南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2015年12月

機械部品とアパレル製品を同列にして「物作り」を論じることはできない

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 昨日、大人気ドラマ「下町ロケット」が最終回となった。
最終回の視聴率は22・3%と高く、今年の連続ドラマの中では最高となった。

下町の機械部品工場の奮闘を描くストーリーで、如何に高品質な物作りをするかに情熱を傾ける主人公の姿が胸を打った。

機械や機械部品の場合、物作りへの評価はしやすい。
性能が高ければそれが評価に直結する。
それでメンテナンスが簡単で、価格が割安(激安ではない)ならばさらに評価は高まる。

最終回の少し前にこんな記事が掲載された。
下町ロケットをアパレル業界に当てはめた記事だ。

また1つ、大阪発のブランドが消える-「下町ロケット」とは真逆の構図、モノづくり精神は…
http://www.sankei.com/west/news/151217/wst1512170003-n1.html


先ごろ会社清算が発表された遊心クリエイションと、今年2月に会社解散したフィットに関してである。
大手アパレルが本社や本社機能を次々と東京へ移転させる中で、大阪を拠点にし続けた2社が相次いで消えたことに対する哀惜の念が込められている。

関西在住の筆者も気持ちはわからないではないが、仕方がないことだろう。
フィットはさほど悪い決算ではなかったが、取り立てて良いということでもなかった。
当時のTSIホールディングスとすれば、存続させることに対して価値を見出していなかったということだろう。

遊心クリエイションについては先日も書いた通りだが、大先輩の指摘を付け加えるなら「親会社の日鉄住金物産の投資が中途半端だった」ということもあるだろう。
低価格ブランド「イーブス」の採算を好転させるためには、店舗数を早い時期に拡大しなくてはならない。
そのためには資金が必要だが、日鉄住金の投資はそこまでではなかったということだろう。現に40店舗強で出店は止まって、逆に店舗数を減らしている。

もしくはまったく資金を投入しないかだ。
遊心クリエイションは困ったかもしれないが、日鉄住金の財務は傷まなかった。

ただ、店舗数を拡大して生産枚数を増やせば今度は売れ残りの在庫も増える。

また、イーブスはいくつかフランチャイズ店も抱えていたが、これを直営にすべて切り替えたことも反対に採算を悪化させた原因ではないかとも思う。

まあそれはさておき。

この記事の筆者の気持ちはわかるが、機械部品とアパレル製品を同列に並べて物作りを語るのはちょっと無理があるのではないかと思う。

機械部品の評価点は、先ほども書いたように「性能」である。
性能はだれが評価しても一目瞭然だ。
なぜならすべては数値で表せられるからである。
作動効率が何%上昇、摩耗耐久性が何%上昇、などという数値で誰が見てもわかりやすい。
嗜好品ではないからそれで良いのである。

さらにメンテナンスが簡易化され、製造コストが維持ないし、微減していればさらに言うことはない。

一方、アパレルも生地も「性能」「機能」では評価されないし、それを表す数値もない。
ものすごくダサい色柄の生地があって「ストレッチ性が30%増」であっても、それを使って服を作ろうと思うブランドはないだろうし、その生地を使って作った洋服が不恰好ならそれは消費者には売れない。

洋服には嗜好品という要素が強いからだ。

「性能」「機能」が高くなくても「ブランド」として評価されている服も数多くある。
1日着用したら2,3日は休ませないと擦り切れたり膝が出たりするような高級スーツもある。
貧乏な筆者はこんなめんどくさい服は宝くじが当たっても絶対に買わないが、これを好んで買う富裕層もいる。
彼らは「性能」「機能」では評価していないということである。

先ほどの記事にこんな一節がある。

知人の大阪在住のデザイナーが手がけるブランドは逆だった。数年前に大企業から離れ、小さな会社を立ち上げた。「これで、気兼ねなく好きな生地を買い、私のこだわりを詰め込んだ服が作れる。
デザイナーとして、モノを作る人間としてこんな幸せなことはない」と話している。
企業の中のデザイナーであったときはコストや売れ筋を常に気にしなければならなかったという。
今は生産数は極少数のため大きくもうけることはできないが、まずまず順調な経営状態とのこと。これぞモノづくりの神髄かと思った。


