南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2016年11月

その超高価格品を「買える収入のある人」はどれだけいますか?

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 最近は、産地ブランドがむやみやたらな超高価格化を目指すことはなくなってきたと感じるが、5年位前までは「市場は低価格化と超高価格の二極化に分かれている」との思い込みから、いわゆるラグジュアリーブランド並みの価格を目指そうとする産地ブランドが多かった。
またそれを煽る産地でのみ有名なコンサルタントも跳梁跋扈していた。(今もしているかも)

低価格品を目指すことは国内産地には事実上不可能であるから、ある程度高い価格帯を目指さざるを得ない。

初めから「俺は日本発のラグジュアリーブランドを作ってやるぜ」という意気込みをもって事業に取り組むのは賛成だが、そうではないケースがほとんどだった。

多くのケースは「エルメスが50万円で売ってるからうちも同じくらいで売りたい」みたいな隣の芝生が青かった的な取り組みに終始していた。

そういう話を聞いたときには「この人たちは正気なのかな」といつも呆れ果てていた。

仮に、原材料や製造方法がエルメスと同じだったとして、「だから同じ価格にしました」では消費者には通用しない。

まず、商品のデザインが異なる。
いくら原材料や製造方法が同じでもデザインが異なるとそれは違う商品になるから同じ価格で買う人はいない。

次に、エルメスも含めた多くのラグジュアリーブランドの商品価格には、広告宣伝費、販促費、店舗開設維持費用、スーパーモデルとの契約料、などなどの諸経費が含まれている。

逆にそういう活動を常に行っているからブランドステイタスが保たれているわけで、産地ブランドが同じ価格で売りたければ、それらと同じ活動をする必要がある。
同じ活動をしないのであれば経費は掛からないから、商品価格は安くできる。
だったらその安い価格で売るのが適切な商売といえる。

まあ、安いといっても3000円とかではなく、2万円とか3万円になるが。

これらの要素を無視して、原材料と製造法が同じだから、同じ価格で売れると考えられる思考法に驚くほかない。

東日本大震災以降、超高額な産地ブランドとして気仙沼ニットが現れた。

ブランディングありきの取り組みの手法は通常の産地ブランドとは大きく異なり、通常の産地ブランドでは到底及ばない手法といえる。

15万円とか20万円の手編みのセーターなのだが、通常の産地ブランドはこれを目指さないほうが良い。

産地も含めたアパレル関係の経営者・従事者は、どうも「購買できる能力を持った人の数」をあまり考慮しない。

「欲しいなと思う人」が全員その商品を買えるわけではない。
収入が伴っていないと「欲しいな」と思っても買えない。
まれに返済不可能なほど借金してまで買う人がいるが、それは到底通常の金銭感覚ではない。

気仙沼ニットの購買客数はだいたい数百人くらいだと聞いている。
15万~20万円なんていう超高額品はそのくらいが妥当だろう。
今後、購買客数が増えることはあっても1万人を越えることはあり得ないとみている。
せいぜい3千人くらいが極大値ではないか。

従事者が十分な利益をとれるならその規模で続ければ良いと思う。
規模を拡大することだけが正解ではないし、超高価格ゾーンでは「購買できる人の数」に限りがあるので、売上高を無限追求することは不可能である。

990円のユニクロのTシャツは誰でも購買できるが、20万円のセーターを購買できる人の数は限られている。

で、気仙沼ニットに追随しようとする産地ブランドがもし仮に現れたとすると、新たな市場を作るという要素は薄くて、「購買できる人」を分け合う・または分捕りあうということになる。
類似ブランドが出れば出るほど、「購買できる人」を奪い合うことになる。

その結果、どうなるかというと、各社がごく少ない売上高を分け合うことになるか、どこか1社が総取りで、あとの業者は壊滅するか、のどちらかになると見ている。

商材が何であれ、ハイプライスゾーンを買える収入のある人の数は限られており、そこへの参入者が増えれば増えるほど、限られたパイを分け合うということになる。
そして、その中で勝ち残れる取り組みが求められることになる。

