南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2016年04月

ファッションショーの開催目的は売るため

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 先日、ファッションショーを見にでかけた。
実はもともとあまりファッションショーには興味がないのだが、かつては仕事上でパラパラと見ていた。

その昔は大阪でもデザイナーズブランドやそれに類するブランドを集めたコレクションショーが行われていた。
「大阪コレクション」というやつだ。
筆者が知るのはその中期以降から終了までだが、そのころになると、東京でデビューする前段階の新進ブランドのデビューという位置づけが濃かったように感じる。

結局は10年以上前に終了してしまった。
現在、日本で半年先のコレクションショーが定期的に開催されているのは東京だけである。

しかし、東京コレクションもその在り方が問われたりして、安泰というわけではない。

今回は、ぼんやりとファッションショーを見ていて、ふと、以前に大先輩がご指摘されたことを思い出していた。

どの層に向けてのイベントなのか?どのようなビジネス効果を求めてのイベントなのか?

ということを。

ファッションショーを開催する意義はさまざまあるが、最大の目的は「服を売るため」である。

これは服飾史などの本を開けば掲載されていることの復習なのだが、コレクションショーを開催するのは、バイヤーやメディア、上得意顧客に向けてのプロモーションのためだとある。
ブランドによる卸売りが主流だった当時は、それを仕入れてくれる小売店のバイヤー、報道してくれるメディア、毎年何百万円分も商品を購入してくれる上得意顧客に向けてのプロモーションであり、お披露目である。

平たく言えば「半年先のシーズンにはこんな服を提案しますよ。だから仕入れてね。報道してね。何百万円も受注してね」というのが最大の目的である。

存続できなかった大阪はもとより、東京コレクションもその在り方が問われるようになったのは、「売る」ことに結びつかなくなったからではないか。

その理由も様々あるだろう。

・衣料品不振、デザイナーズブランド不振で仕入れ枠が減った
・仕入れ型小売店の減少
・大手小売店のSPA化

などが考えられる。

そうするとコレクションショーは必然的に「単に見せるもの」になってしまう。
その割には開催に莫大な費用がかかる。
モデル・演出家へのギャラ、舞台装置、サンプル製作費、音響、照明費などなどが必要となる。
売れない場合はそれらはほぼ持ち出しとなる。

ならそれを緩和するために観客を有料制にするという手段がある。
有料制にした場合、通常のコレクションショーでは多くの集客は難しい。
なぜなら、極端な言い方をすれば、コレクションショーは多くの人にとって「面白くない」からだ。

音楽が流れてモデルが粛々と歩く。

これを「面白い」と感じる人は業界人の中でも限られているだろう。
筆者は1ブランドのショーが20分以上続くと、眠りに陥る。
ものすごい催眠効果がある。

じゃあそこにエンターテイメント性を持たせようということで、モデルに著名タレントを起用したり、ライブやトークショーを開催するようになったのが、神戸コレクションであり東京ガールズコレクションだといえる。
おまけに登場する洋服は、今、店頭で並んでいる物ばかりだから「売れることにつながり易い」(理論的には)となる。

実際に売れたかどうかは別だ。
東京ガールズコレクションにライトオンが出品して爆発的に売れたなんてことは聴いたことがないし、その当時のライトオンの決算は減収減益である。

まあ、ただ有料チケットは売れやすい。
正統なコレクションショーよりはずっとたくさん、しかも高額で売れやすい。
だから1万何千人も毎回集客できるのである。

最後期の大阪コレクションの観客は、団体関係者、一部のメディア、専門学校生がほとんどだった。
バイヤーは上に書いたような理由で減少していたから「売れる」ショーではなくなっていた。

現在でも特定の企業や組合団体がファッションショーを開催することがあるが、これは会員や組合員へのサービスであり、定期的に年に2回開催されるようなものではない。
イベントの性格が異なる。

国内のコレクションショーをもっと盛り上げたいという人がいるなら、「売れる」仕掛けを作らねばならないだろう。単に「見せる」だけのショーなら初回から何回かは盛り上がるだろうが、収益が上がらないので、結局運営者も出展者も金銭的に疲弊してしまう。疲弊した結果存続できなくなる。

