南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2013年09月

道は険しい

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 生地メーカー、染色・加工場、縫製業などの製造業が、自社オリジナル製品を立ち上げるケースが増えている。
それは歓迎すべきことなのだが、残念ながらこれまでの自社の仕事のやり方のままで臨んでいることが多く、今のままでは成功はおぼつかない。


先日、某先輩から聞いたが、某縫製業者がOEM企業と組んでオリジナルでレディースウエアのブランドを立ち上げたという。
開始する前は、社内で大いに盛り上がっていたそうだが、合同展示会に出展したところ受注が一件もなく、酷く落ち込んだそうだ。何件かには自作のカタログを手渡したそうだが、満足に名刺交換もしなかったので、渡した先の連絡先もわからないままである、とも。


いろいろな意味で取り組む姿勢が間違っている。
まず、合同展示会に出展するのは構わない。しかし、この衣料品不況の状況下で、ポッと出の新ブランドを仕入れようかという小売店がどこにあるのだろうか。
洋服ブランドなど世の中には掃いて捨てるほどある。
いわゆる実績のある人気ブランドだって掃いて捨てるほどある。
そういう中で、わざわざ海の物とも山の物とも知れない新ブランドを仕入れる小売店があるはずがない。

次にカタログを渡した先と名刺交換していないことが問題である。
合同展示会で1000枚の名刺を集めたところで実際の取り引きに結びつくのは1%程度だろう。
展示会に手なれたブランドですら、必死で名刺集めをしているのに、まったくのルーキーが名刺すら交換しないことはどういうことだろうか。


この話にはさらに続きがあって、リベンジを果たすために小規模合同展示会への出展を模索中だという。
しかし、彼らは、その小規模合同展示会に出展するメンバーを調べていない。
これも考え方が間違っている。レディースウエアはテイストが細分化されており、あまりにかけ離れたテイストのブランド同士が同時に出展しても、小売店は自店に合ったテイストのブランドのみを仕入れて、違うテイストのブランドには見向きもしない。
例えば、ナチュラルテイストのブランドが、セクシーカジュアル系ブランドばかりが集まった合同展示会に出展したところでまるで意味がない。


そもそもオカシイのが、ブランドを立ち上げる際に、ターゲットとなる売り場を設定してないことである。
実現するかどうかは別にして「ビームスに卸したいなあ」とか「ユナイテッドアローズと取り引きしたいなあ」というターゲット設定をして、それに合うようにブランドのテイストや商品構成を考えるのが通常である。
そういう設定をしていてもなかなか取り引き先に恵まれないのに、何の設定もしていないブランドなど売れるはずもない。


こういう事例を見ると、製造業者が自社ブランドをそれなりに成功させるのは至難の業だと思える。


個人的に不思議なのが、この業者は新人ばかりが集まったユニットではないというところである。
メンバーは40代・50代らしいのだが、カタログを渡した相手と名刺交換するというようなことは、ビジネスの基本中の基本であり、その年代のメンバーがどうしてそれができないのだろうか。

また、彼らも縫製業などでレディースアパレルに携わっているわけで、40代・50代になるまでの期間の耳学問もあるだろうから、どうして20代の新人のような考え方をしているのかも疑問である。


逆に言えば、多くの製造業者はこういう考え方のままでオリジナル製品化、オリジナルブランド作りに取り組んでいるのだろう。製造業者の考え方や意識を変えないことには、ほとんどの取り組みが徒労に終わり、負債が残るだけの結果になってしまうだろう。

そんなにお手軽にはできません

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 生地を販売するよりも製品化して販売した方が利益を取りやすい。と言われる。
デザイン、縫製などにコストはかかるものの、その通りなので、昨今は生地メーカーや染色工場などがオリジナルの製品を開発する。

一番取り組みやすいのはストールだが、ここではストールについて繰り返さない。
その他はバッグや雑貨類が多く、衣料は比較的少ない。

そういう製造工場のオリジナル製品だが、大きく2つに別れる。
1つはキチンとデザインされた物、もう1つはデザイン的にアレな物。
キチンとデザインされた物の多くは、デザイナーなり企画担当者が携わっており、デザイン的にアレな物は工場の社長あたりが自分の感性で製造している場合が多い。

