南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2016年04月

需要が少なくてターゲット設定が不明確な商品は売れない

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 需要が少ないもの、ターゲット設定が不明確なものはやっぱり売れないと改めて思う。

福山雅治さん主演のテレビドラマ「ラヴソング」の視聴率が壊滅的に悪い。
初回10・6%で2回目は9・1%である。

筆者は最近はあまりテレビを見ないが、毎シーズン1本か2本のドラマを見る。
興味を惹くドラマがない場合は1本も見ないシーズンがある。
今シーズンは興味を惹くドラマがないのでもともと1本も見ないつもりだった。

もうすぐ46歳になるオッサンにとって「ラヴソング」というスイーツ過ぎるタイトルのドラマは当初から見るつもりもなかった。

このドラマの失敗の原因を考えてみる。

まず、ラブストーリーというジャンルに需要が少ないということが挙げられる。
この10年間で高視聴率を稼いだドラマにラブストーリー物がいくつあったか。
ほとんど存在していない。

直近のヒット作を考えてみても同様だ。
今年1月~3月シーズンのヒット作は「スペシャリスト」だが、これは刑事物だ。
昨年秋シーズンのヒット作は「下町ロケット」だが、これはビジネス物だ。

視聴率40%に達した大ヒット作「半沢直樹」もビジネス物だし、少し前になるが視聴率30%を越えた「家政婦のミタ」は家族物だった。

シリーズ化されているヒット作「ドクターX」は医者物だし、「海猿」はレスキュー物だ。

だからラブストーリーを企画した時点で視聴率は期待できないということになる。
ラブストーリーを企画しておいて「高視聴率を稼ごう」と考えたのならあまりにも浅はかだといえる。

次にこのドラマはターゲット設定が不明確すぎる。
誰に向けて作られているのかわからない。
福山雅治ファンのためのプロモーションビデオだろうか?

44歳(福山さん本人は47歳)の元ミュージシャンで臨床心理士という福山雅治さん演じる主人公の設定が荒唐無稽すぎて現実味がない。
14歳で自動車を運転していた花形満くらいの荒唐無稽ぶりである。

そのオッサンと20代の吃音女性のラブストーリーなのだが、筆者のようなオッサン世代にとっては興味の対象外である。
自分らオッサンが20代女性と恋愛関係になるなんてことは非現実的すぎる。
タイトルのスイーツさと相まってオッサン世代は絶対に見ない。

次に若い女性層だが、オッサンとのラブストーリーなんて興味がないだろう。
いわゆるコメディタッチで描けば喜劇として見ようという人もいるだろうが、真面目なストーリー物は見たいとは思わないだろう。
また実際に40代後半のオッサンと恋愛したいと思う人もいない。
福山雅治さんの容姿はマシな方だが、筆者も含めた現実の40代後半のオッサンの容姿はかなり汚い。脂ギッシュだし腹は出てるし頭は禿げかけている。そろそろ華麗なる加齢臭も漂わせ始めている。

若い男性はどうか?
ドラマの設定とテーマに興味を持てないだろう。
オバサン世代も同様に興味を持たないだろう。

老人世代も同様だ。

どの層も見ないという選択肢しか考えられない。

フジテレビはかつての大ヒット恋愛ドラマ「東京ラブストーリー」や「ロングバケーション」の成功体験が忘れられないだけではないか。
しかし「東京ラブストーリー」は91年、「ロングバケーション」は96年放映だ。
20~25年も前のヒット作である。

オッサン世代からすると昨日のことのようだろうが、4半世紀も前の成功体験なんて現代に通用しないのは当たり前だ。

ラブストーリーがヒットジャンルではなくなったというのは、各世代にとって恋愛はエンターテイメントではなくなったということだろう。
筆者のようなオッサン世代にとってはリスキーすぎる。
既婚者だとバレたときには大変なことなる。下手をすると職まで失うかもしれない。
独身のオッサンだと年齢的にも遊び半分で手を出すことは難しい。相手は当然、結婚を期待しているだろうから。

若い世代だって、責任という文字がちらつくから遊び半分は難しい。

それに一部の富裕層を除いて、可処分所得は減っているから恋愛に金を使うことは厳しい。
趣味を削るか恋愛を削るかである。
多くの男性は恋愛を削るという選択をするのではないか。