東京の場合はメルセデスベンツというスポンサーが付いているので、好きにすれば良いと思うが(東京コレクション出展ブランドも周りが想像するほどには売れていない)、先日見たような地方で開催されるコレクションショーは「売れる」ということはさらに重要である。

現在なら、デザイナーズブランドと言えども直営店か直営ネット通販を所有していることが多い。
両方を所有しているブランドもある。

そしてスマホ全盛のご時勢である。
例えば、その直営ネット通販に結び付けるような仕掛けは考えられないものだろうか。

その部分を考えないと、コレクションショーというイベント自体はさらに衰退するだろう。

直販が大部分を占めるバーバリーはコレクションショーの出品物を半年先から、店頭に今並んでいる物に変える。理由はそちらの方が売れるからだ。

実に利益に敏感な欧米ブランドらしい決断である。
国内ブランドはそのあたりをどう考えているのだろうか?









ユニクロ×ルメールのスリッポンを試着してみた

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 今日はお気楽に。
昨日、「ユニクロ アンド ルメール」のスリッポンシューズが発売された。
前評判が高い商品なので早速店頭に現物を見に行った。

向かったのはあべのキューズモール店。
さっそく、試着してみた。
筆者の足は幅広なので、ナイキ、アディダス、プーマなどのスニーカーは幅が狭く作られているので、いつも27・5センチを履いている。品番によっては28センチというのもある。

反対に、幅広の形の靴なら26センチでも履ける。
とくにスリッポンはヒモで大きさを調節できないので、できるだけピッタリのサイズを選ぶ必要がある。

で、控えめに26・5センチを履いてみようとしたのだが、履き口が小さくて入らない。
27センチを試してみたが入らない。

そこで28センチ(展開サイズで最大)を履いてみたら入った。
試しに27・5センチも履いてみたが無理だった。

かなり幅が狭く作られている。
足の形は個人差があるが、いつも履いている靴よりも1センチ前後大き目を選ぶのが良いのではないか。

試着した感想だが、シルエットはかなり細い。
スーツ向けの革靴と似たような感じであり、細身のパンツに合わせるのがもっとも良いだろう。
反対にワイドパンツにはボリュームが無さ過ぎて合わない。

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ソールはスニーカーにしては薄目だがクッション性は悪くない。
インソールが入っているためでもあるのだろう。

生地は綿100%オックスフォード素材なので、耐久性はあまり良くないと思う。
ガンガンとハードに履くのは寿命を縮めるのではないか。
かと言って高級レザーシューズほど丁寧に扱う必要もないが、スポーツメーカーのハイテクスニーカーのように履くと短命に終わりそうな気がする。

価格は2990円(税抜)なのでお手頃である。
カラーバリエーションは白と黒の2色。

ユニクロのオンラインストアを今朝覗くと、早速、黒の大きいサイズが完売している。
すごい人気である。
黒の26・5~28センチが完売である。
白の方は各サイズが残っている。

筆者も買うとすると黒になると思うが28センチが実店舗の店頭にいつまで残っているか。

ところで、あべのキューズモールのユニクロは昨日はレジがフル稼働し、それでも長蛇の列ができていた。ざっとみたところ40~50人は並んでいただろうか。
平日の午後だというのにすごい集客力である。

夜になって、某百貨店・専門店向けアパレルの役員の方から「今春も厳しい。店頭にもあまりお客が入っていない」というお知らせをいただいた。
耳にする範囲では、今春の商況はジャンルやテイスト、価格帯によってマダラ模様のようだが、「昨年秋冬よりはマシ」というブランドもある。

しかし、引き続き厳しいブランドも珍しくない。

ユニクロは営業減益(赤字転落ではなく黒字幅が減った)によって、「不振」「一人負け」などと報じられることが多いが、平日の午後に10台以上あるレジがフル稼働してそれでも50人前後が常に並び続ける状態にあるというのだから大した人気と言わねばならない。

