南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2015年02月

セールスポイントが製造地だけの商品は絶対に売れない

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 今日はいつもよりは手短に(笑)

現在の日本において、衣料品・服飾雑貨品でもっともステイタス性の高いのは「イタリア製」を筆頭としたヨーロッパ諸国製品だろう。
また一部の商品では米国製もそれなりにステイタスは高い。

関税やら何やらがかかって、欧米からのインポート商品はすべからく高額になってしまう。

しかしステイタス性が高いから高額な商品でもみなさんは喜んで購入しておられる。

とくに有名なブランドのネームが付いていればさらに値段は跳ね上がるが、それでも愛好者は喜んで購入する。

有名ブランド品は、ブランドとしてのステイタス性があるだけではなく、商品のデザインそのものも洗練かつ工夫されているし、それを包むパッケージやブランドロゴのデザインにまで気を配っている。
また広報・販促・プロモーション活動にも力を入れている。

だから高額でも多くの人は喜んで受け入れるのである。

さて、ここにまったく無名のイタリアブランドがあるとする。
商品のデザインや野暮ったいし、パッケージもモサっとしている。
ブランドロゴのフォントもなんだかヘンテコリンである。
広報・販促・プロモーションはまったくお粗末で、商店街のバッタ屋の方がまだ気が利いている。

しかし、「イタリア製」であり、価格だけはバカ高い。

こんな商品を誰が欲しがるだろうか?
いくら舶来物に弱い日本人でもこんな「イタリア製」を誰もほしいとは思わないだろう。

国内の産地企業も下請け仕事から脱するために様々な自社製品の開発に取り組んでいる。
そういう企画を年に何度も目にする機会がある。
しかし、残念ながらデザインはパッとしないものが多い上に、広報・販促・プロモーション活動はさっぱりである。
おまけにパッケージやブランドロゴにまではまったく気が回っていない。

しかし、今流行りの「日本製」であるため、高価格である。
さらに言えばブランドの知名度はほとんどない。

さて、こんな日本製品が売れるだろうか?
普通に考えればまったく売れない。事実売れていない。

にもかかわらず、産地関係者や行政、ひいてはマスコミまでもが「日本製」だから高額でも売れるだろうと考えてしまう。
どうして彼らがそう思えてしまうのか不思議でならない。

自分がそういうイタリア製ブランド品を買うかどうかを想像してみれば容易にわかりそうなものである。

いくらイタリア製とはいえ、デザインがダメでブランド知名度が低くて、広報・販促・プロモーション活動がお粗末なブランド品なら売れない。

日本製とてこれと同じである。

「日本製」はたしかにステイタス性があるが、商品そのもののデザイン、広報・販促・プロモーション活動、パッケージデザイン、ブランドロゴデザインなどがそれなりのレベルに達していないと、外国人も自国の富裕層も到底欲しいとは思わない。

この部分が想像できない工場や産地のブランドは、あと何十年活動を続けても市場で評価されることはない。
日本製というだけの単に高い商品は売れない。

高い日本製品を売るためには何が必要なのかを考えて、今後のブランド開発に取り組んでもらいたいと切に願っている。

日本製だから高額になる。
高額になるけど日本製だから売れるだろう。

そんな理屈は国内市場でも通用しない。
ましてや海外市場に通用するはずがない。



個店こそ高く売る方策を採るべき

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 最近、めっきり個人経営で元気のあるブティックや専門店が減った。
1店舗しかない個店や数店舗規模のチェーン店で「すごく売れている店がある」なんていう噂はあまり耳にしなくなった。

専門店向けのアパレルの展示会に出向いても、販路たる専門店、ブティックが元気がないから、なかなか厳しそうである。

展示会でアパレル側に聞いてみるとそういう専門店、ブティックが求めている商品が

1、少しでも安い物
2、他店でも売れている物

である。

ここで少し考えてみたい。

まず個店が過剰に安さを追求する意味があるのかどうかである。
いくら安い商品を仕入れたといってもユニクロほどではない。
多くの場合、専門店アパレルが企画製造する商品は少なくともユニクロの2倍くらいの価格になる。
別に専門店アパレルが何の努力もしていないわけではない。生産のロット数の違いによるところが大きい。
昨今ではユニクロを下回る価格の商品を販売するSPAブランドも少なくない。
ジーユー、パレモ、フォーエバー21、ハニーズあたりはそうだ。
純然たるSPAではないが価格だけをみるなら、しまむらとアベイルもそうであろう。

