南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2016年09月

ド素人の身内にデザインを任せて産地企業のブランド化はいつも失敗する

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 産地企業も純然たる下請けでは生き延びることができないので続々と自社ブランドを開発するようになっている。
で、先日、業界紙でそんな特集を読んだ。

記事の内容はまあ可もなく不可もなく、がんばってくださいねという感想しかないが、商品写真を見たところかなり「???」という感じを受けた。
もちろん、撮影が悪いことも考えられる。
また印刷されたのでそれによって見栄えが悪くなったことも考えられる。

もしかしたら実物はかなり良い感じなのかもしれない。

しかし、画像を見ただけの感想でいうなら、ちょっと購買してもらうのは難しいんじゃないかと感じる商品が多かった。

画像を見た感じだと、素人のデザイン画に基づいて素人が縫製したようだった。

ここからは完全に推測だが、商品デザインをもしかしたら工場のオッサンとかにいちゃんがやっていないか?

あと、このブランドのターゲットは?コンセプトは?テイストは?価格帯は?
工場の社長とかオッサンとかが思い付きで設定していないか?練られたものとは到底思えなかった。

多くの繊維の製造加工業者は「物」にはいくらでも金を支払うが、「形のない物」には1万円の金だって支払いたがらない。
ここでいう「形のない物」とはデザインだったり広報だったりブランドプロデュースだったりマーケティングだったりのことを指す。
これらはオリジナル商品を販売するにおいて必ず必要となる要素である。

けれども手に取って見られるような「物」ではない。

1台何千万円、何億円もするような機械を買うことにあまり躊躇はしない。
知っている範囲でいうと、かなり気軽に機械を買う。

が、デザイナーに支払う1万円は異様に惜しがる。どうせ毎晩酒を飲みに行って何万円も支払っているんだからそれをデザイナーのギャラに回せばよいと思うのだが、そうではないようだ。
このあたりの産地のおっさんのメンタルはまるっきり理解不能である。理解したいとも思わないが。

それはさておき。

ブランドスタート時にデザインのプロを使わないことで、当初の投資額は下げられるかもしれないが、走り始めてからの修正に次ぐ修正にかかるコストを考えると、どちらがお得なのかちょっとわからなくなる。
もしかしたら、素人デザインで素人製作から始まって何年も修正し続けていく方がトータルコストは高いのではないかと最近思い始めている。

また素人デザインで始めたことによってブランドがビジネス規模に育つまでの長い月日を考えるとこれもかなり無駄ではないかと思える。

プロを適切に使えば、その半分の年数でビジネス規模に育つ可能性が高い。

このあたりのコスト総額は算出するのが難しいが、実際のところ、開始当初にデザイナー費をケチることがそんなにお得だとは思えない。

それにしてもこういう話は10年前からあって今もまったく変わっていない。

某染工場がデザイナーと契約してオリジナル柄を開発し、その柄を使ったオリジナル製品を作ったことがある。
もう10年前のことだ。

ところが2年目くらいに助成金が切れたのか、彼らが想像したほど(かなり過大な期待を抱いていたっぽい)売れなかったからか、デザイナーとの契約をやめて自社で図柄開発をすると言い出した。

だれが図柄を開発するかというと、ド素人たる社長の息子である。
サンプルを見せてもらったことがあるが、近所のオッサンが描いた落書きと同レベルだった。

これをいろいろな展示会に出品したが、ド素人の落書きが施された商品が受注されるはずもなく、いつの間にかこっそりひっそりブランドは終わっていた。

こんなことをやっている工場は今でも珍しくない。

どうすれば成功するのかということをまとめることは難しいし、その通りにやっても成功するとは限らない。
ユニクロと同じことを今から別の会社がやったって成功するとは限らないのである。

しかし、こうやれば失敗するというノウハウは100%外れない。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし、である。

こういう産地企業の失敗事例は掃いて捨てるほどあり、どれもこれも同じような理由で失敗している。
産地企業同士の情報網でそういう失敗事例は即座に広まるはずである。
どうして繰り返される失敗事例に学ばないのか。

