南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2015年06月

その値段を本当に「買いやすい」と思っているの?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - その値段を本当に「買いやすい」と思っているの?
 「買いやすい価格に設定した」

業界紙やファッション系ウェブメディアでよくこんな表現が使われるが、その大半以上はとても買いやすい価格とは思えない値段設定となっている。

ブランド側は本当にその値段が買いやすいと考えているのだろうか?
だれにとっての買いやすい値段なのだろうか?

ブランド側と消費者意識のズレを感じることが多い。

例えば、6月18日のファッションスナップドットコムに掲載された「クラネ」というブランドの記事だ。

http://www.fashionsnap.com/news/2015-06-18/clane-debut-collection/

以前から交流があるというヨシロットン(YOSHIROTTEN)のアートワークを落とし込んだスウェット(14,000円)、フーディ(16,000円)、iPhoneケース(7,900円)も発売される。価格帯はトップスが7,900円〜12,000円、ニットが13,000円〜24,000円、ボトムスが15,000円〜25,000円、アウターが39,000円〜69,000円、オリジナルの木型を使ったシューズは26,000円〜39,000円で、「普段高いものを買っている人には『このクオリティでこのプライス』と驚いてもらえて、そうでない人には頑張ったら手が届くような、使いやすくて買いやすいプライスレンジにしました。ハイプライスゾーンのアイテムにも組み合わせて着てもらえる、新しいジャンルを確立していきたいです」という。

とある。

この価格帯は果たして「買いやすい価格帯」だろうか?
低所得者たる筆者には到底そうは感じられない。
まあ、ターゲット層は筆者のような低所得者ではなく、これを安いと感じる高額所得者なのだろう。

ちなみに筆者は個人的にこの「クラネ」ブランドを否定的に見ている。
そのわけは後で述べるが、商品写真を見る限りにおいてはとてもじゃないが「新しいジャンル」とはなりえないと感じる。ありきたりなテイストのありきたりな価格帯のブランドに見える。

同じく価格帯で疑問を感じるのが、6月4日の繊研プラスに掲載されたビーミングライフストアである。

http://www.senken.co.jp/news/company-news/bminglifestore-madeinjapanline/

30代の家族を主力ターゲットにした同じSC内の他業態と差別化するため、定番のウエアや雑貨でメード・イン・ジャパンの新ラインを投入することにした。

カットソー(6900円)は大阪のメーカーで作り、スエット(1万1000~1万3000円)は和歌山のつり編み機で生産、ボタンダウンなどのシャツ(9500円)は千葉、デニムアイテム(ジャケットで1万3500~1万5000円)とチノパン(1万1000円)は岡山、ニット(9000~1万1000円)は群馬のニッターが「ホールガーメント」機で生産した。


とあるが、低価格ブランドがそろうショッピングセンターにおいて、いくら「日本製」だとはいえ、この価格帯が売れるとは考えにくい。
もちろん、有名コンサルタントが指摘するように、従来の定番品と別に「日本製ライン」と分けて陳列することで売ることは可能だろうが、ショッピングセンターで購入する層にとって、この価格帯は「高すぎる」と感じられるのではないか。

百貨店やファッションビル内ならまた話は変わるが、ショッピングセンター内ではこの価格帯はなかなか厳しい展開になるだろう。

筆者はどちらのブランドも価格設定は、自社の都合ないしは自社の自己満足に過ぎないのではないかと感じている。

果たして、実際に自分たちが消費者となったときその価格を「買いやすい」と思うのだろうか?

さて、先ほどの「クラネ」に話を戻すとなぜ否定的なのかというと、ブランドロゴと商品テイストがセリーヌに酷似しているからだ。
ブランドロゴのフォントが似ている例としては、ライトオンとハニーズが思い浮かぶが、アルファベット表記すると全く異なる。
「Light on」と「Honeys」である。

しかし、クラネの場合はカタカナ表記だと全く異なるが、アルファベット表記だと
「Clane」となり、「Celine」と類似している。その上、フォントまで似ていると、一瞬どちらか判別しにくい。
二つのブランドのロゴを並べてみる。

11208056_645632928904957_954151277_n

(クラネのロゴ)


CELINE

(セリーヌのロゴ)