今回の企画は4半世紀も前の成功体験が忘れられないテレビ局が、「人気の高い福山雅治さんを主演させれば視聴率が稼げるでしょ」と安易に考えただけとしか思えない。

この失敗の図式はテレビ番組だけではなく、アパレル業界でも頻繁に見受けられる。

・かつての成功体験が忘れられない
・人気ブランドを並べておけば簡単に売れるだろうという甘い期待
・需要の少ない分野だということを分析できていないマーケティングの失敗
・ターゲット設定が明確でないので全層の消費者が購買しない


この4つが兼ね備わった失敗事例はアパレル業界でも掃いて捨てるほどある。

需要の少ない分野に取り組んで啓蒙活動を行うという事業もあるが、手っ取り早く成功したいならそういう分野ではなく、需要の多い分野に取り組むべきであり、それはアパレルもテレビドラマも同じである。

「ラヴソング」の失敗には学ぶべき点が多い。

探偵ガリレオ (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋
2002-02-10



ガリレオの苦悩 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋
2011-10-07



容疑者Xの献身 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋
2008-08-05


アパレル業界に満ち溢れる「逆ランチェスター」

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 前回、小規模専門店による「逆ランチェスター」について書いたが、ファッション業界は「逆ランチェスター」に満ち溢れている。

ランチェスターの法則とは、

大手は物量による追随主義
小規模企業は一点突破主義


である。

逆ランチェスターとはこれと逆を行い、必ず負けるための手法である。

小規模なのに追随主義、これが小規模専門店の逆ランチェスターである。

小規模専門店のオーナーなりバイヤーなりが、自店の客層と照らし合わせたり、自店のMD上必要だと判断した上で、「伊勢丹新宿にも展開しているブランドを仕入れよう」と考えるならこれは逆ランチェスターではない。
小規模専門店が何の考えもなしに「伊勢丹新宿が展開しているからうちにも仕入れよう。もしかしたら売れるかもしれない」というのが、大手への追随となる逆ランチェスターだといえる。

しかし、こういう思考は小規模専門店ばかりではない。

例えば「ユニクロでバカ売れしたあの商品に使われているのと同じ素材をください」と飛び込んでくる大手アパレルの経営陣なんかもれっきとした「逆ランチェスター」な人である。

この大手アパレルは百貨店、ファッションビルでのブランド展開を主軸としている。
もちろん大手なので郊外型ショッピングセンターにもブランド展開しているが、主軸は百貨店・ファッションビルである。
当然、ユニクロとは価格帯、顧客層が異なる。

単純にいえば、ユニクロより商品価格は高い。
それを買う顧客層はユニクロとは異なる層が多い。

で、なぜ「ユニクロで何百万枚も売れたのだから、うちが同じ素材を使えば少なくとも5万枚くらいは売れるかもしれない」とそんな考え方ができるのか。
価格帯と顧客層が異なれば同じ素材を使っても同じように売れるとは限らない。
また素材は同じかもしれないが、商品デザインが異なれば同じように売れるはずがない。

どうしてこんな簡単なことがわからないのか。
だからアパレルは衰退産業で、産業間競争に敗れて優秀な人材を他産業に奪われているといわれるのである。
こんな人が経営陣に食い込めるくらいのレベルである。
だからこの会社は大幅減益をたたき出せるのである。

まだほかにもある。

衣料品売上高ではユニクロに及ばないのに、ユニクロの後追いをする大手総合スーパーも同様である。
ウルトラライトダウンが売れたら軽量ダウン、ヒートテックが売れたら保温肌着、カシミヤを発売したら1年後にカシミヤ、990円ジーンズを発売したら980円ジーンズ。

だから大手総合スーパーの衣料品部門は不振なのである。

弱者が強者の後追いをして勝てるはずがない。

こんな風に衣料品業界には安易な「逆ランチェスター」が満ち溢れている。
だから衣料品業界は衰退業界と言われるのだろう。

98年のユニクロフリースブームのときには、その後追いで百貨店アパレルまでが2900円のフリースジャケットを、お得意のクイックレスポンスシステム(笑)を生かして急遽製造したこともある。
百貨店顧客が2900円のフリースジャケットを百貨店で買いたいと思うのかどうかすら判断できないということだろう。

大手アパレル各社が不振にあえいでいるが、それは当然ではないか。

とはいえ、今後もアパレル業界の「逆ランチェスター」体質は早々に変わることはないだろうから(なぜなら、そういう幹部があと10年か20年くらいは在職するから)、ますます衰退が進むのではないか。


 