通常の産地ブランドや、モノづくり系のブランドがその市場で戦えるかというと、ほとんどが無理だろう。

広告宣伝、販促、店舗の開設維持などの分野で圧倒的に劣るからだ。

逆に産地も含めたモノづくり系の人々が無邪気に「本当に良い物を作れば、どんなに高額でも必ず売れる」となぜ信じ込んでいるのか不思議でならない。

ハイプライスゾーンを買えるだけの収入がある人の数は限られており、その数は少ない。

少ないパイを巡って、ステイタスの高いラグジュアリーブランドと競合するわけだから、勝ち目は極めて薄い。
「日本発のラグジュアリーブランドを構築する」という意図がなくて原材料と製造法のみの理由なら、もう少し「買える能力のある人の数」が多い価格帯へ参入すべきだろう。

激安品を作る必要はないが、もう少しシビアな価格設定を考える方が勝てる可能性は高まるだろう。






商品スペックを過剰に押し出した売り方は必ず価格競争に巻き込まれる

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 商品はなんでもある程度の品質の高さが必要になる。
とくに日本では粗悪品は売れない。たまに売れることがあるが、それは売り方が上手かっただけで、長続きすることはほとんどない。

しかし、いくら品質の高さが必要だと言っても、品質の高さだとか機能性のみを全面に打ち出した売り方では、必ず同等の低価格品が現れ、市場を奪われることになる。

例えば

「4K」早くも値崩れが始まった DMM、50型ディスプレイで6万円
http://www.j-cast.com/2016/11/19283628.html

4Kテレビに早くも格安商品が登場したというニュースである。
まだ4K放送が始まってもいないのに、すでに値崩れしているというすさまじい現象である。

個人的には今のハイビジョン放送で十分高画質なのでそれ以上の4K、8Kというような超高画質なテレビに何の魅力も感じていないのだが、それにしてもこの状況はひどい。
おそらく、他の家電メーカーは「4Kが値崩れを始めているから当社は8Kテレビを強化するぞ」なんて思っていることだろう。しかし、すぐに8Kも絶対に値崩れする。
じゃあ次はなんだろうか?16Kとかを開発するのだろうか。

物性面、機能面、スペックだけをセールスポイントとしているからこういうことが起きる。

そして、工業製品なら必ず、同機能の低価格代替品が登場する。
これは避けられない。逆にこれがあるからあらゆる工業製品は大衆に広まったともいえる。

ちなみにジャパネットたかたの前社長のこんなインタビューもある。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161006-00000005-nikkeisty-bus_all

デジタルカメラでも同じように目先を変えることによって販売増につなげたことがあります。デジカメの出始めのころは画素競争が盛んでした。200万画素のカメラが出たと思ったら、主戦場は500万画素になり、とうとう1000万画素、2000万画素の時代になりました。数字が上がると何かよくわからないけど、高性能になったことは消費者にもぼんやりとは分かります。消費者は最初、性能の進歩を商品の良さと思っていました。

しかし、今や2000万画素を備えたカメラでも1万円しない時代です。

そこで消費者はハタと気付くわけです。カメラは一体何のためにあるのか、と。そこまで行くと消費者は自分が求めていたのは実は、カメラの性能ではないことがわかってきます。

とのことで、画素数の高さのみをセールスポイントに掲げているメーカー、店はここで軒並み価格競争に巻き込まれてしまっているというわけである。
ご理解いただけるだろうか?

コンパクトデジカメならキヤノンやカシオの有名メーカーの商品でも高画素数で7000円くらいで売っている。
単に高画素数のカメラが良いなら7000円のカシオで十分である。
筆者なら7000円のカシオを買う。なぜなら、価格重視の価値観だからだ。

さて、このブログは繊維・衣料品関係に特化しているので、そちらに照らし合わせてみる。

繊維製品、衣料品でもこのスペック重視の売り方は相当に多い。

いわく「〇〇製生地を使用しました」
いわく「日本製です」
いわく「こだわりのナンたら製法で加工しました」
いわく「〇〇機能の素材を使用しました」

ほとんどがこんな売り方に終始している。
いわゆる、「こだわりブランド」とか「高価格ブランド」に限ってこういう売り方が多い。

しかし、繊維製品の製造法や加工法なんて、追随は容易な場合が多い。
スペック、機能面だけならすぐに低価格代替品に追随されてしまう。

例えばカイハラのデニム生地といっても、それはユニクロだって使っている。

ユニクロのジーンズは3980円なのに、どうして同じカイハラ製デニム生地を使って2万円もするの?