すでにこんなまとめもネット上にはある。
断っておくがこれは筆者がまとめたものではない。

えっ?セリーヌ? 元エモダ松本恵奈が新ブランド「クラネ」立ち上げ
http://www.margoi.com/2015/05/blog-post_44.html


早い時期からそう感じた人は多いということであろう。


商品のテイスト自体にもセリーヌっぽいという声もある。
そうなると異なるのは価格帯ということになる。
もちろん「クラネ」の方がずっと安い。
そういう思い込みを抜きにしても写真で見る商品はベーシックなカジュアルであり、そこに斬新さはない。
斬新であれば良いというわけではないが、斬新さのない商品で「新しいジャンルを作りたい」と言ってもそれは無理ではないかと思う。


人間だれしも作り手側になると、作り手の論理で価格設定してしまう。
これは別にブランドだけではなく、産地の製造加工業者だって同じだ。
産地企業の自社企画ブランドがなかなか上手く育たないのは作り手の論理のみでの構築が多すぎるからだ。

自戒も込めて、本当に気を付けなくてはならないと感じる。








小規模ブランド、個人商店ほど毎日ブログを書くべき

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - 小規模ブランド、個人商店ほど毎日ブログを書くべき
 今日はちょっとというか、かなーりお気楽に。

筆者はもともとそんなに趣味がない。
読書したりテレビでアニメや特撮を見たりすることが多いが、それは趣味といえるのだろうか。
趣味というともっとかっこいいものではないのかと思う。

これも趣味と言えるかどうかわからないが、何年か前から月に1度くらいガンダムのプラモデルを作る。
色を塗ったり、削ったりパテで埋めたりなんていうのは面倒くさいのでほとんどしていない。
説明書通りに組み立て(これを素組みという)、せいぜい、筋彫りに沿って黒のマーカーを走らせる程度である。

保管場所に困るのと価格が高いので、大き目の100分の1サイズはあまり買わない。
価格が安くて小さ目の144分の1サイズをもっぱら買う。

35年くらい前のガンダムブームのころにプラモデルを買っていたが、当時のプラモデルというのはほとんど可動域がゼロだった。
早い話が動かせない。もちろん、劇中のポーズなんて取らせられるはずもなかった。

今のプラモデルは本当にすごい。
色なんて塗らなくてもほぼアニメの設定画通りの立ち姿だし、関節の可動域も広がっており、劇中のポーズ通りに動かせる。

そんなわけで10年くらい前から再び作るようになった。

おもちゃメーカーの陰謀なのか、ガンダムのプラモデルは毎月新商品が何種類か発売される。
全部買っていたら破産してしまうのでその中から取捨選択を行う。

人によってこだわるポイントが異なるが、筆者の場合は、立ち姿が設定画にどれだけ近いか、あとはどれだけ可動域が広いかである。
発売と同時に買ってはみたものの、思っていたほどの出来ではなかったという場合も何度かあった。

5年ほど前から、ウェブでレビューを見てから買うようになった。
当初はアマゾンなどの通販サイトに書かれているレビューを読んでいたが、3年ほど前からは幾人かのモデラーさんのレビューブログを読み比べてから買うようにしている。

定期的に5~6人のモデラーさんのブログを拝読しているが、その中でもっとも参考になるのは、自分の評価をきちんと書いてくれている人である。
たまに、やけに辛口な評価を書いている場合もあるが、そこには明確な基準がある。
逆にすべての商品を褒めているブロガーさんはあまり参考にしない。
なぜなら、正直に書いているとは思えないからだ。

そんなわけで、今月18日に発売されたHGUCガンキャノンを買った。
HGUCシリーズにはガンキャノンがすでにあるが、99年の発売以来、16年が経過しており、その間にプラモデルの製造技術も長足の進歩を遂げている。現在からすると99年モデルは可動域が狭すぎる。
そこでリバイブシリーズと称して、古いキットの改良版が発売されることになった。
ガンキャノンはその第1弾である。

これがその写真である。

写真 11



こんな動きまでできちゃう。( ̄ー ̄)ニヤリッ

写真 22





で、何が言いたいかというと、発信においてブログはやっぱり重要だということである。

同じ日にディジェという機体のプラモデルも発売されたが、こちらはレビューブログを読んで購入をやめた。
デザイン的な制約もあるのだが、下半身の可動域が著しく狭かったためだ。

今回はガンプラの話を書いているが、これって衣料品でも同じではないだろうか?
衣料品以外の商材でも同じではないか?