大手追随では小規模専門店に勝ち目なし

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 こんな筆者でも毎シーズン各社の展示会を覗く。
小規模アパレルブランドや独立系デザイナーズブランドの展示会でよく耳にする言葉がある。
この手のブランドを仕入れるのは大概が小規模専門店なのだが、そこのオーナーやらバイヤーは「〇〇が仕入れたならうちも仕入れたい」という。

そしてこの〇〇には伊勢丹新宿店やらユナイテッドアローズやらナノユニバースやら阪急百貨店うめだ本店やらの大手百貨店や大手セレクトショップの名前が入る。

これを横で聞きながらいつも「この店、あほちゃうか」と思う。

坪数が10坪程度の小規模専門店が大手有名店の後追いをしていては永遠に勝てるはずない。
下手をするとさらに「選ばれない店」になる可能性もある。

よくいわれる「ランチェスターの法則」では、

大手は物量を生かした追随戦略が有効とされる。
小規模企業は、個性を発揮した一点突破が有効とされる。


この10坪程度の個人商店は紛れもなく小規模企業である。
零細企業と言っても良い。

その零細企業が大手に追随してどうするのか。
その行動に意味があるのか。


例えば超人気のAブランドがあったとする。
このAブランドを伊勢丹新宿店が仕入れて(買い取りか消化仕入れかはここでは置いておく)コーナー展開をしたとしよう。
展開するコーナーに並べる型数は20~30型。
展開型数の少ないブランドならフルラインナップがそろう。

これを聞きつけた10坪程度の小規模専門店が同じAブランドを仕入れたとする。
しかしこの専門店はAブランドだけを扱うわけではない。
店全体では5~10くらいのブランド数を扱い、Aブランドはそのうちの1つということになる。
当然、この店で展開できる型数はせいぜい3型程度だろう。
多くて5型か。10型を越えることは不可能だろう。

そうなると消費者はどちらで選ぶか?

当然たくさんの型数が見られて、ネームバリューのある伊勢丹新宿店で買う。

わけのわからん、わかりにくい場所に位置する小規模専門店にわざわざ行く人は少ない。
その上に展開型数でも圧倒的に少ないのだから、訪れる人はさらに少なくなる。
知名度・展開型数・店のロケーションなどの条件面だけ見れば、伊勢丹新宿店よりもこの小規模専門店を選ぶ人は皆無だろう。

阪急うめだ本店でもユナイテッドアローズでも同じことだ。
条件面だけで見れば小規模専門店が選ばれる要素は皆無である。

こういう「逆ランチェスターの法則」を発動させる小規模専門店は展示会場で見ているかぎりけっこう多い。

ただでさえアパレル商品は不振であり、何の創意工夫もない小規模専門店はもっと厳しい状況にある。
それ故に大手の威光に縋りつきたくなる気持ちはわからないではないが、それはさらに自店の売れ行きを鈍らせることになる。

大手の追随しかできない小規模店なんて消費者からすれば存在価値はほとんどない。
だったら大手で買った方が展開型数も多いし、アフターケアも安心できる。
何よりも安心感がある。(実際に安心・安全かどうかは別として)

しかし、展示会場を見る限りこんな小規模専門店はまだまだ多い。
逆にそういう店の方が増えているのではないかとも感じることもある。

逆ランチェスターの法則を発動している限り、小規模専門店の倒産・廃業はまだまだ続くだろうし、大手の寡占化はさらに進むだろう。
自業自得ともいえる。










企業活動にはウェブサイトが必須

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 先日、ある在庫処分屋(バッタ屋)の年商がついに10億円に達したとの知らせがあった。
通常のアパレルでも年商10億円に達するのは難しいご時勢なのに、すごいことだと思う。

6年くらい前から社長とは顔見知りだったが、今回久しぶりにお会いした。

この会社のことはまた後日、詳しく紹介したいが、成長の要因をいろいろと伺った。

しかし、正直なところ「仕入れた商品を仕分けるセンス」とか「売れ筋を見極めるセンス」なんていうのは、人それぞれだし、いくら努力してもこの社長の「センス」を真似ることは他人には難しい。

また一般的に、成長アパレルの成功の要因が記事になっていたりするが、その中で「売れ筋を見極める目」とか「トレンドを読む勘」とかが重要だと書かれることが多いが、そんなものは他人が容易に真似できるものではない。個人的にそういう部分は読み飛ばす。

で、今回の社長の話の中でセンスとかは関係なく誰でも真似できる部分があるのでそれをご紹介する。

この会社は、ウェブサイト(ホームページ)を作り、ブログを定期的に更新している。
また定期的にウェブでの販促を回数を決めて実施する。


これである。

サイトのデザインだとかバナー広告のデザインだとかは関係ない。
まずはやるかやらないかであり、現在のビジネス環境下でウェブサイトなりブログなりは最低どちらかでもやっていないとビジネスにならない。

