南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2015年09月

製造加工業者のブランド開発が成功しない理由

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 産地の製造加工企業が自社オリジナルの製品ブランドを立ち上げる事例が増えているが、実際のところ、ある程度軌道に乗ったブランドは少数で、大多数は失敗している。
それはなぜか。様々な要因があるが、ブランドの組み立て方という点において、産地ブランドが失敗する理由を考えてみる。

自社で製造している生地や、自社の染色・加工技術を生かして、それで製品を作るというのが産地ブランドの特色である。

製品ブランドを組み立てる際には2つの考え方がある。

1、自分(もしくは自分たち)が好む物、自分たちが使用したい物を作る
2、自分たちの好みは関係なく、自社の特色と市場規模を照らし合わせてそこに合致した製品を作る。

という2つである。

どちらが良くてどちらが悪いということはない。
どちらも正しく、ブランドの組み立て方が異なるということだけである。

産地企業のブランドが上手く行かない理由の一つに、この2つを経営者や幹部がごっちゃにしてしまうことにある。

どういうことかというと、たとえば、ハンカチ生地を製造していた阿江ハンカチーフが薄地生地を作る技術を応用してゴスロリ向けの日傘ブランド「ルミエーブル」を立ち上げて軌道に乗せた。

ここは、自分たちの持っている技術と、どこに市場性があるかを念入りにリサーチしてブランドを組み立てた。
社長は男性である。おそらくゴスロリの趣味はない。

市場性があると見込んだ分野に向けてそれに合わせた商品を投入している。
だから成功したといえる。

もし、社長が自分の好みを中途半端に導入していたらおそらく失敗していただろう。
ゴスロリ向けの日傘ブランドなのに社長が「ワシはこういう傘が欲しいから、これも1型製造しよう」などと言って、英国トラッド調のデザインの傘を1型だけ挿し込んだとする。
こうなるとブランドのテイスト自体がブレる。何のブランドなのかがわからなくなってしまう。
テイストがブレたようなブランドは消費者から欲しがられない。

実際に筆者も産地企業の製品作りの会議に参加したことがあるが、レディース向けのエレガンスなアウターを製作すると決定しているのに、年配の男性社長が「ワシはこんなデザイン嫌いだから変更したい」みたいなことを平気で言う。
コンセプトとターゲットに応じた製品デザインを考えねばならないのに、おっさんの好みなんてクソの役にも立たない物を持ちこんでどうするのか。
しかも女性向け商品であるから、おっさんの好みなんて関係ない。どうでも良いのである。

こういうことを平気でやってしまう。
まあ、産地企業に限らず、いわゆるメーカーと呼ばれる企業でさえこういうことがまかり通る場合がある。

それならば最初から「自分たちが使用したい物」というコンセプトでブランド開発をすべきだったのである。

この区別ができない経営者や幹部がそろっているなら、その企業の製品ブランド開発はかなり失敗する確率が高いだろう。

短パン社長として有名な奥ノ谷圭祐社長が企画製造する「Keisuke Okunoya」というメンズカジュアルブランドがある。
SNSでしか注文を受け付けないという無店舗販売ブランドである。

このブランドは、短パン社長が完全に自分の好みしか反映していない。
そういうブランドの組み立て方もある。

自分の好きな商品だけを企画製造したいなら、最初からそうすべきだし、市場性を考えてブランドを組み立てたのなら己らの好みなんて極力排除すべきで、仕事と趣味はきっちりと線引きをするのが常識的な態度である。
そのどちらも徹底できないんだったら、製品ブランド開発なんて止めてしまえば良い。
その方が周りも振り回されなくて幸せだ。

この次に多い失敗理由が「日本製しかアピールポイントがない」という点である。

日本製=高付加価値ではない。
日本製ブランドなんてすでに掃いて捨てるほどある。
日本製というだけではすでに消費者から選ばれるポイントではなくなっている。
日本製+プラスアルファの切り口が必要なのである。

先日、某合同展を主宰する人と雑談をした。
合同展以外に、製造加工業者の開発した日本製ブランドを集めて催事販売するという取り組みも行っている。
その催事販売だが、しばらく前に休止したという。

