南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2015年01月

マーチャンダイズに立脚した自主企画製品を

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 本来下請け業務である製造・加工場が自社オリジナルの製品を開発するケースが近年増えている。
そういう相談に乗ることもあるのだが、まず手っ取り早く販売先を探すなら合同展示会への出展がある。

国内だと東京ギフト・ショー、IFF、ルームス、プラグイン、マグ、ゴールドラッシュなどなど。

そういうところに出展すれば来場者は何千人、何万人とあるからかなり多数の卸売り先と成約に至るのではないかと期待する業者も多いが、一部の例外を除いて、このご時世ではそうそう多数の先と成約することは難しい。

なぜなら、各店・各流通業者とも例外はあるものの全般的には苦戦傾向にあり、あまり多くの数を発注しない。
よほど「イケる」という手ごたえを感じても、初回受注分はかなり少なめに発注する。

また、百貨店だけはSPA化に慎重な姿勢を見せているが、他の流通業者は自主企画製品の比率を高めている。
量販店・GMS、大手チェーン店、大手セレクトショップはいうに及ばず、地域有力店や個店でも自主企画製品の製造販売は珍しいことではなくなっている。
そうした場合、彼らが欲しいのは「仕入れる先」ではなく「自主企画製品を企画生産してもらえる先」なのである。
要するにOEM/ODM業者を探したいという気持ちの方が強い。

そういう来場者が多くなっているのに「うちの商品を仕入れませんか?」というスタンスのメーカーが出展しても思うほどの受注に至らないのは当然といえる。
展示した商品の受注をきっかけに、OEM/ODM案件を獲得するというのが現実的な成功例ということになるだろう。

一方、出展者側にも問題はある。

最大の問題は、合同展示会に多大な期待をかけすぎていることである。
失敗する出展者の多くは合同展示会に出展しさえすれば大丈夫だと考えている。

例えば、会期中に延べ〇万人来場する合同展示会があったとする。
それを見込んでの出展者も数百社以上あったとする。

この〇万人は等しく数百社のブースに立ち寄ることはない。
それぞれに目当てのブースが数社あるだけで、あとのブースに興味はない。
何の方策も立てていないと、この〇万人はその業者のブースを素通りするのみである。
客は〇万人いるけれどもブースには一人も立ち寄らなかったという状況にも十分になりうる。

失敗する業者の多くは、「合同展示会へお越しください」という案内状を送付しておらず、集客は展示会任せなのである。

取り引きしたい店があるなら、今のご時世ならインターネットで住所くらいは検索できる。
そして「合同展示会に出展するからぜひご来場ください」という旨の案内状を自社から送付すべきなのである。

東京ギフト・ショーの出展者説明会では必ずそういう趣旨の動画が流される。


そして、一度の展示会出展ではなかなか成果が出にくいということも頭の片隅にとめておく必要がある。


昔のように各店・各流通業ともに積極的に新商品を試したいとは思わなくなっている。
そこに参入するわけだから、初めて出展して多数の受注が入ることはありえない。
また自主企画製品の比率が増えているのは先に述べた通りである。

1度きりの出展ではなく、3回・4回と出展を継続する必要がある。

そして何社かの製造・加工業者の出展物を見続けて来て思うことがある。

果たして誰に向けてこの製品を作ったのか?と。
マーチャンダイズということを考えたことがあるのか?と。

製造・加工業者の自主企画製品の多くは、実に主観的で独りよがりである。

「ワシが作りたいから作った」「とりあえずこれが流行っているからそれに乗っかった」「一先ずうちの技術力を見てもらいたかった」

という製造動機が多い。

まあ、それは必要な動機ではあるが、それだけでは売れる商品にはならない。
それだけで売れる商品が企画できるならだれも苦労はしない。

アパレルやSPAにはMD(マーチャンダイザー)という役職がある。
本来その役職はマーチャンダイズする人のことを指す。
今では、パクリ商品のディレクションしかできないマルデダメ男(Marude・Dameo)みたいな人も増殖していると耳にはするが。