とくに在庫処分屋できちんとした自社サイトを持っている会社は少ない。
少ないからやれば圧倒的である。
在庫処分屋で検索をすると、上位をこの会社が独占する。

そうすれば必然的にこの会社に対する問い合わせは増える。

同じことは縫製工場にも生地工場にも染色加工場にもいえる。
どんな零細であっても最低でも会社概要を記した自社サイトは構えるべきである。
逆に零細で仕事がないからこそ自社サイトは必要である。

今、何かを調べようと思った際に、まず人はウェブで検索する。
ウェブ反対派のオッサンだって出張や旅行に出かける際にはホテルを検索する。
タウンページか何かで上から順番に電話をかけて空室状況を調べるというオッサンはほとんどいない。
電車の乗り換えも検索しているはずだし、地図も検索しているはずだ。
ウェブ検索を使わない人間はほとんどいない。

「ウェブなんて即効性がないから無駄」というアホみたいな意見を耳にすることがあるが、やみくもに飛び込み営業をしたり、やみくもに電話をかけまくるよりはずっと即効性があるし効果的である。
現に成功企業の社長が有効性を認めているのである。

一方、先日、某零細企業を手伝っている知人から電話があった。
この零細企業はOEM生産を請け負いつつ、新開発の糸の販売も行っている。
先日、大型展示会に出展してかなりの名刺を集めたようだ。

しかし、この会社にはウェブサイトがない。
それをカバーするために会社概要をキンコーズあたりでカラーコピーしたらしいが、1枚50円だったそうで、たとえば5ページだと250円、10ページだと500円になる。
これを100社分用意すれば5ページ物で25000円、10ページ物だと50000円となる。

零細企業の取引状況は良くも悪くも年々変化するから、取引先の例示などは毎年変えなくてはならない。
そのたびにこれだけの出費が必要となる。
ウェブサイトならその部分だけの更新・修正はほぼタダ同然でできる。
どちらが効率的なのか。

また、現在はウェブ社会なので、ウェブサイトも持たない会社はまともな会社とは受け取られない。
「時代遅れ」か「怪しい」かどちらかの印象を与える。

そしてウェブサイトがない時点で、新規問い合わせはほとんどなくなる。

最近だと、展示会やイベントに来場してくれた相手に対して、お礼のメールを送る。
メールがいいのか悪いのかは別として、お礼の電話をかけるよりは随分と効率的で相手も不快感が少ない。
メールができないならお礼状を送るべきで、電話をいきなり掛けるのは愚の骨頂である。

ちなみにこの某零細企業はお礼の電話をかけまくっているようだが、逆効果しか生まないだろう。

まず、いきなり電話がかかると相手も業務中なので作業の手が止まる。
また、外回りをしていたり会議中だったりしてつながらないことも多い。
そのたびにまた何時間かしてから掛けなおすことになり、無駄だし、回数が頻繁になると受ける側もめんどくさく感じる。

一方、担当者の携帯電話にかける場合も同じである。
商談中だったり電車やバスでの移動中だったりすると電話には出られない。
何度も掛けなおせば受ける側はイラっとする。

留守電に吹き込んでも「お礼」だけならわざわざ掛けなおすことはしないし、「お礼」くらいならメール送れよと思ってしまう。

留守電に「またカケマス」とだけ残しているのは最悪である。
何の要件かわからないから薄気味悪い。
それならメールでひとこと「ご来場ありがとうございました」と送られてくる方がよほど気持ちが良い。

電話に頼っているこの企業はほとんど効果を上げられないだろう。

繰り返しになるが、仕事がなくて苦しんでいる零細企業は、最低でも会社概要を記したウェブサイトくらいは構えるべきである。今のままの業績に甘んじていて良いのなら必要ないだろうけど。






ダメージジーンズにも価格破壊の波

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 ジーンズに詳しい方にとっては当たり前のことなので読み飛ばしてもらいたい。

今春は低価格SPAまでが破れたジーンズを発売している。
あれはわざわざ新品の物を加工で破いているわけで、穴が開いたままの状態の物を「クラッシュ加工」「ダメージ加工」、その穴を布を当てたり、ミシンで破れ目を再度縫ったりして塞いだ物を「リペア加工」と呼ぶ。

似ているけれども厳密に言えば両者は別物である。

このクラッシュ(ダメージ)加工、リペア加工はこれまで中価格帯~高額ブランドのみの展開だったが、今春からついに低価格SPAが発売を開始した。

この加工の好き嫌いは置いておく。

個人的にダメージ加工は嫌いである。
穴が開いているから夏は涼しいが冬は寒い。
たまに真冬でも膝が丸見えになるくらい破れているジーンズを穿いている人を見かけるが寒くないのだろうか?