その理由が、全業者を集めて会議をしたところ、日本製というだけの打ち出ししかないということになり、そこに限界を感じて休止することになったそうだ。

その彼によると、日本国内ではもう日本製というだけではブランドは売れていない。そこにプラスアルファの要素があるブランドが売れている。日本製というだけである程度の価値を見てくれるのは、アセアン地区くらいだろう。それもあと何年もは続かないとのことである。

おそらくアセアン諸国でも「日本製」ということを価値だと感じてくれるのは長くても5年くらいだろう。
それ以降は、今の国内と同じでプラスアルファの要素が求められることになる。

今、ブランド開発に取り組んでいる国内の製造加工業者は、上で述べた点についてもう一度よく考えてみてもらいたい。

当てはまっているならぜひ修正して、ブランド開発に成功してもらいたい。











ファッション業界に取り込まれたジーンズというアイテム

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 昨日発売されたカルチャー雑誌「20世紀」のジーンズ特集号に2ページ寄稿した。
ほぼ巻末に掲載されており、内容はジーンズ市場の変遷についてである。

写真77






なぜ、ナショナルブランドと呼ばれたジーンズブランドが一部を除いて凋落したのかについてである。

一つには、有力な卸売り先であるジーンズチェーン店が苦戦になったからである。
主要販路の業績が悪くなればそこに卸しているメーカーの業績も連動する。
三信衣料から始まり、フロムUSAやロードランナー、カジュアルハウス306などの大手が相次いで倒産した。
残った全国チェーン店のライトオン、マックハウス、ジーンズメイトもそろってピーク時よりも売上高を落としている。


もう一つは、ユニクロをはじめとするSPAブランドやワールドやオンワード樫山などそれまでジーンズとは縁のなかったブランドがこぞって自主企画ジーンズを発売したことで、需要が分散化したためである。
これらの自主企画ジーンズの製造を支えたのが、ジーンズブランドのOBたちが続々と立ち上げたOEM・ODM企業である。

2000年ごろに今は亡き、サンエーインターナショナルのメンズブランド「abx」でオリジナルジーンズを買った。
バーゲンで2900円くらいまで値下がりしていたので買ったと記憶している。
当時はストレッチデニム生地はまだ一般的ではなかったから綿100%で、ちょっと細身のシルエットだった。
値段にひかれて買ったわけだが、買ってから後悔した。
なぜなら穿いてみると形が良くなかったからである。おまけに生地もなんだか安物くさい。
その手触りや表面感から類推すると、空紡糸を使った廉価デニム生地だったのではないかと思う。

形が悪かったのは、おそらくジーンズ専用のパターンではなく、通常のスリムパンツのパターンを使用したからではないかと思う。ジーンズブランドのジーンズとはいくら細身とはいえ、著しく形が異なっていた。

今でもときどきあるのだが、通常のパンツのパターンでジーンズを作ってしまうと何とも言えない可笑しな物が出来上がる。
通常のパンツのパターンを引けるからといって、それをジーンズに流用するとちょっと変な形のズボンが出来上がる。

まったくの推測でしかないが、abxのこのジーンズはジーンズの企画製造に長けたOEM・ODM企業を通さずに製造したのではないだろうか。

OEM・ODM企業を通してジーンズを作るという手法が一般的になった現在は、ジーンズブランドとそん色のないジーンズをどんなブランドでも企画製造できるようになった。

かくしてジーンズは様々なブランドに広がったというわけである。


ここからは仮定の話である。


じゃあどうすればジーンズブランドは凋落しなかったのかを空想してみた。
製造ノウハウをきっちりと握りしめていればよかったのではないか。

そうなった場合、各ジーンズブランドが縫製工場、洗い加工場を自社で経営して100%自社工場だけで生産を行うか、協力工場の生産ラインを自社の商品で埋め尽くしてしまうかのどちらかしかない。
協力工場のラインを埋め尽くしてしまうことで他社の商品を受注できなくさせるわけである。

しかし、どちらも現実的に実行することは不可能である。

とくに協力工場のラインを埋め尽くすことは不可能だ。

となると、いずれ製造ラインに一般アパレルが参入してくるのは目に見えている。

結局、遅かれ早かれ、現在と同じ状況下に置かれることになったのではないだろうか。


各ジーンズナショナルブランドが過去の施策を多少変えていたとしても結果はそれほど現在と変わらなかったのではないか。


久しぶりに「ファインボーイズ」の10月号を買ってみた。
真ん中あたりにデニム特集があった。
いろいろなブランドのジーンズが掲載されているが、ナショナルブランドで掲載されているのは「リー」「リーバイス」だけである。
それ以外のジーンズブランドは「ジースターロゥ」「ディーゼル」「APC」「ヌーディージーンズ」くらいだ。