個人的にもユニクロがかつてのような勢いで今後も売上高を伸ばし続けるとはまったく思わない。
売上高8000億円を越えているのだから最早飽和状態で国内売上高は良くて微増だろうし、微減くらいは当然だと思っている。

しかし、V字回復と持ち上げられているライトオンはピーク時売上高からはいまだに150億円マイナスである。
しまむらも回復しつつあるが、これから大幅成長が見込めるかというと厳しい。

かつて量販店、しまむら、ユニクロなどへ製品供給していた友人がしまむらについての危惧を漏らしていた。

昨秋、しまむらは保温ズボンを3900円で発売したところ大ヒットとなり、V字回復のきっかけを作った。

しまむらがかつて若い女性に受けたのは、「多品種小ロット」による商品の希少性である。
大量生産で「ユニバレ」「ユニ被り」が頻発するユニクロとは反対に、小ロットなので「しま被り」「しまバレ」はほとんどない。

今回、保温ズボンという大ヒットアイテムを作ったが、これはユニクロ方式で大量に生産している。
おそらく今秋も保温ズボンは重点的に販売するだろうし、実際の店頭でも売れるだろう。

けれども、かつてのしまむらが持っていた「良さ」というのはなくなり、ユニクロや他の量販店同様に「大ロット」方式になる。他の商品にも同じ方式を押しはめれば「しまバレ」「しま被り」が頻発するようになる。
その方向転換は果たして正しいのか?というのがその友人の危惧である。

それこそ「大ロット」の低価格ゾーンに埋没してしまわないか?

閑話休題

メディアでは「不振」と書きたてられているユニクロだが、平日の午後にレジに長蛇の列を作らせるほどの底力はまだ衰えていない。それを読み誤ると破綻が早まるのは他のアパレルの方ではないか。

ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03

 



小規模専門店からの発注枚数が極小化している

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 卸売りをメインとする小規模ブランドの展示会に行くとこんなことが話題に上る。
ブランドのテイストや価格帯は関係なく共通している。

それは小規模専門店からの発注枚数が極小化しているというところである。

小規模専門店、ブティックなどはこれまでなら、気に入った品番は1色で2サイズか3サイズ、もしくは2色で2サイズを発注していた。

例えていうと、Aという品番のコートがあって、これが3色展開だとする。
紺、グレー、赤だとしようか。

これまでの発注では、紺のコートを2サイズ1枚ずつとか2枚ずつ、もしくはグレーと赤を各サイズ1枚ずつとか各サイズ2枚ずつというやり方が主流だった。

ところが今は、「紺のコートのMサイズのみを1枚だけ」と発注する専門店・ブティックばかりだそうだ。

それだけ専門店・ブティックに売る力が無くなっているといえるが、そういう発注のやり方が主流になると、ブランド側は売上高を確保しにくくなるし、生産ロットとしてまとまらないからドロップ(生産しない)品番が増えることになる。
当然だが、展示会用のサンプル製作費もその品番については回収できないということになる。


こうなると、卸売りブランド側も自衛策を採らざるを得ない。
直営店展開とネット通販の開始である。

直営店を本格的に開設するには何百万円、何千万円の費用が必要となる。
小規模ブランドの中にはアトリエ、事務所を兼ねてこじんまりとした直営店を構えているところもある。

とくに独立系デザイナーズブランドは自社ネット通販を立ち上げていないブランドが多い。
ネット通販なら本格的な直営店よりも少ない費用で開設することができる。
無名ブランドがすぐに売上高を稼げるようになるとは思わないが、時間をかければある程度の売上金額に達することは可能だ。

ところが、いざ直営ネット通販を開設しようとすると、先のような専門店・ブティックからクレームが入る。
しかし、ブランド側から言わせれば「何を言っているのか」という話だ。
毎シーズンMサイズ1枚しかオーダーしない専門店やらブティックが「バッティングだ」とか「うちの商売の邪魔になる」と言ったところで説得力はゼロだ。
競合がいてもMサイズ1枚くらいなら売り切れるはずだ。できないというならよほど販売スキルが低いのだろう。