先日、製品の企画・製造・販売に乗り出した生地関係の会社のサイトを拝見した。
その会社の経営者は生地販売よりも製品販売を強化したいとおっしゃっていたのだが、デザイン的にはかなりアレな感じで、売れるとは到底思えない。
その割にはやたらと型数があり、その自信はどこから来るのか理解に苦しむ。
自信がないからこそ「下手な鉄砲も・・・・・」でやたらと型数を増やしているのかもしれない。

おそらく、企画デザインは経営者あたりがやらかしておられるのだと思われる。

正直申し上げると、この企業の取り扱う生地はすごく良いので、製品販売はお遊びやサンプル程度にチャレンジされて、生地販売に注力する方が良いと思う。
もしくは製品のデザインをデザイナーや企画会社に有料で依頼されるかである。


それにしても、製造業者の「安易」な物作りは後を絶たない。
某産地のオジサマ方が「自分らの感性でデザインすればええねん」と気炎を上げていらっしゃっと聞くが、そんなにお手軽にデザインできるのであれば、世間のアパレル企業は苦労しないだろう。


産地企業のソフト力への無頓着は相変わらずである。
デザイン、広報宣伝、コーディネートなどなどは無料で当然と考えている産地企業は多い。
例えば、某生地産地の総合展示会では、製品のサンプルを展示するにあたって、デザインを専門学校生に依頼する。理由は無料だからである。
プロに依頼した場合は、当たり前だが幾ばくかの費用が発生してしまう。

また某産地で最近、新製品が開発され、広報活動の甲斐もあって有名雑誌に4ページに渡って記事掲載され、表紙にもその商品が掲載されたが、担当者は社内であまり評価されていないと聞く。
もちろん、広告出稿ではなく、純粋に取材記事であるから掲載料は無料である。
おそらく、優に1000万円分くらいの広告価値があったと考えられる。

悲しいかな、これが産地製造業の現実である。

ソフト力に関して、身の丈に合わないほどの投資をする必要はもちろんない。
しかし、まともな製品を企画製造するなら、デザインその他のソフト力は不可欠である。
いくらコスト削減とはいえ、製品のデザインまでもを工場のオジサマがやらかしているようでは「売れる商品」なんて到底できっこない。

自らの価値を棄損している

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 近頃、国内の生地産地でも製造ロットが小さくなり、中には「1反からでもオリジナル柄を織ってあげるよ」という生地メーカーもチラホラと見かけるようになってきた。

ビジネス規模の小さい独立系デザイナーにはうれしい限りではないだろうか。

しかし、中にはデザイナーと取り組んで完成したオリジナル柄を、勝手に色合いを変えて、デザイナー版よりも安価に販売するという生地メーカーも存在する。

例えば、デザイナーが赤×黄色×紫のチェック柄をオリジナルとして作ったとする。
それが完成すると、この生地メーカーは無許可でまったく同じチェック柄をピンク×グリーン×ブルーで作って、それを安価な量販店価格で販売してしまう。
性質が悪いことに、それが「商才」だと思っている節があり、勘違いも甚だしいと言わざるを得ない。

そんなものは「商才」でも何でもなく、単なる劣化コピーの安売り屋である。

まともに「商才」のある生地メーカーなら、同じ柄の色違いなんて物を無許可には作らないだろうし、それを廉価で投げ売ることもない。
もし、色違いで作りたい場合は、せめてデザイナーに一声かけるだろうし、その生地を廉価で投げ売りはしない。

まともなオリジナルの色柄が作りたければ、デザイナーと正式に幾ばくかの金銭で契約を結ぶべきだろう。
この生地メーカーはソフト開発を甘く見ており、ひいては納入先から自身のソフト力も低く見られているということに気が付いていない。

こんな生地メーカーばかりとは言わないが、この手の生地メーカーが各産地内に存在するのもまた事実である。

そういえば、先日こんなこともあった。
また違う産地のことなのだが、仮にAという生地メーカーが、同産地内のBという生地メーカーに生地を卸売りした。
いわゆる仲間卸である。
例えばその際、1メートル800円で卸売ったと仮定しよう。

ところが、そのA社は何を思ったのか、ちがうお客であるCに同じ生地を1メートル600円で販売してしまった。

しかしCはBからも同じ生地を購入しており、しかもその値段は1メートル1000円である。

当然CはBにもAにも抗議したわけだが、まったくもってA社の商道徳には疑問を感じる。
Cに直接販売するのであれば、せめてB社への卸価格と同じにすべきである。これはA社の信用を自らが棄損している行為だといえる。

このA社も先に挙げた劣化コピーの投げ売り屋も根本的な考え方が間違っているといえるが、本人たちはその間違いに気が付いていない。なんともはや・・・・・・・である。


ここ数年来、地場産業や日本産という切り口が注目されており、あちこちの売り場で「地場産フェア」や「日本産フェア」が毎週のように開催されている。
この降って湧いたようなブームが手放しで良いとは思えないが、この手の産地企業が各産地にそれなりの数存在するということは、現在のブームにも水を指すことになるし、さらには消費者の物作り企業への信頼感も損ねることになる。

ストール市場は飽和しつつあるのでは?