マーチャンダイズとは、

どんな商品をどれだけ作るか、価格はいくらにするか、どの店にどれだけ置くかなどを決めていくこと

である。

これがない商品は単に作ってお終いである。
サンプルを作っただけのことである。
いくら産地の技術を結集した高級生地であろうと、知名度もなく、商品としての感度も良くないものが10万円の価格では到底売れない。
例えばストールとして販売するなら相場はどれくらいが上限なのかということを考えねばならない。

もし本当にストールを10万円で売りたいならそのためにはどういう販促・広報活動をせねばならないかを考える必要がある。

そのあたりまで考えないと製造・加工業の自主企画製品は成功しない。

成功例の一つは阿江ハンカチーフのゴスロリ日傘ブランド「ルミエーブル」ではないかと思う。
開発当初に取材した際には、ゴスロリ日傘なんてどれほど売れるのかと正直疑問を感じたが、ゴスロリ日傘ブランドの少なさ、ゴスロリ愛好者・コスプレ愛好者の多さを考えると、ニッチながらも十分に市場として成り立つ。
また中心価格は1本あたり数千円であり、日傘としては安くはないが、愛好者から見ると高すぎるわけではない。
これが1万円を越える平均価格設定なら売れ行きは変わったがだろうが、数千円という設定は絶妙である。

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(ルミエーブルの商品一例)

そういう意味ではキチンとマーチャンダイズされた自主企画製品だといえる。

阿江社長によるとマーケティング専門の会社に依頼してブランドを組み立てたそうだが、大枚をはたいただけの成果はあった。

自主企画製品に参入しようとしている製造・加工業者はこの視点を持ち得ているだろうか?
もう一度、自社の取り組みを見つめ直してもらいたい。

商品が売れても売れなくても叩かれる製造工賃

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 製造先を探しているブランドからの依頼を受けて、工場との仲介を果たすことがある。
それぞれの条件が食い違って成約に至らない場合も多いが、まれに成約に至ることもある。
その場合はもちろん有料とさせてもらっている。こちらもボランティア活動ばかりはできない。

成約に至らない一番の要因は工賃である。
ブランド側が思い描く製造工賃は驚くほど安いことが多い。
例えば、店頭販売価格が15000円くらいのカジュアルパンツだったとして、製造工賃(副資材代も含めて)が5000円になると、まず「高い」「高すぎる」という反応になる。
この商品だと3000円台で落ち着くことがほとんどである。
しかも生産数量は100枚くらいしかない。

100枚くらいだから多くの場合、国内生産ということになるが、こんな具合では国内縫製工場に就職したがる日本人はますます減るしかない。

もちろん、ブランド側やショップ側もビジネスだから利益を取る必要はあるが、だったら製造工場はどこで利益を確保すれば良いのかということになる。

また、多くの場合、たった100枚とはいえ、定価で売り切ることができずに期末に値引きされることになる。
半額で完売したなら御の字、70%オフとか3000円均一なんていうのも珍しくない。

そうすると次回の発注ではセールでの値引き分も見込んで「もう少し工賃を下げてくれ」ということになる。

反対に、この商品が爆発的に売れたとしよう。
追加による追加が入って、トータル販売数量が何千枚かになった。

そうすると次回は、あらかじめ多めに発注することになる。
前回が初回100枚だったのが、初回500枚とか1000枚ということになる。

この場合も初回工賃がそのままスライド適用されることは少ない。
多くの場合は必ず「数量が増えたのだから工賃を100円でも下げてくれ」ということになる。


商品が売れても売れなくても製造工賃は結局は叩かれるのである。


そしてそれがアパレル、ファッション業界で起きている日常茶飯事であり、ブランドやショップ側には「いかに製造工賃を安く叩けるかが優秀さの証だ」と勘違いしている担当者も少なくない。


メイドインジャパン(多くの場合はメイドバイ中国人・メイドバイベトナム人だが)も結構。
クールなジャパンも結構。
ジャパンなクオリティのタグも結構。


素晴らしいスローガン・お題目は結構だが、実情はこんなものである。


20年後、一体どれだけの国内縫製工場が残っているだろう。
アジアからの研修生を使わなければ今でも国内縫製工場の数は「確実に半減する」と断言するコンサルタントもいる。
10年後、20年後ともなれば外国人研修生を使っていてもどれだけの縫製工場がなくなるのだろうか。
そんな先まで外国人研修生制度が残っているかどうかも怪しいが。