というふうに多くの消費者は感じる。
特に「カイハラ製デニムを使用」ということのみを全面に押し出した売り方だとそうなる。

ハリスツイードも同じだし、吸水速乾機能も同じだ。

ダイソーでは500円のハリスツイードのポーチが並んでいるし、吸水速乾機能のある肌着はドン・キホーテでも290円くらいで売っている。

そういうスペックのみを過剰に重視した売り方・見せ方をしていると、確実にダイソーやドン・キホーテなどの低価格代替品にやられてしまう。

思い入れや理念ばかりを過剰に語られても偽善臭くて気色悪いが、それが一切なくスペックのみの売り方では絶対に価格競争に巻き込まれてしまう。
繊維製品、衣料品の多くは、前者か後者どちらかに非常に偏っていることが多い。

そのあたりのバランスを見直す必要が、洋服不振の今こそ必要な作業だといえる。









同じ物なら必ず安い方で買おう

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 今日はお気楽に。

筆者の暮らしは基本的にコストパフォーマンスを最優先している。
衣料品しかり食料品しかりだ。唯一に近い趣味であるガンダムのプラモデルもしかりだ。

同じ物なら安い方で買う。

これが生活信条である。

先日、食料品で失敗をした。
関西生まれの関西育ちで関西在住なので、料理には薄口しょうゆを使う。

スーパー万代ではヒガシマルの薄口しょうゆ1リットルがだいたいいつも198円で販売されている。
つい2週間ほど前に薄口しょうゆが切れてしまったので買わなくてはならなくなった。

その日は198円で販売されており、それを買おうかと思ったのだが、なんだかすぐに安くなるのではないかという予感がした。
しかし、予感は予感で当てにならない。
10分くらい逡巡してから198円でヒガシマルの薄口しょうゆ1リットルを買った。

次の日にスーパー万代に行くと、予感は的中して158円で特売されていた。
40円も高値で買ってしまった。これほどの後悔は久しぶりである。

さらにその次の日にスーパー万代に行ってみると、ヒガシマルの薄口しょうゆ1リットルがなんと128円に値下がりしている。70円も高値で買ってしまった。ちょっと立ち直れない。

これはまったくの勉強不足で、もう一度しょうゆの値動きを捉え直す必要があると痛感した。

食料品の値動きというのは本当に興味深い。
定点観測すればいろいろと気付くことがある。

閑話休題

ガンダムのプラモデルだと、最近はジョーシンやヨドバシカメラなどの実店舗は定価かからの2割引きがスタンダードになっている。
1年半ほど前までは3割引きがスタンダードだったのだが、いつの間にか割引率が小さくなってしまった。

そうなると、ネットで探す方が割引率が大きい場合が多い。

しかし、気を付けなくてはならないのは、実店舗の場合、在庫処分みたいな感じで投げ売りがたまにある。
在庫処分に引っかかるのは発売されてから時間が経過した物が多い。

傾向を分けると、新製品はネットの方が割引率が大きく、発売してから時間が経過した製品は実店舗の方が投げ売られる場合が時々ある。

ということになる。しかし、発売してから時間が経過した製品はネットでも時々かなり割り引かれることがあるので、そのあたりも実店舗に出向いて値段を見てから、その場でスマホでネットの値段を確認するという作業をする必要がある。

ネット通販だとAmazonが圧倒的に価格競争力があると考えられている。
ヨドバシカメラドットコムはAmazonより価格が高い場合が多い。しかし、配送料は無料だ。たとえ50円の商品でも配送料は無料だ。

Amazonは有料のプライム会員になれば配送料は無料だが、非会員は書籍を除いて2000円以上で配送無料となる。

昨年くらいからネット通販を利用し始めたので、価格を比べながらAmazonとヨドバシカメラドットコムを使い分けている。2000円以上ならAmazon、2000円未満ならヨドバシカメラというように。

