南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2013年03月

ストール作りはあくまでも第一歩に過ぎない

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 生地工場が最終製品を作る場合、もっとも作りやすいのがストールである。
複雑なパターン(型紙)も必要ないし、最低限の縫製で済む。
生地をまっすぐに切って、ほつれないように周りを縫えばお終いである。

まれに斜めにカットしたりと工夫を凝らしているブランドはあるが、それは少数派である。

その作りやすさも手伝ってか、ストールブランドはどんどん増える一方である。
とくに産地生地メーカーはストールへの参戦が目立つ。

けれども爆発的に売れたストールブランドは耳にしたことがない。
ストールを求める消費者は、ステテコを求める消費者よりも多いと推測できる。
まず、男女ともに利用することができる。
次にアウターに巻くため、ある程度の枚数が必要になる。
同じストールばかり巻いていたのではコーディネートにも合わせにくいし、着たきり雀になってしまう。
一人当たり数枚所有することが理想的だろう。

しかし、昨今のストール飽和状態を見ていると、産地生地メーカーがストール作りに全力投球することに疑問を感じる。
供給過多のため、1ブランドあたりのストール販売量はそれほど多く見込めない。
ストールは産地生地メーカー以外の総合アパレル、SPAブランドにもそろえられている。
そうなると、ストールというそれほど大きくない市場をかなりたくさんのブランドで分け合うことになる。


「だから生地メーカーはストール作りなんかやめちまえ」。
そう言いたいわけではない。

複雑なパターンも縫製も必要なく、純粋に色柄だけで勝負できるのだから、最終製品作りの第1段階としてストールを作れば良いと思う。
最終製品作りを進めて行く上で、ストールはその練習台になる。
さらに言うと、自社である程度の販売を行うわけだから、流通の勉強にもなるし、販売の勉強にもなる。

次に筆者が言いたいのは、「ストール販売に過剰な期待を抱くな」ということである。
その理由はすでに先に述べている。
多くのブランドが参入して供給過多である以上、1ブランドあたりの売上高はそれほど多くはない。
生地メーカーが立ち上げて爆発的に売れたストールブランドを、残念ながら耳にしたことがない。

今後も産地生地メーカーによるストール参戦は続くだろう。
これだけストールが供給過多になっている現状、新規参入ブランドがストール販売で莫大な利益を得るとは考えにくい。
それよりも中期的視野に立って、製品作りのノウハウを貯める、流通を覚える、店頭販売のやり方を覚える、そういう目的を掲げての戦略的第一歩とすべきだろう。

「ちょちょっと切って縫うだけで高値で売れるからストールを始める」。
こんな風にお手軽に考えている生地メーカーがあるなら、再考することをお薦めする。

新手法を確立できるか?

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 先日、オープンした「天王寺MIOプラザ館」にアーバンリサーチの新業態「センスオブプレイス」の第1号店がオープンした。
世界進出を狙ったファストファッションブランドということで、オープン前から業界的には注目を集めていた。

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(センスオブプレイスの店頭ディスプレイ)

天王寺MIOプラザ館という商業施設は大阪市内でもあまり注目されておらず、まあ、今回のリニューアルオープンで集めたテナントも一部を除いて、大半以上はごくありきたりのブランドだった。

通常、新業態のお披露目では「初年度売り上げ目標」「展開店舗数の中期的目標」などがお決まりのように尋ねられる。これについて「○○億円です」と明言するブランドもあれば「ちょっと非公表です」と開示しないブランドもある。
それは企業それぞれのスタンスなので仕方がない。

今回のオープンに際して「展開店舗数の中期的目標」を尋ねたところ、明確な答えが返ってこなかった。
低価格ブランドの場合、展開店舗数を一気に増やすことで1枚当たりの製造原価を下げる。初年度10店舗、3年で30店舗くらいの出店ペースは珍しくない。

新ブランドとして10店舗くらいの店舗数になると、オリジナル商品が製造しやすくなる。
アイテムによってミニマム生産量は異なるが、ジーンズやカジュアルパンツなどは1型・サイズ込みで100枚というのが相場である。
1店舗あたりに10枚を配送することを想定すると、10店舗で計100枚となる。
いくら衣料消費不振の時代とはいえ、1店舗10枚くらいなら完売できるだろう。
そう考えると、多くの場合、1年以内に10店舗体制まで持って行くことが望ましい。

