南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2013年07月

「個」を出す必要がある

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 最近、気になっているのがかつて業界をリードした某大手総合アパレルがちっとも話題に上らないことである。
一応、新ブランド開始とかそういうニュースは報道されるのだが、その後、継続して話題になることがない。

人によっては「マスコミや報道関係は某社を軽視しすぎ」とか、「報道側が某社の実力を測り損ねている」という分析をしておられるのだが、個人的にはあながちマスコミだけのせいではないと感じる。

個人的にはその某社からは個人の顔がさっぱり見えないことが原因の一つではないかと考えている。

ユニクロというと好き嫌いは別としてあの会長の顔や声が否応なく思い浮かぶ。

ツイッターやフェイスブックなどのSNS上で、所属する個人が、もしくは広報担当者が単なる告知ではない発信を続けているブランドやアパレルも多い。そういうブランドやアパレルは例え規模が小さくてもそれなりに存在感を発揮しているが、近年の某社は企業規模の割には存在感がない。
ちなみに某社社員もSNS上に何人か存在するのは確認しているが、ここ1年くらいはほとんど目立った発言がない。


たびたび、例に挙げるレディースニットブランド「フラムクリップ」を展開するピーアイなどは、商品とかブランド名とかはほとんど印象に残っておらず、ただただ短パン社長のみが強烈な存在感を発揮している。
しかし、極言してしまえば、アパレルの商品なんてどれも似たりよったりで、商品で特徴をアピールしようとするとよほど特異なデザインやコーディネイトを提案する必要がある。
そういう特異なデザイン商品が広く売れるかというとそうでもない。

それよりは短パン社長の存在感を強烈にアピールする方が得策だという判断もできる。
賛否両論はあろうが、知られないよりはどんな形でも良いので知られた方がずっとマシである。

さて、先日、日経ビジネスオンラインでこんな記事を拝読した。


メルマガは最低の“ゴミ”マーケティングだ!
CRMを大成功させる仕組みを考える(前編)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130724/251495/?P=1


ちゃんと全文を読むとわかるのだが、別にメルマガがゴミだと言っているわけではなく、ゴミみたいなメルマガが多いと指摘している内容である。

で、どのようなメルマガなら読まれやすいかという結論もキチンと示されている。


送信者名や件名と同様、人間性を演出した普通っぽい外見と性格のメールであれば、ズバリ、友人や取引先から来る普通のメールに溶け込むことができ、必ず読んでもらえる。

というわけで、こうすれば第一印象で「“見た目”の良いメール」になる!

 ○ 絵文字や装飾文字を多用しない。

 ○ URLの貼り付けはせいぜい1~2箇所。

 ○ お客様が見込み客になった時の商品のみの購入をオススメ。

 次に、こうすれば第一印象で「“性格”の良いメール」になる!

○ 冒頭で個人名を名乗っている。

⇒(例)□□さま、こんにちは。
今後、□□さまをご担当させていただきます、株式会社○○の山田花子と申します。

○ 単語の羅列ではなく、筆者の言葉で記述されている。

⇒(例)先日は、△△にお申し込みいただきありがとうございました!

○ 顧客の個人名も文中に記述されている。

⇒(例)山田自身も半年前から愛用している商品なので、
□□さまにも気に入っていただければうれしいです!

○ 用件以外の話題もあり、人間性が伝わってくる。

⇒(例)先日、前から気になっていた代官山のカフェに入ったとき……


とのことである。

結局、単に宣伝文句を業務的に羅列したようなメルマガは読まれずにゴミ箱に入れられるが、担当者の人間性を演出したメルマガは読まれる確率が高くなるというわけである。


これって、結局、個人の顔が見えやすいかそうでないかということではないだろうか。
その個人の顔が例え巧みに演出されたものだったとしてもだ。

企業やブランドが告知を行うツールとしてSNSやブログ、メルマガがある。
そのやり方について質問を受けることがあるのだが、筆者は「なるべく個人の主観が見えるようにする方が良いんじゃないですか」とアドバイスしている。
個人の主観といっても、犯罪自慢をしたりすることではなく、上のメルマガの書き方で挙げられているような内容である。


短パン社長がSNSやブログで常々主張しているように、「個」を出すというのが企業やブランドにとっても極めて重要ではないかと感じた次第だ。

大衆との激しい乖離

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 関西圏というローカルな土地を話題にして恐縮だが、この夏もご多分にもれず大阪市内は暑い。
先週は35度前後という猛暑が続き、一段落したら気温はそこまで高くはないが、70%を越える高い湿度で何とも不快な日が続いている。

