南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2014年01月

売れた物が良い物

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 筆者は普段、製造業寄りの人と接する機会が多い。
チャラっとしたファッショニスタなんてごくたまにしか接触する機会がない。

ときどき仕事をさせてもらった繊維産地の人々なんて製造業そのものみたいな人たちである。

で、そういう製造業の人たちが「良い物は売れる」という考え方に陥りやすい。
たしかに良い物は売れる可能性がある。でもまったく売れない場合もある。
反対に粗悪品でもそこそこ売れることもある。できれば売れないでいてもらいたいけれど。

これと対極に「売れた物が良い物だ」という考え方がある。

これも一面の真理である。品質の高低はともかくとして結果的に売れたんだから、それが良い物であるという考え方である。

さて、製造業の人たちがさらに陥りやすいのが「良い物は高くても売れる」という考え方である。

これもある部分までは正解だが、「高い」にも限度がある。
たとえばジーンズで2万円前後くらいまでの商品には当てはまると思う。けれども5万円のジーンズはそう簡単には売れない。

2005年ごろにもてはやされた高額インポートジーンズだってそうだ。
今のボリュームゾーンは19800円である。29800円では売れなくなっている。だから「ヤヌーク」はカイタックインターナショナルがライセンス生産することで価格を19800円に下げたのである。

着物だってそうではないか。
いくら柄や刺繍が凝っていて、伝統の技法で作られていたとして、100万円もするならあまり買わないだろう。
だから成人式用の振袖のレンタル利用者が増えているのだろう。

10万円くらいの着物ならそれなりに売れるかもしれない。数万円くらいのカジュアルな着物ならもっと売りやすいだろう。

着物業界から見たら10万円とか数万円なんて安物だろうが、洋装に慣れた消費者からすれば十分に高額品である。もちろん生産背景が異なるので一概に比べることはできないが。

洋装なら10万円のコートは十分に高級品である。

で、この2つの考えにとらわれている限りは、繊維製造業者は市場に広く流通するような商品は生み出せないだろうと思う。
とくに生地メーカーや縫製業者、洗い加工業者が自社開発製品の直販に取り組む際には邪魔になる考え方になるだろう。

本藍を手染めして、力織機で織った最高級のデニム生地で作られたジーンズが10万円ですと言われたところで買う人はごく少数だろう。

これがプラダのジーンズなら話は別だが、産地企業が起こした無名のブランドなんてわざわざ買う人がどれほど存在するのか。

それよりは2万円くらいで販売できるジーンズを開発した方が成功する可能性が高い。
そういう最高級品を作る技術は伝えなくてはならないと思うが、そこに特化したところでビジネスは活性化しない。


だから繊維製造業の人たちは

「売れた物が良い物」
「良い物はそこそこ高くても売れるが、高すぎると売れない」

この2つを常に頭の片隅に置いておくくらいがちょうど良いのではないだろうか。

「物」以外のアピールが必要では?

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 合同展示会を取材しに行くことがある。
数社程度の合同展示会なら、各ブランドの個性がはっきりと見える。
ところが20社~50社未満の中型合同展示会だと、往々にしてどのブランドも同じように見えてしまって、区別ができないということがある。

ここが主催者の悩ましいところで、商談の成果を挙げるためには、来場者を絞り込む必要がある。
例えばフェミニンテイストを扱う中型専門店とか、セクシー系を集めたチェーン店とか、いうふうに。
そうすると必然的に出展社も同じようなテイストを集めることになる。
それがもっとも商談会としては効果があると予測されるからだ。

セクシー系のチェーン店を来場者として誘致しているのに、半分以上がナチュラル系カジュアルとコテコテのストリートカジュアルだったら、来場者の満足度は低いだろう。次回から来場しないかもしれない。

そういう状況になるのはいたしかたないことを前提として話を進める。

専門店でもブランド直営ショップでも何らかのテイストで統一されている。
フェミニンだったりセクシーだったりナチュラルカジュアルだったりというふうに。

そして、それらの店に卸売りしたいメーカーブランド側もその店に応じたテイストで統一されている。
当たり前のことである。

Aという専門店が仕入れ対象とするメーカーブランドは何百、何千と業界には存在する。
で、Aに相応しいテイストのブランドを集積したのが合同展示会の一つの側面でもある。

例えば、50ブランド集積したとしてA店は似たような見え方をしている50ブランドすべてを仕入れることはできない。
資金的にも無理だろうし、膨大な商品をストックしておく場所もない。

仮に10ブランド選ぶとして選ぶ際の基準はなんだろうか。

ブランド名が有名かどうかということがある。
しかし、全ブランドがそろって有名になることはないから、有名でなくても選ばれるブランドが中にはあるということになる。

アパレル業界の方からは反対意見があるだろうが、同テイストのブランド群から抜け出すためには、「ファッション」とか「テイスト」とか「ディティール」以外の打ち出しや見せ方が必要なのではないか。