そのほかは「ビューティー&ユース」「アーバンリサーチ」「ビームス」「Rニューボールド」などのセレクトショップかメンズブランドのジーンズである。

こう見ると、それまで閉ざされた特殊アイテムだったジーンズは完全にファッションアイテムとして拡散してしまったといえる。

そして「ファッション」としての扱いが長けたそれらのブランドに、「ファッション」としての扱いが下手だったジーンズナショナルブランドが競り負けるのは当然の帰結だったといえるのかもしれない。

20世紀 No.0002
クレタパブリッシング
2015-09-28




日本ジーンズ物語
杉山 慎策
吉備人出版
2009-02-27


ウェブ通販をやっただけでは売上高は伸びない

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 「これからはウェブ販売だ」「これからはオムニチャネルだ」という掛け声をよく耳にする。

実際にウェブ通販の売上高総合計は伸びているから、これに異論はない。
ますますウェブ通販という業態自体は伸びるだろう。

しかし、コンサルタントやアドバイザーが言うのはまだしも、ナンタラ組合のエライさんとかナンタラ協議会のエライさんとかが言うのを聞いていると、どうも「ウェブ通販をやればすべての問題は自動的に解決し、あまり労せずして売上高が伸びる」という風に認識しているように思えてくる。
まあ、筆者特有の邪推かもしれないのだが。(笑)

そのエライさんたちがウェブに堪能だということは聞いたことがないし、そもそもそのエライさんたちはウェブ通販で買い物をしたことがあるのかどうかもあやしいところである。

一昔前に「SPA化すればすべての問題が解決する」と言ってた風潮とあまり変わっていないのではないか。

すでにウェブ通販には大手から小規模・零細まで無数の業者がひしめいている。
実際に筆者にも独立して、一人で各メーカーからの在庫を引き取ってきてウェブで販売している知人がいる。
その彼が展開しているウェブショップだが「当社も含めて新規参入組が楽天で上位に表示されるのは至難の業。上位に表示されないと集客できないし、当然、売上高にもつながらない」という状況である。

超有名ブランドならさしたる販促がなくてもある程度の集客はできるかもしれない(売上高につながるかどうかは別)が、それこそナンタラ組合とかナンタラ協議会みたいな消費者にとってマイナーな集団が思いつきで立ち上げたような通販サイトには、莫大な販促費を使わない限りなかなか集客できない。

それにそこそこ名の通ったウェブ通販業者だって苦戦している。
例えば夢展望。

2013年9月期連結は増収増益だが、
2014年9月期連結は、売上高が65億3900万円(前期比3・3%減)、営業損失7億5100万円、経常損失7億9000万円、当期損失9億800万円の減収赤字転落だった。

2015年から決算月を3月に変更したので、2015年3月期連結は半年間の変則決算だったが、業績は回復していない。

売上高26億9800万円
営業損失5億3600万円
経常損失5億9400万円
当期損失7億400万円

となっており、単純に2倍すると前年よりも減収・赤字幅ともに拡大している。

ちなみに2016年3月期連結の第1四半期は

売上高10億1900万円
営業損失1100万円
経常損失1500万円
当期損失1700万円

となっており、まだ回復傾向にあるとはいえない。

売上高は対前年同期比で約5億5000万円の減収である。

ウェブ通販の先駆けとして知られた企業ですらこの苦戦傾向である。

何の知名度もない新規参入者が無策に飛び込めばどれほど悲惨な状況に陥るかは火を見るより明らかではないか。
すでにウェブ通販はレッドオーシャンであり、決してブルーオーシャンではない。

コンサルタントやアドバイザーがウェブ通販参入を煽るのは自分たちのビジネスを拡大するためである。
集客がキモであることは彼らがもっとも熟知しているはずなので、煽るだけ煽って、具体策を提示することで彼らのビジネスにつなげるという作戦だろう。

しかし、わけもわからずその尻馬に乗っているように見える年配層の業界のエライさんたちは、逆に業界をミスリードするのではないか。
おそらく彼らは集客の困難さなど考えもしていないだろう。