ところが、「センスオブプレイス」はそういう体制を採らないらしい。
オンライン通販が実店舗に先行して立ち上がっていることを踏まえて、「実店舗数を増やすよりもオンライン通販の販売枚数を増やすことで、総生産数量をある程度の枚数にすることを考えているのか?」と質問したところ、微妙ながらも「YES」の答えが返ってきた。

たしかに生産数量を固めるために、実店舗を増やすよりもオンライン通販の販売力を高めた方が、利益は大きくなるだろう。実店舗出店は人件費から始まって、内装工事費、什器代と、とかく費用がかかる。
出店するたびに費用が発生する。

オンライン通販の場合は、一度立ち上げてしまえばそのあたりの費用は発生しない。
売上高が増えれば増えるほど、利益は確保しやすくなる。
だからオンライン通販の販売数量を増やすことができれば、ビジネスモデルとしては理想的である。

しかし、それを実店舗と組み合わせて成功した新ブランドはあまり見たことがない。

実店舗をあまり増やすことなく、オンライン通販を伸ばすことで低価格ファストファッションが成功することは可能だろうか?
同ブランドに対して業界的に注目すべきはファッションのテイストや品ぞろえよりもこのビジネスモデルが確立できるかどうかではないか。

しばらく経過を観察してみたい。

スペックだけのPOPはまったく意味がない

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 久しぶりに店頭での販売に従事した。
1週間という短い期間だったが、ちょっとしたことを再発見した。

できるだけ具体的に説明した方がお客の購入率が高まる。
「何を今更。当たり前のことを」とおっしゃるかもしれないが、筆者も含めてこれが意外にできていなかった店や販売員が多かったのではないかと感じた。

絹100%の2メートルの組紐を販売していたのだが、組紐は巻かれて透明のビニール袋に入って並べられている。もちろんPOPには「正絹の組紐、2メートル」と書かれてある。
販売し始めたころは十分これで具体的じゃないかと考えていた。

ところが、あまり感触が良くない。
着物の愛好家はすんなりお買い上げいただいたが、そうでない方の反応は鈍かった。

そこで1つ、2つを袋から出して、伸ばすようにした。
実際の2メートルを目で見てもらえるようにした。そうすると、購入比率が急に高まった。
どうやらお客は「2メートル」と書かれてあっても、具体的に2メートルがどれほどの長さなのか想像しにくかったということだろうか。

一般的に考えて、170センチの身長の男性は珍しくない。
170センチの身長の男性というとだいたいどんなものか想像しやすいのではないかと思う。
2メートルだからそこに30センチを足せば容易に想像できるのではないかと考えていたが、実際はそうではなかったようだ。

だから「2メートルはこんな長さですよ」と組紐を伸ばして見せると、迷っていたお客のほとんどが「そんなに長いのなら」と購入してくれた。

しかし、こちらとしても反省点は多々ある。
まずPOPに「正絹の組紐、2メートル」とスペックしか書いていなかったことだ。

ここに「帯締めにも利用できます」とか「巾着袋の紐にも利用できます」などと利用法も書くべきだった。

日頃はいろいろと考えてはいるのだが、いざその場になると実行できないことも多い。
利用法も書いていないのでは、着物に興味のない消費者は「2メートルの組紐って何に使えば良いの?」ということになる。販売員に対して口頭で質問してくれれば良いが、わざわざ質問してくれるお客はほんの一部である。大多数のお客は疑問を抱えたまま沈黙している。

沈黙したお客に説明できるのはPOPしかない。

そういう観点から次回はPOPにも工夫を凝らす必要があることを痛感した。

月並みな感想だが、実地で体験してみることはやはり重要である。

3月度の売り上げはまずまずか?

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 恒例のライトオンとジーンズメイトの3月度売上速報が発表された。
どちらも既存店ベースで前年微減と前年微増だったのでまずまず堅調だったといえるだろう。

何度も書くが2月21日~3月20日までの売上速報である。

ライトオンは、 

既存店売上高が前年比1・2%減
既存店客数が同0・6%減
既存店客単価が同0・8%減


ジーンズメイトは

既存店売上高が前年比1・0%増
既存店客数が同1・0%減
既存店客単価が同2・1%増

だった。

2月下旬まで低気温が続いたが、3月に入って気温は急上昇した。
そのため、春物が良く動いたと見るべきだろう。
ただ、前年が閏年で今年度より営業日が一日多かったことはあまり言い訳にはならない。

