することになるのだが、大西社長を退任させたことは彼らにとって藪蛇だったのではないかと思える。

記事には「うちはJフロントリテイリングのようになってほしくない」という社員の声が採り上げられているが、杉江新社長の方針を素直に読むなら、Jフロント型百貨店への移行だと読める。


日経ビジネスでは、82年に会社を私物化して解任された三越の岡田茂社長、93年に改革を独断専行して解任された伊勢丹創業家4代目の小菅国安社長の事例も引き合いに出している。
スキャンダルまみれだった三越・岡田社長の解任は当てはまらないとしても、改革を急ぎ過ぎた伊勢丹・小菅社長の解任は、今回と重なる部分がある。

個人的に見るなら、伊勢丹という百貨店の弱みは、新宿店のみが突出し過ぎており、地方店が弱すぎて極めてアンバランスだという部分にある。
小菅社長は新宿本店依存度を下げる改革をしたかったとあり、大西社長はリストラを回避したままで百貨店事業依存度を下げる改革をしたかったという部分が重なる。
そして、その改革はどちらもほぼ独断専行で進められた点は同じだ。

ただ、改革は独断専行でないと成功しないこともあるから、一概に独断専行が悪く、合議制が正しいとも言えない。独断専行ができずに潰れてしまった企業もこれまで数多くある。

記事中には「腰が低く、改革を愚直に進めようとした大西社長に『独裁者』の表現は似合わない」とあるが、それはその通りで、世の中の人が思い描く「独裁者」像とはまるでかけ離れた紳士だった。
アパレル業界にはそれこそ絵に描いたような独裁者社長は多くいる。独裁者、暴君なんて掃いて捨てるほど見てきた。

そういう人々と比べると大西社長の人間性はまったく異なっている。

さて、日経ビジネスが指摘するように、三越伊勢丹は今回の騒動によって、ブランド力は相当傷ついている。
対応を誤るとタイトルにもある通り「自壊」しかねない状況にある。

三越と伊勢丹が合併して百貨店の王者になったと目されたが、実は経営は危機に陥っていたということになる。
統合後10年が経過してその病巣が白日の下に晒されることとなったが、これを取り除くことができなければ、市場から退場することになるだろう。




誰からも信頼される 三越伊勢丹の心づかい
株式会社三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ
KADOKAWA
2017-02-24






ライザップ流の在庫一掃セール?

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 ライザップグループが衣料品販売店を相次いで買収しているが、実際のところ、買収された各社はほとんど以前と活動内容や商品構成が変わっていない。

夢展望の社長が交代したくらいだろうか。
馬里邑は先週まで大阪ではOMMビルで展示会を普段通り開催していた。

ジーンズメイトも買収された時点では随分と話題になったが、店頭は買収前と何も変わっていない。
昨年春と比べると、商品量が減ったように感じるが、それは今回の買収とは関係なくもっと前に決まっていたことである。

ここも大きくはあまり変わらないんじゃないかと思っていたら、今月上旬にジーンズメイトから「シークレットセール」のEメールが来た。

業界でいわれる「通常のシークレットセール」の多くは、シークレットでもなんでもなく、店に入るとデカデカと「SALE」と書かれたPOPが飾られているのだが、今回のシークレットセールは本当にシークレットらしく、店頭にはそんなPOPはない。

Eメールを見ずに来たお客はそういうセールが開催されていることさえわからないだろう。
通常の店頭と同じだ。

今回のシークレットセールはなかなか太っ腹だ。
セール値札になっている商品をさらにレジで半額にする。

ライザップ流の在庫処分キタコレ(・∀・)

である。

目ぼしい商品があるかどうか店頭を物色してみた。
セール値札からさらに半額なので何を買っても良いのだが、1990円とか990円に下がっている物を買う必要はない。
さらに半額になればありがたいが、半額にならずとももう十分に安い。