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 24日が最終日ということで、難波の高島屋大阪店に出かけた。
若手デザイナーブランドを集めた「New Creators meet Takashimaya」を見るためである。

めでたく、目当てのデザイナー氏にはお会いできた。

で、帰りがけにエスカレーターを下っていたら、京友禅の老舗がオリジナルストールの期間限定販売会を行っていた。

実は先日、某企業の依頼で、ストール市場に関するレポートを書いた。

ストールというアイテムが看板になっている有名ブランドはあまりない。
一方、産地を拠点とする生地製造工場や、高島屋で見かけたような和装業者がストールというアイテムに参入するケースはこの数年増えている。

極言するとストールを看板とするブランドはほとんどが産地企業か和装企業であるといえる。

これは何故かというと、ストールというアイテムには複雑な型紙は必要ない。
生地を細く裁断してからほつれないように四方を縫製するだけで完成する。
生地の風合いと色柄のみで勝負できる要素が多いから生地メーカーや和装業者にとっては、オリジナル企画に挑戦しやすい。
一時期、西陣の業者が盛んにネクタイに参入したのと同様の理由である。

しかし、産地企業や和装業者が見落としがちなのは、生地の風合いと色柄のみだけでは売れないという点である。
全長を180センチにするのか、150センチにするのか、120センチにするのか、はたまた2メートルにするのか。
フリンジを付けるのか付けないのか。そのフリンジの長さは1個あたり5センチなのか3センチなのか。
というディティールが売れ行きの勝敗を分ける。
産地企業や和装業者はこのディティールを企画することを苦手としている。


それはさておき。


レポートの内容には、産地企業と和装業者の相次ぐ参入によりストール市場は飽和しつつあることを書いた。また、ストールというアイテムはトータルブランドやセレクトショップも多く扱うようになっており、そういう総合的なショップやブランドで買うことが増えており、ストール単体で超有名なブランドはほとんど存在しないことを指摘しておいた。


筆者にレポートを依頼した企業は、そこで、「ファッションを切り口としたストール開発を後発組である弊社が手掛けても仕方が無い。同じストールでも機能性に代表されるようなファッション以外の切り口で取り組んだ方が良い」との結論に達した。筆者はこの意見には賛成である。


それにしても、産地企業と和装業者によるストール参入はまだまだ終わりそうにない。
しかし、一口にストールと言っても、無印良品には2000~3000円くらいの価格でそこそこに見た目の良いストールが販売されている。オリヒカだって、ユニクロだって、ビームスだってストールを販売している。
1000~数千円程度でそれなりの表情のストールがふんだんに手に入るご時世に、産地企業や和装業者が製造した1万円オーバーのストールがそれほど売れるとは思えない。

一部の産地企業や和装業者がストールという新アイテムに着手し始めたという状態ならそれでも売れたかもしれないが、これだけ産地企業・和装業者の手掛けるストールが増えてしまうと、過当競争に陥ってしまう。
そういう凝った高価なストールが欲しい層は一定数存在するだろうが、それはあくまでも少数派である。
大多数の一般大衆は無印良品とかビームスとかのストールで十分満足するわけである。

少数派と目される消費者を多数の産地企業・和装業者が奪い合うというのが今の状況ではないか。


ましてや昨年までのストールブームは一旦落ち着きを見せている。
代わりにセーターの肩かけスタイルがトレンドに浮上している。セーターを肩にかければ首元にストールを巻くことはない。セーターの肩かけとストールは並立できない宿命にある。


もともとの市場規模が小さい上にトレンドが落ち着いたのに、参入企業数ばかりが増えているのが今の産地・和装系ストールブランドである。


ストール製造を先行していた産地・和装系の企業はそろそろ次の商材開発を積極的に進めるべきではないか。すでにストール市場はレッドオーシャンになってしまっている。
よほど上手くブランディングをしないと産地・和装系の高額ストールという分野では生き残れないだろう。