そういう状況で外回りをしていると、筆者が汗かきということもあるが、水を被ったようにびっしょりになってしまう。
Tシャツの2枚がさねとか、ポロシャツ1枚だとかの格好が多いので、まだ汗の吸収は助かっているが、こんな気候下で肌着なしにワイシャツを着ていたら悲惨なことになるだろうなと想像していると、先日、日経ビジネスオンラインにこんな記事が掲載された。


結局、ワイシャツの下は何を着ればいいのか
宮崎俊一・松屋銀座紳士服バイヤーに聞く
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130723/251444/


紳士服のバイヤーとして名高い方であるが、もちろん面識はない。

このインタビューを読んだ感想は、純粋にファッション論としては面白いが、世のビジネスマンに対する着こなし指南としてはあまり適切ではないなあというものである。

基本的に「イタリアでは~」「欧米では~」とおっしゃっておられるが、世のビジネスマンの大半が活躍する場所は残念ながらイタリアでも欧米でもなく、日本である。
日本の気候はイタリアとも欧米とも異なる。
このファッション論を活用できるビジネスマンがいるとするなら、内勤の方か、そこそこの大手以上の役員クラスの方ではないかと思う。外回り業務をメインにする方が活用するととんでもないことになる。


ちょっと長くなるが気になった個所を抜粋引用する。
興味のある方は全文をお読みいただきたい。

宮崎:半袖シャツを全否定するわけではないし、松屋銀座でも半袖をご用意してはいる。ただし、これは積極的な提案ではない。できればスーツやシャツの素材を工夫して、夏場でもきちんとしたドレスコードに則ったビジネススタイルをしていただきたいというのが本音です。

 理由はいくつもあります。まず、日本国内ではよくても、国際社会、特に欧州では、ルール違反の格好をしていると、それだけで「交渉すべき価値ある相手」と見なされないことが多い。半袖・ノーネクタイで欧州の要人を空港で迎えでもしたら相手は「馬鹿にしているのか」と立腹しかねません。


はあ、なるほど。
しかし、一般のビジネスマンは欧州の要人を空港では出迎えないし、逆に「欧州でも役員クラスか銀行員以外は暑い夏は半袖シャツを着用している」というコラムもある。
個人的にはこの記事を鵜呑みにはできない。

彼はこのあと、上着を着用することを前提に半袖シャツの不利と不機能を説くのだが、そもそもクールビズは「冷房設定温度を高めに保つため、暑すぎないように上着着用を止めましょう」という主旨である。
なぜ、上着着用が前提で話が進むのか理解に苦しむ。

続けて

欧米はもちろん新興国でも、国や経済を動かしている層は例外なく国際的なファッションルールを守っている。

という一節があるのだが、新興国とはどのあたりを指しているのか漠然としすぎているが、中国南方や香港、台湾は大企業になればなるほど、オフィス内の冷房温度は低い。
日本が推奨している「28度設定」なんぞはアホらしくて比較にならないほど低い。
おそらく20度弱にまで下げている。そういう空間の中なら長袖シャツも楽々と着用できるし、反対にジャケットを着用しなければ寒くて体調を崩す。
日本のオフィス環境とは比較する前提条件が異なりすぎる。

で、ここからようやく本題のワイシャツの下に何を着れば良いかという話題になる。

宮崎:対策の1つは、白いワイシャツの下に着ても透けにくい「ステルスカラー」の肌着を着ることでしょう。ただ、国際的な基準では、ビジネスシャツは下着として扱われており、例えば欧州では、ビジネスで着るシャツの下にアンダーウェアを着る人はほとんどいません。下着の重ね着になるからです。個人的にも、シャツの下は何も着ないのが正解だと思う。

えーと、典型的な「オウベイガー」でまったく賛同できないが、唯一最初の部分だけは賛同である。
ステルスカラーの肌着着用である。一般的にベージュの肌着がもっとも透けにくいとされるが、筆者が試してみた範囲ではライトグレーの肌着もベージュに次いで透けにくい。