これが国内縫製業の現状である。

1年遅れの粗悪品が売れるはずがない

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 GMS、大型総合スーパーの品ぞろえとして衣料品が必要なのかな?と疑問を感じる。

ここでいう衣料品というのは主にスーパー各社の自主企画商品(プライベートブランド)である。

例えばイオンの業績が急落しているが、その原因の一つには衣料品の販売低迷がある。

http://biz-journal.jp/2015/01/post_8708.html
既存店売り上げが前期比2.4%減と不振。特に衣料品が4.1%減と大きく落ち込んだほか、食品も2.3%減と苦戦した。


とある。

ここで業界関係者もよく混同してしまうのだが、イオンモールの専門店街の売上高はここには含まれてはいない。
ユニクロ、ライトオン、ハニーズ、グローバルワーク、チャオパニックティピー、コーエンなどの名だたる低価格SPAブランドが入店しているがあれらはテナントであり、そこの売上高はイオン本体の衣料品売上高には含まれていない。
だからいくらイオンモールが繁盛して各テナントの衣料品の売上高が増えようと、イオンの衣料品売上高は伸びない。

この基本を押さえておかないと、イオンの衣料品売上高を論じるときに意味不明の議論となってしまう。

いくらイオンモールが繁盛しようと、イオン本体の衣料品売り場は苦戦しているということである。
イオンに限らず量販店、スーパーの衣料品売り場には、他社仕入れ品とプライベートブランドの両方が並んでいる。
他社仕入れ品は、いわゆる量販店メーカーと呼ばれる各社から仕入れた商品であり、他のスーパーにも同じ物が並んでいる。
例えばイトーヨーカドーにもイズミヤにも平和堂にも同じ物が並ぶ。

岐阜はアパレル企業の本社が多い土地である。
その昔は縫製工場もずいぶんあったと聞く。
岐阜に本社を構えるアパレルのほとんどは量販店向けメーカーである。
業界では岐阜といえば量販店向けメーカーの集積地をイメージする。

最大手は美濃屋だろう。
コンバースやエアウォークなどのトレーナー、Tシャツ類を企画製造して量販店各社に卸している。
岐阜武、水甚なんていうメーカーもあり、メンズカジュアルアイテムを得意としている。
レディースだとサンラリーグループだろうか。

最近は卸先も少し変化しているが、筆者以上の年代(現在44歳)だと岐阜アパレルというのは量販店向けというイメージが強く残っている。

こういう仕入れ商品はまだしも、筆者は個人的には量販店のプライベート衣料品に需要があるのかどうか疑問を感じているわけである。


例えばイオンなら「トップバリュ」というプライベートブランドがある。
トップバリュのカジュアル衣料品が欲しいと感じている消費者なんてどれほど存在するのだろうか?
美濃屋が企画製造するコンバースのTシャツが欲しいという消費者ならまだそれなりに存在するだろう。
岐阜武や水甚の企画製造したアイテムが良いと感じている人もいるだろう。
現に筆者はジーンズメイトで格安に値下げされて投げ売りされていた商品を買ったら、岐阜武の商品だったことがある。

決して「岐阜武」の商品が欲しかったわけではないが、値段と商品のデザインを鑑みて買う価値があると判断した商品が岐阜武製だったということになる。

だから、ブランド価値はあまりないが、商品の出来栄えは悪くない商品も増えてきているから、量販店向けブランドもなかなか侮りがたい。

しかし、量販店プライベートブランドはそこまでの出来栄えだろうか。
しかもブランド価値は量販店アパレル商品よりも低い。
「トップバリュの服で我慢できる人は数多くいるが、トップバリュの服を積極的に欲しい人はいない」と言われる所以である。

そしてプライベートブランドの企画はユニクロや量販店アパレルのヒット商品の後追いに終始している。
軽量ダウン、発熱インナーの例を採ってみてもそれは明らかである。
工賃はそれらよりも低く抑えられていると話す関係者もいる。