これはこれで一つの真実であり、事実だが、下町ロケットのドラマをちゃんと見ていれば彼らが異様に「製造コスト」や「採算性」にこだわっていたことも理解しているはずである。
当たり前である。工場がコストや採算性を度外視した物を製造するはずがない。
彼らは家内制手工業をやっているのではなく、大量生産を基本とした工業製品を作っているのである。

反対に、独立系の個人ブランドのデザイナーでも採算性、コストは重視している。
重視していなければそんなブランドは短命で潰れる。
もちろん、1シーズンの展開型数の中に、採算度外視のアイテムがいくつか含まれていることはある。
しかしそれ以外のアイテムはコストや採算性を考慮して作られている。

高品質な生地は1メートル何千円、何万円という価格になる。
これを満足いくまでふんだんに使って服を作ったら、服の販売価格は軽く10万円前後になる。
10万円の服が売れるようなブランド力があれば別だが、ラグジュアリー系ブランド以外にそんな力はない。

そういう服を作っている若手デザイナーブランドもあるが、そういうブランドは決まって採算性が悪い。採算性が悪いというより売上高そのものが低い。

それで「満足だ」という物作りの姿勢もそれはそれでありだ。

しかし、そういうブランドばかりがいくら増えても、生地の供給元である生地工場、縫製工場は潤わない。
生地工場、縫製工場がなくなればそういうブランドは「物作り」はできなくなる。

長年付き合いのある独立系のデザイナーは「青天井に値段の高い良い生地を使いたいと思うことがあるが、採算性やコストを考えてそういう生地は選ばないようにしている」と話している。
これが実際のブランドの「物作り」だろう。
逆に記事中に出てくるブランドの経営は大丈夫なのかと心配になる。

下町ロケットのヒットによって、勘違いした「物作り系」の人々が多数湧くかと思われるが、そんな感情家は業界にとっては、百害あって一利なしだ。

下町ロケット (小学館文庫)
池井戸 潤
小学館
2013-12-21






ワイドパンツが大ヒットしてもタンスの中身が総入れ替えされることはない

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 来年春のトレンドとしてワイドパンツが注目されている。

今年夏に太目シルエットのガウチョパンツが大人気となったことから、その延長線上で人気が盛り上がると読んでいるファッション業界関係者が多い。

1月末で冬セールが一段落したら、ワイドパンツの打ち出しが各店で大々的に始まるだろうから、ある程度の売れ行きは確実だろうと思う。

http://blog.goo.ne.jp/souhaits225/e/17711e48c70db5ae6191b012aa6ae13c

とか


http://www.neqwsnet-japan.info/?p=6271


でもワイドパンツへの注目が書かれており、いわゆるファッション感覚の鋭い人は注目しているので、大外れはないと考えられる。

IMG_3728

(エドウインが提案する今秋冬向けレディースのワイドパンツ)



その一方で、これまでワイドパンツが大流行したことはなかったから業界人が期待するほどは売れないのではないか。
またかつてのトレンドのように、全員そちらに流れるということも考えにくい。

2008年からパンツ(いわゆるズボンのこと)のシルエットはスキニーかそれに類した細身シルエットが基本となった。
もうそこから7年も経過している。

今夏は久しぶりに太目シルエットのガウチョパンツが大流行したが、スキニーやタイトストレート、テイパードストレートなどの細めシルエットのパンツを見かけなくなったかというとそうではない。
けっこう着用者を見かける。

ということはかつてのようにトレンドに沿って、タンスの中身を総入れ替えするのではなく、今までの洋服は着用しつつ新しいアイテムを何枚か取り入れるという消費行動をとっているといえる。

バブル期のようにタンスの中身を総入れ替えしてくれればアパレル業界はウハウハなのだろうが、そんな時代はもう二度と来ない。
今までのスキニーも着用しつつ、ワイドパンツも着用するというそんな買い方になるだろう。

次にワイドパンツを着こなすのは結構難しいということもある。

ファッションブログなどでは着こなしをマシに見せるコツなんてことが書かれてある。
もちろん、それはそれで有益なアドバイスだが、究極のところ、足が長くてスラっとしていればワイドパンツは似合うのである。
その反対はどんなにテクニックを駆使してもすごく似合うという領域には達しない。
まあ「がんばってるね」というところどまりになる。