さらに安値を探るために価格comで調べることも必須である。

つい先日、11月12日にHG(ハイグレード)の新製品でHGCEストライクフリーダムガンダムが発売された。
定価は2160円(税込み)である。

HGにしては価格が高い。
それと個人的にこのストライクフリーダムというガンダムが好きではない。
もっと正確にいうとこのガンダムが嫌いなのではなく、このガンダムに搭乗していたキラ・ヤマトというキャラクターが嫌いなのである。抹殺してやりたいほど嫌いなキャラクターである。

そんなわけでこれは買わずにスルーしていた。
よほど暇を持て余して、ある程度の安売りになるまで買うつもりはなかった。

発売当日からAmazonもヨドバシカメラもだいたい1500円以上の価格で、割引率は低かった。
ヨドバシカメラは1900円くらいだったし、Amazonも1600円は越えていた。

何の気なしに価格comを見ると、駿河屋というショップは35%オフの1420円(税込み)で発売しており、その時点では業界最安値だった。
通常、ヨドバシカメラ以外のショップは配送料が必要なことが多いが、この駿河屋は1300円以上の商品は配送料無料なので、1420円は配送料無料になる。

名実ともに最安値である。

11月は急ぎの原稿もないのでこの駿河屋で買ってみた。
11月13日にネットでポチった。

11月16日に出荷されて17日に到着した。

IMG_2028

(駿河屋から送られてきた商品)


Amazonのプライム会員なら翌日着だが、非会員なら早くて翌日、遅ければ3~4日後になることもある。
ヨドバシカメラは配送料無料なのに翌日着である。ヒドイ場合は12時間後ぐらいに着く。
恐るべき速さである。

しかし、ガンプラなんて別にすぐに着く必要もないから、4日後に着くくらいでちょうど良いのではないかと感じる。

価格comでガンプラの値動きを毎日のように見ているとこういうAmazonでもヨドバシでもない業者が最安値を付けていることが少なからずある。

そういう意味では、食料品と同じで定点観測が必要で、その値動きはなかなか興味深い。

11月26日には、100分の1スケールのREシリーズで、バウというモビルスーツが発売される。
これは定価が3780円(税込み)なのだが、最安値は現在のところまたも駿河屋で、2457円で実に35%オフである。
これは以前から買うつもりだったので最安値を見極めながら購入したいと思う。






アパレル業界はOEM業者も淘汰される時代へ

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 友人の知り合いのOEM会社が廃業を決意したと聞いた。

理由は、倒産案件に引っかかったことと、1社の大手からの取引がなくなったことである。
経営者が高齢にさしかかっていることもあり、「今の業界情勢では、代わりになるような大手は見つけにくい。小さい先を新たにいくつも集める気力もない」との判断から廃業を選択されたと聞く。

たしかに、今のアパレル業界では、大手の寡占化が進んでおり、それに追随できるような成長企業も生まれていない。

ざっと思いつくままに挙げてみる。
ファーストリテイリング、しまむら、アダストリア、ストライプインターナショナル、ユナイテッドアローズ、ベイクルーズグループ、ジュン、トゥモローランド、ウィゴー、バロック、マークスタイラー、マッシュスタイリングラボ、などだろうか。

これらの企業にはすでにいくつもOEM業者が食い込んでおり、新たにそこに割って入ることは容易ではない。
相当の値引きを提示するか、相当のメリットを示す以外に手はない。

10年位前までは、まだ「最近あの会社が急成長しつつある」なんて噂を耳にしたが、2010年以降そんな噂を耳にすることがなくなった。
大手は大手のままだし、小規模は小規模なままで固定化されつつある。

逆に「あの大手が苦戦している」とか「あの大手がつぶれるかもしれない」という噂はことかかないが。

一方で、先日お会いしたニッチでマニアックな商品を企画製造している小規模アパレルの社長は「これ以上の成長は望まないし望めないが、当社の収益はそれなりに順調」とおっしゃっていた。