こうなると、安さ追求はあまり意味がない。

少々安くしたところでどうせこれらのSPAには追いつけない。
例えば9800円の商品を7800円にしましたと言ったところで、これらのSPAが同じような商品を2900円とか3900円で販売しているわけだから、安い物が欲しいお客はそちらを買う。


次に他店で売れている物だが、洋服と言うのはトレンドがあるから、ある程度人気のある商品はデザイン的に似通ってしまう。
当然、他店で売れている物が自店でも売れ筋になり易いという要素はある。
しかし、昨今の展示会で見ていると、まるでトレンドでもなんでもない商品でも、「他店で売れているから仕入れたい」という個店がけっこういる。
トレンドでもなんでもない商品はいくら他店で売れているからと言って、自店で売れるとは限らない。

他店と自店でショップコンセプトが同じなのだろうか?
顧客層や中心プライスも同じなのだろうか?
これらが同じであるなら売れるかもしれないが、これらが違うならその商品を導入したところで自店では売れない可能性の方が高い。

某大手百貨店向けアパレルの役員クラスの人間が、素材メーカーに向かって「ユニクロでバカ売れしたあれと同じ素材をくれ」と言ったことがあるらしいが、まるっきり同じ短絡的発想である。
ユニクロとそのアパレルのブランドとは店頭販売価格も顧客層もブランドコンセプトも異なる。

そこまで異なっているならいくら使用素材が同じでも、ユニクロと同じ枚数が売れるはずもない。
さすがにこの短絡的役員も同じ枚数とは思っていないだろうが、通常の販売枚数を大きく上回ることはありえない。
もし、効果がある販促をするなら、「ユニクロのアレと同じ素材を使用しました」と自社ウェブサイトや店頭のPOPで大々的に謳うことだろう。
逆にそこまでプライドを捨てられるなら大したものである。
この大手アパレルを見直す。

大手チェーン店のように何十億、何百億の売上高を作らねばならないならこれらの手法もまったくの無駄ではないが、個店や数店舗のチェーン店ならこれらの手法はまったく意味がない。

それよりも如何に自店を個性化するか、物以外の「コト」を販売するか、顧客との関係性を強化するかに力を入れるべきである。

その手法は様々あるだろう。
顧客を招いてお茶会やパーティーを定期的に開催しても良いだろうし、店長やオーナーをキャラクター化してそれをどんどん発信しても良い。
ハッチャケたブログを毎日アップするのでも良い。

価格訴求と他店の売れ筋追随よりはずっとマシである。

数百円~1000円程度だがユニクロは値上げをした。
今秋には再値上げをする計画である。

デフレの象徴とされたユニクロが値上げをした状況下において、個店が何の効果もない価格訴求に血道を挙げたところで無意味である。

今は、個店こそ「高く売る」方策を考えるべきではないか。

「日本製」を取り巻くお寒い環境

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 近頃、にわかに日本製衣料品が注目を集めているが、現状ではどこまでが純粋な「日本製」なのか正直にいうと疑問である。
全国の大半以上の縫製工場に中国やベトナム、フィリピンやミャンマーなどアジア諸国からの外国人研修生を雇用している。

また織布工場、染工場、洗い加工場も外国人研修生を雇用している。

先ごろ発表されたジャパンクオリティタグの定義にはこうある。

① 織り・編み、染色整理加工、縫製の3工程を国内で行った純正の日本製です
② 日本ならではの精緻な技と、無限大の豊かな想像力が注ぎ込まれています。
③ それぞれの工程でつくり手の顔が見える、安心・安全な商品です。


このうち、②について現状を鑑みるにつけても「どうなのかな~?」と疑問に感じる。

日本ならではの精緻な技というが、実際に手を動かしているのはアジアからの研修生である。
縫製なんて大半以上がそうであり、織布、染色、洗い加工の各工程でも外国人研修生が作業している場合がある。
となると、精緻な技とは外国人研修生の技ということにならないだろうか。
そう考える人がいても不思議ではないのではないか。

日本の工場で製造された物が精緻だといわれるのは、誰が手を動かしているかではなく、管理者や指導者が日本人であることが大きいのではないだろうか。
さすがに日本国内の工場で経営者や技術指導者が外国人になったという例は耳にしたことがない。

一方、中国や東南アジアの工場でも日本人が技術指導したり管理監督している工場は多々ある。
そうした場合、これらの工場が作る製品と国内で作られる製品とどう違うのかということにならないだろうか。
筆者には根本的な違いがわからない。

そしてこのことは③についても実情とそぐわないのではないかとも感じる。

つくり手の顔が見えるとあるが、そのつくり手は外国人研修生だときちんと表示するのだろうか。

一般的にジーンズ関連のアイテムは他のアイテムに比べて国産比率が高く、国産品の知名度も高い。
しかし、そのジーンズ関連の縫製工場だって外国人研修生を雇用している。織布、縫製、洗い加工とそれぞれの工程でだ。

