南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2014年08月

従来型の終わりの始まり?

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 欧米に全く縁のない生活をしているからマックスリーさんのニューヨークブログを毎回興味深く拝読している。
今回のジョガーパンツに関するエントリーも好調のようだが、筆者が注目したのは冒頭の一文である。

http://www.apalog.com/maxre/archive/167

ヤング層のジーンズ離れが深刻化している中、唯一、スキニージーンズは引き続き売れているが、かなり雲行きが怪しくなってきた。


とある。

どこの市場と明言されていないので、ニューヨーク市場もしくはアメリカ市場だと推測するのだが、もし仮にそうだとすると、この状況は我が国の市場とほぼ同じである。

ヤング層はジーンズに対して特別感を抱いていないし、それでもスキニージーンズはこの数年間売れ続けてきた。それにもちょっと飽きが来ているようだが、次のトレンドは見つけられていない。
ひどく大雑把にまとめると、我が国のジーンズ市場はこういう状況にある。
ジーンズ市場を支えているのは間違いなく中高年男女である。
そして中高年が支持をするから余計に若者は敬遠するのではないかとも思える。

日米で示し合わせたように同じ動きになっているというのも興味深い事例である。


そこで注目されているのがジョガーパンツだという。
日本でもジョガーパンツは何年か前から注目されており、ジーンズブランドも取り入れてきた。
エドウインはすでに「ジャージーズ」という商品を出しており、好調に動いているという。


ジョガーとかジャージーズとか呼ばれている商品には二通りある。

1つは、裏毛などのニット素材の商品
もう1つは、超強力ストレッチの薄手布帛素材商品


である。

どちらも売りは「柔らかくキックバック性があり、動きやすいこと」である。

筆者は裏毛などを使ったデニム風ニットが面白いと感じていた。
編み物なのに、デニムっぽい見え方だからである。
けれども、その後、薄手布帛素材の方が市場に受け入れられているように感じる。

ブランドによってばらつきがあるとはいえ、ニットデニムが期待されたほど需要が伸びなかった理由はなんだろうか。

1つは、洗い加工が施しにくい
もう1つは、目付が軽いとすぐに膝が出てしまってシルエットが崩れてしまう


ことにあるのではないかと考えている。

多くのデニム風のニットはヒゲなどの加工が施しにくい。
ヒゲが明確に出にくいだけでなく、擦っている最中に糸が切れたら、そこから穴が開いてしまう。
布帛では糸が何本か切れてもすぐには大穴は開かない。
また摩擦にも強いのでヒゲ加工が施しやすい。


世間ではスエットパンツが流行しているので、筆者もユニクロで7分丈のスエットパンツを購入してみた。
試着してみるとどう見ても寝間着を穿いたオッサンにしか見えなかったので、そのまま寝間着にした。
ちなみに筆者が定価で買うはずもなく、990円に値下がりしたときに購入した。

写真

(990円に値下がりしてから購入したユニクロの7分丈スエットパンツ)



予想したよりも生地が薄い。正確にいうなら目付が軽い。

寝間着としてしばらく着用してみて「寝間着にして正解だった」と感じた。
というのは、すぐに膝が出てしまったからである。
おそらく洗濯すればある程度は元のシルエットに戻ると思うが、本来、そこそこタイトなシルエットのはずが、膝が出たためにダボっとしたシルエットになり、変型版のサルエルパンツにも見える。

ニット素材のパンツは興味深いが、膝が出る危険性が高いことを改めて痛感した。

このような素材特性を考慮すると、布帛製のジョガーパンツへの支持が増えることは何の不思議もない。

さてさて、ニット製であろうが布帛製であろうが、注目商品が現れるというのは市場の活性化につながるので喜ばしいことである。

しかし、ジョガーパンツやジャージーパンツの「楽さ」はジーンズとはくらべものにならない。
今春から何本かストレッチ混の細身パンツを購入したが、よほどの太目シルエットでない限り、筆者はノンストレッチのパンツは穿きたくなくなった。
それほどに快適であり、細身のノンストレッチパンツは不快である。

話は横道にそれるが、長らく店頭でGAPの商品を見ているが、GAPはなぜか頑なにストレッチ素材を使わない。これは謎である。
ナチュラル感が売りの無印良品でさえ、タイトシルエットパンツにはストレッチが採用されている。