そういう産地企業のメンタルは本当に不可解で理解不能である。

「形のない物に金は払いたくない」という産地特有のメンタリティーはそろそろ矯正すべきである。
そうでなければ何百年やったって自社ブランド開発なんてできっこない。













産地とデザイナーの協業が成功しにくい理由

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 昨今では産地企業とデザイナーの協業が増えてきたが、だからといってデザイナーを起用した産地ブランドが成功する確率はあまり高まっていないと感じられる。
もとからすごく成功するという案件ではなかったが、今もその確率はそんなに高まっておらず、従来レベルのままではないかと感じられる。

さて、産地とデザイナーの協業について繊研新聞などでも折に触れられているが、某ベテランデザイナーからは「そんな取り組みは20年前も30年前にもあったけど、どれもほとんどものにならずに終わっているだけ」と辛辣だがなかなか適切な意見をいただいたことがある。

この某ベテランは、筆者よりも年上でおそらく60歳前後だと思われる(正確な年齢を知らない)が、過去に産地企業とのコラボや産地展示会のディレクションを行ったことがある。
実体験に基づいての意見だといえる。

20年以上前のこの業界の実情は知らないが、18年前に業界新聞に入ったときにはすでに、産地とデザイナーの協業はあった。
例えば、産地展示会でデザイナーブランドのファッションショーを開催したり、そのデザイナーが産地で新規開発された特別な生地を使ったりしていた。
90年代後半にはすでにそういう取り組みがあって、成果がほとんど出ていないが、現在まで連綿と続いてきた。
ベテランがいうように、この18年間だけを見ても別に珍しい取り組みではない。

ではなぜデザイナーを起用した産地企業のブランド作りは成果が出ない場合が多いのか。

産地企業や産地全体のブランド会議に何度か出席した経験上からいうと、大きく2つの理由がある。


1、産地企業や産地がデザイナーに丸投げをしすぎている
2、デザイナー側の能力不足

この2つが絶妙なバランスで混然一体となって不幸な結果を招くケースがほとんどである。

まず1である。
産地や産地企業に多いのが「売れるデザインにしてよ」なんていうあいまいな仕事の発注の仕方である。

いやいや、オッサンよ、ブランドコンセプトは?ターゲットは?販路は?テイストは?

これらがクリアにならないとデザイナーはデザインができない。
これらの組み立てまでデザイナーに丸投げするということだろうか?
それならデザイナーの職分ではなく、もはやプロデューサーである。

ブランドを立ち上げたいのだったら、嘘でも仮でも事業主がそのあたりは提示しなくてはならない。
デザイナーとの話し合いの結果修正されるのは構わないが、すべてを最初から丸投げというのはあまりにも無責任である。
丸投げということはデザイナーに全権委任することになるから、デザイナーが好き勝手なデザインを上げても文句は言えない。
それで文句を言うなら、「お前が自分でやれよ」って話になる。

次に2である。

デザイナーという人々は「売ること」にすごく長けていない場合が多い。もちろん例外はいる。
マーケティングとかほとんど気にしていない(ように見える)人も多い。

まあ、ニーズを聞いて追随するのは賢い戦略ではないが、かといって「ニーズを作ってやるぜ」なんてことは、挑戦することを否定はしないが並みの人間には不可能だ。
で、多くのデザイナーの場合、「ニーズを作る」能力に関しては並みの人間と変わらない人が多いように感じる。あくまでも体感的にだが。

変に意気込んでマーケティングに基づかないでモノを作ると、なんやよく分からない独りよがりの製作物が出来上がってしまったりする。

自分の趣味の範疇でやるなら大いにけっこうだが、一応売り物を目指しているならそれはどうかと思う。
あくまでも「デザイン」だから「アート」ではないわけで、売り物にしなくてはならない。
デザインはあくまでも客観性・機能性が求められる。主観的で良いのはアートだけである。

また、「こういうものを作るのはどうでしょう?」という提案の際に具体的なプレゼン物があまりない。
けっこう口先だけで説明する人もいる。

これまで存在しなかったものをプレゼンする際、言葉だけで相手を納得させるのは不可能である。
これまでの見分の範疇から外れたものを人は理解しない。
その範疇外のものをどうやって理解させるのかがプレゼンのコツになる。