ちなみに岡山県は全般的に外国人研修生の待遇が良いとされているが、実情は個々の企業で異なる。
平たくいうと、待遇の悪い企業もあるということである。

例えば外国人研修生の受け入れ資格を5年間停止された工場が岡山県にはあるが、そこは時給300~400円程度の待遇だったのが問題視された。
また、別の縫製工場もやはり時給300~400円待遇で10人以上の研修生が脱走したという。

平均すると待遇は良いが、中にはこういう悪待遇の企業もあるということである。

以上のようなことから、個人的には「日本製」ではなく「日本基準品質」タグの方が実情に沿っているし、普遍的ではないかと考えているが、まあ、このまま粛々と「日本製」ヨイショは続くだろう。
筆者は負け犬の遠吠えにすぎない。

こういう風潮から「日本製」というのが販促の一つの記号になりつつあると感じる。
販促の一記号化しているから勘違いした業界人も例によって増殖中である。

糸から全部国産でやりたいんだよね、なんてことを国産品に対して大した思い入れもないくせにのうのうと公言するような業界人がチラホラとあらわれている。
なら、なんで今まで国産品を使わなかったのかと失笑を禁じ得ない。

ちなみに原料にもよるが糸からすべて国産というのはかなり難しい。
先ほどのジャパンクオリティタグの定義にも原料と糸は入っていない。
原料は綿花にしろ絹にしろ羊毛にしろカシミヤにしろ麻にしろ、すべて外国からの輸入に頼っている状況である。(一部国産もあるがごく少量)

そして糸もすべてが日本製というわけでもない。
外国製の方がファンシーな意匠の糸も多い。
高級なセーターでイタリア糸使いの国産品なんていうのもある。

先日、知り合いが某展示会に出展したところ、いけ好かない風(筆者の想像)の50代くらいの男性バイヤーが訪れたという。
知り合いはネパール製の糸を使って、日本で染色、織布を行っている。
先ほどの定義に照らし合わせても日本製の認証を得る資格がある。まあ、1品番1万円も払うのがイヤだろうから認証を得ようとはしないだろうけども。

ところがこのバイヤーは「糸から国産でやりたいんだよね」と吐いて去って行ったそうだ。

如何にも薄っぺらい上っ面の業界人である。
業界にはこの手の薄っぺらい輩が掃いて捨てるほど存在する。
今後この手のペラペラに薄っぺらい上っ面の業界人はさらに増殖しそうであり、何ともウザったい話である。

国産品に注目が集まるのは喜ばしいことであるが、製造・加工の現場での慢性的な人手不足を解決しないことには、日本の繊維製造加工業はそう長くは続かない。
数年先どれだけの工場が存続しているか甚だ疑問である。
国産品ブームで浮かれていられる状態ではない。

製造・加工の現場で人手不足である最大の理由は工賃が安いからだ。
ここを解決しない限り工場は今後も減り続けるし、労働力も減り続ける。

中国の人件費高騰と円安で急速に国内工場に生産が戻りつつある。
しかし、各工場の工賃は横ばいだ。
横ばいならまだしも中にはさらに値下げするメーカーもある。

こういう状況では労働力が増えるはずもないし、工場はますます疲弊する。
何が「日本製ブーム」なのかと鼻で笑いたくなる。

まあ、これが現在の繊維・アパレル業界の実態である。

値上げしても客数を減らさなかったユニクロ

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 先日、ユニクロが今秋冬物から再値上げを発表した。

ユニクロ2年連続値上げへ…円安や原材料高で
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150218-OYT1T50161.html

ユニクロを展開するファーストリテイリングが今年7~9月に順次発売する秋、冬物の一部で、平均5%程度値上げする方向で調整していることが分かった。

円安のほか、綿やウールなど原材料の価格高騰が要因だ。大規模な値上げは、2014年に続き2年連続となる。

 同社は14年4月の消費税率引き上げなどを受け、14年夏~秋に同社として初めて、ほぼ全商品を一斉値上げした。今回は、値上げ対象を半分以下に抑えたい考えだ。春物や夏物は原則、据え置くとみられる。

 値上げの対象は、繊維が長くて細い上質なコットンを使ったTシャツなど主力商品が中心となる見通しだ。最大1000円程度値上がりする商品もあるという。


とのことである。
値上げ対象となっているのは持って回った書き方をしているが、プレミアムコットンTシャツが中心ということだろう。半袖で1000円(税別)、長袖で1500円(税別)だったのが少し上がると考えられるのではないか。