で、それ以降はお話にならない。勝手にやっていてください。

さらに最後の部分はもっと驚く。

宮崎:実は私自身、「シャツの下から男性の乳首や胸毛が透けることを不快に思う人が増えている」という話を最近になってメディアなどで知り、戸惑っているところです。私のようにイタリアでファッションの基礎を学んだ者にとっては、これは難題です。というのもイタリアでは、胸毛が透けて嫌がれることはありません。むしろ逆で、男性の中にはわざわざ植毛して目立たせようする人すらいる。同様に、「乳首透け問題」など最初から存在しないんです。

はあ、そうですか。勝手に乳首でも胸毛でもスケスケにしていてください。

ビジネスマンとしては半袖シャツ着用よりも乳首&胸毛スケスケの方がはるかに相手に不快感を与えると思う。
イタリアでは嫌がられないかもしれないが、胸毛をモロ見せするのは日本では女性だけでなく、同じ男性でも好まれてはいない。

結論から言うとこの人は日本ではなく、イタリアで働くべきではないかと感じられてならない。

こういう「大衆の感覚を理解できない人」が品ぞろえを行い、着こなしを提案しているから、「大衆向け」販路である百貨店が不振なのではないだろうか。


さらにいうと、こういう「イタリアガー」とか「オウベイガー」と声高に主張する人がファッション業界の主流を占めているから、「ファッションはめんどくさい」「あんな着こなしは真似できないし、真似したくもない」という気持ちを世の男性に抱かせ、ファッション販売店(もちろん百貨店も含む)から遠ざけているのではないだろうか。

クールビズが進められ、定着しつつある現在において、ファッションの専門家(自称も含む)が行うべきことは、「イタリアでは」とか「欧米では」という着こなしを押し付けるのではなく、かっこ良く、それでいて涼しいクールビズの着こなしを大衆に提案することではないのか。

筆者は過度な欧米準拠派が却って、日本人男性のファッションを阻害していると感じるが、皆さんはいかがお考えだろうか。

卸売りメーカーでもPOPを活用できる

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 品名と価格、素材名しか書いていないPOPは使い物にならない。
例えば「Tシャツ1990円」とか「シルクブラウス3990円」みたいなPOPのことだ。
衣料品店はいまだにこの手のPOPが主流だが、書店、ドラッグストア、飲食店、食料品店ではもっと「読ませる」POPが多数存在し、それが売上高の多寡を左右しているのは周知の事実である。

POPの書き方のちょうど良い実例を見つけたのでご紹介したい。

朝から食べたくないトムヤムクン
http://ameblo.jp/ex-ma11091520sukotto/entry-11574811007.html

ホテルの朝食バイキング。
洋食のコーナーにスープが3種類並んでいました。

ビシソワーズ
トムヤムクン
コーンスープ


ただスープの名前を書いたものしか置いていませんでした。
そうすると、「コーンスープ」だけが先になくなります。

とある。
これは至極当然で、大多数の日本人にとって、トムヤムクンやビシソワーズの知名度は近年高まってきたとはいえ、いまだにコーンスープの認知度がもっとも高い。

そこで3種類のスープそれぞれに次のようなPOPを付けたという。

ビシソワーズ

昔、NY在住のフレンチシェフが考案。
冷たいジャガイモのスープです。
少し胃もたれしている朝には最適のスープです。
熱々のトーストとバター。これに相性ばっちり!


トムヤムクン

ご存じ 東南アジア発 酸味の効いた辛口スープ。
朝からちょっと・・・いえいえ。
朝から「香辛料」で基礎代謝を高める「メタボ対策」。
アリですよ。朝カレーのお供にぜひ!


コーンスープ

定番です!
でもね、当店のコーンスープはこだわりがあります。
北海道のホワイトコーンを使い砂糖は一切除外!
自然の甘みで勝負です!!
甘ったるいのはちょっと・・・そんなあなたに選んでほしい。


これによって3種類とも平均的に食べられるようになったという。
コーンスープほど知名度が高くないビシソワーズ、トムヤムクンにはどんな効果があるのかとか、どんな特徴があるのかということをしっかりと説明する必要がある。

そういうことである。

これは何も飲食店だけに利用できる技法ではあるまい。
衣料品店だって使える技法だし、衣料品の卸売りメーカーや生地メーカーだって使える。

例えば、衣料品の卸売りメーカーや生地メーカーならこういうPOPを展示会の際に付けると効果がある。
展示会には多くの取り引き先が来場するため、営業担当者の人手が足りずに、来場者を待たせてしまうことがある。その際、生地や商品について説明が書かれたPOPを付けていれば、待っている来場者はそれを読みながら時間をつぶすことができるし、POPを読んでいる間に商品により一層の興味を持つかもしれない。