もし仮にこの関係者の証言が事実だったとしたら、後追い企画の商品を本家よりも低い工賃で製造していることになり、それでは単なる粗悪品ということになる。しかもそれは本家よりも1年遅れで投入される。
本家商品と比べても見劣りするのは当然である。原価率そのものが低いのだから。
1年遅れの粗悪品なんて普通に考えても売れないのは明白だと思うが、GMS幹部にどうしてそれがわからないのか不思議でならない。

筆者がまだプライベートブランドでもそれなりに売れる可能性があると思っているのは肌着、靴下、パジャマ類である。
あと格安メンズスーツなんかはユニフォーム・作業着代わりにスーツを着用するサラリーマンには重宝されるだろう。

バブル崩壊後から働き始めた筆者には、なぜGMS幹部がここまで衣料品に執着するのか理解ができない。
少なくともファッション要素が少しでもある衣料品は、低価格SPA、ツープライススーツショップで十分まかなえるからである。そして商品企画の精度とブランド価値は量販店プライベートブランドよりも高い。

長らく付き合いのある量販店メーカーの元部長によると、
その昔、量販店は衣料品で多額の利益を稼いでいたという。当時の利益の稼ぎ頭は量販店だったそうだ。
これはおそらくバブル前からバブル絶頂期にかけてのことだと考えられる。

その元部長によると、かつての好況が忘れられないのではないかという。

家電量販店の隆盛に圧されて、量販店の多くから家電売り場がなくなっている、あるいは大幅に縮小されている。
衣料品も家電製品のようにあきらめた方が効率的ではないだろうか。量販店メーカーの商品はまだしも、ファッション要素を含んだプライベートブランドは。

低価格SPAと量販店メーカーの企画の後追いという現在の姿勢のままでは量販店の衣料品がかつてのように復活することは到底ありえないと思うのだが。

GMSは食品と日用消耗品に特化した方が良いのではないか。


「トレンド任せ」と「別注商法」は限界に達している

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 大手セレクトショップや著名SPAブランドのショップを覗くと、全般的にシーズンごとにすべての商品が入れ替わっていることがわかる。
昨今はベーシックなアイテムでさえ、シーズンごとに作り変えてしまっている。
ベーシックとはどういうことかというと、白やグレー無地のTシャツだったり、無地のオックスフォードボタンダウンシャツだったり、レギュラーストレートのジーンズだったりというアイテムである。

一昔前ならこれらの商品は「定番」として長期間販売されていたし、作り変えるとしても数年に一度マイナーチェンジする程度にとどまっていた。

ジーンズショップだと必ず、リーバイスの501が置かれていた。
トラッド系のお店だとブルックスブラザーズのオックスフォードボタンダウンシャツやラコステの無地ポロシャツは必ず置かれていた。
「定番」を置かずにガラっと商材全てを変えることが果たして売上高につながっているのだろうか?
つながっていないのではないか。
つながっているなら今頃アパレル業界は増収増益の会社であふれかえっているだろう。

ところが現実はそうではない。
減収減益は当たり前、前年維持でも「すごくがんばっている」と評価される状況である。

商品をすべて作り変えると、理論上、買い替え需要が見込まれる。
しかし、その仮説通りに消費者は行動してくれていない。

またオーナー、店長、バイヤー、に考える力、物を見極める力が失われているのではないか。
何を「定番」にしたら良いのかわからない。
「定番」と新商品の構成比率がどれくらいが適正なのか考えられない。

そういうことなのではないかと感じられる。

欧米の名だたるラグジュアリーブランドほとんどにデニム生地を納品しているクロキを取材したことがある。
クロキによると「ラグジュアリーブランドは新商品も投入するが、定番品も継続している。ある品番のデニム生地なんて数年以上に渡って使われ続けており、それを使った品番もほとんど変化しておらず、したとしてもマイナーチェンジにとどめている。ラグジュアリーブランドの定番と新商品の構成比率は考え抜かれている」という。

定番なくして何がブランドなのだろうか。
何がセレクトショップなのだろうか。

店頭を見ていると、定番作りにもっとも熱心なのがユニクロに見える。
なるほど今年の店頭にも昨年物が並んでいたり、定期的にマイナーチェンジは繰り返されたりしている。
けれども、無地のオックスフォードボタンダウンシャツも無地のスエットシャツ(トレーナー)も年間を通じて置かれている。
冬場なら無地ラムウールセーターは必ずある。