それはさておき。


シルエットに少しゆとりがあり、それでいて(ニット、布帛ともに)ストレッチ性のあるジョガーパンツが本格的に流行したならば、ジーンズというアイテムはさらに復活の芽がなくなるのではないかと感じられる。
ジョガーパンツに比べると圧倒的にジーンズは快適ではないからである。

一度快適さに慣れてしまった消費者が再び不便な商品を志向するようになるまでには相当の年月が必要なのではないかと思う。

もしかしたらジーンズの素材開発の根本から考え直さなくてはならなくなるのではないだろうか。
ジョガーパンツの流行が「従来型ジーンズの終わりの始まり」にならなければ良いのだが。

来店するけど買わない

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 繊維・アパレル業界の人でもというべきか、繊維・アパレル業界の人だからこそというべきか、印象論のみで論じる方が少なくない。
例えば百貨店の各店舗の売上高である。
京都には小型百貨店が集まっているのだが、もっとも売上高が高いのは高島屋である。
次は大丸であり、ジェイアール京都伊勢丹はその次なのである。
いくらジェイアール京都伊勢丹がこの10年で売上高を伸ばしたとはいえ、この序列は変わっていない。

京都の一番店は今でも高島屋だし、それを大丸が追いかけるという構図は同じなのである。

昨日、フェイスブック友達に教えていただいたブログに2013年度百貨店の売上ランキングが掲載されている。

http://osakacityview.blog.fc2.com/blog-entry-370.html

この元ネタは文中にあるように日経MJである。決してブログ主の「印象論」ではない。
貴重な資料といえる。


上位30位までの表だけを引用する。

201408222011507d0





高島屋がジェイアール名古屋高島屋も入れると6店舗ランクインしている。
売上高の高い店舗が全国的にまんべんなく存在するといえる。

突出した店舗はないものの、大丸も6店舗ランクインしており、バランスの良さがうかがえる。
ちなみにここでいう大丸は大丸単体のことである。

このあたりの売上ランキングをきちんと認識しないと、百貨店を論じても印象論や好き嫌い論になってしまう。

さて、グランドオープン半年で下方修正を余儀なくされたあべのハルカス近鉄百貨店本店だが、その要因は若い女性向けの専門店街「ソラハ」の不振によるものだと報道されている。
それに向けた近鉄側の対応策もいくつか報道されているが、記事を読む限りにおいては、有効であるとは到底思えない。


例えば昨日のブログでご紹介した近鉄百貨店の高松啓二社長のコメント

「雰囲気や音楽など、若い女性が好むような演出も不十分だった。来店客を呼び込む仕掛けが必要だ」と指摘。数千万円を投じ、9月中旬の完成をめどにソラハの改修に踏み切る。

なんて、どこか他人事のように聞こえてしまう。
「指摘」なんてしている場合なのか、今更指摘するくらいなら計画段階からそれをなぜ指摘しなかったのだろうか。

また、ここで報道されている巻き返し策も疑問を感じる。

http://www.data-max.co.jp/company_and_economy/2014/08/14735/0827_dm1435/

そして、「まだ構想段階ですが、若い女性に人気のモデルさんなどファッションリーダー的な存在の方とのジョイントしたイベントなどを企画して、ご来店を促していきます。


だそうなのだが、現在、マスに向けたファッションリーダーなんてそもそも存在するのだろうか?
90年代後半は安室奈美恵さんが若い女性のマスファッションリーダーだった。
2000年代前半は浜崎あゆみさんが若い女性のマスファッションリーダーだった。

そういうマスが支持するファッションリーダーは今存在するようには思えない。

個々のジャンルに人気のある小ファッションリーダーはたしかに存在する。
しかし、マスを狙う百貨店が特定のジャンルに特化した小ファッションリーダーを起用したところで目指す売り上げ規模を回復できるとは到底思えない。

引用した記事の中で興味深い分析がある。

 同社の広報によると、「あべのハルカス近鉄本店の来客数は、グランドオープンの3月~7月の間は、前年同期比で80%増でありました。しかし、買上率が計画の94%に対して80%という結果でした。すなわちご来店くださったお客様の14%の方が計画の6%に加えて何も買うことがなかったという結果です」という。