ちなみにライトオンの昨年3月度は

既存店売上高が前年比30・8%増
既存店客数が同24・8%増
既存店客単価が同4・8%増

だった。

これに比べて今年度は微減なのだから、金額ベースで考えるなら伸びはしなかったがまずまずだったと見るべきだろうか。
やはり、春の立ち上がりのジーンズカジュアルは根強い人気がある。
ジーンズカジュアルアイテムが年間もっとも売れるのが3月、4月であり、あとは9月、10月である。
真夏と真冬は、とくにジーンズの動きが鈍い。

このサイクルを考えるなら、3月度、4月度はもっと売上高を稼いでおかなくてはならないだろう。
ライトオンで考えると3月度はほぼ前年並みを維持したから、4月度は前年増を目指すべきだろう。

ジーンズメイトはこれまで苦しんでいたが、既存店ベースでは完全に底打ちをしたと見ても差し支えないだろう。
プライベートブランドも拡大路線に踏み切ったのだから、今後の回復に期待したい。

わけもなく安い商品は胡散臭い

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 多くの卸売り型アパレルやSPAブランドと話すと「とりあえず安くしないと売れない」、逆に「とりあえず安くしたからこれで売れるだろう」という意見を耳にすることが多い。

しかし、理由もなしに「とりあえず」安くした商品はあまり売れ行きが良くない。
それはユニクロやジーユーに追随して価格競争を挑んだブランドがことごとく失敗していることを見れば一目瞭然だろう。

もちろん、販促手法の不備や広報告知が行きとどかなかった部分もあるだろう。
店頭サービスにも原因があるかもしれない。

それらを差っ引いても理由のない安売りでは集客できない。

ユニクロが台頭する前の80年代に無印良品が消費者から支持されたのは「わけあって安い」というキャッチコピーがあったからだろう。とくにあの当時の社会状況を思い出してみると、DCブランドブームで洋服の平均価格は恐ろしく高かった。メンズのスーツなんて10万円くらいは当たり前だった。
そんな中で無印良品の商品価格は、消費者からは劇的に安く見えたはずだ。
そういう事情を考慮してみても、「わけあって安い」という売り方はまさに適切だったといえる。


まだ10代だったので当時のおぼろげな記憶をたどってみると、「高くなければまともなブランドにあらず」という風潮だった時代に、「わけもなく安い」商品は単なる安物、紛い物、関西ではバッタ物と認識されてしまっただろう。
当時の安売り衣料品ブランドで現在もまともに存続している企業はほとんど見かけない。


自分が運営に携わっている産地メーカーによる生地販売会「テキスタイル・マルシェ」を見ていると、激安生地しかないブースは概して苦戦する傾向が強い。
京都府の丹後地方の生地メーカーは今まで何度か参加してくれたことがあるが、1メートル1000円均一みたいな売り方をしたときに限って売れ行きが良くない。

ちなみに丹後地方は、絹の縮緬製造が盛んな地域で、最近だとポリエステルの縮緬や縮緬の織り技術を活かした洋装向け生地などを製造している。

だから元来は高級な生地を製造している。

3月20日から阪急百貨店うめだ本店10階で「テキスタイル・マルシェ」を開催しているが、今回の丹後地方の生地メーカーの売れ行きは悪くない。トップではないが、コンスタントに売れ続けている。

値段を見ていると、1メートル1500円、2000円、3000円、5000円以上となっている。

ポリエステル縮緬は1500~2000円、3000円以上は純絹か絹が交織されている。

「絹だからそこそこの高価格」「ポリエステルだからそれなりに安い」と明確に値段が分けられており、「わけもなく安い」生地は一つもない。
販売担当者の接客努力や顧客層がマッチしてることもあるが、「わけもなく安い」という販売スタイルを捨てたことが大きな要因だと感じている。

手芸や洋裁をたしなむ人にとって、「わけもなく安い」生地は必要とされていない。
「安いなら安いなりの理由」が必要だし、「わけあって高い」物でもそれなりの需要がある。

生地やアパレル製品だけでなく、飲食物にしたって「わけもなく安い」商品はどこか胡散臭い。
生産地の衛生面は大丈夫か?品質検査基準をちゃんとクリアしているのか?まともな材質を使用しているのか?
などのもろもろの不安を感じる。

これが「工場と直接取引なので安い」「大量生産なので1個あたりの製造コストが安い」などの明確な理由が表示されていることが必要だろう。

ユニクロブーム全盛時にアパレル首脳陣からよく「うちはユニクロより900円値段を下げたから売れるだろう」というような言葉を耳にしたが、そんなつまらない理由を掲げて売れたブランドを見た試しがない。

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