半額で狙うべきはエドウインやリーバイスなどのナショナルブランドジーンズである。
通常価格7000~15000円くらいで販売されているが、その型落ち品番は、だいたい3~5割引きで売られる。
今回はさらにその半額なのでだいたい2000~3000円くらいにまで下がることになる。

ユニクロの2990円パンツよりも安くなる。

そんなわけで物色してみると結構いろいろと良い商品がある。
これ全部が型落ち品番ということは、どれほどの滞留在庫があるのだろうか。ライザップが在庫一掃セールを企画する理由もわかる。

筆者の好みでいうと、ブルージーンズが1位、ブラックジーンズが2位で、どうしてもそのどちらかに目が行くのだが、すでに何本か持っており、新たに買ってみたところで、他人から見ればどれも大して違わないようにしか見えない。

せっかくの機会なので、普段買わないような色や形を買うべきだと考えた。

実はベージュのパンツを穿くのが苦手である。
ベージュを穿くくらいならグレーを穿く。
ベージュという中途半端なボヤけたカラーが苦手で、とくにこれを下半身に持ってきたときに、ひどく膨張したように自分では見える。

筆者と頻繁に会う人なら気付いているかもしれないが(小汚いオッサンのズボンなんて誰も気にしていないかもしれないが)、ベージュのズボンを穿いていることはほとんどないはずである。
なぜなら、年に数度しかベージュのズボンを穿かないからだ。

それほどにベージュのズボンを使ってコーディネイトを作るのが苦手である。

ということで、ベージュのズボンを買おうと決めた。

生地はやっぱりストレッチ混が望ましい。
50歳手前のジジイになると着ていて楽なのが一番良い。
動きにくい服は金を払ってまで着たくない。

そうすると合致するのがエドウインのジャージーズというシリーズだった。
通常のストレッチ生地をはるかに越えたソフト感とストレッチ性がある。

これのベージュを選んだ。
む、2種類ある。どちらにすべきか?

一つは6500円で、腰ひもがなく通常のベルトを通すタイプ
もう一つは8500円で、腰ひもが内蔵されている。

筆者は腰ひものみで穿くズボンが頼りなくて嫌いだし、2000円高いので6500円の商品に決めた。

IMG_2609


IMG_2610



ちなみに6500円の商品は4割引き、8500円の商品は5割引きされている。
ここからさらに半額になる。

6500円の4割引きで3900円
3900円の半額で1950円

1950円に消費税8%が加算されて2106円となる。

2106円で買うことに成功した。

2106円で買ったベージュのズボンならさまざまな実験ができる。
たとえ穿かなくなったとしてもそれほど痛い出費ではない。

このシークレットセールのURLが面白くてライザップオンラインとなっている。
これを見ても今回の在庫処分は明らかにライザップ主導だということがわかるだろう。

https://www.rizap.online/jeansmate/index.html

世間的にはコストを抑えるにはレンタル洋服を活用すべきだといわれているが、実際のところ、こういう破格値商品は店頭に結構ある。

先日、無印良品でストレッチブラックジーンズを買ったが、定価3980円(税込み)でも十分に安いのに、セールで値札から3割引きとなっており、さらにレジで3割引きされていた。

3980円×0・7=2786円
2786円×0・7=1950円

となり、1950円だったのだが、貯まっていた無印良品ポイント200を使って、さらに200円引きされて1750円(税込み)で買うことができた。

IMG_2611


こういう破格値商品を集めると、1万円あれば5枚~7枚くらい買うことができる。

ブログ読者に「毎月、洋服をよく買ってますね」といわれるが毎月の洋服代はだいたい3~7枚で数千円~1万円くらいである。

一般的な洋服レンタルサービスを利用するよりも支出は少ないだろう。

まあ、そんなわけでジーンズメイトに関しては今後もある程度のライザップ流の仕掛けが出てくるのではないかと思う。今回の在庫処分シークレットセールはその第1弾ではないだろうか。








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