そのコツに対しては様々な意見があろうが、先日ご紹介したカルチュアコンビニエンスクラブの増田社長のお言葉を拝借すると、

・リアル化
・実績を示す

が重要になる。

デモ版とかサンプルとか画像とかそういう「リアル化」である。
で、そういう似たような事例を展開した結果どうなったかという「実績」を示す。
自分の過去の実績でも良いだろう。あんまり実績を盛り過ぎると繊維・ファッション業界に跳梁跋扈するアレオレ詐欺になるからご注意を。

これで相手は理解が深まりやすくなる。
もちろん百発百中ではないが、命中精度はこれまでよりは高まるだろう。

デザイナーと産地との協業、デザイナーを起用しての産地ブランド作り、いずれの動きも否定しないし、これでもそれなりに応援はしているつもりだが、以上のようなことをデザイナー、産地側ともに念頭に置いて活動を見直してみてはどうか?

おそらくこれまでよりは成功確率が高まると思うのだが。






産地企業が自社ブランドを成功させるためには「助成金ゴロ」を排除すべき

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 先日、知り合いの工場へ行った。
国内の生地工場も染色加工場も縫製工場もこれまでの単なる下請け業では生き残りが難しい。
一部の例外はあって、大手ブランドとガッチリ組んでいるところは別だが、それとてもいつ契約が終了するかもわからない。未来永劫同じ条件で契約が続く保証は存在しない。

下請けから脱して自立したメーカーになるために行政からは補助金や助成金が支出される。

しかし、この助成金を使って本当に自立化したメーカーになった企業は数少ないのが実情である。
だいたい3年間支給されるが、ほとんどの企業はその3年で新規事業をやめてしまう。

いくつかの産地企業を間近で見てきたが、助成金事業にはたいてい、助成金ゴロみたいな人が介在する。
一般的な新聞で紹介される事例では著名なデザイナーやプロデューサーと組む事例が多いが、著名人を誘致できる事業は少数派で、大多数は筆者のような外部の人間からすると「誰?これ」というレベルの知名度の人が多い。

もちろん、知名度の高い低いは根本的な問題ではない。
デザインなりプロデュースなり営業なりに高いノウハウを所有していればむしろ安い買い物である。
が、そういう人は往々にしてデザインでもプロデュースでも営業でもあまり能力を持っていない。
なんだかわからないがコーディネイターのような立場をとることがほとんどで、そのコーディネイト能力にも疑問がつく。
この手の人はだいだい中年以上の年代で、あちこちの産地でお見かけするが、産地間以外の場所ではほとんどお会いすることがない。

某縫製工場では「ある生地工場のオリジナル製品を製作する依頼を受けたが、そういうコーディネイターのような人が介在してきて、デザインをするわけでもなく、副資材を手配するわけでもなく、ブランドプロデュースをするわけでもなく、それでいて手数料を何十万円か助成金の中から手にしている」と言って首を傾げている。
これはほんの一例で、こういうことが助成金事業では珍しくない。

こういう助成金ゴロともいうべきコーディネイター?の仕事の大半は産地組合や行政窓口の会議に出席することだけである。

ある産地に、補助金・助成金申請にめちゃくちゃ強い人がいた。行政の窓口からその責任者まですべてを知り尽くしていて手を尽くして補助金・助成金をねじりとってくる剛腕だった。
こういう人は産地に対してはまだ貢献している。何はともあれ資金を分捕ってくるからだ。

助成金ゴロと呼ばれる人たちにはそこまでの剛腕さもない。
本当に会議に出るだけの簡単なお仕事だったりする。

業界全体を見回しても、ここ10年間で産地企業がブランド化できた事例はそれほど多くはないだろう。
いずれも好き嫌いは別にしてみると、有名なところだと

佐藤繊維、近藤ニット、今治タオル、ネストローブくらいだろうか。

知名度が低いブランドだともう少しいろいろと出てくるだろう。

佐藤繊維はカリスマ社長の世界観を全面的に打ち出した特殊な製品が評価されているが、あの世界観を万人が真似ることは難しい。
今の工場の社長があんなカリスマを発揮することも不可能である。

真似るとするなら、いわゆる一般的なアパレルブランドであるネストローブだろう。
そこまで特殊なテイストではないブランドの組み立て方の参考事例にはなるだろう。

http://nestrobe.com/

業界紙にも経済誌にもあまり掲載されないが、このブランドは元は縫製工場である。
ネキストという会社がブランドを運営するが、この会社は大阪服装縫製工業組合の組合員名簿に名前を連ねている。

http://www.ho-you.or.jp/member/member.html

で、ブランド立ち上げの沿革だが、、独立行政法人中小企業基盤整備機構のウェブサイトに詳しい。

http://www.smrj.go.jp/index.html

その中の

http://www.smrj.go.jp/keiei/dbps_data/_material_/common/chushou/b_keiei/keieiseni/pdf/34668-080-087.pdf