先日、このブログにメールをくれた縫製業者と思しき人がいる。
その人によると、かつて自社でブランドを立ち上げ、楽天に出店したのだそうだ。
だが、売上高がまったく稼げないので1年ほどで撤退したという。

ご本人にはお気の毒だったが、無名の新規参入者なら当然の結果ともいえる。

それほどにウェブ通販での集客は難しい。
集客だけで考えるならリアル店舗を繁華街に出店する方が楽なのではないか。
もちろん、コスト面は度外視しての話である。

例えばJR大阪駅の改札付近の出店すれば、毎日何十万人という人が通る。
その中の少なくとも何百人かは店内を覗いてくれるだろう。買うかどうかは別にして。
ウェブ通販で無名の新規参入者が開店直後から毎日何百人の来訪者を安定的に集めることは限りなく困難である。
わざわざ消費者がその無名の通販サイトに来る理由がないからだ。

またウェブ通販だと集客をしても、間違ったターゲット層だと売上高はゼロである。

以前も紹介したBストアだが、ここは立ち上げて2,3年ほどのウェブ通販専業のカットソーブランドである。

http://b-webstore.jp/

主宰の山口悠太さんによると、初年度はかなりふんだんに広告費を使って集客したが、売上高はほぼゼロに近かったという。
集客したターゲット層と販売していた商品がマッチしなかったからだ。
ピーク時には1日に1000人近く来訪者があったが、売上高はほぼゼロだったというから、リアル店舗の販売よりもシビアである。

リアル店舗での販売なら、話好きのおばちゃんやおっちゃんが、「ねえちゃんが愛想良かったから、とりあえず500円の値下げ品でも買うわ」ということがたまにあるが、ウェブ通販だとそういう人情はゼロである。
欲しい物は買うが要らないものは要らない。それがより顕著となる。


ウェブ通販にはこういう厳しい側面がある。


だから各社は集客に必死になり、販促費を使うのである。
一時期問題となった有名タレントのステルスマーケティング(ステマ)はそういう背景があるからだ。

放っておくとサイトに集客ができない。
それなら多数のファンを抱えるタレントにブログやSNSで紹介してもらえれば、何千人・何万人のタレントのファンはとりあえず来店だけはしてくれるだろうし、タレントが「お気に入りです」とか「使ってめっちゃ良かった」と書けば、そのうちの何割かは購入してくれる。

だから何十万円・何百万円という費用を支払ってでも有名タレントにステマを依頼するのである。

大手がそれほどの投資をしてやっと集客しているのに、無名のポッと出のブランドが何の対策もなしに集客できるほどウェブ通販は甘い世界ではない。


これからは「ウェブ通販だ」「オムニチャネルだ」というのは間違いない。
問題はどうやって集客するかである。集客のできないウェブ通販サイトなんてゴミ屑同然である。


コンサルタントやアドバイザー諸氏はスローガンのぶち上げはもう十分だろうから、そろそろ如何に集客するかを語るべきだろうし、エライさんはウェブ通販をやったからといってすぐさま売上高が伸びるなんて妄想はそろそろ捨て去るべきだ。










好調ブランドも3年後には転落するアパレル業界

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 アパレルブランドの業績のジェットコースターぶりは激しい。
改めてそう思った。好調だったブランドがわずか3年ほどで倒産してしまう。

今年、6月1日にヤング向けレディースブランド「CHU XXX(チュウ)」を展開していたシー・エス・ピーが倒産した。負債は15億円。

http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4057.html

帝国データバンクの記事を引用する。

自社で企画・デザインを手掛け、中国や韓国などの協力工場で生産、自社店舗で販売するSPA業者として一定の知名度を有し、2013年には関西を中心に東北から九州まで49店舗に拡大。

また、クッションやマット、雑貨などの卸事業も手掛け、大手婦人服小売業者やギフト業者向けに営業基盤を確立していた。積極的な店舗展開により「CHU XXX」(チュウ)ブランドの知名度が向上した2012年3月期には年売上高約51億8800万円を計上していた。

 しかし、同業他社との競争激化に伴い顧客単価は低下し、急激な出店により不採算店舗も散見されるようになった。さらに卸事業でも大口顧客からの受注が低下したことで2013年3月期には年売上高約45億4600万円までダウン。減収に加え、出退店経費や人件費などが嵩んだことで約1億8100万円の当期純損失を計上していた。