さて、ユニクロの商品を見ていると、たしかに昨年秋物から値上がりしている。
メンズを例に出す。
ウルトラライトダウンジャケットは一昨年の秋から1000円値上がりしている。
一昨年秋は5990円だったが、昨年秋は6990円になっている。
しかし、一昨年秋は税込で5990円だったのが、昨年秋は税別6990円だから、正確には1559円値上がりしたことになる。
値上がり率は26%である。

また定番の無地スエットシャツ、いわゆる定番の無地トレーナーという商品だが、これが昨年秋まで1990円だったのが今春から2490円に値上がりしている。
500円の値上がりである。
さらに消費増税前の昨年3月までは税込1990円だったから、今春の税別2490円では約700円の値上がりであり、35・1%の値上がり率ということになる。

これに対して、暴利をむさぼっているとか、ユニクロは金持ちの普段着になってしまったという批判の声もあるが、筆者はそうは思わない。
ただ、低価格ブランドではなくなりつつあると感じている。
例えばウルトラライトダウンだが、今秋に再値上げをすると仮定すると、税別で7000円台の商品となる。
税込だと8000円台半ばということになる。

ダウンジャケットとしては低価格の部類だが、決して超低価格ではない。
ライトオンやジーンズメイトに並んでいるダウンジャケット類とほぼ同等の価格だ。
スポーツ・アウトドアブランドの中の低価格ラインとほぼ同等の価格と見ることもできる。

また見切り品を見ても値上がりしたなと痛感する。

これまでユニクロの見切り品はセーター類でも990円にまで値下がりしていた。
カシミヤはさすがに3990円で留まっていたがラムウールセーターやラムウールカーディガンは990円にまで値下がりしていたが、今は1290円である。

現在のユニクロの売り場で1000円以下の見切り品はTシャツやカットソー類のみである。

この再値上げの記事が掲載されるまえに、こんな分析をした方がおられる。


ユニクロの客単価アップに見る値下げコントロールの緻密さ
http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2015/02/post-dcfc.html

2015年8月期 14年9月から15年1月までの既存店売上高前年比は108.4%、客数98.5%、客単価110%。 

客数をさほど落とさず客単価アップを実現したのですから、さすがユニクロ、見事なものです。

この傾向は 昨年の8月くらいからずっと続いているものです。



とある。
値上げしたが客数はほとんど減っていない。
昨年までの値上げは客数にほとんど影響していないといえる。

「金持ちしか買えないブランドになった」という声も一部であがっているが、数字を見る限りではそう思っている人は少数派ということになる。
そしてユニクロくらいの大規模ブランドになると少数派の声を拾うよりは、大多数に向けた施策を行う方が理屈に合っている。

以前にも書いたことがあるし、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんも常々言っておられるが、
客数が10%以上減少すればそのブランドは既存顧客に見放されているといえる。
それに照らし合わせると某ジーンズチェーン店なんてとっくに見放されているといえるし、某大手セレクトショップも昨年秋から見放されつつあるともいえる。
このブログでも


一品単価が上がって客単価が上がっているわけですが、そんな時、是非、気を付けていただきたいのは、同時にどれだけ客数が減ったか見ていただきたいということです。

経験的に前年比90%を切り、85%を下回っている客数を単価のアップでカバーしている時は要注意ですね。


と指摘しておられる。

さて、今秋の再値上げではどれくらい客数減になるのだろう?
今秋の再値上げでも客数がそれほど減らないのであればユニクロの価格コントロールは大したものだといえる。

やみくもに「安くないと売れない」と口癖のように言いながら、それでいてユニクロより高い商品しか作れず、売上高を減少させ続けているブランドとは雲泥の差がある。

衣料品の最低価格が上がることについて「悪である」というような意見がチラホラと聞こえてきているように感じるのだが、日本の衣料品価格は世界的に見ても最低ランクにあるといわれている。
それが是正されつつあるのだから、個人的には悪しき傾向というよりは正常値に戻りつつあるのではないかと感じる。

もうこれ以上は工賃を叩けないのだから、どうやれば値上げしても売れるのかを各ブランドは考えるべきではないか。
「何とかの一つ覚え」みたいに安さだけを追求することは不可能な状況になっているからだ。

10年後には業界が残っていない?