である。

昭和25年創業のネキストは、平成16年度の自立事業をきっかけに自社 ブランド「ネストローブ(nest Robe)」を立ち上げ、 1年弱で東京・青山 に直営店をオープンした。

とある。

さらに

ブランドを生産面から支えるのが大阪本社の縫製工場だ。木戸は「従来 のカットソーのOEM事業で培ってきたものづくりのノウハウとクイッ クレスポンスの生産体制があったから成功できた

ともある。

もともとはカットソーのOEM生産を手掛けていた縫製工場なのである。

生地工場や染色加工業、縫製工場などが自社ブランドを立ち上げる場合、かなり参考になる事例といえるが、取材嫌いなのか業界紙でも経済誌でも記事を見かけたことがない。

ただ、開始したのが今から12年前なので、その当時の社会情勢とはまた細かな部分で変わってきているので、そのまま当てはめても難しい部分はあるだろう。
例えば、このナチュラルテイストのブランドを今から立ち上げて市場に参入できるのかとか、そもそも現在「ロハスブーム」が続いているのかなどの部分が疑問である。

けれども、あまり特殊なテイストではないアパレルブランドを立ち上げるという根本的な課題は、ネストローブを研究することが分かりやすいのではないかと思う。

それはさておき。

産地企業がどうしてそういう助成金ゴロにたやすく付け込まれるのかというと、産地企業が外の業界を見ていない、耳に痛いことを言う人を嫌う、というところが多いためだろう。
必然的に、長い付き合いのあるいつものお仲間のあの人に頼もうということになる。
彼らは厳しいことは言わないし、長年の付き合いで気心はしれている。
ノウハウがないことと成果を出さないこと以外は、産地企業としてはめちゃくちゃ付き合いやすい。

いわば関係性の深さだけで成り立っているといえる。

関係性を構築するのはビジネスでは必要だが、ノウハウも手腕もなく関係性の深さだけでビジネスを行うということは究極的にはこういう助成金ゴロになってしまう。

産地企業がブランド事業を成功するためには、関係性は浅くても助成金ゴロではないプロデューサーやコーディネイターを選ぶことが重要だろう。







大手企業でもやり方が下手くそなら、ネット通販は8億円も売れない

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 リアル店舗の不振からネット通販への注目が高まっているが、「リアルがダメだからネットで」というような逃げの姿勢でやっているところは総じて伸び悩んでいると感じる。

当たり前である。

ネット通販が今の消費不振をすべて解決してくれる「魔法の杖」かのように勘違いしている業者やコンサルも多く見受けられるがまったくの知識不足といえる。
ネット通販がすべて売り上げを稼げるわけではないし、売れないところはまるで売れない。

ネット通販もすでに多くの業者が進出しており、ブルーオーシャンではなくレッドオーシャンだという認識が前提である。

最大手といえばやはりAmazonだろう。
日本国内だけで7000億円くらいの売上高がある。
意外に健闘しているのがヨドバシカメラで売上高は1000億円くらいである。

この2社に追いつこうとするなら、個人経営のような小資本企業では到底無理だ。
しかし、資本さえ大きければ必ず売上高が稼げるというものでもない。
それがネット通販の特徴でもある。

アパレルでいうと、最大手ブランドはユニクロだろう。
300億円を越えている。

ワールドは140億円くらいでこれを300億円くらいまで引き上げたいと発表しているが、果たして実現可能かどうか。仮に300億円に引き上げたとして、実店舗の売上高はそのときにどれだけ減少しているのだろうか。
中長期的に見て、ワールドの実店舗ブランドの売上高が飛躍的に伸びることは考えにくい。

http://ameblo.jp/knitkitchen/entry-12182062748.html

このブログを参照してもらいたい。

で、かつての大手で今でもそれなりの規模があるレナウンという企業はネット通販の売上高が7億9700万円で8億円に満たない。
2015年4月~2016年3月までの1年間の売上高だ。