全体的に太短いひとはワイドパンツは似合わない。
どんなにテクニックを駆使しようとも長身長足の人には遠く及ばない。残酷なようだがこれが事実である。

テイパードや細めストレートパンツよりも着用者を選ぶのがワイドパンツだと思う。

knowermag
http://www.neqwsnet-japan.info/

にもたびたび書かれているように、パンツを使ったシルエットは3通りしかない。

Aライン
Iライン
Yライン


である。

Aラインは、タイトなトップス+太いパンツ
Iラインは、タイトなトップス+タイトなパンツ
Yラインは、ビッグサイズのトップス+タイトなパンツ


3通りの着こなしのうち、2つまでがタイトなパンツなのである。
極端に言えば、3分の2がタイトなパンツで占められている。

太いパンツを合わせるには、Aラインの着こなししか存在しないということになる。

来春以降、ワイドパンツがどれほど流行しても、消費者の着用回数やタンスの中身はこれに類するのではないか。

3分の2をタイトなパンツですごして、残り3分の1をワイドパンツで過ごす。
手持ちのパンツの割合もこの数字に比例するのではないか。

しかもトップスは使い回しできる。
タイトなトップスなら何枚も持っているだろう。
ワイドパンツを3枚くらい買い足せば済むのだから、実は意外に経済的なのである。

結局のところ、トレンドという切り口で商品を提案するなら、バブル期のような「ホームラン」とか「満塁ホームラン」は望むべくもなく、「ポテンヒット」やら「シングルヒット」の積み重ねやらで得点を重ねるほかないのでははないか。

「満塁ホームラン」を望むなら、トレンドとは別の切り口が求められるが、それはそう簡単には見つかるはずがない。

今のアパレル・ファッション業界が一挙に活気づくような切り札は現実には一枚も存在しない。









セール開始時期を前倒ししようが後倒ししようが売れる枚数は変わらない

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 THE FLAGからの課題について書いてみる。

セールの適正時期は?
http://goo.gl/uMIWcD

sale


この数年、喧しかった開始時期の後倒し騒動も何となくうやむやに終わり、ルミネと三越伊勢丹は他施設よりも1週間から10日間くらい遅く開始するような慣行になって落ち着いている。

はっきり言えば前倒しだろうが後倒しだろうがどっちでも良いのではないかと思う。

一消費者としては、入荷して一定日数が経過した死筋商品は、随時値下げして叩き売れば良いのではないかと思う。生鮮食料品はその方式である。
服は食料品と違って物理的に腐ることはないが、死筋商品をいくら長期間並べていても売れない物は売れない。
さっさと見切った方が得策だと思う。

そういう意味では、ユニクロやH&M、ZARAのようなSPAブランドが行っているこの方式の値下げが最も理にかなっていると感じる。

じゃあ、仕入れ専門店はどうすれば良いのかということになるが、駅ビル、ファッションビル、百貨店に入店しているブランドのほとんどは最早SPAである。だから、随時値下げすれば良いのではないか。
仕入れ専門店となると必然的に小型店、地域密着チェーン店にほぼ限定されてしまうから、これは顧客といかに関係性を深めているかということに尽きるのではないか。

関係性が深ければ、前倒ししようが後倒ししようが顧客は喜んでくれる。
またセールは太い顧客への感謝だと位置づけるととらえ方も変わるだろう。

後倒しといえば、業界を挙げてのわけのわからない騒動が起きたが、はるか以前から大阪のファッションビルHEP FIVEは遅めにセールを開始するのが通例だった。
ぎゃあぎゃあ言わずに、やりたければHEP FIVEのように黙って淡々と後倒しすれば良いのである。

ルミネのように「産地保護」なんてありもしないお題目をでっち上げて後倒しするような企業姿勢は到底賛同できない。

現在、国内の衣料品の97%が海外製造品となっている。
近年は中国のシェアが60%程度に落ち、ベトナムやカンボジアなどのアジア諸国の比率が高まっているが、国内製品が3%くらいだという事実は変わらない。