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 給与事情が悪いと言われるアパレル・繊維業界だが、アニメーターの待遇よりはマシである。
しかし、皮肉なことに福利厚生が薄いこの2つの業種を国はクールジャパンの代表例として捉えている。

ベテランの女性アニメーターに神村幸子さんという方がおられる。
筆者はテレビアニメ「シティーハンター」のキャラクターデザインを担当された方として記憶している。
週刊少年ジャンプに掲載された「シティーハンター」のアニメ版である。
その後、劇場版アニメとオリジナルビデオアニメ「アルスラーン戦記」のキャラクターデザインも務められた。

「シティーハンター」は原作漫画があるので、それに似せてキャラクターデザインをされたが、「アルスラーン戦記」はファンタジー歴史小説なので絵柄に制約がない。
そのため、おそらく「アルスラーン戦記」の方が彼女自身のオリジナルな絵柄に近かったのではないかと推測している。


その神村さんが自身のブログで、アニメーターの待遇改善を訴えておられる。

新人アニメーターは時給120円  という現実
http://yaneurablog.blogspot.jp/2015/02/blog-post_33.html

新人アニメーターを、せめて契約社員か固定給契約で採用して下さい。


新人アニメーターを、3万円で月250時間働かせるのはあまりにも酷です。いつもおなかを空かせていて、だんだんやせていく新人アニメーターを見ていると、もうなんといっていいかわからないほどつらい。悲しすぎる。

学校出たての新人が、いきなりプロ水準の仕事で食べていけるわけ、ないじゃありませんか。あまりに無茶な設定です。


3ヶ月程度たてば800枚描けて16万円くらい稼げるようになる、なんて書いてあるサイトもありますが、そんなのは20年前の話です。
現実とかけ離れすぎています。

どれほどキャリアのある優秀な動画検査でも、今風の絵柄の作品で、1ヶ月に動画を800枚描くことは不可能です。
動画の仕事は、昔と違い、とても繊細で丁寧な仕事に変わってきているんです。品質水準の要求が、年を追うごとに、どんどん高くなってきているんです。

能力の高い人が、睡眠時間を削り、休日なしで最大限働いても、1ヶ月に500枚の動画を描くのがやっとです。


せめて固定給10万円以上で、新人アニメーターを採用してあげてもらえませんか。
彼女ら彼らは9時~5時以上に働くはずです。

不採算なのはわかっています。でも不採算になる原因は、あり得ない予算配分と単価設定のためであり、新人アニメーターの働きが悪いためではありません。



とある。

酷い待遇である。
昔からアニメーター(ベテランも含む)の待遇が劣悪なことは有名であった。
が、その劣悪さはさらに増しているといえる。

待遇が悪いと言われているアパレル・繊維業界でもここまでではないだろう。
販売員も給与が低いといわれているがここまでではない。これほどの悪環境なら求人応募がない。
現在は、労働力不足による売り手市場だから好んでそんな劣悪な環境で働く必要もなくなっている。

20年くらい前からだろうか、アニメ番組のエンディングテロップで表示されるアニメーターにやたらと外国人が増えたのは。
動画や作画に南米系、中国系、韓国系の名前が多く表示されるようになった。
作品によっては動画や作画がほとんど外国人というのも少なくない。

あまりにも人件費が低いので外国人を使用するようになったのであり、そのあたりは縫製や織布、加工場が外国人研修生を使っているアパレル・繊維業界と同じ構造だといえる。

新人アニメーターと同じレベルの待遇はアパレル・繊維業界だとスタイリストのアシスタントくらいしかないだろう。そのほかの職種はもう少し給料が高い。

しかし、スタイリストは人気職種(意味が分からないけど)であるから志望する若者はそれなりに多いし、大規模産業でもないので、少人数が生き残ればそれで何とかなる業種でもあるが、製造業・加工業はそんなわけには行かない。
アニメーターも同じで圧倒的に労働集約的な産業である。
それはコンピューターグラフィックに置き換わっても同じだろうと考えられる。


アパレル製品では「日本製」が注目されているが、織布工場、加工場、縫製工場には多数のアジア人研修生が働いており、日本製の多くはメイドバイアジアンなのである。
理由は工賃が安すぎるからである。
アジア人研修生制度を廃止すれば全国の縫製工場の半数以上が倒産すると言われている。

この根本を解決しない限り、いくら「日本製」の花火を打ち上げたところで、10年後には多くの工場が廃業か倒産しているだろう。
縫製だけでなく織布も加工も。

アニメも同じである。
20年ほど前から動画の多くは外国人が請け負っているわけだから、いずれ外国にアニメの水準が追いつかれてしまう。
もしかしたらあまり知られていないだけで追いつかれているのかもしれない。

あとどれくらい「日本アニメ」がステイタス性を維持できるのだろうか。
そう長くはないような気がする。


クールジャパンの2枚看板がそろって同じような状況に置かれているということには失笑を禁じ得ない。






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