お役立ち情報の提供は効果的

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 昨日までの6日間、阪急百貨店うめだ本店10階で生地の切り売り販売会「テキスタイル・マルシェ」を開催させてもらった。阪急での開催はこれで3回目となり、12月に4回目を開催する計画だが、詳細はこれから決めることになる。

6日間のほとんど、売り場に立っていた感想をいうと、百貨店の売り上げ不振の原因の一つは整然としすぎた売り場作りではないかと思える。整然としすぎるとお客の印象に残りにくい。

百貨店は手書きPOPを原則認めていない。
しかし、マネキンボディやハンガーラックのみのディスプレイをいくら工夫したところで、お客の関心を引くのは難しい。手書きPOPが一番手軽に実行できるのだが、禁止されているとなるとほかのことを考えないといけない。
売り場を観察していると「音」や「映像」「動画」などはやりすぎない限り禁止されていないようだ。
その中でも「音」は一番有効かもしれないが、他テナントに迷惑がかかることも多いので、少し使いにくい。

以前に百貨店と手書きPOPのことを書いたら、シナジープランニングの坂口昌章さんから
「昔、百貨店は手書きPOPを許可していたが、各テナントが手書きPOPを乱発したため売り場が汚くなって禁止した背景がある」とのご指摘をいただいた。
何事にもメリットとデメリットは表裏一体で存在するものである。


反対に現在の売り場は整いすぎて逆効果になっていると感じられる。


今回、メガネフレームのアセテート素材をアクセサリーに流用した「ディロッカ」に出展をいただいた。
通常、メガネフレームを「セルロイド」だと認識していらっしゃる方が多い。恥ずかしながら筆者もその一人だ。
ところが最近は発火点が低くて危険なセルロイドよりも、発火しにくいアセテートがメガネフレームの主流となっているそうだ。
そして、アセテートはなんと「綿」から出来ている。

綿(cotton)である。

綿花を砕いてパウダー状にして、それを固めて着色して板状にするのだそうだ。
その板からメガネフレームを切りだすわけである。

筆者はあの素材が綿花から生まれているとはまったく知らなかった。おそらく多くの方が知らないのだろうと想像する。
売り場で綿花からできていることを説明すると驚くお客が多かったことが印象に残っている。

そこで今回はこんな手書きPOPを作って展示してみると、なかなか反応が良かった。
前半の3日間撤去されなかったということは百貨店のお目こぼしもあったのかもしれない。(笑)

IMG_3945


(お客にお役立ち情報を提供したPOP)


これは筆者が指導して作らせたのではなく、他のスタッフが自分で工夫したのだが、なかなかうまくできている。
このPOPを見たお客が何人か、アセテートを曲げて作るブレスレットのワークショップを希望したからそれなりに効果があったといえる。

写真



(綿花から作られたアセテートを曲げた「ディロッカ」のブレスレット)



筆者は汚くならない程度の手書きPOPは百貨店でももっと活用すれば良いのではないかと考えているが、先に挙げた坂口さんの指摘が事実であるなら、その方針を転換するのはちょっと難しそうだと感じる。


こういう「知っていましたか?」というお役立ち情報を提供してお客の関心を惹くPOPはかなり上手な部類に入るし、これを見たお客も「売り込まれている」とは感じないから素直に販売員に質問できる。

POPというと「○○%オフ」とか「セール!」とか「激安!」とかいうような一言のみの物を連想しがちだが、あの類のPOPはあまり効果はない。手書きでなくても売り場は汚く見えるし、「セール」とか「激安」なんて一言をお客に提示したところで、セールも激安品も巷に氾濫している現在の状況では、お客はそこに関心を寄せることは少ない。ましてや「Tシャツ1990円」なんて商品名と価格のみのPOPなんてほとんど意味が無い。


アパレル・ファッションブランドはこの20年間で卸売り業態から直営店業態へと大きく移行してきた。
しかし、POPの扱いにかけては20年前とさほど変わっておらず、多くのブランドが効果のないPOPを掲げ続けて現在に至っている。
業界はもう少しPOPの製作手法を真剣に学んでみても良いのではないだろうか。


(*親切な読者から、アセテートは木材パルプ(セルロース)を原料にしており、綿花・綿の木のみを原料にしているわけではないとのお知らせがあった。ディロッカが原料としているマツケリー社のアセテートが綿花を原料にしているとしても、他のアセテートも綿花が原料とは限らない。アセテートという素材自体はセルロース系繊維であることを付け加えておきたい)





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