新しい商品が発売された、新しいブランドが立ち上がった、その時、消費者はレビューやブログを参考にして購入を決めるのではないか。
とくに高額品であればあるほどそうするのではないか?


以前にも書いたが、筆者なんてユニクロの値下がり品を買うときですら、ユニクロの通販サイトからレビューを読んでから決める。


店頭での雰囲気が、とか、並べたときの世界観が、だとか、店作りやディスプレイの美しさ・見事さ、だとかだけで勝負するというのは無謀にすぎるだろう。
それで商品がバカ売れするなら、だれも販促・広報活動などする必要がない。


零細・小規模ブランド、個人経営の商店ほどブログを書くべきである。
なぜなら、大手新聞、雑誌はもとより業界紙にすらあまり掲載されないからだ。
掲載されないなら自分で発信するほかない。


「何を書いたら良いかわからない」という声を耳にすることがあるが、それは書く内容があるのに気が付いていないだけである。


そのうちに「ブログの書き方講座」でも開催してみようかな。(笑)










アパレル業には4つの側面が求められる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - アパレル業には4つの側面が求められる
 繊維・アパレル業界というのは、多面的である。
少なくとも4つくらいの面があり、それぞれの一面だけを実現しても成功しない場合が多い。
まれに一面だけで成功するブランドや企業もあるが、その成功は概ね長くは続かない。

まず、製造するという意味での工業的側面
次に販売するということでの商業的側面
トレンドに則ったファッション性がなければ売れないからファッション的側面
そして、金融的・経済学的側面


である。

人によってはもっと違う側面を発見するかもしれない。

少なくともこの4つがある程度噛み合わないことにはそのブランドなり企業は成功できない。

しかし、繊維・衣料品業界に属する人間の多くは筆者も含めて4面すべてに精通していない。
とくに金融的・経済学的側面が苦手である。

ただし、工業的側面・商業的側面・ファッション的側面の3つがクリアできれば中規模ブランドくらいまでには成長できる。

現実的に筆者がかかわった人たちを思い返すと、その多くは、どれか一つだけを持って現状を打破しようとして失敗している。

失敗は言い過ぎかもしれないが、それは事業の成長には結びついていない。

産地のおっさん連中は工業的側面だけで何とかしようとしている。
しかし、商業面とファッション性が伴っていないので、そんな商品は売れるはずもない。
衣料品とは物性面だけでは購買動機にはならないからだ。

グローバルSPAとして有名なZARAは自社縫製工場を所有している。
工場からの出発が原点であるから、我が国の国内製造業者だってZARAのようになろうと思えばなれる可能性はゼロではない。
ある有名な業界のコンサルタントが「国内業者さんからZARAのようなブランドが生まれることを期待します」と書いておられたことがあったが、筆者には単なるリップサービスとしか感じられなかった。

国内製造業者がそうなれるチャンスは過去に何度かあったがそれをモノにできたところは少ない。
これまでできなかったことが今後急速にできるようになるとは考えられないからだ。
それこそ経営者が更迭されるくらいでなければ。

閑話休題

衣料品ブランドに多いのが商業的側面かファッション性側面のどちらか、もしくはその両方で事業拡大を模索することである。

売ることとファッション性に長けていれば、当初はそれなりに売れる。
けれども商品が売れれば、必ず追加生産が生じるし、次シーズンにはまた一からの商品生産が必要になる。
このときに工業的側面が理解できなければ、追加生産も次シーズンの新商品も満足に生産できなくなる。

最近ではこれを知らなくても商社の製品事業部やOEM・ODM企業が掃いて捨てるほどあるから、金を出して彼らに頼めば商品は生産できるようになっている。
しかし、ブランド側がそれを理解しないまま依頼するから、わけのわからないオーダーが増えている。