このため、店舗のスクラップアンドビルドを加速させるなどのリストラを実施するとともに、金融機関への返済条件緩和を要請するなど経営の立て直しを図っていた。その後も、業績の悪化に歯止めが掛からず、2014年3月期には債務超過に転落。加えて、昨年10月以降の急激な円安により生産コストが上昇したことで収益面は低迷し、ここに来て先行きの見通しが立たないことから今回の措置となった。



とのことである。

2012年度にピークを迎えたブランドが次年度には6億円近く売上高を落として赤字転落。
さらにその翌年には債務超過に陥り、今年倒産である。
この間、たった3年である。

創業は1986年だからジワジワと業容を拡大してきたが、急激な店舗網拡大によって赤字に陥るとともに商品の売れ行きが陰ってあえなく倒産した。

さて、この「チュウ」の商品だが、あちこちの処分屋・バッタ屋に流れており、現在安値で購入できる。
またシー・エス・ピーの幹部やらスタッフやらがあちこちで催事販売をして現金化しているとも聞く。

定価での価格帯でいうと、Tシャツ1900円、カジュアルアウターが3900~4900円、である。
ユニクロと同等か商品によってはユニクロよりも安い。
デザイン面でいうと、ユニクロよりもトレンド性が高い。
ユニクロはレディースもどちらかというとコンサバテイストであり、純然たるヤング向けではない。
ヤング向けということに関していえば、はるかにこの「チュウ」の方が適している。

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(商品一例)



まあ、そんな感じのブランドである。

倒産したブランドはあちこちで投げ売りされて現金化される。
それはこの「チュウ」だけが特別なのではない。

例えば、子供服のフーセンウサギが倒産したが、筆者は昨年、このフーセンウサギの「セレク」というブランドが近鉄百貨店あべのハルカス本店でワゴンセールで投げ売りされているのを見たことがある。
これは倒産後に流れてきた商品だろう。

また、3年ほど前は郊外のショッピングセンターの催事でボブソンのジーンズが投げ売りされていたのも見たことがある。ボブソンが再起する前だったので倒産後に在庫が流れてきたのだろう。

すべからく倒産ブランドの在庫品はあちこちに流れて投げ売りされるのが常態だ。驚くには値しない。


これと似たように感じたのは、「リズリサ」ブランドの売却である。

これもほんの数年前は超人気ブランドだったが、今は赤字転落しており、ブランドごと今年9月に売却された。
もともと展開していた会社は解散である。

これは繊研プラスから引用する。

http://www.senken.co.jp/news/management/crossplus-salelizlisa/

クロスプラスは9月15日、連結子会社のヴェント・インターナショナル(東京、檜皮和彦社長)を16年1月31日付で解散し、ヴェントが展開するリズリサ事業を投資ファンド、希キャピタルパートナーズ(東京)の子会社に10月に譲渡すると発表した。譲渡価格は3億800万円。クロスプラスは本業の製造卸事業に経営資源を集中し、低迷の続く業績を立て直す。

 ヴェント・インターは、「リズリサ」ブランドでヤング向けの衣料品と服飾雑貨を企画・製造し、商業施設の直営店などで販売してきた。不採算店の撤退や仕入れの見直し、コスト削減を進めてきたが業績は回復せず、15年1月期は売上高50億円に対し、経常損益は14億円の赤字、純損益も16億円の赤字だった。

 リズリサの商標は希キャピタル100%子会社のリズリサホールディングス(東京)に、商品在庫、事業設備、備品などは同ホールディングス100%子会社のLIZLISA(同)にそれぞれ譲渡する。


とのことである。

このニュースが流れてから、投資ファンドに何らかの関係のある人から「このブランドに3億円を払う価値があったの?」という質問メールが来た。

売上高が50億円でも経常損失が14億円、純損失も16億円だったなら、3億円も支払う価値はない。

そうお答えしておいた。
3億円支払ってまださらに15億円前後の赤字を背負い込むことになるからだ。

いやはや、本当にアパレルは水物である。

先日、「チュウ」ブランドについてこんなやり取りがあった。

あちこちで投げ売りされている「チュウ」ブランドだが、その中の1店で、「チュウ」の固定客だったという40代前後と思しき女性とである。ちょっと「チュウ」を愛用するには年齢が過ぎているかなという印象が強い。(笑)