来客数は大幅に伸びたが買い上げ率は伸びなかったということである。
この現象は何もあべのハルカスだけのことではないと感じる。

事実上の撤退が決まったJR大阪三越伊勢丹だってオープン当時は何十万人もの人が来店し、来店客数の計画は楽々とクリアしたが、売上高がまったく伴っていなかった。

初年度売上高計画をクリアして好調が伝えられるグランフロント大阪も来店客数は、当初計画を大幅に上回っている。売上高の計画達成どころの上回り方ではない。

近年関西で開業した新規の商業施設は、来場者数・来店数はどれも好調であるが、売上高はそこに正比例していない。


こうした状況を見ると、新しい施設ができれば好奇心も手伝うから、来場者は比較的容易に多く集まる。しかし、来場した人々に商品を購入してもらうことは難しくなっているのではないかと感じる。
もしくは購入はするが、単価が低いのかもしれない。

そういう意味では消費者の目はシビアさを増しているのではないか。

そこで消費を促す施策は、どういうものなのかもう一度考え直す必要があるのではないか。
90年代後半までの手法をそのまま実施して結果が得られるような状況にあるとは思えない。
存在していない「ファッションリーダー」とのジョイントだとか、まったく具体性もない「女性が好む演出」だとかでは対応しきれないだろう。

何とも厳しい時代である。

思い込みと願望だけでは・・・

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 今年3月にグランドオープンしたあべのハルカスが早くも下方修正している。
その原因として、若い女性向けの専門店街「ソラハ」の苦戦が挙げられている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140826-00000501-san-bus_all

記事によると、

近鉄百貨店の高松啓二社長は「雰囲気や音楽など、若い女性が好むような演出も不十分だった。来店客を呼び込む仕掛けが必要だ」と指摘。数千万円を投じ、9月中旬の完成をめどにソラハの改修に踏み切る。

とのことだが、そもそも「若い女性向け」というターゲット設定が間違っていたのではないか。
現在のファッション業界において、「若い女性向け」「若い男性向け」というジャンルは旨味の少ないジャンルだと認識されつつある。

その理由は、

まず人口が少ない。
次に可処分所得が少ない。

ことが挙げられる。

人口が少なくてお金をあまり持っていないから、販売枚数は少量になる。
そして買い上げ単価も低い。

いわゆる工業、商業として見た場合の旨味は著しく低い。

ちなみにハルカスがどれほどの下方修正をするかというと、

百貨店部分の売上高と専門店部分の売上高を合計した取扱高ベース売上高は、期首予想の1450億円から280億円減額し、1170億円とした。前期実績は923億1100万円だった。

http://ryutsuu.biz/accounts/g082512.html


とのことだ。


グランドオープンしてから何度か休日、平日と見物も兼ねてハルカスに足を運んだ。
百貨店部分の入場者数はまずまずだと感じる。
あまり閑散としたという印象はなく、平日の昼間でもそれなりにお客がいる。
平日の夕方もそれなりの賑わいがある。

一方、ソラハは平日の夕方や休日でも百貨店ゾーンに比べると客入りが少ない。
人ごみが苦手な筆者からすると非常に快適な買い物環境だといえる。

それにしてもなぜ「若い女性向け」というもっとも困難なターゲット設定をしてしまったのだろうか。

同じ天王寺エリアで、ターゲット設定が同様に失敗していると感じるのが「MIO プラザ館」である。
こちらはJR天王寺駅のすぐ上である。
2階はなぜかファミリー向けを意識したテナント構成となっている。

しかし、さっそく、アバハウスの「マイセルフ」が撤退しており、その跡地に「チャオパニックティピー」が入店している。

MIOプラザ館の面積は狭い。
そしてファミリー向けなら陸橋のすぐ向こうに大型ショッピングセンターの「キューズモール」が存在しており、こちらの方が品ぞろえが圧倒的に豊富である。
まともに勝負しても勝ち目は薄い。