例えば
「1ミリの縫製のズレも許さない」とか
「生地から別注生産したいが納期は1カ月後だ」とか
「ジーンズにウォッシュ加工を施しても少しの色ブレもダメだ」とか

そういう類の無理難題である。

少しでも生産のことを知っていればこんなお馬鹿な発言は出てこないはずである。

生産のことを知りすぎてはいけないというが、生産のことを知らなさ過ぎてもそれは害悪である。

さて、4つ目の金融的側面である。

良い物を作って上手く売っていても、それだけではなかなか事業は拡大できない。
そこから得られる利益なんていうのはたかが知れているし、その利益をいくら貯めてもなかなか事業に仕えるほどの額までには至らない。

そうすると、卸売り業態にしろ、SPA業態にしろ、小売店にしろ、大規模に拡大するためには金融の力が必要になる。
そしてそこの知識が筆者も含めて業界人のほとんどが無知である。
無知だから、「こんなカッコイイ商品を作っているブランドがどうして倒産するんだ?」みたいな情緒感しかないコメントが方々で湧き出すのである。

金融を活用できたブランドだけが大規模に成長できている。
そういえば、某セレクトショップは金融系の人間を副社長に引っ張ってきて、大手総合商社のバックアップを受け2000年代前半の上場を目指していたが、結局は非上場のままグダグダしながら、先ごろ大手グループに入った。
これなどは、金融を活用する気はあったが経営者自身がそれに適合できなかった例だろう。

最近ではそんな野心を持つ業界人も少なくなったが、もし、大規模に事業を成長させたいと考えるなら金融や経済学の勉強と知識は不可欠である。

大学では経済学部はあるが、ファッション専門学校にはない。
本来は専門学校でも教えるべきだと思うが、ファッション専門学校に進学する生徒を見ていると、こういうことにはまったく興味がなさそうである。

そういう意味では業界の求める人材と、業界に入りたい人たちの持つ性質とは著しく合致しないといえる。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20






高価格品の少量販売というモデルは主流にならない

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - 高価格品の少量販売というモデルは主流にならない
 ユニクロをはじめとする低価格グローバルSPAブランドの成長を背景として、
「低価格はグローバルSPAに任せて、アパレルブランドは良い物を高く少量で売るモデルを目指すべきではないか。良い物を何年も修理して使うような消費活動が主流になるのではないか」
という意見を耳にすることがある。


我が国は経済活動の自由が認められている国であり、今後、そういうブランドが起業される可能性はある。
またそういう性質のブランドが多数生まれる可能性もある。


しかし、グローバルSPAブランド以外のブランドすべてがそうなるということはありえないだろう。
もしそうなったとしたら、国内の繊維産業・アパレル産業は今以上に衰退する。


このモデルの代表例として挙げられるのが気仙沼ニットである。
被災地復興のビジネスとしてはたしかに一定の成果を上げたといえる。
しかし、これを現在のアパレルブランドに当てはめて事業転換させることは不可能であるし、もし、させてしまえばアパレル産業はさらに衰退するし、アパレルに原料を提供する産地製造業もさらに衰退してしまう。

なぜなら気仙沼ニットは単価も高いが生産数量が少ない。
1年間の生産量は一説によると150枚~200枚程度だといわれている。
商品の価格が仮に20万円だとしても150枚なら年間売上高は3000万円である。
それでどれだけの人数が生活できるのかということになる。

そしてこの手のブランドが主流になれば、低所得者はさらにグローバルSPAしか買えなくなるし、減少しつつある中間所得層もグローバルSPAブランドしか買えなくなるだろう。
少数の富裕層のみがそういうブランドで買うことになるが、その手のブランドが増えすぎれば今度は顧客の奪い合いが始まる。
無制限に高級品を買えるような富裕層はほとんどいないに等しいし、日本の富裕層は低価格ブランドだって購入するからだ。

低所得者・中間所得者は低価格のグローバルSPAブランドを買い、少数の富裕層だけが高級ブランドを買う。
これは社会格差の激しい欧米と同じ構図であり、そういう社会を望んでいるのだろうか。


また、グローバルSPAブランド以外はすべて少量生産ブランドになってしまうと、ブランドへ生地を納入したり、縫製を行うような産地製造業は今以上に衰退する。


生地製造業も染色加工業も縫製業もアジアの工場と比べるとロットは小さいが、量産が基本なのである。
だからこそミニマムロットが設定されている。

例えば、デニム生地でいえば、ロープ染色で別注色を染めてもらった生地を作ろうとすると、最低でも5000メートルくらいのミニマムロットが必要になる。
これは何も製造業側が楽をしたいから言っているわけではない。
原価とか物性の安定性からそういう数字をはじき出しているのである。