この女性によると、倒産する1週間前くらいに「チュウ」の直営店に買い物に行ったところ、全品7割引きだったという。
「チュウ」のスタッフブログによると全店を5月29日に閉店しているので、おそらく5月半ばから20日過ぎの間だったと推測される。

いくらバーゲンが早期化しているとはいえ、5月半ばから全品7割引きセールをするブランドはない。
よほど現金化を急いでいたのだろう。

この女性も「何かがおかしい」と思ったらしいが、まさか、その直後に倒産するとは思わなかったとも。

さらにポイントが数千点たまっていたらしく、「せっかく貯めたのに無駄になった」とひどく落胆しておられた。
それはそうだろう。

5月の7割引きセールで使おうと思ったらしいが、「セール品じゃなくて定価品を買う時に使おう」と思ってさらに貯めたらしい。
気持ちはわかるが、その時に使うのが正解だった。

チュウの商品を見ていると、定価でもそれほど高くはないし、格別に上質というわけではない。
価格相応の品質しかない。
またセール品が粗悪品であるわけでもない。
だったらセール品で気に入った物があればポイントを使って買う方が良いのではないかと筆者は思う。

例えば5000ポイント貯まっていたなら、1000円に値下げされた商品5枚をタダで手に入れた方が良いのではないかと思う。

筆者なら間違いなくそうしていた。
そういえば、筆者はスーツカンパニーの毎号のメールマガジンについている10円分のポイントを何年間か貯めて1500ポイントにしてから、1500円に値引きされていたシャツをタダで手に入れたことがある。

アパレルブランドはいつ倒産するかもわからない。
貯まったポイントはなるべく早く使い切った方がお得である。

そう思わされたやり取りだった。









ファッション専門学校の生徒数はバブル期でも減少し続けていた

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 連休中にふとこの記事を読んで、その中のグラフに目が止まった。

100年続くアパレル工場とは
http://www.huffingtonpost.jp/toshio-yamada/apparel_b_8168812.html

べつに内容に深く共感したわけではない。

その中でファッション専門学校生の人数の推移というグラフが掲載されていてこれに興味をひかれた。

2015-09-21-1442824603-8186146-6







ファッション専門学校生の数は77年をピークにずっと減り続けている。
途中に微増する時期はあるが、77年・78年のピーク時までに戻ったことはない。

この状況を指して、「減り続けていることが残念」という意見があるが、筆者は別にそうは思わない。
学校関係者にはお気の毒だが、アパレル産業が若者にとって魅力ある産業ではなくなったのだから志望者が減少するのは何の不思議もない。

このグラフのソースはイマイチよくわからない。
しかし、某学校関係者が2年くらい前に見たことがあるそうなので、2013年ごろに作成されたのではないかと思う。

2012年は2万人となっている。
しかし、某専門学校の理事長がすでに2013年ごろには「全国のファッション専門学校生の人数は13000人くらい」と発言されており、この2万人でさえちょっと多めに見積もられているのではないかと思う。

さて、興味深いのが76年の4万人強から翌年の77年に9万人弱に倍増している点である。
このグラフが事実に近いとするならば、ファッション専門学校生の人数は徐々に微増を続けてきたのではなく、77年にいきなり倍増したということになる。

そういう意味ではジワジワと人気が高まってきたのではなく、何か特別な事件や事態が起きてそれに影響されたのではないかと考えられる。

筆者は70年生まれなので、76年当時は6歳であり、77年当時は7歳だ。
当然、その当時の社会的風潮や雰囲気はわからない。

先達によると、当時、パリコレで日本人デザイナーが大活躍をしたからそれに影響を受けたのではないかということである。
また別の先達によると、75年後半に放映されたドラマ「あこがれ共同隊」の影響もあるのかもしれないという。

ちなみに「あこがれ共同隊」についての詳細は以下を参考にしてもらいたい。

http://middle-edge.jp/articles/0bJEd

たしかに影響があったのかもしれないが、その割には視聴率が振るわずに打ち切られている。
しかし、こういうドラマがわざわざ作られたということは、これに近い雰囲気が社会に蔓延したと考えて間違いはないだろう。少なくともテレビ局側はそう考えていたということになる。