たしかにユニクロはシーズン物の投入にも積極的だし、時々、企画意図がわからない突飛な新商品の投入もある。

しかし、定番は必ず作り続けている。

ユニクロをバカにするファッション業界人は多いが、彼らがバカにするユニクロの方が、欧米の有名ブランドに近い姿勢を採っているのではないか。
定番と新商品の構成比率を考えられるだけの能力があるのではないか。

「ユニクロみたいな大資本だからできるんだよ」という言い訳が聴こえてきそうだが、そんなことはない。
小資本だってやろうと思えばやれる。
その実例は苦楽園のセレクトショップ「パーマネントエイジ」だろう。

http://www.permanent-age.co.jp/

ここは1店舗しかない個人オーナーの店だが、定番商品をオリジナルで企画し続けている。
無地カットソーは定番品で、ほとんど変わらない。変わったとしてもマイナーチェンジのみである。

IMG_3794

(パーマネントエイジの定番カットソー)

1店舗だけなら、当然、ロットがまとまらない。
だからここは、自社オンラインショップのほか、卸売りもするし、百貨店内の催事にも定期的に出店する。

また、何年間か売り続ける計画があるから、ある程度のロットとしてまとまり、オリジナルの定番品を作ることができる。

セレクトだろうがSPAだろうが何店舗かのチェーン店なら個店のパーマネントエイジより資本力は大きいはずだ。
個店にできてチェーン店にできないはずがない。要は考える力とやりきる覚悟があるかないかだろう。

ファッション業界人の「定番忌避」は商品だけのことではない。
素材面にも及んでいる。

カイハラやクロキといったデニム生地メーカーはブルーデニムでも何百種類という色を持っている。
そんな多数の色があるのに、別注色なるものが必要だろうか?
ユニクロやエドウインのように年間何十万本も製造するならともかく、1シーズンにせいぜい100本ほどしか製造できないようなブランドに別注色が必要だろうか。到底必要とは思えない。
何百色もあるブルーから選べば良いのではないか。顧客もそれだけの数のブルーは見分けられないし、何よりもブランド担当者自身が見分けられないだろう。

一口に「デニムの別注色」と言うが、ロープ染色するには最低でも5000メートルのロットが必要になる。
5000メートルでも少ないくらいだ。
1反=50メートルだから100反のオリジナル生地を作る覚悟があるなら別注色をオーダーすればいいが、それが無いなら安易に別注色などと口にするのはやめた方が良い。
知識の無さがバレるだけである。



逆にクロキの定番デニム生地を欧米ラグジュアリーブランドは使用しているのである。


どちらが理にかなった姿勢かは言うまでもない。
「別注」という言葉に頼らないと売れないブランド、売れない店がそれだけ増えたということだろう。
「別注」という言葉を使ってすら売れなくなってきているのだから、そろそろ「別注」商法も限界に達しているということだろう。


話を戻すと、定番を作れない・売れないままでは、結局そのブランドの顔はいつまで経ってもできないわけで、毎シーズン、ガラっと商品が変わるのは目先は大きく変化するが、そのブランドやショップの本質は見えにくい。
トレンドの風任せの浮動票だけを当てにした商売は、これ以上伸びる要素は少ない。
ブランド、ショップともに「定番」を作るだけの企画力、物を見極める力を養うべきではないか。

ファッション専門学校の入学者募集手法の移り変わり

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 昨年11月から、縁あって大阪ファッションアート専門学校という小さなファッション専門学校で毎月2回、講義を行っている。

http://www.ofa.ac.jp/

校名はずっと同じだが、3年くらい前に新オーナーが買い取って新規一転で再スタートを切った学校である。
だからまだ1年生が7人しかいない。

ファッション専門学校が氷河期を迎えているのに、買い取って再スタートさせるというのは何とも酔狂なことだと感じるのだが、乗りかかった舟なのでなんとか学生のためになるような内容を話したいと心がけている。