年商規模は5億円くらいまでが適切なのだという。

旧大手百貨店アパレルが今後回復することはかなり難しいと感じるから、先に挙げた大手の固定化は当分の間変わらないだろう。

そうすると、アパレル業界は、大手の寡占化が固定化するとともに、ニッチでマニアックな小規模ブランドとに完全に二極化することになる。

中間層の企業は難しいかじ取りを迫られるし、厳しい状況が続くのではないかと思う。

かつてなら、OEM業者もそういう多様な中間層に新規販路を求めることができたがそういう状況ではなくなってしまった。

現在、ブランドの廃止・閉店が相次いでいる。
中途半端なアパレルは淘汰されつつある。

それは同時にOEM業者の淘汰にもつながりつつある。
アパレルが増えすぎたようにOEM業者もこの15年間でかなり増えすぎた。

今までなら、成長ブランドが次々と生まれてきたのでOEM企業の取り組み先にも困らなかった。
しかし、成長ブランドはほぼ生まれなくなり、有力ブランドが固定化されてしまうと、新規でOEM業者が食い込むことが難しくなってきた。

これからはアパレル、ブランドの淘汰と同時に、OEM業者の大規模な淘汰も始まると考えられる。

生き延びることがますます難しい業界になってきた。




これまでの延長線上の発想ではアパレル業界は絶対に復活できない

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 先日の日経ビジネスの特集だけではないが、アパレル業界の問題点をかなり率直に指摘する傾向の記事が増えた。昨日紹介した繊研新聞の記事もその一例で内容としてはまずまずだといえる。

これまで「楽しさ」とか「センス」とか「ライフスタイル」とかの薄っぺらい言葉だけで問題点を総スルーしてきたことに比べると、格段に良い傾向だと感じる。

しかし、これに対して「解決法も示してほしい」という声が聞こえるのももっともな話なのだが、この「解決法」についてはあまり有効な手法が示されていない。もちろん、筆者も示せていない。もし示せるのなら今頃もっと金持ちになっている。

ただ、直感的にいうなら、「これまでの延長線上の衣料品事業のやり方」では解決は絶対不可能だと感じている。

例えば、先日、ファッションワールドという大規模展示会があり、そこで栗野宏文・ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブアドバイザーの講演があったらしい。この内容を逐一、野田大介氏がツイートしてくれていたのだが、そのツイート内容を総合した栗野氏の示す「解決法」は極めてスモールビジネスの観点に終始しており、では栗野氏が所属するユナイテッドアローズという売上高1000億円を越えた上場企業でそれが実現可能なのかというと、到底不可能だといえる。

なぜなら、それほどの収益にならないことは目に見えており、株主からの激しい反発が予想される。
栗野氏が示すスモールビジネス的解決法をユナイテッドアローズでは実現できない。とすると、彼は誰に向けてその解決法を示したのかという疑問になる。

うちの会社では実現不可能だけど、興味がある会社は取り組んでみては?

という提案なら不誠実極まりないといえる。

その内容はまた別途紹介するとして、人のつながりだとか楽しさだとか、そういう情緒のみに依存する解決法を取りうるのは、せいぜい地域密着型の10~20店舗くらいまでの規模までだろう。

あとの著名な人々が示す解決法も似たりよったりで、ほとんど効果的な提案はない。
極めて情緒的なスモールビジネスか、極めて物作り脳か、ネット通販を魔法の杖のように見ている能天気派か、時代遅れのチェーンストアオペレーション遵守派か、だいたいその4通りである。
冷静に読めばどれも効果的ではないことはすぐにわかるのだが。

数少ない有効的な解決法だと感じるのは、河合拓氏の記事である。

Made in Japanブームは終わる。大変革を余儀なくされたアパレル業界
http://news.livedoor.com/article/detail/11470311/

かなりの長文なので全文はクリックして読んでいただきたい。

大手アパレルは日本製を次々に打ち出している。しかし、今のMade in Japanブームは一時的なもので終わる可能性が高い。これは、日本企業が「価値」を「ブランド化」してこなかったことと関係がある。

先日、ある業界団体の討議会に参加した。アパレル業界をどうしてゆくべきかという議論が活発になされていたが、業界の常識にどっぷりつかった人は昔のフレームワークから抜け出せず、物事を「XXX系」という括りで語り、「この系」は流行る「この系」は廃れるという具合に昔から繰り広げられている「トレンド議論」を繰り返していた。