「うちの商品は見てもらえればわかりますよ」というメーカーもあるが、見ただけで分かってくれるような取り引き先はそれほど存在しないだろう。
見て分からないなら説明すれば良い。

先ほどのブログにはPOPの写真がある。
手書きでちょっと不格好だが、もっときれいに書くこともできるだろうし、きれいな書体で印刷することも可能だ。要はやるかやらないかである。


製品メーカーや生地メーカーの展示会に行くと「新製品」とのみ書かれたPOPが付いていることがある。
まあ、ないよりはあった方が効果的なのだが、それでもただ単に「新製品」とだけ言われても来場者はそこまで興味を持つだろうか。
「新製品」というPOPともう一つ、特徴を説明したPOPも欲しいところである。

小売店がPOPを重視することはもちろんだが、卸売り主体のメーカーでも本当はPOPを活用すべきである。

人気復活まで何社が生き残れるか

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 先日、ジーンズブランドの展示会にお邪魔した。
その際、話題となったのは「洗い加工人気は復活しますかね?」ということだった。

ジーンズの現在の潮流を蛇足ながら説明すると、
2008年からジーンズの売れ行きは鈍い。
メンズはチノパン、カーゴパンツに、レディースはレギンス、タイツ、ワンピースなどが支持された。
これが2012年まで続いている。

今春夏は、メンズ・レディースともにカラーパンツ、白パンツが人気だ。
レディースでは花柄パンツが盛り上がり、メンズもややアレンジを変えた渋めの花柄パンツがぼちぼちと動いている。

この5年間はジーンズが非トレンドアイテム化している。
そうは言っても、ジーンズの売れ行きがまるっきりゼロになったわけではない。
比較的動きが良いのは、色落ちしていない濃紺のノンウォッシュ、ワンウォッシュだ。
どうやら濃紺のカラーパンツの1種として捉えられているようだ。

もっとも動きが鈍いのが、ヒゲやアタリ感満載のいわゆる、中古風加工のジーンズである。
かつてのビンテージ人気はこの洗い加工が消費をけん引していたのだから、物事の移り変わりには驚かされるばかりだ。まさに諸行無常である。

さて、今春夏は40代以上の消費者にとってはいささか懐かしいファッションがさまざまリバイバルしている。
セーター・カーディガンの肩かけ、クラッチバッグ、ローファー類(モカシン、ビットローファーなど含む)が復活している。
どれもバブル期の80年代に流行したファッションで30年ぶりの復活だ。

ほんの3年ほど前までは、「バブルオヤジwwwww」と揶揄される対象だったルックスである。
3年前に「ダサwwwwwwwww」と言われたルックスが今春人気となるのだから、これもまさに諸行無常だ。


このように見てくると、ファッションは必ず何年かおきにリバイバルする。
さすがに悪評高かったバブルファッションは復活までに30年もの歳月が必要だったが、通常10年前後で復活する場合が多い。

と考えると、ジーンズの洗い加工も数年後には復活するのではないか。
洗い加工ジーンズが非トレンド化してすでに5年以上が経過しているからだ。

ただ、あと数年、国内の洗い加工場が持ちこたえられるかどうかはわからない。
昨年末にも児島の大手洗い加工場、吉田染工が倒産したばかりである。
待てば必ず洗い加工人気は復活するだろうが、そこまで持ちこたえられる洗い加工場が一体何社あるのだろうか。

次に洗い加工が人気を博する時まで、なんとか1社でも多く持ちこたえてもらいたいと思う。

百貨店の来場者は本当にPOPを読まないの?

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 原則的に百貨店はPOPが禁止である。
POPというのは正式にはPoint of purchase と呼ばれる。

このブログにもたびたび引用させていただいているシナジープランニングの坂口昌章さんによると、「昔(おそらく30年以上前)は百貨店も盛んにPOPを使っていたが、あまりに売り場が汚くなったので禁止になった」という。

30年以上前の百貨店の売り場を43歳の筆者は覚えているはずもなく、ましてやPOPがあったかどうかも定かではない。

しかし、百貨店以外の販路では近年POPはかなり重視され、書店や食料品店、ドラッグストアではPOPの書き方一つで商品の売れ行きが変わると言われていることも事実である。

さて、先日、百貨店で期間限定販売を経験した産地企業にお邪魔した。
百貨店で販売会を行うぐらいなので、自社の生地を活かした商品開発を行っているが、そちらの出来栄えは今後さらなるブラッシュアップが求められる。

この産地企業によると百貨店側は「POPは必要ないです。なぜなら誰も読みませんから」とかなり強硬に指導されたという。この企業は東京、関西、中部と百貨店をラウンドしたのだが、東京の百貨店では「見ているお客様に声をかけても逆効果です。お客様が質問されてから説明を開始した方が、喜ばれますし、効果的です」とも指導されたという。

果たしてこの百貨店側の認識は正しいのだろうか?