回り道をしてきた人もいるので一概には言えないが、多くの一年生は高校を卒業した翌月に入学している。
デザインの手法とかパターンの作り方などは筆者には教えることはできないので、必然的にビジネス関連のことになるのだが、小難しいビジネス理論は筆者にもよく理解できていないし、高校を卒業したばかりの学生にはもっと難解だろう。
そういうことはほかの先生方にお任せしてしまう。

そこで、

業界の大まかな構造だとか
現在、アパレルがこぞって活用するOEM/ODMについてだとか
アパレル企業や小売業の社内の役職についてだとか

そういうことを話している。

先日は、講義内の雑談で、正社員の待遇について言及した。
例えば、雇用保険についてだとか、そういう内容である。

そうすると意外に学生の食いつきは良かった。
そういえば、筆者も大学を卒業する際まであまりそういう話を耳にしたことがなかった。
きっとそういう講演や講義なども聴いていたのだろうが、筆者の生来の愚鈍さと、演者が噛み砕かずに話していたため、ほとんど記憶に残っていない。

次は有給休暇について話してみようかと考えている。

専門学校は2年ないし3年で終了する。
専門学校に入学する・させる目的としては就職できるためであろう。
しかし、高校を卒業したばかりの学生は待遇や企業の制度などあまりしらない。
おそらく興味もないだろう。筆者なんて大学を卒業するまで興味がなかった。

興味がないからといってそれを放置しておくと、わけのわからないブラック企業にひっかかって良いように使われてしまう。
企業個々に待遇制度は微妙な差があるとはいえ、そういう待遇の最大公約数的なことを教えることはそれなりに意味があるのではないかと考えている。

ところで、先日のレモネード伯爵(ペンネーム)の専門学校の分析記事は秀逸であった。

http://www.apalog.com/lemonade/archive/35

ファッション専門学校の入学者募集トレンドの移り変わりをまとめている。
詳細は原文をお読みいただくのが良いだろうが、キモの部分を以下に引用させていただく。

①「すごいパンフレット」の時代(1990年代)

80年代のDCブランドブームでは入学定員が満たされていた服飾専門学校だったが、そのブームが去り、90年代に入って「すごいパンフレット合戦」を繰り広げ始めるようになった。それまでモノクロで固いイメージのあったパンフレットのクオリティアップを図り、高品質な用紙を使ったり、一流モデルを使ったり、オリジナルDVDを入れたり、まるで雑誌のようなパンフレットセットを贈った。地方の高校生は都会から届いた豪華なパンフレットに狂喜したに違いない。この頃から地方の服飾系専門学校が淘汰され、東京・大阪に学生が集中した。印刷業者や不動産業者はさぞかし儲かったことだろう。

②「個人リストと雑誌ブランディング」時代(2000年代)

2000年代に突入すると携帯電話が若者に普及。これに伴って個人リストを手に入れたものが入学募集を制覇する時代に突入した。資料請求者に対して、前述したパンフレットはもちろん、その後のフォローとしてメルマガ、DM、電話などあらゆる情報を送ることで入学者の獲得につなげた。オープンスクールの増発、バスツアーによる地方出身者の囲い込み、入学前プレ授業による入学辞退の阻止などの営業施策が次々と開発された。

またこの時期からファッション雑誌の活用も増加。雑誌社と提携し、学校名記載の読者モデルの掲載や学校主体の記事広告を増発。就職実績を誇るというよりは、お洒落な在校生をピックアップして"学校に通いたくなる"ようなイメージアップを図った。個人リストを獲得するための「専門学校はがき一括請求」や「専門学校ポータルサイト」が一時代を築いた。

しかしこのあたりから、入学前のイメージと入学後のイメージのGAPが発生し、一部の学校ではクレームが多発。

③「脱パンフレット・ウェブ全載せ」時代(2010年~現在)

スマートフォンの普及により、若者はウェブサイトおよびSNSでの情報取得がメインとなる。豪華なパンフレットは効果を発揮しなくなり、若者はウェブサイト上ですべての情報を欲しがるようになった。かつては資料請求をさせるために、ウェブサイト上に学費の詳細を載せことはタブーとされてきたが、現在はすべての情報を開示するのが常識である。学校によっては入学願書までダウンロードできるようになっている。過度なメルマガ配信、DM郵送、TELアプローチはかえって学校のイメージダウンとなった。