これがもし、5型も6型も発注してくれるような専門店やブティックからの意見ならブランド側も真摯に聞かざるを得ないが、Mサイズ1枚しか発注しないような専門店やブティックの意見など取り合う必要もない。
粛々と直営ネット通販を開設すれば良いのである。

逆に小規模専門店でも苦楽園のパーマネントエイジのように自社企画でオリジナル製品を製造する店もある。


卸売り型だから直営ネット通販はタブーとか、1店舗しかない小規模専門店だからオリジナル製品は作れないとかそういう時代ではない。

問屋がオリジナルブランドを開始した事例もある。

こうした動きに対して「業界の秩序を乱すな」みたいな意見もあるが、秩序を守って自社が倒産したのでは笑い話にもならない。
まずは生き残ることの方が重要だし、生き残った人間が新たな秩序を構築すれば良いのである。


生産の効率性を下げるような毎シーズンMサイズ1枚しか発注しない販売力のない専門店・ブティックは切り捨てても良いと思うし、それらは早晩淘汰されることになるだろう。


小規模ブランドといえども売れなくては話にならないのだから、売れるための手段は迷わず行使すべきである。直営ネット通販も迷わずに開設すべきである。






メンズファッション雑誌はさらに淘汰される

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 光文社のメンズファッション雑誌「ゲイナー」が6月24日発売号をもって休刊になる。
何度も書いているように雑誌の休刊とは廃刊と同じであり、後年復活できる雑誌の方が稀である。


男性誌「ゲイナー」が休刊 販売、広告収入の低迷が響く

https://www.wwdjapan.com/business/2016/04/22/00020378.html


廃刊の理由はこの見出しがすべてを物語っている。
販売、というよりも広告収入の低迷が原因である。
雑誌や新聞は購読料よりも広告料を主収入源として成り立っている。
購読部数が少なくても広告さえ集められれば雑誌や新聞は利益が出て、営利活動を続けることができる。

ゲイナーは90年に創刊されたそうだ。
筆者が20歳の頃だが、このころ筆者はファッション雑誌なんて読む人間ではなかった。
ファッション雑誌を読みだしたのは就職が決まってからであるから、93年とか94年である。

このころにはすでにゲイナーはあったのだが、今から考えてみると創刊3~4年の若い媒体だったということになる。もちろんその当時の筆者はそんなことは知らない。

ゲイナーという雑誌は2014年までは、毎月10日発売で20代後半から30代半ばまでの若い男性サラリーマンを対象としていた。
掲載内容は、若手サラリーマンにふさわしいビジネススタイルがメインで、それに加えて上品なカジュアル、ビジネスでも使えるカジュアルというスタイルだった。
あとはグルメ情報とか合コンでのマナーとかそういう内容が多かった。
純然たるファッション雑誌よりもそういう部分が多かったというのが個人的な印象である。

個人的にはグルメも合コンも興味はない(合コンなんて20年近く出席したことがない)から、ファッション情報としては他誌と比べて少ないと感じたが、差別化は図れていたのではないかとも感じていた。

それが2014年に突如としてリニューアルされた。

発売日が24日に移動し、対象年齢が50代男性になった。
モデルの田中カール氏をキャラクターにクローズアップした作りとなった。

個人的にはこのリニューアルが失敗だったと考えている。

リニューアル初号を見たときの感想は、「このカールってオッサン誰?」である。

その後、調べると田中カール氏は50代後半で、もともと人気モデルだった方だそうだが、93年くらいからしかファッション雑誌を読んでいない者からすると「このオッサン誰?」というくらいの知名度しかない。
テレビタレントとして有名になりつつあったジローラモ氏を起用した創刊当時の「LEON」を参考にしたのだと思うが、微妙に正解から外れていたのではないか。

リニューアル後の内容もLEONを意識したモテオヤジ的な特集が多く、個人的興味の対象外となった。

ここまでのリニューアルを施さざるを得ないほど追いつめられた状況にあったということだろうか。

同じようなリニューアル策を敢行したのがメンズクラブである。
メンズクラブも24日へ発売日を移動させて、内容もチャラくなった。
ファッションの教科書的スタンスだった旧メンズクラブの内容を評価していたので、現在の新メンズクラブは興味の対象外である。