それにしてもキューズモールにもMIOプラザ館にも入店している「チャオパニックティピー」は大丈夫なのだろうか。もしかしたらドミナント戦略なのだろうか。

ソラハも同じである。

若い女性向けというならキューズモールにもあるし、天王寺MIO本館もある。
キューズモールには低価格ブランドがそろっているし、MIO本館は有名ブランドをそろえている。

人口と可処分所得が少ない若い女性層がそれほどたくさんの商業施設で買い回るだろうか。
そういう状況はなかなかありえないのではないか。

このターゲット設定の失敗は、鉄道(近鉄、JR)本体の経営陣の判断ミスではないか。
片方は「ファッション=若者」というステレオタイプな発想、もう片方は「ファミリー向けで成功したい」という根拠なき願望、を反映しているのではないかと感じる。

思い込みと願望だけのターゲット設定というのは、これ以外でもよく見られる。
そしてそれが成功した試しは限りなく少ない。

美味しいとこ取りは不可能では?

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 繊研プラスに掲載されている対談が面白かった。
せーのの石川涼社長と、チームラボの猪子寿之社長の対談である。
IFFで行われた対談を文字にまとめたもののようだ。

http://www.senken.co.jp/news/teamlab-ceno/

まず、最初から石川社長が明確に「服が並んだだけの店では売れなくなる」と明言されている。

直営店でも何でも、ただの物販は終わりだと思ってて、洋服が並んでいるだけのカッコいいお店は、もうアマゾンにはかなわない。で、お客が来店したくなるような何かしらの仕掛けが必要だと思ったんです。

とある。
これは、言い回しこそ違うが、販促コンサルタントの藤村正宏さんや短パン社長の主張と同じだと読める。

本論はここではなくて、以下になる。

「ファッションは終わる」である。

もう、過度なおしゃれは必要ないのではないかという話です。結局、世の中を見渡して、そんなに変わった服を着ている人なんていますか。

ここには深く賛同する。
男女ともマスはベーシックでありシンプル化している。
多少の装飾といってもベーシック品に少しフリルやギャザーなどのディテールが加えられていたり、形はベーシックで色柄だけがPOPだったりするものが多い。

フォルムそのものがヘンテコリンな服を着ている人なんてそんなに見かけない。
アヴァンギャルドを売りにするデザイナーズブランドが大きく成長できないのもこのためである。
その市場は極めてニッチだからだ。
あえて、そのニッチを狙うのはブランドとしての戦略なので大いに貫徹すべきだと思うが、市場の大きさを読み誤ったブランドも数多く見受けられる。これは痛々しい。


さらに石川社長のこの言も一理ある。
物作り系の方々には不快だろうが、これを前提とした物作りをしないと、単なる自己満足の押しつけになってしまう。


石川 車もそうですが、燃費の良さなどのスペックを誇ることにはもう特段の関心を惹かれません。それよりも、例えば、別の形にトランスフォームする車ができないかと考える方が大事だと思う。そっちのほうが、テンションがあがる。

ーなるほど。

石川 ファッション業界は、そういう大切さをわかってないと感じます。肩の力を抜いて楽しめばいいのに、やれ素材がどうだとかとか、そういう瑣末なことばかりに囚われている。ある程度の基準をクリアしていれば、そんなことに固執しなくよい。若い世代は求めていませんから。僕は、もうすぐ40歳になるんですが、多分、そういうディテールにこだわるのは40歳以上の世代だけだと思う。安く買えるものが多くあるのに、それを否定するファッション業界の考え方にこそ疑問を感じます。安くていいもののために、業界がだめになったと批判する業界人のほうに問題があるのでは。



である。熟読してもらいたい。

これは昨日ご紹介した「途中でやめる」の山下陽光さんの考えにも一種通じると感じる。
やはり一般大衆にとってはある程度の「安さ」は重要なのである。
100円にまで下げる必要はないが、1000円~数千円程度で買える商品は世の中に受け入れられやすい。ユニクロのようにそれがある程度の品質の高さを維持していればなおさらである。


そこを否定しても時代も消費者心理もバブル期には戻らない。
基本的にマスに売ろうとするならある程度の安さは必要だし、高額品を売ろうとするなら販売枚数は多くないことを前提とすべきである。