しかし、ユニクロや無印など、世界的に成功している企業は、むしろ「トレンド」とは真逆のところにあり、その商品や世界観が持つ本質的な強みで勝負している。一時的なブームに乗っているわけではない。一見「トレンド」を追いかけているように見えるファストファッションも、実は、背景には高度なロジスティックスやデジタル技術という「ビジネスモデル」が競争力の源泉として存在し、トレンドという不確実なばくちで勝っているわけではない。

今、個別企業に求められているのは、多少トレンドを外しても競争力を維持できるブランドを確立することだ。「トレンド論」でなく「システム論」、「ビジネスモデル論」こそ重要なのである。分析の軸が間違っているのだ。

との指摘で、業界内外でのユニクロ論は、価格がどうだとか、デザインがどうだとかの極めて近視眼的な論評に終始している。消費者的視点でいえばそれらは重要な一つの要素だが、大勢にはあまり影響がない。

「ユニクロは良い物を作っているのだから、良い値段で売るべきだ」論なんて噴飯物で、そんなものはユニクロのビジネスモデルには反するからユニクロが顧みることは絶対にない。これを真顔でいう業界人が多いから呆れ果ててしまう。
ユニクロに値段を上げてほしいのはそちらの都合であり、そちらの都合になぜ勝ち組のユニクロがわざわざ合わせる必要があるのか。常識的に考えればわかるではないか。

このあと、アパレル業界の予想将来像として3つの業態をあげている。

1. 高価格帯 百貨店アパレル(メーカー)
2. 中・高価格帯 総合ファッションリテーラー
3. 低価格帯 SPAアパレルリテーラー

そのうえで、

昨今の改革事例をみていると、2のプレイヤーが3をおこなったり、3のプレイヤーが2を行ったりとちぐはぐ感が目立つ。自社のポジショニングを明確にしたい。

とあり、まさしくその通りである。業界の人は直観的に、または「隣の芝生が青い」的考えで業態や取り組みを変える。その結果、わけのわからないブランドが無数に増えることになる。

河合氏は結論として

日本が産業政策としてアパレル業界に取り組むべき課題は、生産地であるアジアのIT、金融、物流といった周辺産業のスタンダードを作り上げることだ。

を挙げる。
もうすでに洋服の97%が海外(とくにアジア地域)生産品となっている現状から考えるとその通りで、アパレル業界や繊維業界が単独でどうこうしようとする取り組みは現在で限界を迎えつつある。
IT、金融、物流などの周辺業界との取り組みが必要になるという指摘はその通りだろう。

これを国内に置き換えてみると、やっぱり個々の機屋だとか染色工場だとかが単独でどうこうできる事案ではなくなりつつあり、それこそ自動車や家電メーカーが構築したような原料から店頭までの有機的な連合を組むことが必要になるだろう。IT、金融、物流との協業も国内といえども不可欠である。

もっともこの国内論は筆者の自前の説ではなく、業界の先輩からの受け売りだが、小島健輔氏のブログでも似たようなことが提案されており、現在考えうる唯一の解決法ではないかと思う。

個々の機屋がデザイナーのアドバイスでチョチョっと商品を作って、店頭に並べたらめちゃ売れて、ハッピーになってしまう。みたいなそんな奇跡はほとんど起きない状況になっているし、もう産地ブランドなんて掃いて捨てるほどある。

単なる産地ブランド、単なる日本製の衣料品なんて珍しくもなく、百貨店では連日その手のブランドのポップアップショップが開催されており、あるプロデューサーがいうように「産地、日本製に対して消費者は食傷気味」という指摘は至極もっともである。
別に「産地、日本製」を否定するつもりはないが、それにプラスされた新しい取り組みがないと、陳腐化してしまい日本製ブームはブームとして終わってしまう。
そしてそろそろ日本製ブームも飽和点に達しつつあると感じる。

もし、繊維・ファッション業界を変革できるとしたら、業界にどっぷりつかって育ってきた人間ではなく、必ず異業種からの参入者になるだろう。
「業界の業界による業界のため」の施策はこれまで散々失敗を重ねており、これ以上はもうノーサンキューである。


ブランドで競争する技術
河合 拓
ダイヤモンド社
2012-05-25







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