2016年2月期連結決算での売上高は712億円ある。

連結とはいえ712億円の売上高がある企業にしてはネット通販の売上高が8億円未満というのはかなり少ない。ネット通販の売上高が一概に会社の規模に比例するわけではないことがわかる。

一方で、たった2,3人で運営している洋服の独自販売サイトが、売上高3億円くらいある。
2,3年前に独立して1人で洋服のネット通販を新たに開始した知人も年商はそろそろ1億円に手が届くそうで、スタッフを雇用するらしいとも聞いている。

こんなに少人数で個人事業主の延長線上みたいな会社でも年商1億円というのは、ネット通販では達成可能ということである。

年商700億円を越えていてもネットでは8億円も売れない。

ようはやり方次第ではネット通販は小資本・少人数でも1億円とか2億円くらいの売上高が可能だし、やり方が下手くそなら年商700億円の会社でも8億円も売れないということである。

なぜ、こんなことを書いているかというと、先日、某業界新聞記者と会った際に、「小型店を2つか3つくらいしか持っていない某店のネット売上高が5億円くらいある」と教えてもらったからだ。
そういえば、1店舗しかない某店舗もネット通販が好調で、エドウインの卸売り先の上位何位かに入っているともエドウインの営業マンから聞いた。
おそらくネットでの売上高は1億円は越えているだろう。

先ほども書いたように、ネット通販で問題がすべて解決するとは思っていないし、ネット通販をやればすべての会社が上手くいくとも思っていない。
しかし、やりよう次第では少人数・小資本でも1億円や2億円の売上高は稼げるのも事実である。

小資本・少人数・小面積の実店舗で1億円や2億円売れるようになることの方が、難易度が高いのではないか。

年商規模が5億円とか10億円くらいの会社で、売上高が1億円増えれば資金繰りはかなり楽になるのではないか。上手く運営すれば小資本・少人数でネット通販ならそれくらいの売上高に到達することは不可能ではない。洋服の実店舗を出店するよりよほど難易度は低い。

手間暇と研究と試行錯誤は必要だが、小資本の会社こそネット通販に参入してみてはどうか。
逆に手間暇をかけられないなら大資本でもネット通販は成功しない。それはレナウンが証明している。










ヌッテが特集された「ガイアの夜明け」を見た感想

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - ヌッテが特集された「ガイアの夜明け」を見た感想
9月13日にテレビ東京系「ガイアの夜明け」で縫製職人とオーダーをマッチングさせるサービス「ヌッテ」が紹介された。

https://nutte.jp/

このシステムは今のところ、縫製職人とかサンプル生産工場に対して仕事を供給するものなので、発注側も1枚とか超小ロットが多い。
極端な話、「娘が来月の発表会で着用するドレスを縫ってほしい」というような依頼が主流である。

1型100枚(サイズ込・色柄込)のような商業ベースに乗るような生産依頼はあまりないし、現在のヌッテの登録者(縫製職人・サンプル工場)は小規模で対応できないことが多い。

放送を見ていたが、番組制作側もそれを見ていた視聴者もその部分がイマイチわかってなかったのではないかと感じられた。

同様にファクトリエやシタテルなどのインターネットを使って、縫製とオーダーを結び付けるサービスがあるが、ファクトリエ、シタテルが商業ベース、工業ベースの生産を請け負うのに対して、現段階のヌッテはあくまでも個人需要に近い生産を請け負っているという違いがあるのだが、その部分はあの放送ではあまりわかりやすく説明されていなかった。

実際に縫製工場の人や製造加工業の人も多数放送を見ていたようで、フェイスブックでもツイッターでも交流のある人たちが感想をいろいろと述べておられたが、彼らでは間尺に合わないのは当然である。

しかし、あの番組内では随分と疑問なストーリー展開も見受けられた。
ヌッテを活用している子持ちの若奥様の実例である。

自分でイメージした子供服を縫ってもらうのだという。
生地は「会津木綿」を生産するはらっぱから購入。合計で7000円ほどだった。

それをヌッテを介して縫製工賃15000円で依頼した。

1枚だけのオーダーだったし、サイズも画面に映っていたお子様と同じくらいだったので、てっきり「子供さんに着せるんだな。それにしても2万2000円の子供服ってこの奥様はセレブだな。羨ましい」と思って見ていた。
すると、子供服店での受注販売会みたいなのい出品してて、「え?売るんかい」とズッコケた。