1着15万円が話題の気仙沼ニットだって、一番最初に製造できたのは4枚で、そこに対して100件の注文があったとされている。操業当初で知名度がなかったとはいえ注文は100件しかなかったわけである。
高額品の需要とはその程度だと考えた方が良い。

真の上流階級や一部のマニア愛好家のみをターゲットとした高額ブランドを目指すならその方向性は正しい。
しかし、高額品を提案しながらマスにも売りたいという美味しいとこ取りはほぼ不可能に近いと考えた方が良い。


それが、筆者の目に映るアパレル・ファッションビジネスの現状である。

低価格を追求するデザイナーズブランド

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 いろいろなタイプの「若手デザイナー」がいるもんだなあと改めて感心した。

8月22日・23日と京都でテキスタイル・マルシェを開催したが、ジョイントで参加してくれたデザイナーズブランド「途中でやめる」を主宰する山下陽光さんの考え方は特徴的で興味深いものだった。

途中でやめる http://tochudeyameru.com/


念のためにいうと、ジョイントをセッティングしていただいたのは、ひなやの伊豆藏直人社長であり、筆者にはそれほどの力量と人脈と人望はない。

「途中でやめる」とは何とも変わったブランド名だが、最近はこういう変わったブランド名のデザイナーズブランドが増えてきた。
今回ジョイント参加してくれたほかの2ブランドは「旅する服屋さん メイドイン」と「nusumigui(ぬすみぐい)」であり、こちらも変わったブランド名である。

「途中でやめる」は古着リメイクを中心とした品ぞろえだが、一番驚かされるのはその価格設定である。
ラグジュアリーブランドの手法の上辺だけを見て、ありえないような高価格に設定したがる向う見ずなブランドが多い中、このブランドはありえないほどの低価格に設定している。

例えば写真のTシャツは2000円である。

写真





昨今のブランドだから当然、インターネット通販も行っているが、何と配送料は全品無料である。
この2000円Tシャツも送料無料なのだから驚かされてしまう。

期間中、山下さんにいろいろと考え方を伺ったが、おそらく全貌は話しつくしていないだろうと思われる。

まず、山下さんがこの低価格に設定したのはユニクロへの対抗である。
アパレル業界でユニクロに対して敵愾心を持つ人は多い。山下さんだって全肯定ではない。
しかし、ユニクロの製品品質は価格に比べると悪い物ではなく、山下さんはユニクロの価格設定を肯定している。
と、いうよりはユニクロをいくら否定してみても非現実的だという考えに至った。
その上で、これに対抗するには低価格だという結論に達した。

筆者が興味深かったのはデザイナーズブランドで「低価格」に注目し、実践しているところである。
小ロット生産が基本であるデザイナーズブランドは基本的に「いかに高く売るか」に注力しており、ときには胡散臭い物語まで付与して高価格設定にしてしまう。
「低価格」を実践するデザイナーズブランドは唯一無二ではないだろうか。

それでも山下さんは「価格で同等でないとユニクロとは勝負できない」と言い切る。さらに「できればユニクロの半額ぐらいにまで値下げしたい」という。

小ロット生産で、しかも送料無料だから利益率は悪い。
おそらく悪いなんてもんじゃないだろう。むしろ持ち出しているんじゃないかと思う。

ビジネスとして見ると、現在の生産規模で続けた場合、早晩資金繰りができなくなるのではないだろうか。
しかし、考え方としては面白いし、斬新で独創性がある。
莫大な資金を引っ張ってくるスキームがあれば、大きく成長できる可能性はある。

それ故に筆者はこのブランドに一抹の可能性を見ている。
出来上がった商品の良し悪しは筆者にはわからない。
テイストから見て筆者が袖を通すことは絶対にない。
それでもブランドの思想は面白いと思う。

多くの名門ブランドやデザイナーズブランドがユニクロに対して敵愾心を燃やすのに対して、まず「ユニクロは価格面も含めて肯定しないと始まらない」と言い切る山下さんの考え方には賛同したい。

ユニクロに対して敵愾心を燃やすくせに、「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ素材をくれ」と恥ずかし気もなく言い放つ大手アパレルよりはよほど山下さんの方が好感が持てる。

このブランドがある程度の売り上げ規模に育つことができたら(育てることができたら)、日本のアパレル業界は大きく変わるのではないかと思える。
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