縫製業だってアイテムによって少しずつ異なるがミニマムロットはある。
1型3サイズ別(各サイズ約30枚ずつ)で100枚というのがだいたいの国内工場の相場であり、1型サイズ込みで20枚とか30枚という枚数は嫌がられるし、工賃も高くなる。
またあまりに少量だと縫製の物性も安定しない。

生地メーカーは10メートルだけの特注生地を織るよりも、最低でも1反(50メートル)は織りたい。
できれば数反は織りたい。

そして工場は毎日、毎月稼働し続けなくてはならない。
少数でも従業員がいる工場はとくにそうだ。
稀に家族だけで動かしている工場がある。
暇なときは止めて、仕事が入れば動かすということができるのはこういう工場である。

年に何度かしか服が売れないようなブランドばかりになると、工場は従業員を雇えない。
家族だけでの運営ということになるだろうから、雇用に対しても悪影響を及ぼす。

またアパレル側でもそういうブランドは年間に売れる枚数が決まっているから売上高はほぼ横ばいである。
となると、従業員の昇給はほぼ永遠にないということになる。

ただでさえ若者に不人気職種となりつつあるアパレルだが、昇給が望めないとなるとさらに業界への就職を希望する若者は減る。
就職希望者のない業種は間違いなく衰退する。

こういう高額商品を少量販売するブランドというのは、皮肉だが、大量生産・大量販売のブランドに囲まれているからこそ存在価値があり、そういうブランドばかり増えると逆に業界は疲弊してしまう。

即座に消えてしまう飲食物と、よほどのことがない限り存在し続ける衣料品とではさまざまな面が異なるが、同様に考えらえる部分もある。
大量生産・大量販売モデルの崩壊の例としてマクドナルドが挙げられる。
日本だけでなく米国本国でもマクドナルドは苦戦中だ。
一方、日本では同じハンバーガーでも少しだけ高額なモスバーガーは好調だとされる。

しかし、不調だとはいえ、日本マクドナルドの売上高は2200億円強だが、モスバーガーの売上高は660億円程度であり、4倍近い開きがある。

http://biz-journal.jp/2015/06/post_10399_2.html

さらにここから引用すると、

同じように、米国で高級グルメバーガーとして人気を呼ぶファストカジュアル・チェーン店であるシェイク・シャックは、自然の環境で放し飼いの牛の肉を使うことで急成長しているといわれる。しかし、14年度の売上高は1億1900万ドル、一方のマクドナルドは減少傾向とはいえ、まだ270億ドルの売上高を記録している。

とあり、1ドル=100円とするとシェイク・シャックは100億円、マクドナルドは2兆7000億円である。
これほどの開きがある。

この売り上げ規模の差は衣料品でも同じだろうし、逆に飲食でもモスバーガーが2200億円にまで、シャック・シェイクが2兆7000億円まで成長することはあり得ないだろう。

ただし、消費者のムードというか気分が変わっているのも事実である。

その消費者ムードに合わせて「高付加価値少量生産を建前、見せ球」としながら、ある程度の量産販売ができるブランドが今後は成長が可能ではないか。もちろん、価格は超高価格ではない。

言葉は悪いがきれいごとを建前・見せ球にしつつ、実際のところはそれを中価格で量産販売につなげることができるブランドが成長できるだろう。ただし、それはユニクロほどの売り上げ規模ではないことを蛇足ながら付け加えておきたい。

ウェブメディア活用をためらう国内繊維産業の滑稽さ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - ウェブメディア活用をためらう国内繊維産業の滑稽さ
 アパレル企業の「ファッション雑誌偏重」は相変わらずだ。
アパレル企業を対象にしている広告代理店にもファッション雑誌偏重のところも多い。

ファッション雑誌の部数と影響力が一部を除いては格段に低下しているというのは常に指摘されているし、身を持って体感しているブランドも多いはずなのだが、それでも長年の習性というのは恐ろしいものでそれを改める気はないらしい。