また別の先達によると、77年にポパイ創刊、78年にVANが倒産しているということなので、ファッションブームが76年ごろから醸成されていたとも考えられる。

ところが、7年後の85年には早くも5万人を割り込む。
ものすごい勢いで生徒数が減少していることがわかる。
さらに生徒数は減少を続け、バブル絶頂期の89年・90年には76年当時と同じ4万人強にまで生徒数が減っている。


このあたりになるとさすがの筆者も社会的雰囲気は覚えている。

たしか85年とか86年という時期、ブランドショップはすさまじい人気だった。
バーゲン時には開店前から長蛇の列ができているし、DCブームも到来した。
にもかかわらず生徒数は減少しているのである。

今でも業界では「バブル期は飛ぶように服が売れた」と認識しているが、そういう絶好調な業界にもかかわらずそこに入りたいという若者は減少し続けていたということになる。
しかもバブル期の89年には団塊ジュニアの先頭集団が高校を卒業する。
18歳人口は現在よりも当然多かった。

「空前の好景気+18歳人口の増加」にもかかわらずファッション専門学校への入学者数は減少している。

この事実を学校関係者はどう読み取るのだろうか。

現在の生徒数減少は18歳人口の減少という側面が少なからずある。
まあ、減っても仕方がない。
しかし、89年~92年ごろまでは18歳人口は増加を続けていた。
この時期にも生徒数が減っているということは、すでにアパレルは若者にとって魅力的な産業ではなくなっていたということになる。

アパレルの衰退はすでに30年前から起きていたといえるのではないか。
なにもバブル崩壊後に始まったわけではない。すでに80年代には若者に見放された業界だったといえる。

先達に言わせると、「80年代に入ってすぐにアパレルは他の産業間競争に敗れて、優秀な人材はこの業界に入らなくなった」ということになるが、まさしくその通りだろう。

その後、99~01年にかけては生徒数が微増する。
これは就職氷河期のピークで大卒でも就職できない時期だったから、「手に職を」と考えた若者が微増したと考えられる。
その後、2004年以降はまた減り続けるが、2004年以降は景気が回復して大卒が就職しやすくなったからまた減少したのだろう。

そして2008年からさらに減るが、これはリーマンショックによる不景気だろう。
また、少子化の影響もあるし、今度は労働力不足から売り手市場になったこともあるだろう。
ファッション業界なんかに来ずとも、もっと条件が良くて成長性の見込める企業に大卒者が就職しやすくなったからである。

おそらく2015年、2016年はもっと生徒数が減少しているだろう。

なぜならアパレルは不景気産業である上に、労働条件も良くない。産業としての成長性もあまり見込めない。
だから逆に言えば、学校関係者はお気の毒だが、生徒数が足りないくらいの方が、業界との需給バランスが成り立つのではないかと思う。

どうせ、就職先もあまりないし、就職したところでブラック紛いの企業が多い。
べつにユニクロのことではない、ブラック紛いの企業はアパレル業界には掃いて捨てるほどある。
正社員雇用だけど各種保険が完備していないとか、タイムカードがないとか、そんな企業はざらにある。
解雇は常態だし、そもそも企業自体がすぐに倒産する。
小規模・零細企業だけではなく著名ブランドだってすぐに倒産してしまう恐ろしい業界である。

まあ、それでも何とかしたいと思う人がいるなら、まずは業界での労働者の待遇を改善し、業界の成長性を提示・実証することだろう。
倒産が頻発するのはそういう産業構造だからこれは改善しようがない。

それがなされないままに、「夢」とか「希望」とか「楽しさ」を提示したところで専門学校生の人数が増えることは永遠にない。人間は「夢」や「希望」のみでは生活できないからだ。
まずは賃金、待遇である。そして産業としての成長性である。
成長性のない産業や企業に「夢」や「希望」は持てない。


だから個人的には、このまま生徒数は自然減に任せるのが良いのではないかと思う。

ちなみにファッション専門学校の淘汰はすでに始まっており、直近の事例でいうと、大阪ファッションデザイン専門学校はすでに生徒募集を停止したし、文化服装学院広島校も来春以降の生徒募集を停止した。
生徒募集を停止したということは、在校生が卒業したら閉校するということである。
今後、さらにファッション専門学校の数も生徒総数も減少すると考えられる。









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