それと、この加工は穿くときに足先に破れ目が引っかかり易い。
足先が引っかかると破れ目が拡大する。
長年所有すればするほど足先の引っかかる回数が増えて穴が拡大し続け、最後はボロ布のようになってしまう。

それよりは冬でも寒くなく、足先も引っかからないリペア加工の方が好きである。

ユニクロは今春、ダメージ加工のジーンズを3990円で発売した。
H&Mも3900~4900円でダメージ加工ジーンズを発売している。
ZARAはリペア加工ジーンズを7990円で発売しており、一部商品はすでに半額に下がっている。

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(ユニクロのダメージジーンズ)


これまで低価格ブランドにダメージ加工、リペア加工のジーンズがなかったのは加工代が高いからである。
国内の洗い加工場で加工を施した場合、各工場で価格は様々だが最低でも2000円や3000円はするだろう。
そうすると必然的に低価格では展開できなくなる。

当然、これらの低価格SPAは海外の工場で加工を施していると考えられるが、海外の工場でも通常の洗い加工よりは加工賃が高くなるから、3900円前後で発売できるというのはなかなか画期的なことだといえる。

なぜ加工賃が高くなるかというと、各ジーンズを1本ずつ加工してリアルに破らなくてはならない。
リペア加工だと破ってからさらに再度縫わねばならない。
ワンウォッシュだと大量の枚数を洗濯機に突っ込んで洗うことが可能だが、ダメージ、リペア加工はどんなに効率的に組み立てても1本ずつ加工する工程が必ず入る。
その手間賃によって加工賃は高くなる。

ワンウォッシュのジーンズとダメージ加工のジーンズが同じ3990円で発売されるというのはこれまではあり得なかった。
かなり戦略的な重点商品として低価格SPAは位置づけているのではないか。

ただ、好き嫌いのはっきりと別れる商品なので、マス層に広まるかどうかはちょっと不透明ではないか。

今春のこの3ブランドの取り組みを見て、ジーンズの価格破壊も極まったと感じる。
今までは加工賃の問題からダメージ、リペア加工を低価格ゾーンで展開することは難しかった。
それゆえに、ウンチクのある高額ブランドから安くても7000円~8000円商品まででこの加工を囲い込むことができていた。

ところがこれが3900円前後で発売できるようになった。

見た目もそこまでおかしくはない。
ジーンズに詳しい人が見れば、あちこち甘い部分が見えるかもしれないが、一般消費者レベルではこれで十分にそれらしく見えている。

こうなると、もういわゆる商品デザインだけで、低価格商品との差別化は不可能である。
非常に細かいウンチクの世界に逃げ込むくらいしか手はない。
しかしそのウンチクの世界はニッチな市場である。何ブランドもが生息できるほどの規模ではない。

こういう低価格ブランドの価格破壊に対して、絶対悪とみなす人も出てくるだろうが、筆者は絶対悪とは思わない。
所詮、服なんて工業製品だから、これまで高額品だったものに対して低価格代替品が登場するのは当たり前である。テレビだってパソコンだってスマホだって電子レンジだって同じことである。

逆にいうとこれまでよくダメージ・リペア加工は持ちこたえたと思う。

しかし、その特別感もこれまでである。
もうジーンズに特別な手法はほぼなくなった。

そしてこの低価格代替品が登場するのは、洋服において何もジーンズだけではない。
もうすでに洋服は低価格代替品が出回っている業界であり、ジーンズにとっての最後の砦ともいえるダメージ・リペア加工にもついに低価格代替品が登場したということになる。

デザインや商品の見え方だけで低価格ブランドとの差別化を図るのは今後ますます困難になるだろう。
かと言ってウンチクの市場はそれほどの規模がない。
ある程度の規模を求めるブランドは、デザインや商品の見え方だけに頼らないブランド作りに取り組まねばならない。

言うは易しだが行うは難しである。
筆者だって「じゃあどうすれば良いのか?」と問われても即座に返答できない。
そういう難しい局面に業界は突入しているとしか言えない。
いやはや。















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