ゲイナーとメンズクラブの発売日移動によって10日発売の男性ファッション雑誌はメンズノンノ、メンズジョーカー、ファインボーイズ、ポパイの4誌くらいしかなくなった。
反対に24日発売の男性ファッション雑誌が増えたことになる。

さて、部数を見てみる。

http://www.j-magazine.or.jp/index.html

ここでは3か月間の平均印刷部数が発表されている。
2015年10月~12月の最新データを見てみよう。

ゲイナーは66,734である。
近年はほぼこの前後を推移している。

メンズクラブは62,667
ライトニングは84,467

UOMOは58,334
LEONは82,100
Safariは195,717
メンズEXは34,067

ここではオーシャンズの発行部数は出てこないので、

http://www.zasshi-ad.com/media/man/lifestyle/oceans.html

によると、2013年1~3月で72803部だそうだが、2年経過した現在は増減はあるだろうが6万部台には転落していないと推察する。

このほか、2015年10~12月では

メンズノンノは110,000
ポパイは96,000
メンズジョーカーは109,830
ファインボーイズは86,934

となっており、印刷部数だけでいうと、メンズクラブとUOMOはゲイナーよりも少ない。
メンズEXは3万部台なのでさらに少ない。

ゲイナーと同様にこの3誌が廃刊になっても少しの不思議もない。
ただ、広告代理店の営業マンに言わせると、スーツスタイルに特化しているメンズEXは広告出稿量は部数の割には多いそうだ。
スーツスタイルに特化した男性雑誌がないためだろう。
コアな読者層が強く支えていると言える。

メンズファッション雑誌はもともと誌数が少ない上に、少しずつ毎年淘汰されている。
10日発売組の4誌は当分残るだろう。
また24日発売組はLEON、Safari、オーシャンズの3誌が残るのではないか。
月末発行のライトニングはコアなファンが支えるのでこれも残るだろう。

16日発行のビギンも広告出稿が好調なので残るだろう。
スーツに特化したメンズEXは部数は今以上に増えることはないがこれもすぐに消えることはなさそうだ。

24日発売のヤング男性ファッション誌「スマート」を加えると、当分残れる男性ファッション雑誌はこんなところではないだろうか。

雑誌の衰退理由は各所で述べられている通りだろう。

・掲載アイテムが高額すぎて一般消費者の金銭感覚と乖離しすぎている
・ウェブで無料、もしくは無料に近い格安料金でファッション情報が手に入るようになった
・提案されるライフスタイルに現実味を感じられない、それにあこがれない
・消費者のファッションへの興味が昔より薄れている
・ファッション情報に限らずメディアへの信頼度の低下


などだろうか。

男性ファッション誌の動向を見ていると、広い読者層を獲得しようとするよりも、ライトニングやメンズEXなどのマニアックな内容でコアなファンを獲得した方が効果的だと感じられる。
しかし、コアなファン層を獲得しようとしたフリー&イージーの廃刊もあるから一概にこれも当てはまらない。

ファッション雑誌の運営は今後さらに厳しさを増すことだけは容易に想像できるのだが。


 






高級素材は富裕層以外には理解されにくい

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 高級素材はけっこう手入れがめんどくさい物が多い。

例えばシルク。変色するし虫にも食われるし、通常の家庭洗濯も気を使う。摩擦にも弱い。
気軽に庶民が着られるような素材ではない。
ユニクロが3900円価格を中心に大々的にシルクを打ち出したことがあったがその後継続していない。
メンテナンスに手間がかかる素材は庶民には売れなかったのだろうと推測できる。


例えば細番手ウールを使った高級スーツ地。
これで作ったスーツは20万円とか30万円という高価格で販売されるが、こういうスーツは1日着用したら次の1日は着用しないで休ませないと傷む。
以前、某大手コンバーターの課長さんが「若いころに奮発して20万円のスーツを買ったんだけど、2日間連続で着用したら袖口が擦り切れてきてびっくりした。ああいうのは、お金持ちが何着も所有してて、毎日1着ずつローテーションで着まわすべきだね」と笑いながらおっしゃったことがある。