どのブランドだってある程度、ファッション的にカッコよく見せようと努力している。
どの商品のデザインだってそれなりにカッコいい。

となると、邪道かもしれないが、ファッション要素以外の見せ方や打ち出し方で耳目を集める方が効果的ではないのかと部外者たる筆者は感じる。

例えばそれは社会貢献活動かもしれない。
またユニクロの柳井正会長のようにドラスティックな発言をマスコミに流すことかもしれない。
短パン社長のように自社の製品のことはさておき、自身のキャラクターを強烈にアピールすることかもしれない。
もしかしたら、展示会でのおもしろアトラクションかもしれない。

一つのファッションカテゴリーに同業他社は何千とあり、ひしめきあっており、それぞれがそれなりにトレンドに応じた洋服を提案しているのだから、「物」としてはほぼ同一線上に並んでいると言っても言い過ぎではない。(機能性が求められるスポーツとか肌着とかユニフォームは別として)

となると、「物」以外でのアピールが必要ではないか。

17年間合同展示会を見てきて、とくに最近強くそう思うようになった。

再建策も前途多難ではないか

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 不振続きだったJR大阪三越伊勢丹の縮小が決まった。
2013年3月度の売上高が303億円だったが、そこから客入りが改善されたとは耳にしたことがないので、2014年3月度の売上高はおそらく300億円を下回るだろう。

売り場面積5万平方メートル中、6割以上にあたる3万3000平方メートルを専門店街にする構想だという。

さて、この新専門店街も実現はなかなか難しいと感じてしまう。
なぜなら、出店によって売り場を活性化できるようなめぼしいブランド、ショップがあまり残っていないからだ。

セレクトショップでいうと、アーバンリサーチ、ビームス、ユナイテッドアローズ、トゥモローランド、エディフィス、ナノユニバース、ジャーナルスタンダード、アメリカンラグシーあたりだろう。
しかし、これらの有力セレクトショップはルクアかグランフロント大阪、もしくはその両方に出店してしまっている。
今更、ルクアの隣でグランフロント大阪の対面に位置するJR大阪三越伊勢丹ビルにも出店はできないし、する意味もない。

じゃあ、郊外型ショッピングセンターのような低価格SPA・低価格専門店を集められるかというとそれも厳しい。
対面のヨドバシカメラ梅田店にショッピングセンター向けの低価格SPAブランドが集積している。
ユニクロも大丸梅田店とヨドバシカメラ梅田店にある。無印良品はグランフロント大阪とルクアにある。

スーツカンパニーとライトオンとグローバルワークはヨドバシカメラ梅田店にある。

こう考えるとどのようなラインナップで3万3000平方メートルを埋めるのか甚だ疑問を感じる。

ルシェルブルーはルクアにあるし、近隣に複数店を出店運営するほどの企業体力はないだろう。
神戸の乱痴気という手もあるが、数年前と比べると勢いは明らかに鈍化しているし、知名度もそこまで高くないので目玉テナントということにはならないだろう。

まあ、「ドミナント戦略だよ!」と開き直ってしまえばこれらのテナントを集積することは不可能ではないだろうが、魅力ある売り場になるかというとどうにも違うと感じる。

ルクアと新専門店街を合わせた初年度売上目標は800億円だと発表されているが、ルクアと現在のJR大阪三越伊勢丹を合わせた売上高は670億円内外しかない。あと120億円強上積みすることが求められているのだが、これはちょっと実現不可能な数字ではないかと思える。

有力テナント候補が多数あれば実現に近づくことはできるだろうが、テナント候補リストを作ることすら難しいのが現状である。そこでさらに120億円の上積みはかなり難しいのではないか。

詳細はこれから詰めることになるのだろうが、再建策もなかなか前途多難ではないかというのが正直な感想である。

決め手に欠けるが・・・・

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 店頭では冬物のセール品がまだまだ残りながらも春物が立ち上がり始めている。

2014年春夏はブルージーンズに再注目という声が以前から聞こえていたが、店頭の一番目立つマネキンボディにはブルージーンズを着用させているブランドをチラホラと見かける。
マウジーはブルージーンズとGジャン、GAPもメンズ、レディースともにブルージーンズ着用。

これは本当にブルージーンズが復活するかもしれないなと感じる一方で、ジーンズに新しいシルエットや新しい加工方法は登場しておらず、今一つ目新しさはない。
掛け声倒れになる危険性がなきにしもあらずだ。

先日、某カジュアル系ブランドの社長と少しだけ雑談をしたところ、「ブルージーンズ復活という噂は耳にするが、どうも決め手というか確証が乏しいような気がする」と懸念の意見が返ってきた。
たしかにこれというデザインやディティールは浮上していないから、この社長の懸念はよく理解できる。