ルミネは、なるべく長期間、定価で販売することで「国内産地を守りたい」と言っていたが、実際のところ、ルミネに入店しているブランドの9割以上は海外製品しか扱っておらず、どこが国内産地の保護につながるのか理解に苦しむ。

中身のないきれいごとを言わずに、素直に「利益を確保したいから後倒しします」と言えば良いのである。
それにセールを少々後倒ししたところで、工場への工賃が上がることはない。
「セールが後倒しになって工賃が上がりました」なんて工場にはお目にかかったことがない。

イタリアやフランスは政府がセール開始時期と割引率の上限を決めているからこれを見習えという意見がある。

たしかに一考の余地はあるが、インターネットが発達した近年では、インターネットショップはその規制を受けずに早期セールを開始しているという意見がある。
もし、我が国でそういう規制を設けたとしても、インターネットショップやらなんやらで必ず抜け道を見つけ出す輩が現れるだろう。いたちごっこではないか。

ビジネスの視点で考えれば、値引きは一番強力な販促ツールといえる。
BtoCに限らず、BtoBでも同じだ。

最も早い時期に、最大限に値引きした企業は取引(売上)を増やしやすい、というのは好き嫌いにかかわらず厳然たる事実といえる。

そう考えると、前倒ししてセールを開始した方が売上高が見込みやすい。
ただし、前倒しすると効果が終息するのも早い。
12月にプレセールを開始して、1月2日から本セールを開始したら、終息するのは1月10日をはさむ三連休である。
それ以降は買い渋りが続く。

しかし良く考えてみれば、どの時期にセールを開始してもいつかは終息する。
筆者も含めて消費者はたくさん服を持ってるから、セールがどれだけ長期間続いても、買う枚数は変わらない。
まさかダウンジャケットを一人で3枚も買う人はいない。
セーターを5枚も買う人はいない。

なら、終息した後でも売れるような商品企画、商品構成を綿密に考えるべきだろう。

前倒しが良いか後倒しが良いかなどくだらない議論をしているのは労力の無駄ではないか。

この問題になると、イタリアでは、フランスでは、という声が業界から必ず挙がる。
アメリカを見習えという声は挙がらない。
アメリカは11月の末に大セールが行われる。

我が国は何かと欧米を見習えという人が多いが、一口に「欧米」と言ってもアメリカとイタリア・フランスではまったく異なる商習慣である。こういうときに「アメリカを見習おう」という声が出ないのは、恣意的にそのときどきの事案によって見習う先をセレクトしているからといえる。(笑)

結論としては売れるための商品企画、商品構成、体制作りができていれば、セールの開始時期は前倒しでも後倒しでもどちらでも良いのではないかと思う。
先にも書いたようにSPA方式で入荷してからの日数経過で在庫を値引きしていくのが一番わかりやすいと思う。









他力本願な商店街は淘汰されるのみ

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 例外はあるにしても多くの商店街とそこに店を構える個人商店にはやる気も変革する気も感じられない。
次代の趨勢によって淘汰されるのは当然のことだと常々思っている。

商店街活性化みたいな取り組みが全国であるが、ほとんどが単なるノスタルジーの発露ではないかと感じる。

昨今は東京、大阪、京都は中国人の爆買いで潤っているが、先日、こんな記事が掲載された。


こんなはずでは!中国人爆買いでも潤わない地元経済
ドンキ、イオンが大賑わいの一方で地元商店街は・・・
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45522?display=b


まあ、タイトルを読むと内容がすべてわかるのだがその通りの内容である。

結果は地元の期待通りにはならなかった。今、現地で聞かれるのは「これでよかったのか」という声だ。

「これでは“中央の企業”に搾り取られるだけだ」

 こう語るのは地元の商店や中小企業の若手経営者たちである。

 彼らが「中央の企業」と呼ぶのは、ドン・キホーテやイオンなどのナショナルチェーンのこと。訪日観光客がこうした量販店に向かうのは、大手メーカーの炊飯器や粉ミルクを買うためである。地元の特産品や土産品を買うためではない。