しかも製造に2万2000かかったのに、売価は1万6000円。

ナレーションは「テスト販売品なので今回は赤字覚悟。でも受注数量がまとまればコストが抑えられて採算が好転するはず(意訳)」みたいな内容のことを語っていた。

それも「????」である。

通常の洋服は原価率が平均で30%前後とされている。
となると、16000円で販売するなら、製造原価は5000円強にしなくてはならない。
ちょっと素人商売臭かったから、原価はもっと高く設定しているのかもしれない。

会津木綿は38センチ幅しかないから、1メートル1000円と言っても、用尺が多くかかる。
サンプルで7000円かかっていたので7メートル前後を買ったということになる。
となると、いくら製造枚数が増えても生地代だけで7000円前後かかることになる。

製造枚数が増えれば生地代も1メートルあたり安くしてもらえると推測されるが、それでもまさか300円とか200円にはならないだろう。幅が狭いので1着当たりにかかる生地代は安くても4000~5000円になるはずだ。

となると、縫製工賃がどうなるかだ。

10着くらい生産しても縫製工賃はほとんど値下がりしない。
1型100枚くらい作れば、1枚あたりの工賃は1500円とか2000円くらいにはなる。

100枚生産してやっと製造原価が5500~7000円くらいになる。
これが通常の卸売り型子供服アパレルならまだまだ赤字である。

個人の趣味の延長線上でゆるく直接販売しているなら、このくらいの原価で16000円で売ることは可能だろう。

しかし、そんなゆるい個人販売で100枚も売れるのだろうか?
その部分に疑問を感じる。
もしかしたら、あの若奥様がものすごく影響力があって、インターネット上でフォロワーが1万人くらいいて、一声かければ100人くらいの受注はすぐに集まるのかもしれない。

でもそういう状況でない限り、100枚を売るのはなかなか難しい。

しかも16000円の子供服である。
同価格の大人服や大人向けアクセサリーよりも販売が難しい。

それはさておき。

1枚きりのオーダーで縫製工賃15000円という価格をどう思われるだろうか。
実はこれはけっこう安い。
サンプル生産工場だと1枚の縫製工賃はデザインの複雑さにもよると思うが、最低でも2万円くらいはする。

それに比べると割安なのである。

縫製工場もそうだが、縫製職人、サンプル縫製工場も総じて仕事を探すことが難しくなっている。
一つには中国や東南アジアに円高も手伝って受注が取られているからだが、もう一つは、縫製関係者があまりにもインターネット対応、自己発信をしていないからである。

一部の例外を除いて自己発信している縫製工場、縫製職人、サンプル工場はいまだに少ない。

ブログやツイッター、フェイスブックなどのSNSはおろか、ウェブサイト(俗にいうホームページのこと)すら所有していないところが大半である。
交流のある某サンプル工場の社長は「ホームページを作ったおかげで問い合わせがむちゃくちゃ増えた」と言っている。
大したデザインのホームページでもない。極めて初歩的なデザイン、システムのホームページである。

それでもアパレルやブランドからの問い合わせがそこそこにある。

このブログで何度も書いているが、今の世の中、物を調べるときに真っ先にウェブで検索する。
ホームページがなければこのウェブ検索に引っかからない。

ファクトリエの人は、電話帳の上から下まで全部電話を掛けたと言っているが、通常のアパレルもブランドもそこまでして縫製工場や縫製職人、サンプル工場を探そうとはまったく思わない。
なぜなら時間の無駄だからだ。ならOEM/ODM屋とか商社に多少割高でも依頼する。

そのほうが手っ取り早い。

彼ら縫製関係者が自分たちでウェブを使って自己発信をしていれば、別にファクトリエもヌッテもシタテルも必要ないのである。

それができない、やりたくない、やる気がないというのであれば、ヌッテなりそういうところに登録するほかない。
サンプル工賃として見た場合、ヌッテを介して提示される価格は概ね割安である。

ヌッテも含めて各社は今後、さらに様々なサービスを開始すると思うし改善点も多々生じると思うが、現在の縫製関係者が自ら変わらない限りはこれらのサービスは不可欠な存在であり続けるだろう。











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