実現可能なのかどうかわからないが、先日、雑談程度にこんな相談を受けた。
合繊メーカーとタイアップをしてレディースのフォーマルを発売するとしたらどんな媒体が良いのかと。

ここでいう媒体とはどうやらファッション雑誌を指しているらしい。
ちなみにこのときのレディースのフォーマルというのは、女性用の喪服みたいなのをイメージしていたようだ。

これが適合するファッション雑誌というのはちょっと思いつかない。
まあ、情報誌の方が良いのだろうかと思った。

そこで、ウェブ系のニュースメディアはどうかと提案してみたが、予想通り「担当者がウェブをやりたがらない」という答えが返ってきた。
アパレルの変わらぬ頭の古さに可笑しくなった。

実際にその商品が発売されるのかどうかは知らないが、ファッション雑誌がもっとも扱いにくい商材を持って「それでもファッション雑誌とやりたい」というのは、最早、滑稽であり笑い話の類である。

仮にこの構想が本当だとすると、大手企業である合繊メーカーと大手アパレルが共同開発する商材なのだから、一般紙や経済誌、そしてそれに類するウェブメディアが最も適切な媒体である。
そんなことも理解できないのがプレスや広報担当者なら、それは売上高が伸びなくても当然であろう。
適切な媒体が何かということすら判断ができないのだから。

「ウェブはちょっと・・・・」

という反応はアパレルだけではない。大手紡績・合繊メーカーも変わらない。

大手紡績の今秋冬向け展示会なんていう記事が掲載されるとしたらどんな媒体だろうか。
まずは業界紙である。
その次はまあ、ほとんどない。
まさかファッション雑誌には絶対に掲載されないし、掲載できない。
大手一般紙や経済誌が扱うネタでもない。
よほどの画期的な機能性素材が開発されていれば話は別だが、「〇〇綿を使って風合いをさらに良くしました」という程度のネタでは大手一般紙も経済誌も掲載するはずもない。
そんなことは過去何十年かの付き合いで分かっているはずだろう。

となると、業界紙以外に掲載してもらいたいのであればウェブメディアしか残っていない。

しかし、広報担当者や事業担当者の反応は「ウェブはちょっと・・・」である。

何をためらっているのかさっぱり理解できない。

そういう彼らは、出張が決まれば、電車の乗り換えや運賃を検索する。
飲み会が決まれば、ふさわしい店を検索するし、その店が初めてであるなら、その店のレビューを何件か読む。

そう、全部ウェブを使っているのである。

彼ら自身がウェブをこれほど使っているのに、それを認識していないのだろうか。

とくに飲食店を探す場合、そしてそこが行ったことのない店なら、絶対に食べログなどのサイトのレビューを何件か読んで判断を下す。
もちろん、食べログには「サクラ」みたいなヨイショレビューも多いし、反対に怨恨か何かで異様に低評価のレビューも多々ある。だからすべてを鵜呑みにする人間は少ないとは思うが、その中でも中庸のレビュー何件かを参考にする。

通販だってそうだろう。
アマゾンでも楽天でも購入する前にはその商品のレビューを何件か読んで判断材料の一つにするはずだ。
筆者はユニクロの通販サイトのレビューだって参考にする。

そして多分、毎日Yahoo!のトップページでニュースを読んでいるはずだ。

じゃあ、これを自社の業務に当てはめたらどうなるだろうか?

ウェブのどこにも出てこない新素材とかフォーマルウェアなんてどうだろうか?
もし、自身がバイヤーだったらそういう商材を何とか探し当てたいと考えるだろうか?

おそらくほぼ100%の人間がそこまでして、その新素材とかフォーマルウェアを探し当てたいとは思わないだろう。
ウェブ検索で出てくる新素材やフォーマルウェアの中から候補をいくつかに絞り込むだろう。

自身がウェブをこれほど使っているのに、他者はそうではないとよく考えられるものだと驚く。

こんな人たちが、ある程度の決定権を持つ管理職を務めていられるのだから、国内アパレル企業・国内の素材メーカーの業績が低迷するのもまったく不思議ではない。

Amazonアプリ
Amazon.com
2011-03-22










記事検索
livedoor プロフィール
タグクラウド
QRコード
QRコード