 また、次のような声も聞かれる。

「鹿児島の中心部にせっかく天文館という繁華街があるのに、観光客はあまり訪れません。天文館にある老舗デパート『山形屋』も素通りされてしまいます」


とあるが、極めて当たり前ではないかと思う。
逆に何の工夫もなく、爆買いのおこぼれに預かれると思っていた方が甘い。

これと似たような報道を過去にも何度か目にしたことがある。

例えば、東京スカイツリーである。
オープン景気で地元の個人経営の飲食店やら小規模店が期待していたが、その期待は外れた。

当たり前だろう。

東京スカイツリーには大規模な商業施設「ソラマチ」があるのだから、そこで買い物なり飲食を済ませる。
わざわざその周辺で買い物や飲食をするはずがない。
するとすればよほどソラマチが混雑した場合に限られるだろう。

周辺商店は何の努力もせずに何を期待していたのか。
甘すぎると言わねばならない。

先日のプレミアム商品券でもそうだ。
プレミアム商品券を使う先は、大手の食品スーパーだったり、地域チェーンの食品スーパーだったりする。
個人経営の八百屋・魚屋でわざわざ使うという人はかなりの少数派だ。

極めて当然の結果である。

大手スーパーや地域チェーン店の方が、品揃えが豊富で価格も安い。
だったら普通の人はそちらで買う。

商店主も自分が買い物する時のことを考えてみれば良い。
わざわざ品揃えも豊富でなくて、チェーン店より割高な店で買い物をするだろうか。

電器店でも同じだ。
家電を買うのに、割高で商品数も少ない街の電器屋で買う人がどれほどいるだろうか。
商店主ですら、家電量販店で買っているのではないか。

今回は個人経営の商店主だが、他の業種でも同じだ。
製造加工業者だって同じ考え間違いを常におかしている。

「日本製だから割高でも買うだろう」

どうしてそんな風に無邪気に考えられるのだろうか。不思議でならない。

実際にそういう製造加工業者だって、「ラルフローレンの本物のシャツが2000円」で売られていたらそちらを買うだろう。
リーバイスのジーンズが3900円に値下がりしていたらそちらを買うだろう。

商店街の商店主の多くは自分も消費者だということを完全に忘れている。
そして消費者になった際の自分の行動を完全に忘れて日々の業務をこなしている。
だからこんなアホみたいな考え違いをするのである。

近年はショッピングセンター内テナントでもなんでもある総合店よりも得意アイテムに特化した専門店チェーンに注目が集まっていると言われるが、だからといって、商店街の個人商店に注目が集まっているというわけではない。
商店街の個人商店は、消費者に選ばれるために何をしているのだろうか?

チラシやDMを定期的に発送しているのだろうか?
店の内装や品揃えを工夫しているのだろうか?
ブログやSNSで顧客と関係性を強化しているのだろうか?
独自のサービスを考案しているのだろうか?


格差はあるものの、各チェーン店は少なくともそこらへんの商店街の個人商店よりはこれらの努力をしている。
資本力で差がついていて、その上で日々の販促の努力でも差がついたなら、その差は最早挽回不可能である。

中国人の爆買い、東京スカイツリー、プレミアム商品券など、外部要因を当て込んで、何の工夫もなしに期待するような他力本願な個人商店はこれからますます淘汰されるだろう。
そして筆者はそのことに対して極めて当然ではないかと考え、いささかも同情しない。

それにしても何度同じようなことを体験したら気が付くのだろうか。










洋服が売れにくい理由

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 去年の秋口から月に2回、ファッション専門学校で講義(というか業界漫談?)を行っているのだが、つい先日、年内最後の講義をした。

相手は来春から就職する学生たちである。

彼らに対して言いたいことは「今は洋服が売れにくい・売りにくい時代」であるということ。
「売れない」ではない。
なぜなら、苦戦する大手アパレル各社でも減収したとはいえ、500億円とか1000億円とか2000億円の売上高があるからだ。売上高がゼロになっているわけではない。