細番手ウールの高級スーツは連続着用には向かない。
反対にツープライススーツとか、西友の7000円スーツは5日間ぶっ通しで着用してもヘタレない。
耐久性ならこちらの方が上である。

以前だと西友のスーツの見た目は野暮ったかったが、今ではそれほどおかしな見た目ではない。

レザーにしてもやはり手入れが重要になる。
ノンメンテナンスで使用したいならクラリーノの方がずっと適している。
そういえば、先日、ランドセルの件でラジオに出演したのだが、その際、街頭インタビューに答えた人で、ランドセルの原料をレザーだと答えた人がいたが、ランドセルの原料の主流はクラリーノをはじめとする合皮である。
レザー使用のランドセルはほとんどない。

ある大先輩は、レザー業界に向けて「ランドセルに適した機能加工を施したレザーを開発せよ」と発破をかけられたことがあるそうだが、現状ではほとんどのランドセルは合皮である。

なぜなら、その方がメンテナンスが楽だからである。
子供たちは活動的だから傷みにくい素材の方が喜ばれる。また雨に降られて水に濡れたりすることも多いので、メンテナンスが必要なレザーよりメンテナンス不要の合皮の方が子供たちも扱いやすい。

最近の合皮は優秀だから、6年間毎日使用してもほとんど傷まない。
筆者の子供たちも6年間使用したがほとんど無傷である。それほどに耐久性に優れている。

綿や麻は素材の価格がピンキリである。
ただ、業界的には繊細な素材は高額で、頑丈な素材は安価である場合が多い。
繊細ということは洗濯・保管などのメンテナンスに気を使わねばならないということである。

こうして見ると、繊細な高級素材の良さを理解できるのは、富裕層に限定されるのではないかと思える。
保管方法も洗濯も凝れば凝るほど料金が発生する。
また人手が必要な場合もある。

庶民的感覚からすれば「ン万円もしたのにもうヘタレてきた」という不満になるし、「あんなに高かったのにこんなにメンテナンスがめんどくさい」という不満にもなりやすい。
低所得者が「繊細な高額素材の良さ」を真に理解できるのであればユニクロのシルクアイテムは今も継続しているのではないか。

筆者は今も低所得者だが、もしすごい金持ちになったとしても20万円のスーツを買うことはない。
なぜならメンテナンスがめんどくさいからだ。
ちょっと贅沢をしてツープライススーツで28000円のを買うようになるかもしれないが。

こうして素材方向から見ると、いわゆるファッションというのは富裕層のものだといえる。
低所得者は元来、繊細な素材は生活シーンにおいて不要であり、それ故にそれを使ったファッションとも無縁である。

低所得者がファッションを享受できるようになったのは、低価格衣料品のおかげだろう。
日本での低価格衣料品はやはりダイエーなどの大型スーパーの存在が大きかったと思う。
高度経済成長からバブル期にかけて既製服の値段が下がったと言っても、専門店や百貨店ブランドの価格はまだまだ高かった。
それを引き下げたのは大型スーパーが低価格衣料品を発売したからだ。

今、「ファッション」「トレンド」では低価格ブランドも高額ブランドも同一線上にある。
低所得者も富裕層も同じデザインの商品を購入する。
それ故にわかりにくいし、筆者のような低所得者は「あのブランドは高いくせに長持ちしない」という不満や皮肉を発するようになる。
しかし、発生や用途から考えると同じデザインでも低価格ブランドと高額ブランドは異なる。
ターゲット層も異なる。

このあたりを整理して考えてみてはどうだろうか。
もしかしたら低価格ブランドに巻き込まれない売り方が見えてくるかもしれないし、衣料品不振に苦しむ大型スーパーはまた違ったアプローチができるかもしれない。







砂の王宮
楡 周平
集英社
2015-07-03






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