またSNSが購買の決定権を左右するようになる。入学者・在校生・卒業生がつながるようになり、各校とも過剰なイメージ戦略やあおりができなくなった。つまり「本当のこと」を正しくPRする必要が出てきた。ブログやSNSの更新が入学募集に不可欠になった。ちなみに雑誌社は、メイン顧客(カモ!?)だった専門学校からの出稿が激減したことが一部要因となり、次々と廃刊に追い込まれていった。

ちなみにスタイリストやファッションライター、ゴスロリ系のデザインコースなど、就職先が極端に少ない特殊コースに学生が集まるようになったのもこの時期の特徴である。

④「残存者利益」の争い(新時代~)

前述したように現在の服飾専門学校の入学募集は熾烈である。もはや販促やPRを強めるだけでは入学者の確保が難しくなっている。入学希望者の絶対数も減り、まさに生き残ったものだけが残存者利益を享受する時代に入ったといえるだろう。ここにきて高校とのパイプを持つ老舗・大手の専門学校が強さを発揮している傾向にある。弱小スクールは残された時間をどう生きていくかを考える必要があるだろう。ただし学校法人は国からの援助があるので、株式会社立スクールよりは淘汰は遅くなることが予想される。


とある。

この時代によるトレンド変遷の分析は的を得ている。

そして各年代のトレンド最盛期には、前時代のトレンド手法はまったく効果がなくなっている。
筆者は2008年から1年間、某専門学校で広報を務めたことがある。
専門学校の広報というのは、純粋な意味での広報業務のほか、入学者募集という業務がある。
入学者数が低位低迷する専門学校というのは、この入学者募集の時代ごとのトレンドに乗り遅れた学校がほとんどである。

筆者が務めた時代は②の終わりごろであるが、雑誌とタイアップ記事を作成するためには莫大な費用が必要である。料金設定は雑誌によって異なるが、見開き2Pの場合、1回につきだいたい150万~200万円強が相場である。
年に4回やれば少なくとも1000万円弱のカネが必要になる。

入学者数が低位低迷しているからこのカネを捻出するのが厳しい。だから出稿を減らす。さらに入学者数が減るという悪循環スパイラルである。
そしてこのころすでにウェブ時代が隆盛を迎えつつあったが、各専門学校は伝統的に情報開示を極度に嫌がり、かなり消極的だった。

引用記事にもあるが、入学金や授業料を自校ウェブサイトに掲載していた学校は2008年当時、知る限りでは存在していなかった。

しかし、ぼったくりバーやぼったくり居酒屋の例もあるわけで、寿司屋の時価じゃないんだから授業料をウェブで公表できない体質というのはいかがなものかと多くの人が感じても不思議ではない。
ちなみに生徒数は今でも多くの学校が掲載していない。
一方で、学校の年度ごとの収支報告は掲載されるようになった。これは文部科学省側の指導もあったのだろうが、一歩前進といえる。

筆者は②の末期に在籍したが、専門学校の多くの年配層は①の手法に固執していた。また、①の手法以前の時代の手法に固執する年配層も少なからずいた。
いずれも時代遅れの手法であり、そんなものが効果を発揮するはずもない。

また今は③の時代だが、②の手法は最早通用しない。
ファッション雑誌の多くは下り坂であるし、ファッション雑誌の影響力は低下している。
最早若者がファッション雑誌を読んでいるかどうかすら怪しく、ファッションコーディネイトブログやWEARなどのファッションコーディネイトアプリを参考にしている若者も多いと聞く。

今の時代に②の手法に固執している経営者や幹部がいるとするなら、それは時代遅れで変化に対応できていないということになる。

このブログ主は今後を④の残存者メリットの時代になると予測しており、これにはまったく賛同する。
少ないパイを独占・寡占するために専門学校間での競争が激化し、支え切れなくなった学校は今まで以上にどんどん淘汰されていくと考えられる。

ブログ主がいうように、今後もファッション専門学校はゼロにはならないだろうが、ファッション・アパレル産業が若者にとってあこがれの職業では最早ないので、今後も厳しい生き残り合戦が続くことになるという指摘にも激しく同意する。

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