また先日、別のジーンズブランドの今盛夏展にお邪魔した。
咋年春夏に引き続いてカラーパンツや麻混パンツ、ショートパンツが中心だったが、レディースで久しぶりにブルージーンズを1型だけ提案していた。

理由を尋ねたところ、セレクトショップやSPAブランドからの声を反映したとのこと。

展示会なので各店の仕入れ担当者も来場している。
商談の声は筆者の耳にも自然と飛びこんでくる。

どこの店だかわからないが、一人のバイヤーがレディースのブルージーンズを見て「なんで今更?」という評価を下しているのが耳に入った。
おそらくジーンズ専門店かそれに近い業態のバイヤーだと風体から察する。

その評価を聞いていると何だかおもしろいなと感じてしまう。

本来、ブルージーンズをメインに扱うジーンズ専門店のバイヤーがブルージーンズを「今更古臭い」と評価を下し、カラーパンツや麻混スラックスなどに興味を示している。

一方、普段ブルージーンズをほとんど扱わないセレクトショップやSPAブランドが決め手に欠くとはいえ、ブルージーンズに興味を示している。反対に昨年春夏ほどカラーパンツには興味をしめしていない。

両方とも顧客層が違うのでどちらもが正しい対応なのだろう。どちらの顧客層が良いとか悪いとかではない。
しかし、「流行」というものにジーンズ専門店の顧客層はあまり敏感ではないのだろうと推測される。
そういう顧客層に正しく対応するためにジーンズ専門店の対応はワンテンポ遅れることになるのは仕方のないことといえる。

ジーンズ専門店のバイヤーが「やっぱり今はブルージーンズですよね」という時期が到来すれば、ブルージーンズ復活は本物だということになるが、そういう状況がはたして来るのかどうか。
また来たとしてもそれはもう少し先のことになるような気がする。

美術品ではなく工業製品

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 若いデザイナーやデザイナー志望の学生さん、専門学校の教員の方々と話していて「アレ?」と思うことがある。
何となく、彼らが洋服を芸術品や美術品のように認識していると感じることがあるからだ。

洋服には大きく分けてオートクチュールとプレタポルテがある。
オートクチュールは手作りによる1点物なので芸術品や美術品に近い側面がある。
「400年前の○○の茶碗」じゃないけれども、同じ物が2つと存在しないという部分は似通っている。

一方、プレタポルテは既製品と訳されるわけだから、ある程度の量産が可能な商品である。
そう、作品というよりは製品、商品である。
どんなに名前の通ったブランドであろうが、どんなに高額な商品だろうが、それは工業製品であり商品である。
例えば、レアなデニム生地で作られたレアなジーンズなる物があったとしよう。
しかし、そのレアなデニム生地とやらも最低でも1反(50メートル)は織られているわけである。
それが広幅のデニム生地だったとして、ジーンズを縫うための用尺は2メートル~2・5メートルなので、1反で20~25本のジーンズが生産されていることになる。

また既製品である限りは、縫製工場のミニマムロットをクリアにしているはずだから、例えば1型あたり100本くらいは最低でも生産されている。
中にはミニマムロットを下回ったが、縫製工場が「ちょっと厳しいですが引き受けます」と言って生産した商品もあるが、それでも40~50本程度は生産されている。

プレタポルテとしてブランドを立ち上げ、デザイナーとして活動をするなら、衣料品は「工業製品である」と認識しないとビジネスとしてはなりたたない。
これは芸術品や美術品とは対極にある量産品の世界である。

で、そういう世界がイヤだったとして、日本でオートクチュールなる世界があるのかというとほとんどない。
まだオーダーメイドの方が需要があるだろう。
しかし、オーダーメイドのデザインはベーシックであり、オートクチュールコレクションに見られるようなシルエットやデザインの独創性などは必要ない。
通常の街中やちょっとした会食にあんなオートクチュールコレクションのような物を着用していけば、仮装大会の出席者と間違えられてしまう。

なるほどオートクチュールの技術伝承は必要であるが、国内の衣料品業界で若者が職を得たいのなら、プレタポルテの仕組みを学ぶことの方が重要になる。デザイン画やパターンの作成を学ぶことが無駄だとは思わないが、経費管理や市場の調査と分析、プロモーション手法、生産背景に対する知識などに比重を置いて学ぶ必要がある。

この辺りを変えることができないと、ファッション専門学校はいつまで経っても洋裁教室の域を大きく超えられないだろう。
しかし、残念ながらファッション専門学校に通う生徒さんの多くは、経費管理とか市場の分析、プロモーションなんてことにあまり興味を持たれていないのが現状である。


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