しかし、高度経済成長期やバブル期ほどの売れ行きではない。

なぜ「売れにくい・売りにくい時代」になったのか。
理由をいくつか挙げてみたい。

1、可処分所得が減った人が多い
2、トレンドが長期間ほとんど変わらない
3、消費者はすでに多くの洋服を持っている



大きくはこの3つであろう。

バブル崩壊以降、雇用は不安定となり、賃金・賞与は減り続けてきた。
当然、節約志向になる人が多い。こういう状況下で湯水のように借りてまで金を使える人がいたら、よほどの豪傑かアホかのどちらかである。

どこから節約するかというと、嗜好品の性格が強い洋服代である。
食費も削るがゼロにはできない。
なぜなら、人間は食べないと死ぬからだ。
しかし、洋服を1年間1枚も買わずにいても死なない。病気にもならない。

となると、真っ先に今まで使い過ぎていた洋服代をセーブする。

次にこの10年間、トレンドは大きくは変わっていない。
メンズは相変わらず細身が主流だ。
ビッグシルエットが復活しつつあるとはいうものの、細身シルエットが基調にあり、そこにアクセントとしてビッグシルエットが加わっているというのが正確な現状分析だろう。

かつてのギャングスタイルやストリートが復活すると指摘する専門家もいるが、果たしてそれがマス化するかどうかは怪しいのではないかと個人的には見ている。

洋服を爆発的に売ろうと思ったらトレンドが毎年大きく変化すれば良いのである。

2005年にクールビズが提唱され、半袖ワイシャツが市民権を得た。
その結果どうなったかというとその年の夏、半袖シャツが爆発的に売れた。

ヤマトインターナショナルの夏冬のファミリーセールにはほぼ欠かさずに行っているが、この年の夏には半袖シャツが一枚も出品されていなかった。
顔見知りの社員を捕まえて理由を尋ねると「クールビズの影響で半袖シャツが品切れで、ファミリーセールに出品できなかった」との答えが返ってきた。

半袖シャツが品切れだったのは後にも先にもこの1度だけである。

またワイシャツメーカー、山喜の決算も好調で、理由は半袖シャツが爆発的に売れたからである。
別のワイシャツメーカーは、在庫の長袖シャツの袖をすべてカットして売って、長年蓄積されていた在庫を一掃できたという。

トレンドが大きく変われば、爆発的に売れるという実例である。

しかし、残念ながらこの10年間、トレンドはほとんど変わっていない。
5年前に買った洋服を今着用しても違和感はない。
となると、必然的に毎年服を買う理由がない。

そして、すでに消費者は多くの服を持っている。
春夏秋冬の各シーズンに着用する洋服をそれぞれ5枚や10枚くらいは持っているのではないか。

わざわざ今年、さらに買い足す必要がない。

トレンドは去年とほとんど変わっていないのだから、去年買った洋服だけで暮らしていても別に不都合はない。
なら、買う必要はないと多くの人が判断してもおかしくない。


高度経済成長期やバブル期くらいまでは、多くの消費者はそれほど洋服を所有していなかったから、毎年服を買った。
またトレンドも頻繁に変わったし、それに乗り遅れると恥ずかしいという気持ちが強かったから、新製品を並べると売れた。
売れ残っても値引きをすれば売れた。

消費者が当時のような考え、マインドに戻ることはあり得ない。
その中で仕事としてどのようにしたら自社の洋服がそれなりに売れるのかを考えなくてはならない。

今のアパレルの経営陣は良い時代に若い時分を過ごした人がほとんどである。
消費者の「不要な服は買わない」というマインドを根本的には理解できない人が多いのではないか。
だから「俺たちが若いころは~」なんて的外れの説教、アドバイスが飛び出すのである。

今後、我が国の景気がどれほど良くなろうとも「俺たちの若いころ」には人々のマインドは戻らない。

それを踏まえてどう売るか、売れるものをどう作るか、を考えるのが今後のアパレルビジネスではないだろうか。

残念ながら筆者にも提示できるような答えはない。
あればとっくに金持ちになっている。

個々のブランドやショップで自分たちに適した手法を模索するしかない。
それができなければ淘汰されるだけである。

新製品を並べたら売れるとか値引きをしたら売れるとか、タレントと契約したら売れるとか、そういう状況ではないし、今後もそんな状況にはならない。
タレント自身がやっている(とされている)ブランドでもほとんどは3年程度で終わってしまう。

話した内容はざっと以上のような内容である。
















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