「見ているお客に声をかけても効果がなく、尋ねてきたお客には全力で説明する」というスタイルを東京の消費者は喜ぶのかもしれない。筆者は東京の百貨店で販売をしたことがないのでこのあたりの呼吸はわからない。
ちなみに関西の消費者は、見ているときに一声かけられるのを喜ぶ傾向が強いように感じる。
これは販売を経験した阪急百貨店うめだ本店でも同じだった。

筆者が疑問を感じるのは「POPなんて誰も読まないので必要ないです」という姿勢である。
書店や食料品店、ドラッグストアでPOPが効果を発揮しているのは、公然たる事実である。
そのような事例をまとめた本も何冊も出版されている。
雑貨関係の販売店や飲食店でも効果を発揮している。

そのような店舗を利用する消費者と百貨店に足を運ぶ消費者は完全にちがう層なのだろうか。
欧米諸国のように社会的階層がはっきりと別れており、上流階級と下層階級で利用する店舗が異なるということが現代の日本であるのだろうか。

筆者はそうは思わない。
百貨店に足を運ぶ消費者の大部分は、POP一つで売れ行きが伸びる書店や食料品店、ドラッグストアを利用する層とも重なる。
それこそ、マーケティングのセミナーでも良く言われたように「ルイ・ヴィトンを買いながら、ユニクロも愛用する」のが日本の消費者だ。
その消費者がどうして、百貨店に来た時だけPOPを読まなくなるのだろうか?
まったく理解できない発想である。

「POPなんてうちの顧客様は読みませんよ~」と決めつけるのは百貨店側の錯覚ないし思い上がりではないのか。

産地企業が作る商品の多くは生地や糸に大きな特徴があるが、一見しただけではそれはわからない。
POPが無い状態で、(自称)プロが生地をつまんで擦り合わせてみたところで、実際に生地の特性が分かる人はごく一部だろう。シナジープランニングの坂口さんのお言葉を借りれば「わかったような顔をして指を擦り合わせているだけ」ということになる。

さて、一年ほど前、POPの書き方の面白さに定評のある某レディースニットブランドが、大阪の某百貨店で期間限定販売を行ったことがある。
結果的にいうと、ほとんど売れなかった。

原因の一つとしては閑散としていることで有名な某百貨店なので入場客数自体が少なく、階層が上の催事場にまでたどり着くお客はさらに少なかったということは挙げられる。
しかし、POPを禁止されたのも惨敗の理由の一つではないか。

なぜなら、このブランドの商品自体は見た目が極めて普通である。
POPの面白さがなければ、魅力は半減してしまう。
値段はそれほど安くない。1万数千円以上はするだろう。
ブランドの知名度はそれほど高くない。どちらかというと新興ブランドに近い。


1万数千円以上の価格で、見た目が極めて普通で、ブランド知名度が高くないニットが黙っていて売れるだろうか。
筆者は絶対に売れないと思う。

見た目が極めて普通のニットならユニクロや無印良品で十分だ。
そちらの方がお安いし、品質も粗悪ではない。値段の割には上質である。

で、このブランドが人気を博しつつあるのはPOPの面白さである。
その一番の「売り」を禁止してしまえば、百貨店自体の閑散度合いも手伝って、売り上げが惨敗するのは当然の結果といえる。


百貨店はそろそろ固定概念を捨てる必要があるのではないか。
居酒屋のようなあまり美しくない手書きPOPは控えるべきかもしれないが、もっと美しく見えるPOPもあるはずである。
もちろん文言は読ませるようなものが必要だ。
「シルクブラウス 29,000円」のように品名と値段と生地名しか書いていないPOPは論外である。


この辺りを工夫しないと百貨店の売れ行きはいつまで経っても景気頼みであり、毎回決算発表のたびに「デフレ不況によって消費が伸びませんでした」というお決まりのコメントを繰り返すことになる。
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